【解説】精神保健福祉法改正と「にも包括」検討会報告書

1. はじめに
2021年3月18日、厚生労働省は、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会報告書――誰もが安心して自分らしく暮らすことができる地域共生社会の実現を目指して」を公表しました。この報告書には、同年2月15日に公表された「報告書(素案)」の段階には存在しなかった次の一文があります。

「なお、本報告書では精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の推進に関する事項を取りまとめたが、これまで精神保健医療福祉領域で課題とされている、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「精神保健福祉法」とする。)に規定する入院に関わる制度のあり方、患者の意思決定支援や患者の意思に基づいた退院後支援のあり方等の事項については、別途、検討が行われるべきである。」(p.3)

この一文が入った経緯を含めて、この間の精神保健福祉法改正の動向について報告したいと思います。

2. 背景となる津久井やまゆり園事件の再発防止策
 2016年7月、津久井やまゆり園事件が発生しました。事件後は、容疑者(現在は死刑囚)の措置入院歴に注目が集まり、再発防止策を契機とする措置入院運用や退院後支援が盛り込まれた精神保健福祉法改正法案が第193回通常国会に上程されるに至りました。全国「精神病」者集団や日本弁護士連合会が中心となって反対運動を形成したことで、約36時間の審議を経て継続審議となり、その後は廃案となりました。
 第196回通常国会では、精神保健福祉法改正法案が内容を変えずに上程される見込みであることがわかり、連日にわたって与党を中心とした集中ロビー活動をおこないました。その結果、政府は精神保健福祉法改正法案の上程を断念しました。これによって精神保健福祉法改正法案は、内容を変えなければ再上程できない状態になりました。
 しかし、措置入院の運用と退院後支援の整備にかかわる政策は止まりませんでした。2018年3月27日、厚生労働省によって「措置入院の運用に関するガイドライン」と「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」が公表されました。両ガイドラインは、あくまで津久井やまゆり園事件の再発防止を契機としたものでした。これらは、法改正をせずとも、ガイドラインで推し進めることができたのです。なお、一時は、運動内でガイドラインを法改正の先取りと見る動きもありましたが、法改正を狙っている/いないなど関係なく政策自体は進められるわけであり、法改正と絡めるのは適切な情勢分析に支障をもたらす点で見立て違いと言わざるを得ません。

3. にも包括と退院後支援
 2019年4月より両ガイドラインの実施に係わる素材づくりや実施状況のモニタリングは、「地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究」に検討の場が移されました。ここでは、主にグレーゾーンや措置入院の運用に関する協議のあり方が話し合われました。そのかんに診療報酬の改定で退院後支援の加算が新設され、2020年度からは精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進事業の補助金の対象になりました。退院後支援ガイドラインは、医療保護入院や任意入院を対象としているというのに、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進事業」(補助金事業)と診療報酬は措置入院者を対象としています。これは津久井やまゆり園事件の再発防止に影響を受けているからにほかなりません。
 また、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築支援事業」(委託事業)により作成された『精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築のための手引き(2019 年度版)』には、退院後支援のモデル事例として鳥取県の取り組みが紹介されています。「鳥取県措置入院解除後の支援体制に係るマニュアル」は、廃案になった精神保健福祉法改正法案が審議入りする前の 2017年3月に公布されたものであり、「再発防止策」という点が活字で明文化されています。内容は、法案審査の内容を反映した「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」とも大きく異なり治安的な印象を否めません。現在、精神障害にも対応した地域包括ケアの下で運用されている退院後支援は、全体的に治安的な方向に進んでいる印象をぬぐいきれません。

4. 精神保健福祉法改正を見込んだ「にも包括」の検討
 そのようなか、2020年3月、第1回目の精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会が開催されました。精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(通称、にも包括)は、精神保健福祉法改正法案が廃案になり、運用状況を見ながら出し直しを目指すと当時の厚生労働大臣が答弁してからの約3年間経過するなかで、①第4次障害者基本計画の一部、②第6期障害福祉計画及び第1期障害児福祉計画に基づく国の指針の一部を検討するという位置付けを得て出発したものでした。
 2021年2月の第8回検討会では、「報告書素案」の検討がおこなわれました。報告書素案は、精神保健福祉法第47条第3項の見直しを示唆するものでした。ちょうど、廃案になった精神保健福祉法改正案も第47条の地方公共団体による相談条項を改正して措置入院者退院後支援計画が書き込まれたものでした。報告書は、にも包括検討会にからめた事実上の廃案になった精神保健福祉法改正案を提言するものになりはしないかと危惧しました。法改正のポイントとしては、①保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領の見直し、② 精神保健福祉センター運営要領改正の見直し、③それに伴う精神保健福祉法47条4項の見直し(市町村の役割を明確化すること)、④具体的な事項はガイドラインを作成することとなっていました。第9回検討会の会議が開催されました。この会議をもって、表向きは報告書が確定されました。
 全国「精神病」者集団は、合計3回にわたって要望書を出し、さらには3月9日に開催された立憲民主党つながる本部障がい・難病PT役員会における厚生労働省との意見交換にも出席して修正意見を出しました。

