意思無能力法理明文化反対の覚書(第一版)

意思無能力法理明文化反対の覚書(第一版)

 意思無能力法理明文化反対論者の一部には、意思を前提に構成される民法の在り様を批判せずに意思無能力法理だけを取り出して批判し、もって障害者権利条約第12条第2項の履行に不可欠とする立場も存在するようだが、全国「精神病」者集団は、こうした立場をとらない。第一に全国「精神病」者集団は、意思を前提に構成される民法それ自体が障害者権利条約第12条第1項に違反するという立場をとる。同条約第12条第2項は、障害を理由とした法的能力の不平等の禁止を求めているが、意思能力はすなわち法的能力であるといい難い部分がある。このことは、障害者権利委員会がMental capacityとlegal capacityを概念上区別していることからも自明である。だが、意思無能力は、障害者が他の者と平等に法的能力を行使するための前提条件に係る問題ではあり、法的能力行使の観点からも看過できない問題といえる。そのため、全国「精神病」者集団は、民法に意思無能力法理が採用された背景には民法が前提とする人間像に障害者が含みこまれていないために引き起こされる問題への帳尻合わせがあることを認め、このことを「障害者が全ての場所において法の前で人として認められる権利」の侵害であると捉えて批判したい。
 全国「精神病」者集団の主張は、民法から意思無能力法理だけを取り除けばいいとする考え方とは一線を画するものであり、こうした考え方に対しては、単に表示主義を帰結するものとして批判する立場をとる。また、法律上に意思無能力者という位置を設けることに反対とする立場も存在するが、意思を前提に構成される民法の前では、結局のところ表示主義か意思主義の二者択一を迫られることになり、意思主義の立場をとるならば仮に意思無能力者という名称を使わないとしても、別の名称によって契約の有効性を判断せざるを得なくなる。現行民法では意思以外で有効性を判断するとなると動機や表示行為以外にないため、詰まる所、なんど呼称を言い換えたところで現行民法のドグマに収斂していくことになるのである。その意味で、意思無能力者の存在を問題とする主張は表面的であり、意思無能力者あるいはそれに代わる同じものを生じさせるおおもとの民法のあり方にこそ批判を向けなければならないだろう。
   2016年5月10日

私たちは民法改正による意思無能力法理の明文化に反対します

私たちは民法改正による意思無能力法理の明文化に反対します

 私たち全国「精神病」者集団は1974年に結成した精神障害者の個人及び団体で構成する全国組織です。私たち精神障害者は、たびたび疾病などの機能障害を根拠として社会から判断能力がないと見なされ、自分で自分のことを決めることが許されず、他の権限を有する人(医師や家族、成年後見人等)による代理決定を強いられてきました。このことは、私たちにとって非常に屈辱的な経験であったため、国際レベルの運動を展開して改善を訴えました。その結果、障害者権利条約が国連において採択され、機能障害を理由として自分で自分のことを決める権利を侵害することが人権侵害であることが確認されました。
 さて、法務省は法制審議会民法(債権関連)部会において民法改正に向けた議論を始め、2015年2月10日には、「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」が公表されました。当該要綱案には、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」として意思能力を明文化することが提言されています。明文化の根拠として「高齢化社会の進展に伴い、判断能力が減退した高齢者をめぐる財産取引上のトラブルが増加し成年後見制度等によって一定の対応を図ることができるが、判断能力の低下した高齢者のすべてにこれらの制度の利用を求めるのは非現実的である。そのため、判断能力が低下した高齢者をめぐる財産取引上のトラブルに対応するための規律として、意思能力に関する規律の重要性が高まっている。そこで、これを明文で規定するのが相当である」とされています(註1)。
成年後見制度の立法事実には意思無能力による法律行為の無効が取引社会の安全を脅かすことが第一義的にあげられています。それ以外の事理弁識能力のない人の財産保護といった立法趣旨は、本来なら民法の意思能力に帰属するものです。すると意思無能力を明文化することは、取引社会の安全という成年後見制度の立法事実を明示的に採用することを意味し、成年後見制度の利用拡大・促進へと政策を方向づけることになります。成年後見制度の利用促進は、国連障害者権利委員会(註2)や障害当事者団体(註3)を中心に障害者権利条約第12条の観点から問題であるとされており、また、第190会通常国会において審議された成年後見制度利用促進法案及び家事手続法改正案には、障害者団体や新聞各社から多数の反対意見が上がり、付帯決議の可決に至っています。意思無能力法理の明文化は、既に多くの問題を指摘されている成年後見制度に対して、なんら見直すことなく促進の方向づけを与えるものであり、納得できるものではありません。よって私たち全国「精神病」者集団は、「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」の意思無能力法理の明文化に全面的に反対するとともに当該箇所の削除を求めます。

