日本弁護士連合会「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」に対する全国「精神病」者集団の見解

1.同決議の評価
 同決議については、次の点を評価する。
① 同決議の「精神障害のある人だけを対象とし、緊急法理を超えて、本人の意思に基づかない入院を許す精神保健福祉法による強制入院制度を廃止し」の部分については、精神保健福祉法に基づく非自発的入院制度の廃止を掲げたものであり評価する。
② 同決議の「精神保健福祉法による強制入院制度を廃止し、廃止に向けたロードマップ(基本計画)を作成し、実行する法制度を創設すること」の部分については、非自発的入院の段階的な廃止を掲げたことを評価する。
③ 同決議に付随する解説には、2035年までに強制入院制度の廃止を達成するという期限が設けられており、その点を評価する。
④ 同決議の「障害者権利条約の求める,人権の促進及び擁護のための国家機関(国内人権機関)の地位に関する原則(パリ原則)にのっとった国内人権機関の創設」の部分については、実施機関としてパリ原則に基づく国内監視機関を位置付けたことを評価する。
⑤ 同決議の「精神科医療においても等しく適用される,患者の権利を中心にした医療法を速やかに制定し,インフォームド・コンセント法理を始め一般医療と同等の質及び水準の医療を提供することを確認し,その運用,周知のために必要な法整備を行うこと」の部分については、精神科医療を一般医療へと編入させる枠組みとして提示されたことを評価する。

2.同決議の問題点
 同決議については、次の点で問題点を認める。
① 国及び地方公共団体の役割についての言及がなく、非自発的入院廃止の責務を担う実施主体が不明である。
② 同決議は、基本計画(ロードマップ)の策定を掲げているが、基本計画(ロードマップ)の根拠法令として精神保健福祉法が想定されている点で問題がある。しかし、精神保健福祉法第1条の目的条項の下で構造的な人権侵害を帰結しているわけであり、同決議が目指している「差別を解消しインクルーシブな社会を実現する」ことと同法は本日的に相容れないものと考えられるべきである。また、仮に同法を根拠とした場合、達成期限として設定された2035年の根拠が不明である。例えば、医療計画の場合、第9次医療計画の最終年は2036年と考えられるため、その他の行政計画との関係も相まって中途半端なスパンであるとの印象をぬぐえない。
③ 同決議は、強制入院の段階的な削減の結果として強制入院制度が廃止されるというストーリを前提としている。精神保健福祉法廃止と非自発的入院制度廃止が同一のものと見なされており、かつ精神保健福祉法廃止が最終目標とされているわけである。しかし、強制入院と強制入院制度を区別して考える必要があり(同決議も区別して考えていないわけではない)、精神保健福祉法に基づく強制入院制度(非自発的入院)を廃止してから、一般医療における強制入院(非同意入院)を削減していくといった順番によるべきである。

3.社会的な反応
 同決議に係る社会的反応は、当初予想していた以上に絶大であった。同決議に係る社会的反応の長所は、非自発的入院制度の廃止に向けた機運を圧倒的に高めたことが挙げられる。他方で同決議に係る社会的反応の短所は、政策として完成していないのにもかかわらず、一見すると具体的な政策のように見えてしまうことから、不用意に期待値を高めてしまっていることが挙げられる。非自発的入院制度の廃止に向けた機運を下げることなく、同決議の方向性を支持しながら適切な政策討論へと結びつけることで、政策としての完成度を補足していくことが急務である。