5.成果と課題
 結果として修正意見のいくつかは、反映されました。そのひとつが、にも包括検討会報告書をもって中心的アクターが精神保健福祉法改正に合意したとみなされない効果を持つ冒頭の一文です。その他、利用者本人の決定なしに個人情報が保健所等に流されないように歯止めをかける文言をいれました。まだまだ、いつどのようなかたちでこの問題が息を吹き返すかわかりません。政府は、国会上程前から検討を続けています。法改正のときに国会に結集するだけではなく、こうした地道な取り組みにも一緒に取り組んでいけると嬉しいです。

【解説】病棟転換居住系施設を完全阻止しました

趣旨
 わたしたちの運動の力によって病棟転換型居住系施設の新設は完全に阻止することができました。ところが、最近になって、この歴史的勝利の事実が思いのほか知られていないことがわかってきました。そこで、この機に病棟転換型居住系施設の新設完全阻止がどのようなかたちで実現に至ったのか制度の解説をしたいと思います。

①指針の成立
 2013年、精神保健福祉法が改正され、同法第41条には厚生労働大臣による「精神障害者の障害の特性その他の心身の状態に応じた良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」条項が新設されました。この規定に基づき実際に作成された「精神障害者の障害の特性その他の心身の状態に応じた良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」には、いわゆる病棟転換型居住系施設のことが書き込まれました。

「精神病床の機能分化は段階的に行い、精神医療に係る人材及び財源を効率的に配分するとともに、精神障害者の地域移行を更に進める。その結果として、精神病床は減少する。また、こうした方向性を更に進めるため、地域の受け皿づくりの在り方や病床を転換することの可否を含む具体的な方策の在り方について、精神障害者の意向を踏まえつつ、保健・医療・福祉に携わる様々な関係者で検討する。」

 病棟転換型居住系施設については、同指針の検討段階から批判する声がありましたが、朝日新聞をはじめとする賛意を述べる意見もありました。半ば押し通されるかたちで病棟転換型居住系施設を定めた指針が成立してしまいました。

②地域移行支援型ホームの阻止
 病棟転換型居住系施設を定めた同指針の影響をうけて障害者総合支援法に基づく共同生活援助の特例として地域移行支援型ホームが新設されました。地域移行支援型ホームは、共同生活援助を病院敷地内において病床を施設に転換して設置することを特例で認めたものです。朝日新聞をはじめとするいくつかのアクターは、病棟転換型居住系施設を地域移行に資するとして支持しました。
 しかし、これについては、数の上で病床数を減らして、実際は病院と同じような場所にとめおく方策であると考えられたことから障害当事者を中心に大規模な反対運動がおこりました。精神障害のある仲間からの提起もあって、2014年6月26日に日比谷公園において集会が開催されました。当日は、3000人を超える参加者を得て反対の声を世に伝えることができました。

③各自治体の動き
 病棟転換型居住系施設の設置には、指定をおこなう都道府県・政令市の条例において病院敷地内に指定できる旨の規定を設けるための改正が必要となりました。いくつかの自治体では、病院敷地内に指定できる旨の改正がおこなわれましたが、反対運動によって条例改正を阻止できた自治体もありました。
 また、病棟転換型居住系施設の指定には、障害福祉計画の変更をしてからでないと実施できないということがありました。また、計画変更にあたっては、当該自治体が合議体の意見を聞く必要もあります。各位の取り組みとしては、合議体のなかで計画変更を認めないとする動きもありました。

④病棟転換型居住系施設の完全阻止
 2014年6月26日の日比谷公園集会のあとは、「病棟転換型居住系施設を考える会」が定期的な集まりをもって大衆運動を牽引してきました。また、地域移行支援型ホームをめぐっては、厚生労働省の検討会でも議論になり、様々な団体が繰り返し厚生労働省との交渉をもちました。全国「精神病」者集団も交渉を続けてきました。そうした影響もあって地域移行支援型ホームは、新規指定が2015年4月1日から2019年3月31日までとされ、かつ、その間に指定を受けたホームは当該指定日から6年間のみ運営が可能という制限が設けられました。あわせて、2018年度に事業の実施状況を踏まえて制度の在り方を検討することともされました。
 この一文の影響は大きく、結果として2019年3月31日まで新規指定が0件であったことと、2018年度に予定されていた制度の在り方の検討もおこなわれなかったことから、今後の指定はおこなわれないこととなり、完全に阻止することができました。

参考:障発0220第7号・平成27年2月20日通知
https://jngmdp.net/wp-content/uploads/2021/06/s0220no7.pdf

⑤病院敷地内施設の歴史
 病床を施設に転換する構想はかねてよりありました。障害者自立支援法が施行されて数年後の話、地域移行型ホームと退院支援施設の中に敷地内施設の累計が設けられ、それが最初の病棟転換型居住型施設でした。こちらについても反対運動が巻き起こりましたが、完全阻止とまではなりませんでした。そういう意味でも、今回の病棟転換型居住系施設の阻止は、これまでにない勝利であったと思います。

【解説】精神保健福祉法改正阻止と障害者虐待防止法改正の関係性

概要
 障害者虐待防止法附則第2条に基づく政府の検討の結果、障害者虐待防止法の改正は見送られ、精神科病院については精神保健福祉法を改正すべしとされました。しかし、精神保健福祉法には様々な問題が指摘されており、ここに虐待防止の仕組みを入れるべきではありません。少なくとも、精神保健福祉法体制の外部からのチェックが可能となる仕組みこそ求められており、その意味でも、あくまで障害者虐待防止法の改正こそが必要であると考えます。すでに大多数の障害者団体や衆議院及び参議院、地方公共団体は、障害者虐待防止法の改正を求めています。より大きな動きを作り出し、厚生労働省の提案に打ち勝てるように共に取り組んでください。

①障害者虐待防止法改正の遅延
 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(以下、「障害者虐待防止法」とする。)とは、養護者による虐待、社会福祉施設従事者等による虐待、そして使用者による虐待に対して地方公共団体への通報義務を定め、通報者の保護と支援をおこない、もって障害者の虐待を防止することを目的とした法律のことです。
 附則第2条には、「政府は、学校、保育所等、医療機関、官公署等における障害者に対する虐待の防止等の体制の在り方並びに障害者の安全の確認又は安全の確保を実効的に行うための方策、障害者を訪問して相談等を行う体制の充実強化その他の障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援、養護者に対する支援等のための制度について、この法律の施行後三年を目途として、児童虐待、高齢者虐待、配偶者からの暴力等の防止等に関する法制度全般の見直しの状況を踏まえ、この法律の施行状況等を勘案して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とあります。これまで通報義務は、擁護者、社会福祉施設従事者等、使用者だけを対象としていたのに対して、医療機関や教育機関その他への拡大の方向付けがなされたわけです。
 ところが、施行後3年どころか7年を経過しても障害者虐待防止法改正に向けた検討は開始されませんでした。検討が遅延した理由は、障害者虐待防止法が民主党政権下において議員立法で成立したという背景があり、厚生労働省が当時の政権与党である民主党と現政権の合意を待たずして検討を開始することが困難だったためという事情がありました。

②障害者虐待防止法改正ではなく精神保健福祉法改正の方向に至る
 2017年、民主党の衆議院議員及び参議院議員のそれぞれから意見が出され、厚生労働省としても、どういうかたちであれ早急に検討を開始するということで、2017年度から一般財団法人日本総合研究所による委託調査の枠組みで検討がおこなわれました。検討の結果、医療機関や教育機関など障害の有無に関係なく利用する機関においては、障害者のみが通報対象となる(障害のない人が通報義務の対象から外れる)ため法改正をおこなわず、既存の法律等で対応できることの周知徹底をしていくというまとめが示されました。

◆平成29年度 「障害者虐待事案の未然防止のための調査研究について」 調査研究事業報告書
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/syougaisyagyakutai180330.pdf

◆平成30年度障害者総合福祉推進事業「障害者虐待の未然防止等に関する研究事業」 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000521800.pdf

 2017年12月、日本障害者虐待防止学会が設立されました。同学会は、2020年に精神科病院において通報義務を設ける場合には精神保健福祉法第37条第1項を改正するべきとの立場を示した提言書を公表しました。提言書の公表以降は、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課も同様の立場を取るようになりました。但し、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課の立場は、法改正をするともしないとも言ってないので、現時点では必ずしも、法改正されようとしている段階ではないのだと思います。

③精神保健福祉法改正して虐待防止条項を入れるべきではない理由
 精神保健福祉法には、数々の問題が指摘されています。そのため、精神保健福祉法は将来的に廃止されるべきとする主張が一定の数で存在し、徐々に増えてきています。障害者権利条約の政府審査では、国連から出された事前質問事項のパラグラフ13に「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、特にその第29条、第33条及び第37条、並びに心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律を含め障害者の自由及び身体の安全を実際の障 害又は障害があると認められることに基づき制限する法律を撤廃すること」との内容があるなど、撤廃の方向に進んでいることがわかります。そのようななかにあって、精神保健福祉法改正を示唆することは、国際的な潮流に逆行するものでしかありません。障害者虐待防止法を改正すれば済むものを、わざわざ精神保健福祉法を改正して虐待防止機能を持たせるべきではありません。
 精神保健福祉法体制は、狭い村社会と化しており、病院によっては自浄作用が消滅しているところもあります。そのため、外部とのつながりが権利を擁護する上での重要なポイントとなります。障害者虐待防止法は、障害者行政であり精神科病院の許認可権等のある所轄から一定程度独立しています。このようなポジションからの支援は、空気感を変えていく上で期待できます。
 最後に、大多数の障害者団体や衆議院及び参議院、地方公共団体は、障害者虐待防止法の改正を求めています。日本障害フォーラム、日本弁護士連合会などの団体が障害者虐待防止法の改正を求めています。また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(参議院)では、「三 複合的な差別を含め、障害を理由とする差別の解消を総合的に推進するため、次期障害者基本計画の策定を通じて把握した課題について、障害者基本法及び障害者虐待防止法の見直しを含めて必要な対応を検討すること。」とあり、参議院も障害者虐待防止法改正を求めています。2020年3月に明らかになった神出病院の看護師による虐待事件は、神戸市議会で取り上げられ、障害者虐待防止法に精神科病院における虐待の通報義務を定めることを国に求める意見書を決議しています。
 以上から精神保健福祉法改正ではなく障害者虐待防止法改正こそ求める声が大きいことがわかると思います。