4.全国「精神病」者集団の対案
 ここでは、全国「精神病」者集団としての政策の対案を明らかにしたい。
① 第8次医療計画の活用
同決議は、「病床数削減」と「強制入院削減」の2つを掲げている。全国「精神病」者集団は、この2つの実行手段として、次に掲げる通り第8次医療計画の活用を提案する。
〇 基準病床算定式を用いた入院需要の縮小による病床数削減。
〇 指標例を用いた非自発的入院の段階的縮減。
 【期限】第8次医療計画は、2022年に検討がおこなわれ、2024年から開始される予定である。よって、「病床数削減」と「強制入院削減」のための政策は、達成目標を2024年までとするべきである。
② 医療保護入院の廃止
 同決議は、「強制入院制度廃止」を掲げている。全国「精神病」者集団は、実行手段として医療保護入院の廃止を提案する。2021年10月に厚生労働省が設置した「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」では、入院制度のあり方の検討が予定されている。医療保護入院廃止という検討結果で合意するためにも、大衆的合意形成の取り組みが必要である。
 【期限】2022年7月には、同検討会の報告書がまとめられる予定である。よって、「強制入院制度廃止」のための政策は、達成目標を2024年までとするべきである。
③ 障害者権利条約の政府審査
同決議の「強制入院制度廃止」について全国「精神病」者集団は、医療保護入院の廃止に加えて、障害者権利条約の政府審査を提案する。障害者の権利に関する委員会は、同条約第36条及び第39条に基づく勧告を出すことができる。勧告には、次に掲げる事項を入れる必要がある。
〇 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、特に第29条、第33条及び第37条に基づく非自発的入院制度を廃止すること。
〇 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律を廃止すること。
なお、政府は条約体の勧告を尊重しなければならないこととされている。ただ、これだけでは消極的な尊重にとどまる可能性が否めないため、法改正の際には、衆参両院で「障害者の権利に関する条約第三十六条及び第三十九条による障害者の権利に関する委員会からの提案及び一般的な性格を有する勧告に基づき、障害者を代表する団体の参画の下で、当該提案及び勧告に基づく現状の問題点の把握を行い、関連法制度の見直しを始めとする必要な措置を講ずること。」とする付帯決議を可決成立させる必要がある。
 【期限】2021年12月時点では、2022年夏に日本政府の初回審査が予定されていた。現在は、新型コロナウィルス感染拡大に伴い未定となっている。
④ 非理性を包摂した法体系のあり方に関する議論の開始
 従来の精神障害法は、理性がない状態の者を法律から除外して成立する仕組みに依拠しており、刑事責任無能力や制限行為能力のように個人の疾病に根拠をおく医学モデルに依拠したものであった。このように法律が前提とする人間像は、理性的な人間であり、精神障害者は排除されなければ成立しない仕組みとなっている。社会モデルの観点に立てば、精神障害者を治療して理性的にさせるのではなく、理性を前提とした法体系のあり様こそ問い直す必要がある。非自発的入院の廃止に向けては、非理性を包摂した法体系のあり方に関する議論を開始して、対案を明らかにする必要がある。
⑤ 医療基本法の制定
 同決議は、「精神保健福祉法の廃止」を掲げている。全国「精神病」者集団は、その実行手段として医療基本法の制定を提案する。医療基本法には、医療関連法規の見直しに関する規定を設ける必要がある。当該規定の下では、精神保健福祉法の廃止を含むかたちで精神科医療を一般医療に編入するための検討をおこなえるようにする。
 【期限】医療基本法の制定時期は未定である。しかし、第8次医療計画の検討が本格化する2022年中に制定されていなければ実効性の観点から疑問が生じる。

5.ポイント
 全国「精神病」者集団の見解のポイントは、非自発的入院廃止と緊急避難法理等による非同意入院の削減を別枠で考えた点にある。前者は、同条約の総括所見をベースにして比較的早い段階で実現させるべきと考える。後者は、医療計画に基づき都道府県を実施主体にして段階的におこなうべきと考える。また、非同意入院は、恣意的運用を防止するためにソフトロウを策定するなど、中身に踏み込んだ議論が必要となる。

◆参考資料:精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議(2021年10月15日)
https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/2021/2021.html

精神科病院アドボケイト制度化に関する論点整理

Ⅰ 精神科病院アドボケイトによる権利擁護
(制度の効果)
効果は、次の3点とする。
①入院者によって表示された意思を擁護する立場の人をいれることで孤立を防ぐ。
②入院者が精神科病院の外部のアクターとつながるための契機となる。
 ③精神科病院に外部の目を入れることで風通しをよくし医療の適正化につなげる。

(名称)
〇 制度の名称は、次の点に留意して決められるべきである。
・意思決定支援は、「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン」、「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」など複数のガイドラインに定めがある。それぞれ同一の用語が別の趣旨で用いられており、混乱が見られる。そのため、意思決定支援とは別の名称を検討すべきである。
・権利擁護は、機能として明確に打ち出すべきではあるが、名称として用いると漠然としてしまう。また、法的救済や成年後見などの他の業務との区別が付きにくいため別の名前を検討すべきである。
・日本語では「精神科病院訪問」などのわかりやすい名称がよい。
〇 実働する人の名称は、「精神科病院アドボケイト(仮称)」とする。

(対象者)
〇 精神科病院入院者で、自発的入院・非自発的入院の別を問わない。
・カリフォルニア州の公的権利擁護及び権利保護法では、患者が非自発的入院をする場合に患者毎に一人以上の権利擁護官を設定しなければ非自発的入院させることはできないという仕組みを採用している。しかし、この制度は日本で実施すると米国と違って形骸化した運用になる可能性が高い。
・非自発的入院だけを対象とすることは問題がある。大前提として精神保健福祉法の非自発的入院は身体の自由を制限する権利侵害という側面がある。その権利侵害をやめるのではなく、権利侵害されている状況を前提としながら、一方で精神科病院アドボケイトが権利擁護するという図式はいびつに思えてならない。「権利擁護なんかしなくていいから、権利侵害をやめてくれ」ということになる。
・非自発的入院それ自体の問題と精神科病院アドボケイトの必要性の問題は切り分けて考えられるべきである。自発的入院であっても精神科病院アドボケイトを必要とする人がいる。

(精神科病院アドボケイトの業務)
〇 次の各号に掲げる精神科病院への訪問とする。
①精神科病院への定期的な巡回訪問。
②入院者の求めに応じた訪問。
(※①は精神科病院への予告なしとすることが望ましい。)
〇 精神科病院アドボケイトは、入院者の話しを聞く。
〇 精神科病院アドボケイトは、複数のアクターと協議する際に入院者によって表示された意思を擁護する立場でかかわる。
〇 精神科病院アドボケイトは、直接支援をしない。但し、入院者からの個別の要請・契約を妨げるものではない。
〇 直接支援とは、ケアマネジメント、訴訟代理、介護、看護などのことである。精神科病院という閉鎖的環境における精神科病院アドボケイトの役割は、外部との接点を作ることである。仮にアドボケイトが直接支援を抱え込むことになれば、入院者は外部との接点を持てなくなり兼ねない。

(訪問体制)
〇 2人1組を想定する。但し、1人での訪問を妨げない。

(精神科病院アドボケイトの担い手)
〇 精神科病院アドボケイトは、入院者に対して精神科病院の外部とのつながりを作ることが目的である。また、精神科病院の外部からの訪問により風通しをよくし、医療の適正化につなげることも目的である。よって、精神科病院アドボケイトの担い手は、精神科病院の外部と言えるかどうかが関心になる。
〇 精神科病院の外部と言えるかどうかは、精神科病院内部である入院先精神科病院管理者及び担当医師、その他の職員等から影響を受けるかどうかを判断基準とする。
・例えば、次に掲げる者は、精神科病院アドボケイトになることができないと考えられるべきである。
①当該医療保護入院者に同意を与えている家族。
②当該措置入院者の通報にかかわった家族。(※家族が110番通報したことで、かけつけた警察官が23条通報して措置入院になった場合など。)
③入院先の病院に紹介状を出した医師。
④入院先医療機関の職員。
⑤同一法人の別医療機関の職員。
⑥担当の相談支援専門員及び介護支援専門員。
⑦顧問など契約関係にある弁護士。
・加えて、医師、看護師、現に医療保護入院者に同意を与えている家族等は、精神科病院アドボケイトになったとしても適正な業務遂行が困難であると考えられる。
・入院者と利益相反関係にある人は、精神科病院アドボケイトの個別訪問をすることができない。

(何をしてはいけないのか)
〇 精神科病院アドボケイトは、意思決定支援をおこなわない。
・障害者総合支援法第42条及び第51条の22では、事業者等に意思決定支援の配慮義務がかされている。意思決定支援は、同ガイドラインにおいて最善の利益について判断することが想定されているため、本制度の趣旨と相入れない部分がある。

(精神科病院アドボケイトによる情報提供)
〇 精神科病院アドボケイトは、入院者への情報提供をおこなうことができる。
〇 入院者の求めに応じて情報提供することが前提である。
・CP換算値、630調査等による統計データ、職種と役割、精神医療審査会、指導監督制度、患者会の情報などの社会資源にかかわる情報は、入院者の求めによらなくとも紹介できるようにした方がよい。)
・逆に入院者に求められても情報提供が不可能なものとしては、公序良俗に反する情報、治療方針にかかわる情報(※医者の役割であるため。)、他の入院者の業務上知り得た秘密などが考えられる。
・脱走に係る情報や薬を呑んでいないことをバレずに済ます方法などについては、公序良俗に反する情報には該当しない。
〇 必要に応じて相談支援事業所、弁護士、他医療機関等の機関を情報提供する。
〇 精神科病院アドボケイトから入院者に情報提供することもあり得るが、どのような判断基準で情報を選んで提供するのかについて議論が必要である。

(実施主体)
〇 実施主体は、都道府県・政令市とする。
〇 事業は、委託を可とし委託を基本とする。

(財源)
〇 障害者総合支援法の都道府県地域生活支援事業の必須事業を財源とする。
〇 設置にあたっては、国による補助金があったほうがよい。

(センター(仮称)について)
〇 センター(仮称)を設置する。
・センター(仮称)は、原則として都道府県単位とし、必要に応じて複数設置を認める仕組みが望ましい。
〇 センター(仮称)は次の業務をおこなう。
 ・センター(仮称)は、精神科病院アドボケイトを派遣する。
・センター(仮称)の事務局は、相談を受け付ける機能をもつ。
・センター(仮称)の事務局は、病院からの連絡を受け付ける機能をもつ。
・センター(仮称)は、精神科病院に対する助言をおこなうことができる。その場合、指導監督制度、虐待防止法等の関連制度との役割のちがいを踏まえて当該所轄と連携していくことが望ましい。なお、深刻な虐待事件等については、地方精神保健福祉審議会を始動すべきである。
 ・センター(仮称)は、研修にかかわる事務をおこなう。
 ・センター(仮称)は、精神科病院アドボケイトの登録事務をおこなう。