④障害者虐待防止法改正要求が精神保健福祉法体制の維持に当たるとの批判について
 この間に障害者虐待防止法改正要求が精神保健福祉法体制の維持に当たるとの批判がありました。しかし、障害者虐待防止法改正を要求することは、精神保健福祉法改正を阻止することにつながるわけであり、批判は当たらないと考えます。むしろ、障害者虐待防止法改正要求に疑義を呈することで、精神保健福祉法改正の方向が勢い付いてしまわないかと憂慮します。

⑤障害者虐待防止法に内在する課題
 障害者虐待防止法には、成年後見制度との連携にかかわる規定があります。とくに養護者による虐待から成年後見制度の首長申立てに至った場合、虐待からの保護と称して成年後見人の代理権によって施設に入れられてしまうケースが散見されます。その後、本人と養護者が何年にもわたってあわせてもらえずにいるといったことも起きています。これらは、障害者虐待防止法の問題というよりは、成年後見制度の問題です。成年後見制度は、かなり問題の多い制度なので、連携しない方がよいと思います。ですが、これとて障害者虐待防止法改正によって削除するなどの方策が考えられるので、障害者虐待防止法改正要求を通じて問題解決すべきものであると考えます。

基準病床算定式に係わる指標例に関する第一次意見書

持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究
研究代表者 竹島正さま

 日ごろより精神障害者の地域生活、施策にご尽力くださり心より敬意を表しております。
 さて、現在、基準病床算定式の見直しに向けた研究が進められています。今年度は指標例について検討がおこなわれることになっています。
 つきましては、下記の通り基準病床算定式に係わる指標例について意見を申し上げます。

1.方向性の明示
 精神障害者の地域生活に係わる政策は、障害者基本計画において障害者の権利に関する条約との関係を中心に据えた基本的な方向性が示された上で、医療提供体制の整備に係わる医療計画と地域生活の基盤整備等に係わる障害福祉計画を連動させながら進めていくような構造になっている。そのため、指標例は医療計画に基づくものではあるが、精神医療という観点だけにとどまるべきではなく、国際人権法や障害者福祉など多角的に捉えた精神障害者の地域生活に係わるアウトカム指標を設定することが求められる。参考になるのは、障害者の権利に関する条約第14条及び第15条、そして第25条である。
 指標例には、地方公共団体が医療計画を作成する上での考え方や理念にかかわる“方向性”が明示されるべきである。具体的には、「障害者の権利に関する条約の趣旨を踏まえた運用をすべきであること。」と「社会モデルの観点から障害を捉えること。」の2点である。指標例への記載方法については、医療計画の前文に“方向性”を位置づけてプロセス指標において障害者の権利に関する条約の趣旨という観点からの検討をおこなったか否かを評価するという方法と、アウトカム指標の中に長期目標として示すことの2通りが考えられる。全国「精神病」者集団としては、前者を強く求めたいところである。

2.指標に入れるべきではない事項
(1)退院後支援
 指標例には、退院後支援を入れるべきではないと考える。理由は、退院後支援が相模原市における障害者施設での連絡殺傷事件の再発防止策を契機として「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン(平成30年3月27日・障発0327第16号)」が策定された経緯があり、精神障害と犯罪を結び付けるような差別や偏見を助長する恐れがあるためである。また、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」報告書(以下、「にも包括検討会報告書」とする。)において退院後支援は、今後の検討事項と位置付けられている。にも包括検討会報告書において態度が先送りにされたことからも、指標例に入れることは馴染まないと考える。
(2)重度かつ慢性
 指標例には、重度かつ慢性を入れるべきではないと考える。重度かつ慢性を指標にすることは、長期入院の原因を機能障害に帰責する考え方を前提にすることになり、治療して症状が安定した上でさらに地域の資源がなければ退院できないという認識の下で政策設計されることを帰結する。精神保健医療福祉の改革ビジョンの考え方とも異なるものであり、施策の連続性の観点から問題がある。
 地域生活の基盤整備を進める政策が存在する一方で、重度かつ慢性を入院需要と位置付けて病床整備する政策が並行しておこなわれるということは、それぞれの施策における地域生活観にぶれが生じていることを意味している。基本的には、たとえ精神疾患が重度かつ慢性であったとしても地域生活は支援があれば可能であるという考え方に立脚すべきである。
 加えて、同様の意味をもつ別の用語を用いても、機能障害に帰責していく考え方については指標例に入れるべきではない。
(3)治療高度化(修正型電気痙攣療法及び治療抵抗性抗精神病薬の普及)
 指標例には、治療高度化影響値に係わる修正型電気痙攣療法及び治療抵抗性抗精神病薬の普及を入れるべきではないと考える。精神疾患の治療は個別性が高く、特定の治療法を国として普及していくに適うだけの蓋然性は示し得ない。修正型電気痙攣療法及び治療抵抗性抗精神病薬は、侵襲性が高く不安の声も多いことから政策による普及には馴染まない。
(4)非自発的入院や危機介入的訪問
 指標例には、非自発的入院や危機介入的訪問といった強制的な手段を良いことのように評価する尺度を入れるべきではないと考える。強制的な手段は、現場における判断の結果という側面もあるだろうが、やはり政策という観点からは強制的な手段を使わない方法こそ目指されるべきである。
措置入院については、「措置入院の運用に関するガイドライン(障発0327第15号・平成30年3月27日)」に基づく運用の実施状況などの関心が高まっているが、これについても相模原市における障害者施設での連絡殺傷事件の再発防止策を契機として策定された経緯があり、精神障害と犯罪を結び付けるような差別や偏見を助長する恐れがあるため指標に入れるべきではない。

3.指標例に入れるべき事項
(1)行動制限のゼロ化
 指標例には、身体拘束をはじめとする行動制限のゼロ化に係わるものを入れるべきと考える。アウトカム指標は630調査における行動制限の件数、アウトプット指標は協力する病院の数と割合、ストラクチャー指標は行動制限最小化に係わる都道府県の推進体制の有無とされるべきである。
(2)ピアサポート及び当事者参画
 指標例には、ピアサポート及び当事者参画に係わるものを入れるべきと考える。指標は、次のようなかたちで設定されるべきである。
 ストラクチャー指標には、都道府県医療計画及び都道府県障害福祉計画の策定過程における当事者団体に所属する者及び当事者団体の活動に準じた活動をおこなう個人の参画の有無、行動制限最小化に係わる政策の推進体制への当事者団体に所属する者及び当事者団体の活動に準じた活動をおこなう個人の参画の有無が必要である。参画する構成員は、原則として当事者団体に所属する者とし、適当な者が選定できないなど例外的な場合に限り当事者団体の活動に準じた活動をおこなう個人の参画を認めるべきである。当事者団体に所属する者の参画を原則とすべき理由は、障害者の権利に関する条約第4条第3条の趣旨を鑑みたことと、団体こそ精神障害者のアイデンティティを代表する立場が期待されるためである。
 にも包括検討会報告書の体制については、ストラクチャー指標として、にも包括の協議の場におけるピアサポーターとその他の当事者それぞれの参画の有無が必要であり、プロセス指標にはピアサポーター研修の実施の有無と受講対象者層の広がりを入れてもよいと考える。
 にも包括検討会報告書を踏襲するとしたら、ピアサポーターとその他の当事者がそれぞれ参加したことがわかるように、それぞれの定義を明確化する必要性が生じる。ピアサポーターは、多様なピアサポート活動があるという前提を踏まえつつも、国の定義に従い「事業所等に雇用された精神障害者」とするほかないだろう。定義分けについては、地方公共団体の事務負担を考慮して、委員の肩書きが団体名であるか、事業所名であるかで選別することとし、団体名は当事者、事業所名はピアサポーター、市民委員などの公募枠による当事者の参加は原則として当事者参加にカウントしない(但し、地方公共団体によって当事者団体の活動に準じた活動をおこなう個人と判断された者に限っては当事者としてカウントすることができる。)といったかたちで整理にすることが考えられる。ピアサポート研修は、身体障害者や難病者など精神医療の範囲を超えた受講者が想定されるため医療計画の指標に位置づけることは馴染まないようにも思われるが、受講者層を評価する仕組みに位置付けられれば、まったく棄却しなくてもよいのではないかと思われる。具体的には、事業所に雇われる精神障害者、地域移行、当事者グループなど、にも包括検討会報告書に明文化されたアクターを列挙し、選択する方式が考えられる。
(3)入院医療
 指標例には、長期入院について評価するため、1年以上、半年以上、3か月以上の在院について入れるべきと考える。その他、1年以上入院者の内訳として2年以上、5年以上、10年以上、20年以上、50年以上をアウトプット指標に入れるべきと考える。
(4)通院医療
 指標例には、訪問診療や往診の実績について入れるべきと考える。
(5)医療観察法等
 医療観察法入院医療機関における在院期間は、長期化している問題を鑑みてアウトプット指標において実態把握できる仕組みがあった方がよい。

7.18 医療観察法を廃止しよう!全国集会(ZOOM 参加あり)

■日時:7月18日(日)13:30~16:30(13:00 開場)
■場所:中野区産業振興センター地下1階 多目的ホール
   (東京都中野区中野 2-13-14 TEL:03-3380-6946)
■講演:精神医療国家賠償請求訴訟の現段階と課題
    ~ 第一次提訴の意味と位置 ~
■講師:古屋 龍太さん(精神医療国家賠償請求訴訟研究会副代表・事務局長、
    日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科教授)
 ・講演後には質疑応答の時間があります。
 ・その他、特別報告、リレートークなどを予定
■交通:JR 中央線・総武線/地下鉄東西線中野駅下車(南口)徒歩5分
■電話による問い合わせ:090-6122-7700(石橋)
■参加費: 500円
●関東地方以外から参加の精神障害当事者には5000円の交通費補助があります