(協議の場)
〇 都道府県・政令市に1件の協議の場を設置する。
〇 病院と精神科病院アドボケイトが協議して解決するチャンネルが必要である。

(精神科病院アドボケイトの登録)
〇 研修の受講のみとする。
〇 研修は一段階とし、簡易なものを想定する。但し、合理的な根拠があれば二段階を否定するものではない。

(ピアサポートの活用)
〇 事業所によるピアサポーター一本釣り雇用スタイルからの脱却を目指す。
・当事者団体に所属する当事者の参加を基本とする。
・当事者団体から地方精神保健福祉審議会の構成員を採用していく必要がある。

カリキュラム
科目名        時間数   内容   講義
1. アドボケイトの理念  1h  必要性、理論、基本的な考え方
2. 各地の活動の歴史   4h  精神医療人権センター、当事者団体、自立生活センター、弁護士会による当番弁護士、地域生活支援の取り組みなどの歴史
3. 演習1        2h
4. 職種の可動範囲    3h  弁護士、福祉職、医療職、家族会組織、当事者団体、行政、法務局
5. 制度         5h  憲法、障害者権利条約、医療制度、精神保健福祉法、障害者総合支援法、生活保護法、訴訟制度
6. 精神疾患と対話 2h  精神疾患の種類、治療の種類、コミュニケーション
7. 演習2       4h  事例を用いたグループワーク
8. 実習         4h

(制度化する意義)
 制度化には、メリットとデメリットがある。メリットは、全国的な展開が可能になることである。デメリットは、システム化されることでボランティアのような自由な取り組みが実践されにくいことである。当初は、もっとも先進的な取り組みと同水準でなければ制度化する意味がないのではないかという慎重論もあった。しかし、地域によっては、何の権利擁護の仕組みもないところもあるため、全国展開は必然であると考えられるようになっていった。よって、制度化するデメリットよりも制度化するメリットが上回る。

Ⅱ 精神科病院アドボケイトに外在的な権利擁護
1.基本的な考え方
 権利擁護は、精神科病院アドボケイトにとどまらず、もっと幅広くとらえられるべきものである。また、精神科病院アドボケイトは、入院者に対して精神科病院の外部との接点をつくっていくコンタクトパーソンになることが目的の一つである。外在的な権利擁護機能を理解する意義が大きい。

2.司法救済
〇 司法救済については、次の方策が考えられる。
・弁護士会による当番弁護士制度(弁護士会の予算が財源)。
・人身保護法の活用。
 ・訴訟。
〇 総合法律支援法を見直し、退院等の請求などへの助成の範囲を拡大する。

3.監視
〇 指導監督制度の活用。
〇 障害者虐待防止の見直しに向けた検討を再開し、精神科病院を含む医療機関等を通報義務のスキームの対象にすること。

4.処遇
〇 医療相談、医療事故調査制度。
〇 退院等の請求や処遇改善請求。

5.重度訪問介護をはじめとする障害福祉サービス等の活用
〇 24時間見守り・意思決定支援・コミュニケーション支援ができる重度訪問介護が入院中に利用できる。

6.地域移行
〇 相談支援専門員による地域相談。
〇 訪問系サービスなどの活用。
〇 所得保障。

日本精神科病院協会の声明に対する見解

関 係 各 位

 時下ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 日本精神科病院協会(以下、「日精協」とする。)が「令和3年(受)第526号上告受理申立て事件に対する最高裁第3小法廷の不受理決定について」と題する声明を出しました。当該声明は、精神科病院における身体拘束中の死亡事故について損害賠償を認めた名古屋高等裁判所金沢支部判決の上告を棄却する最高裁判所決定に対して向けられたものです。また、当該声明の主張は、主として① 判決は精神保健指定医の裁量に過度な制限をもたらすものである、②判決が想定する人員体制は非現実的である、③入院者を受け入れられなくなり患者が不利益をうける、というものになっています。
 この声明は、下記の点で問題があると考えますので、関係各位におかれましては理解を深めてくださいますと嬉しく思います。