■共同呼びかけ:心神喪失者等医療観察法をなくす会/国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会認定NPO大阪精神医療人権センター
        /心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな!ネットワーク
■連絡先:心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな!ネットワーク
    (東京都板橋区板橋2-44-10-203 北部労働者法律センター気付け FAX:03-3961-0212)

 医療観察法における入院期間は、ガイドライン基準18か月のクリアは36%、基準の3倍超え20%、6年以上の人が4%、全国の平均値「30か月程度」(2019年)と長期化が進行しています。入院病床数はいま833床で当初の目標をおおきく達成していますが、21年度予算では「引き続き指定入院医療機関を整備」です。北大病院の医療観察法入院病棟建設が札幌刑務所敷地内で進んでいます。施行後の実態は医療観察法が保安処分法であることを実証するものになっています。では一般の精神医療はどうなっているのでしょうか。今回は精神医療国家賠償請求訴訟に取り組んでおられる古屋龍太さんをお招きします。ご参加を訴えます。

ZOOMでの集会参加をご希望の方は、7月15日までに
kansatuhou20@gmail.com 宛、下記の事項を記載して申し込んでください。
1.名前(必須)
2.連絡先メールドレス(必須):ZOOM 集会参加に必要な情報をお知らせします。
3.電話番号 ZOOM 関係の調整用電話番号4.所属(あれば)
★ ZOOM 参加に慣れていない方は、当日、30 分前くらいからアクセスして接続を確認していただけます。

ひきこもり支援を目的として掲げる民間事業の利用をめぐる消費者トラブルに関する意見書

立憲民主党消費者問題特別部会
部 会 長  宮沢由佳 様
副部会長  柚木道義 様

 日ごろより精神障害者の地域生活、施策にご尽力くださり心より敬意を表しております。
 さて、引きこもり支援を自称する悪質業者の被害が社会問題になっています。全国「精神病」者集団は、2011年から現在まで同業者らによる被害の相談を受け付けてきました(別紙参照)。同業者らは、通常の民事訴訟手続きで救済が困難になるような方法をとって巧みに誘拐、監禁を実行しています。
 実効性のある救済方法が不可欠であり、下記のとおり要望します。

1 同業者に対して消費者庁から指導及び行政処分をするとともに公表してください。
2 被害の挙証方法を同業者側に設定した特別な救済手続きを設けて対応してください。
3 同業者の実態把握をおこなってください。

5/14 公明党障がい者福祉委員会 手帳制度とマイナンバーに連結について

◆5/14 公明党障がい者福祉委員会 手帳制度とマイナンバーに連結について
https://jngmdp.net/wp-content/uploads/2021/05/20210514.pdf

以下、質問を出しました。

デジタル化は、便利である反面、ひとつ間違えば怖い側面があるとも指摘されています。手帳情報とマイナンバー、その他の情報を紐付けていくことで、精神障害者に対する監視を招かないか、情報化社会を前に体調悪化を招く仲間が増えまいかと、深刻に憂慮しています。

一 一般的なことについての質問です。手帳に付随するサービス等を受けるためには、手帳情報とマイナンバーを関連付ける必要性がありますか。マイナンバーを使わずとも、手帳情報のみを電子化してサービスを受けられるようにできるのではないか、ご回答をお願いします。

二 手帳情報の民間利用についてです。行政の管理のはなしではない、という点を強調しておきます。マイナンバーに紐付けされた手帳情報は、マイナポータルを通じて民間利用が可能となっています。アプリの利用時には、利用規約のようなものに同意をすることが一般的です。利用規約の中には、当該利用規約を予告なく、いつでも変更することに同意を求める規定が設けられていることが多いです。しかし、予告なく利用規約が変更されることによって、不本意なかたちで手帳情報が使われないとも限らないわけです。こうした事態に歯止めをかける仕組みはあるのか、ご回答をお願いします。

三 関連して、マイナンバーと手帳情報が紐付けされた状態で更に電子端末のIPアドレスがわかれば、ネット上の観覧履歴等をロボットが手帳情報と関連付けて類型化できるようになります。実際にするかどうかというより、できてしまうということが重要になるわけです。そうすると、手帳と紐付けした情報群が成立したりなどするわけですが、我々の手帳情報がどのように使われているのかをすべて知ることはできるのか。また、手帳情報を事後的に削除してもらうことはできるのか、ご回答をお願いします。

【院内集会】神出病院事件を繰り返さないーー虐待事件の政策的解決に向けて

日時:2021年5月11日 11:30〜13:00
(11:00開場・ロビーにて入館証をお配りします。)
会場:衆議院第一議員会館・多目的ホール
(東京都千代田区永田町2-2-1)
※オンライン有り(事前申込み必須。視聴のみとなります。)

事務局:神奈川精神医療人権センター
TEL: 045-353-5711 E-mail: kp.kanagawapeer@gmail.com

チラシです。

定員:95名

趣旨:
神出病院での虐待事件が明らかになってから1年が経つこところです。未だに院内の虐待に関する一連の検証と再発防止が不確かな状況に、医療不信が高まるばかりです。残念ながら、このような虐待事件は枚挙に暇がない状況が続いていますが、精神科病院での虐待問題を防ぐための道筋はいまだに見えてきません。この度、課題意識を同じくする全国のネットワークの有志により、政策的な解決を見据えた①障害者虐待防止法改正、②指導監督制度見直し、③権利擁護者(アドボケイト)制度化、以上の3点を求める院内集会を開催します。