1.精神保健指定医の裁量は一般医事法理の適用を免責させるようなものではない
 日精協の「判決は精神保健指定医の裁量に過度な制限をもたらすもの」という主張は、法律を間違って理解していることに基づいています。
 まず、判決文には、「精神保健指定医の(身体的拘束に関する)治療的判断が、その裁量を逸脱して違法である」とあり、精神保健指定医の裁量それ自体は認めた上で、被告病院が、その裁量を逸脱していたために責任が発生したという内容になっていることがわかると思います。よって精神保健指定医の裁量を制限した判決と読むべきではなく、もとより、精神保健指定医の裁量は医事法理の中で決められていたものであると読むのが適当です。
 また、精神保健指定医の裁量は、あくまで一般的な医事法理の下で認められているのであって、37条1項大臣基準の位置付けも医事法を念頭におきながら、さらに厳格な手続きとして定められたものとなっています。
 精神保健指定医は、医事法理の適用を受けないほどの裁量までは認められていません。そのため、判決が精神保健指定医の裁量を過度に制限したわけではありません。

2.常時8人の看護師がいないと違法になるなどとは判決文には書かれていない
 本判決をめぐっては、常時8人の看護師がいないと身体拘束が違法になるとする誤解が流布されているようですが完全に事実と異なります。判決文には、平成28年12月13日に看護師5人でおさえ付けて注射したところ顕著な不穏多動が見られたが、平成28年12月14日に医師と看護師8人で拘束開始の診察時をしたときにら顕著な不穏多動が見られなかったことから、注射や診察などの際に一時的に人員を割くことができるなら人員を割くことで拘束を回避するべきであるとは書かれています。
あくまで人員をさける余力があるなら拘束に先駆けて人員をさくことを検討するべきとしたものであり(現に12月14日の拘束時に8人確保してます)、余力がない中で看護師を8人揃えないと違法になるなどという内容の判決文ではありません。

3.過誤の有無についての論拠が未完成であること
 先述した通り、もとより精神保健指定医の裁量は、従来においても、そこまでの裁量は認められておらず、判決文の一部を抜き取って裁量への過度な制限であると主張するのは適当ではありません。
 本件に限っては、被告病院側が37条1項大臣基準に従って行動制限したといい得るだけの高い蓋然性のある証拠を示し得ておらず、一般的な医事法の考え方に基づき過誤を認める判決になったものと考えるべきでしょう。とりわけ、日精協は声明において「多動又は不穏が顕著な場合」の不穏の中身までは態度が明らかにされていますが、それが顕著であったかどうか、何をもって顕著と言いうるのかまでは、態度が明らかにされていません。
過誤の有無について裁判所とは別の見解を述べるのであれば、最低限、これら形式面をきちんと理論形成してから公表する必要があります。そのため、日精協の声明は、過誤の有無についての論拠が未完成のまま、見切り発車したかたちになっています。

4.精神科病院でしか通用しない常識があることを彷彿させる弁明
 山崎会長は、記者会見の場で「裁判官は精神科病院を見たことがない」旨を発言されたようですが、このように精神科病院でしか通らないルールがあるかのような言い方をしてしまうと、逆に精神科医は一般社会のルールを知らないのではないかと疑われることになるのではないかと思います。
 被告側病院は、行動制限を開始できる程度の病状であったと考えていたようです。しかし、裁判所は、行動制限を開始することに疑義を持つに値すると判断したため、被告病院側の主張は大部分が斥けられました。ここに精神科病院の内側と外側の認識の差異が如実にあらわれる結果になったのだと思います。
 むしろ、精神科病院こそ、一般医療に近づくために、従来の慣習を改めていく必要があるのではないかと思います。

5.精神障害者を受け入れるのは誰であるべきか
 日精協声明の最大の問題点は、社会が精神障害者を排除しており、精神障害者を受け入れるのは精神科病院であるというドグマに陥っているところにあります。本来、精神科病院関係者は、精神障害者に係る問題をなんでもかんでも精神科病院に押しつけないでほしいと主張すべきだし、医療外のことは病院ではなく社会が担うべきであると主張しなければならないはずです。しかし、日精協声明からは、精神科病院があらゆる問題を引き受けてきたことを誇りにさえ思っている節を禁じ得ません。
 もちろん、ある意味では、精神科病院が社会の闇を一身に背負ってきたともいえなくはないですが、本来は社会がもっと精神障害者とかかわりを持つべきです。精神科病院が世の中にとって便利に機能すればするほど、精神障害者と社会の接点は閉ざされていくことになります。当然ながら医療体制は患者の受入態勢のことであり、受入態勢が十分でない状態では患者の受け入れはできません。精神科病院が何もかもをできるわけではないという観点に立ち、判決を肯定的に受け止めることが必要であると考えます。
以 上 