基調報告
・長谷川利夫(杏林大学)/桐原尚之(全国「精神病」者集団)
特別発言
・吉田明彦(兵庫県精神医療人権センター)
・小山聡子(日本女子大学)
・窪田澄夫(日本精神科看護協会)
・山本深雪(大阪精神医療人権センター)

共催:認定NPO法人大阪精神医療人権センター、兵庫県精神医療人権センター、神奈川精神医療人権センター、東京精神医療人権センター、埼玉県精神医療人権センター、認定NPO法人DPI日本会議、全国自立生活センター協議会、全国「精神病」者集団、大阪精神障害者連絡会、NPO法人こーらるたいとう、NPO法人横浜市精神障害者地域生活支援連合会、精神障害当事者会ポルケ

後援:日本障害フォーラム、NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会、一般社団法人日本精神科看護協会、NPO法人全国精神障害者団体連合会、認定NPO法人日本障害者協議会、日本弁護士連合会、公益社団法人日本精神保健福祉士協会、NPO法人地域精神保健福祉機構、公益社団法人兵庫県精神保健福祉家族会連合会、神戸市精神障害者家族連合会

新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等について(令和3年4月23日発表)
東京都知事は、社会生活の維持に必要なものを除き、原則として無観客等で開催することを要請(法第24条第9項)しております。本集会は、必要性の高いものとの認識のもと積極的にリモートを取り入れ、感染防止策を徹底して開催します。

COVID-19と脱施設化に関する報告

国連障害者権利委員会の危機的状況と脱施設化のガイドライン作りに関する意見をまとめました。

https://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRPD/InformativeNoteStakeholders_AsiaPacificConsultation.docx

COVID-19と脱施設化に関する報告(日本語)

 全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者の個人及び団体で構成される全国組織である。オフィスは、日本の東京都にあり、アドボカシー活動や政策提言活動に取り組んでいる。
私たちは、第一に日本の精神医療施設の実情を報告する。日本が保有する病床は、約168万床である。そのうち精神病床は、約34万床である。精神病床の約9割は民間が保有している。民間病院の約8割は単科精神病院である(※厚生統計要覧)。多くの単科精神病院は、人里離れた山奥に建設されている。精神科病院には、50年以上の長期在院者が約1800人いるとの指摘がある(※2018年8月21日・毎日新聞)。
 私たちは、第二に日本におけるCOVID-19の問題を報告する。日本の精神医療施設では、COVID-19の感染防止策の名目で、面会や外出を制限する措置が講じられている。この措置は、法令に基づくものではなく、施設の独自の取り組みである。入院者は、施設外部や社会とのかかわりがなくなって孤立している。また、面会が外出制限は、施設外部の支援者にもアクセスできないため地域移行が停滞している。
それでも、日本の精神医療施設では、クラスターが頻繁に発生している。私たちの協力者が調べた限りでは、精神医療施設での感染率が市中感染の約4倍であり、死亡率は約4倍であった。入院している精神障害者は、外出できないため施設内にCOVID-19を持ち込むことはない。むしろ、入院している精神障害者は、閉じ込められて、逃げられないようにされて、持ち込まれたCOVID-19に感染させられている。
COVID-19が精神医療施設内でクラスターになりやすい理由は、日本の医療施設がインクルーシブなものではないからである。日本の医療制度は、精神障害者だけを隔絶したものであるため、他科の連携が著しく困難である。精神医療施設では、感染症の対応がほとんどできない。しかし、普通病院はCOVID-19に感染した精神障害者に対して、差別をして入院させずに精神医療施設に送り込んでいる。そのため、精神医療施設ではクラスターが後を絶たないのである。
 日本政府は、精神障害者へのワクチン優先接種という私たちの身体の侵襲を解決策として選び、精神医療施設の解体を先送りにすることを決めた。しかし、私たちは、COVID-19の脅威から精神障害者を解放するためにも精神医療施設の解体が必然であると考えている。

Report on COVID-19 and deinstitutionalization in Japan

Japan National Group of Mentally Disabled People was established in 1974, and is a national organization composed of individuals and organizations of people with psychosocial disabilities. We have an office in Tokyo, Japan, and are advocating our human rights, making policy recommendations, and so on.
Firstly, we would report situations of mental health system in Japan. There are about 1,680,000 beds, and about 340,000 of them are psychiatric beds. In addition, about 90 percent of psychiatric beds are in private psychiatric hospitals, and about 80 percent of private hospitals are single department hospitals . Most of the single department psychiatric hospitals are placed in areas isolated from the haunts of men. It is pointed out that about 18,000 inpatients have been hospitalized more than 50 years in psychiatric hospitals .
Next, we would report problems related to COVID-19 in Japan. Restrictions on visitation and going out have been introduced in psychiatric institutions in the name of preventive measures from infection of COVID-19. These preventive measures are not based on laws or ordinances but independent actions of the institutions. The inpatients of psychiatric institutions are disconnected from outside of the institutions and society, and isolated. In addition, these measures hinder access to supports out of the institutions, and make their transition to community slow down.
Nevertheless of these preventive measures, clusters of COVID-19 have been frequently occurring in psychiatric institutions. According to our supporter’s survey, the infection rate is four times higher and the death rate is four times higher than that of out of the institutions. Inpatients with psychosocial disabilities do not bring the virus into the institutions, because they cannot go out of the institutions. Rather, they are locked up, prevented from escaping, and infected with the virus brought from the outside.
The reason why the clusters of COVID-19 easily occur in the psychiatric institutions is that medical institutions in Japan are not inclusive. The medical systems prevent cooperation between psychiatric department and other departments, and isolate people with psychosocial disabilities. It is very difficult in psychiatric institutions to treat infection diseases. General hospitals, however, discriminate people with psychosocial disabilities who are infected with COVID-19, reject them from hospitalization and transfer them to psychiatric institutions. Therefore, the disease clusters endlessly occur in psychiatric institutions.
Japanese government decided to prioritize people with psychosocial disabilities on COVID-19 vaccination. This can be interpreted as that they choose invasion to our body instead of dissolution of psychiatric institutions as the disease preventive measure. We believe that dissolution of the psychiatric institutions is essential to release people with psychosocial disabilities from the thread to COVID-19.

性犯罪の見直しに関する声明

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
2017年に成立した刑法改正の積み残し課題として法附則第9条に基づき性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための刑事法に関する施策の在り方について検討が行なわれています。とくに、強制性交等罪の要件である「暴行・脅迫」の見直し、同意のない性交を処罰する不同意性交罪の創設、性行同意年齢の引き上げなどに関心が向けられています。
 しかし、強制性行等罪及び強制わいせつ罪は、被疑者が心神喪失等で不起訴や無罪になった場合には未遂も含めて医療観察法の対象となり得える刑罰累計です。医療観察法は、表向きは医療提供と社会復帰のための制度とされているため、冤罪であっても関係なく処遇決定を下し得ることになります。刑罰が可能な範囲と医療観察法対象者の範囲は、独立変数と従属変数の関係にあります。刑罰の対象範囲が広がれば、自ずと医療観察法対象者の範囲も広がるため、私たち精神障害者の生活に直接かかわってくることになります。
第一に、暴行・脅迫要件の見直し及び抗拒不能要件の見直しについてです。日本の刑法における強制性行等罪及び準強制性行等罪の法定刑は諸外国と比較しても極めて重い罰が規定されています。諸外国において暴行・脅迫要件のない強姦罪は存在しますが、その場合の法定刑は平均して4年以下の懲役です。法定刑の引き下げもなく、暴行・脅迫要件のみを撤廃させるでは重罰化でしかありません。諸外国並みに法定刑を引き下げるのであれば、暴行・脅迫要件と抗拒不能要件の撤廃に反対しませんが、法定刑の引き下げもなく、同要件のみを撤廃させるようなものであれば反対せざるを得ません。
 第二に、性行同意年齢の引き上げについてです。日本の性行同意年齢は、諸外国と比較して、やや低めに設定されているとの指摘があります。しかし、性行同意年齢を14歳以上に設定している全ての国が性行同意年齢以下の児童に対する性行為を直ちに刑法の強制性行等罪にしているわけではありません。日本の現行法で14歳以上の児童に対する性行為は、児童福祉法や淫行条例のなかに処罰規定があり、程度の差があれども法益自体は保護されています。他方で法律に基づく未成年者の定義は18歳に引き下げられ、18歳以上で選挙権が付与されるようになった中で性行同意年齢は引き上げるでは、一貫性を欠いています。全体を通じて性行同意年齢の引き上げにかかわる立法事実は不明と言わざるを得ません。立法事実が曖昧な提言によって医療観察法対象者の範囲拡大を帰結させることは看過できません。よって性行同意年齢の引き上げには反対します。
 第三に、不同意性行罪についてです。まず、この場合の同意の意味するところが明らかではないため恣意的に運用される可能性が否めません。とくに精神障害者は、同意と能力をめぐるさまざまな場面を経験しており、表示行為としての同意があれば良いという安直な考えを支持するわけにはいきません。形式面の同意に還元することが性暴力の防止につながると考えません。
 諸外国と同様程度に法定刑の引き下げが議論されるべきところ、暴行・脅迫要件撤廃及び抗拒不能要件撤廃、性行同意年齢の引き下げばかりが議論されるのは、単なる厳罰化であると言わざるを得ません。ここ数年、報道がワイドショーでの視聴率の取るために、あからさまに恐怖を煽ったり、犯人の残虐性を強調したり、被害者の悲しみや怒りを情緒的に伝えるなどして、事実解明重視型の報道を怠った結果、実際のデータとはかけ離れた感覚での社会不安が高まる体感治安やモラルパニックとよばれる問題が起こってきました。
 被害者の気持ちに寄り添うことは必要ですが、重罰化が問題解決の糸口であるかのような印象をもたせていく被害者感情論を利用した重罰化の風潮は支持できません。刑法改正の検討過程では、精神障害者の声を聞いた上で国民的議論をしていく必要があると考えます。

2021年4月30日