北新地ビル火災の報道に関する緊急要望書

報道機関各位

 日頃、貴社におかれましては迅速で正確な報道のためご尽力されていることを心より敬意を表します。私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
さて、2021年12月17日に大阪の堂島北ビルで火災が発生し、その影響で24名の死亡が確認されています。火元は、心療内科に通院する男性が放火した疑いがもたれているなどの事実が報じられています。こうした報道は、精神疾患を持った人に対して「怖い」「危険」「何をするかわからない」「社会から排除すべきである」「監視の対象にするべきだ」といった偏見・予断を助長させるため、たいへん深刻に憂慮しています。
すでに事件と精神疾患を結びつける偏見に基づいた声が散見されます。このように報道は、一般国民に対して多大なる影響力をもっています。貴職については、自らの影響力を考慮し、精神障害者を排除するような社会的偏見がひろがらないよう、報道機関には地域で生活している精神障害者の立場や気持ちも含めて、配慮のある報道を望みます。
以 上 

「障害者ピアサポート研修事業に係る情報提供等について」に係る要望書

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
障害福祉課地域生活支援推進室長 殿

 寒冷の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、現在、国は障害者ピアサポーター研修(地域生活支援事業)を受講した障害者を雇用した相談支援事業所等に対して加算報酬を付与するなどピアサポートの専門性の評価に係る政策を推進しています。障害者ピアサポーター研修事業は、各都道府県政令市において障害当事者を交えた運営会議を設置し、企画段階から関与させることが推奨されています。全国「精神病」者集団としては、各地の仲間が各都道府県政令市の運営会議に参画しやすいようにサポートする取り組みをしてきました。
 令和3年3月31日付、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室発・各都道府県指定都市地域生活支援事業担当者宛の事務連絡「障害者ピアサポート研修事業に係る情報提供等について」には、「障害者ピアサポート研修事業の検討に当たって、「障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金)にて標準的な研修テキストの作成に携わった研究代表者・関係団体の皆様に、障害者ピアサポート研修事業の実施方法やテキスト内容、講師の紹介などの都道府県・指定都市の担当者からの相談・問い合わせにご協力いただくこととしておりますので、必要に応じて相談・問い合わせいただくようお願いいたします。」と書かれています。これについて都道府県・政令市の担当者は、当該事務連絡に記載された団体以外には問い合わせをしなくてよいものと解釈する傾向にあり、いくつかの都道府県・政令市においては全国「精神病」者集団の成員の参画が見送られる事態が生じています。当該事務連絡は、表現が不適切です。
 つきましては、当該事務連絡の修正あるいは主管課長会議資料等の方法を用いて、多くのグループの積極的な参加を担保し得るような解説を入れてください。対応についてご検討いただけますと嬉しく思います。
以 上 

精神科入院患者の重症度にもとづく医療・看護必要度の評価の手引き(案)への意見

持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究
 研究代表者 竹島 正 様
精神科入院患者の重症度に応じた医療体制の確保に関する研究
 研究分担者 福田正人 様

 紅葉の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、下記に精神科入院患者の重症度にもとづく医療・看護必要度の評価の手引き(案)への意見をまとめました。ご検討くださいますようお願い申し上げます。

(1)精神科生物学的医療ニーズ
 保険原理的には、入院医療でなくてもできる治療は入院医療によるべきではないこととされている。“どんなに病気が重くても入院せずに地域生活できる”という理解のもと報酬等の政策を設計していく必要がある。重症度、医療看護必要度については、生物学的な意味での疾病が重症であるとしても、そのことがただちに入院医療が必要であることを帰結しないという点を確認しておく必要がある。入院医療は、治療メニューのひとつであり、入院ニーズに基づいて施される処遇である。“病気が重いから入院している”という図式は、回避されなければならない。また、入院医療の必要性を高い蓋然性をもって担保するものが必要である。

(2)重症者の数について
 重症者の数は、最初に母数を決めて、母数を超えないような判定基準を設ける手順が妥当であると考える。判定の結果、重症者が続出するようであれば、入院医療の量的な必要性を政策的に裏付けることにもつながりうるため、入院医療の必要性を絞り込むような形で設計していく必要がある。他方で人員を動員する根拠としての重症度、医療看護必要度という側面もあるため、人員の必要性から逆算したかたちで母数を設定していくことも考えられなければならない。

(3)精神科心理社会支援ニーズ
 精神科心理社会支援ニーズは、退院後の居住地がないために入院している状態など、現実の問題としては人員を動員して解消すべき問題ではあるものの、本来は健康保険を使って入院医療に報酬を発生させるべきものとは認めがたいものでもあった。

(4)その他
このたびの手引き(案)は、B項目にかかわる手引きのみであり、A項目とC項目にかかわる手引きが示されていなかった。そのため、全体像が見えにくく、非常にコメントが難しかった。引き続き、必要に応じて意見を出していきたいと考えている。
以 上 

基準病床算定式に係わる指標例に関する第二次意見書

持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究
研究代表者 竹島正さま

 日ごろより精神障害者の地域生活、施策にご尽力くださり心より敬意を表しております。
2021年6月に提出した基準病床算定式に係わる指標例に関する第一次意見書の内容に加えて、下記の通り基準病床算定式に係わる指標例について意見を申し上げます。

1.非自発的入院の段階的な解消に向けた指標の設定
 障害者の権利に関する委員会は、初回の日本政府報告に関する質問事項において「知的又は精神障害のある者の入院件数が増加していることに対応すること、及び彼らの無期限の入院を終わらせること」について講じた措置にかかわる情報提供を求めている。他方で、2021年10月15日、日本弁護士連合会は「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」を採択し、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく非自発的入院の廃止と非同意入院の段階的な縮減を提言しました。これらの動向を踏まえて、指標にはアウトプット指標として非自発的入院の段階的な縮減を加えること、また、それらは医療保護入院の届出件数や措置入院件数、措置入院診察件数等、6月30日時点の非自発的入院者の入院者数及び入院期間等で評価できるようにすることを提案します。

【資料】障害者虐待防止法改正の論点整理

1.障害者虐待防止法の改正をしない理由について
 厚生労働省は、同法附則第2条の検討の結果、①障害の有無に関係なく利用する機関においては、障害者への虐待のみが通報対象となる不整合が生じることと、②各機関における虐待に類似した事案を防止する学校教育法や精神保健福祉法等の既存法令と重複する部分の調整の必要性が生じることの2点を挙げて法改正を見送ることとした。しかし、政府による法改正しない理由は、理由にまではなり得ていない。
(1)障害者への虐待のみが通報対象となることへの不整合の有無について
 障害者虐待防止法には、使用者による虐待を定めている。仮に障害者への虐待のみが通報対象となる不整合が問題とされるなら、職場において障害者への虐待のみが通報義務にされることの不整合という議論さえも起こり得るわけである。その意味では、法改正しない理由と本法律の立て付けとの間で深刻な矛盾が生じている。
(2)既存法令と重複する部分の調整が必要かどうかについて
 通報義務及び通報者保護は、障害者虐待防止法に定められた特有の制度であり、既存の制度による対応が不可能となっている。精神保健福祉法における精神医療審査会制度は、申立人が本人と家族に限られており、通報者保護もなく、制度の趣旨自体が虐待防止を目的としているわけではない。また、仮に精神医療審査会の機能と一部オーバーラップしていたとしてもオーバーラップしても良いと整理することができるはずである。肝心なのは、各制度の窓口間の連携でなければならない。

2.精神科病院については精神保健福祉法で対応すべきとの答弁について
 厚生労働省が法改正に踏み切らない本当の理由は、①所轄省庁及び部局との調整に躊躇していることと、②日本精神科病院協会をはじめとする病院団体との調整への躊躇の2点によるところが大きい。
(1)行政内の所轄問題について
 精神科病院を所轄しているのは、精神・障害保健課である。障害福祉課としては、精神・障害保健課との調整に躊躇しているのかもしれないが、同じ障害保健福祉部であり法務省や文部科学省との調整と同じレベルで論じられるものではない。仮にその主張が通るなら「障害者虐待防止法の使用者による虐待は労働局ですべき」という議論さえも起こり得るわけで明らかに矛盾する。精神・障害保健課の事務をおこなう都道府県の部局は、多くの場合、障害福祉課の事務をおこなう都道府県の部局と同じ部局内にあり、混乱が少ないことが明らかである。そのため、精神科病院に限っては、法改正を困難せしめるほどの所轄問題が生じているとは言い難い。
(2)病院団体との調整について
 日本精神科病院協会は、非医療専門職から見たら身体拘束等の行動制限と虐待の判別が困難であり、精神医療審査会での対応が求められるものとしている。しかし、虐待は処遇ではない。身体拘束等の行動制限は、精神保健福祉法第37条第1項において厚生労働大臣が定めた基準に基づく処遇という位置づけを得ている。兵庫錦秀会神出病院の事件に代表されるような深刻な虐待は、同基準に基づく処遇には該当し得ない。同事件のような深刻な虐待が医療行為でないことは一目瞭然である。そのため、制度的、実際的に見ても医療者が立ち入らずとも外形的に見て判別が可能であることは自明と言わざるを得ない。

3.精神保健福祉法で対応することの問題点
 1~2の論点から精神科病院における虐待防止を精神保健福祉法で対応すべきとする政府の理由は、理由とはなり得ていないことが指摘できた。
 精神科病院における虐待は、精神保健福祉法体制という精神保健指定医の判断に依拠した閉鎖的な制度設計の帰結によるところが大きい。外部の目が届かない閉鎖的な環境では、医療者の集合的なモラルの低下を招きやすい。そのため、精神保健福祉法体制の外部からのチェックにこそ効果が期待される。

◆障害者虐待防止法附則第2条検討概要資料
https://jngmdp.net/wp-content/uploads/2021/09/障害者虐待防止法附則第2条検討概要資料.pdf

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく訪問系サービスの見直しの検討に関する要望書

2021年9月16日
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
企画課長    矢田貝 泰之 様
障害福祉課長  津曲  共和 様

初秋の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
第112回社会保障審議会障害者部会(以下、「障害者部会」とする。)の資料1「団体ヒアリングにおける主な御意見等」からは、訪問系サービスの内容や対象者等の見直しを求める意見が団体から多数出されたことがわかります。ところが、第112回障害者部会資料2「障害者総合支援法等の見直しについて (論点等)」では、「I 地域における障害者支援について」、「II 障害児支援について」、「III 障害者の就労支援について」、「IV 精神障害者に対する支援について」、「V その他」が障害者総合支援法見直しの検討事項とされており、居住系サービスや就労支援系サービスが明示的に検討事項とされたのに対して、訪問系サービスは明示的に検討事項として取り上げられていないことがわかります。
唯一、関連しそうな事項としては、「Ⅴ.その他」の部分の「その他、障害福祉サービス等のサービス内容や対象者等、高齢の障害者や意思疎通に関する支援の在り方など、既存の制度・運用面の見直しについてどう考えるか」があります。訪問系サービスは、障害者の地域生活の核心的な基盤となるものです。
つきましては、「Vその他」の部分では必ず下記について訪問系サービスの見直しの検討をしてくださいますようお願い申し上げます。

(1)育児支援
居宅介護における育児支援の周知徹底を図るための議論。

(2)通院等介助の自宅発着要件
通院等介助の自宅発着要件の削除、あるいは、勤務先から通院先までの移動にも使えるようにするための議論。

(3)重度訪問介護の利用
行動障害10点の撤廃あるいは緩和、支援区分4以下への適用拡大のための議論。また、入院中の重度訪問介護の利用について支援区分4及び5に適用拡大するための議論。

(4)通勤、勤務中等の利用
重度訪問介護の移動制限である「通年かつ長期にわたる外出」の削除、あるいは、通勤、勤務中、通学、修学中の利用を可能にしていくための議論。
以 上 

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく訪問系サービスの見直しの検討に関する要望書

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
 企画課長    矢田貝 泰之 様
 障害福祉課長  津曲  共和 様

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく訪問系サービスの見直しの検討に関する要望書

 初秋の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 第112回社会保障審議会障害者部会(以下、「障害者部会」とする。)の資料1「団体ヒアリングにおける主な御意見等」からは、訪問系サービスの内容や対象者等の見直しを求める意見が団体から多数出されたことがわかります。ところが、第112回障害者部会資料2「障害者総合支援法等の見直しについて (論点等)」では、「I 地域における障害者支援について」、「II 障害児支援について」、「III 障害者の就労支援について」、「IV 精神障害者に対する支援について」、「V その他」が障害者総合支援法見直しの検討事項とされており、居住系サービスや就労支援系サービスが明示的に検討事項とされたのに対して、訪問系サービスは明示的に検討事項として取り上げられていないことがわかります。
 唯一、関連しそうな事項としては、「Ⅴ.その他」の部分の「その他、障害福祉サービス等のサービス内容や対象者等、高齢の障害者や意思疎通に関する支援の在り方など、既存の制度・運用面の見直しについてどう考えるか」があります。訪問系サービスは、障害者の地域生活の核心的な基盤となるものです。
 つきましては、「Vその他」の部分では必ず下記について訪問系サービスの見直しの検討をしてくださいますようお願い申し上げます。

(1)育児支援
居宅介護における育児支援の周知徹底を図るための議論。

(2)通院等介助の自宅発着要件
通院等介助の自宅発着要件の削除、あるいは、勤務先から通院先までの移動にも使えるようにするための議論。

(3)重度訪問介護の利用
行動障害10点の撤廃あるいは緩和、支援区分4以下への適用拡大のための議論。また、入院中の重度訪問介護の利用について支援区分4及び5に適用拡大するための議論。

(4)通勤、勤務中等の利用
重度訪問介護の移動制限である「通年かつ長期にわたる外出」の削除、あるいは、通勤、勤務中、通学、修学中の利用を可能にしていくための議論。
以 上