註 1 法務省『法案要綱たたき台(7)』法制審部会資料73‐A、2014年1月14日
2 国連障害者権利委員会『一般的意見第1号』2014年3月31日-4月11日、para,11, 12, 13
3 2009年9月、日本障害フォーラムと日本政府の意見交換会

2016年5月10日

被災医療機関と患者の実態把握に関する質問書

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長田原克志様

 このたび、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課は、「地震により被災した精神疾患者の科医療機関へ受け入れついて」と称する事務連絡を公益社団法人日本精神科病院協会、独立行政法人国立病院機構、公益社団法人全国自治体病院協議会の三団体にだし、災害派遣精神医療チームによる被災した精神医療機関の患者の転院調整をしているため、転院先として入院患者の受け入れを促す文書を出しました。
 私たちは、東日本大震災において独自で実態把握に努めた結果、被災医療機関からの転院後の処遇に問題があるケース、医学的な理由ではなく被災を理由とした新規入院をするケース(住む場所や薬がないために入院するケース及び被災した家の家族に精神障害者がいると親戚の家に避難させてもらえないからという理由で入院するケースなど)を確認しました。また、被災が原因で入院した人が地域移行できないといった状態を多数確認しており、こうした事態はもっとも避けられなければならない事態であると考えております。
 現状の問題を確認していくうえでも実態の把握が不可欠と考えますので、次の実数、質問についてお答えください。
一、被災医療機関の名称と病床数
二、被災医療機関からの患者の受け入れ実数及び受け入れ先医療機関名
三、被災者の新規入院の実数
四、受入れ後の転帰などの実数把握をしていく予定はあるか
五、受入れ被災者地域移行は視野に入れているのか
六、被災者の受け入れにより定員を超過した精神科病院の入院者数の把握はするのか
2016年4月27日

震災対応に関する意見書

公益社団法人日本精神科病院協会 御中
独立行政法人国立病院機構 御中
公益社団法人全国自治体病院協議会 御中

 このたび、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課は、「地震により被災した精神疾患者の科医療機関へ受け入れついて」と称する事務連絡を公益社団法人日本精神科病院協会、独立行政法人国立病院機構、公益社団法人全国自治体病院協議会の三団体にだし、災害派遣精神医療チームによる被災した精神医療機関の患者の転院調整をしているため、転院先として入院患者の受け入れを促す文書を出しました。
 私達は、次の箇条書きを深刻に憂慮しているため、十分に考慮していただきたく意見を申し上げます。

一、社団法人日本精神神経学会は平成23年4月20日に「東日本大震災被災地における調査・研究に関する緊急声明文」を出しました。この声明文は他科の医師から「各都道府県から派遣されて支援に来た『こころのケア』チームと、各大学の精神科チームが別個に行動していて合同ミーティングの場を提供しても合意が得られず困惑している」、「功名心を抑えない非人道的な調査を行っている」、「精神科チームのメンバーが、『自分たちは自己完結型のチームだから、他のチームとは交流しない』と明言している」などの問題が提起され至ったものです。このたびの震災においても他科の医師団体と協調の上、前回のような被災者・患者の不利益になるような言動を慎まれることを申し上げます。

二、2011年3月15日、転院者の受け入れのため、定員を超えて患者を入院させることができるとする通達(厚生労働省保険局医療課長・老健局老人保健課長通知「平成23年東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の地震の被災に伴う保険診療関係等の取扱いについて」)が出されました。ところで治療の必要性のない精神障害者の長期入院(社会的入院)が問題とされて久しいですが、こうした問題の解決を一方でしていく必要があるにもかかわらず、被災医療機関から受入医療機関へと右から左に患者を転院させていることが疑
われます。よって、病床の計画的な削減を含む、長期入院問題の解消に向けた取り組みと表裏一体的に取り組まれることを意見申し上げます。

三、私達は、東日本大震災の際に精神科病院おいて被災医療機関からの転院後の処遇に問題があるケース、医学的な理由ではなく被災を理由とした新規入院をするケース(住む場所や薬がないために入院するケース及び被災した家の家族に精神障害者がいると親戚の家に避難させてもらえないからという理由で入院するケースなど)を確認しています。とりわけて被災が原因で入院した人が地域移行できないといった状態を多数確認しており、こうした事態はもっとも避けられなければならない事態であると考えます。

四、「厚生労働大臣の定める入院患者数基準及び医師等員並に入院基本料の算定方法について」(平成18年3月23日保医発第0323003号)では、被災者を受け入れた場合の定員超過厳格措置の適応除外規定があり、この機に報酬のために精神障害者が不要な入院を強いられるのではないかと懸念します。
 2016年4月27日

成年後見制度利用促進法案反対の報告

成年後見制度利用促進法案反対の報告

 今国会で上程される見込みの成年後見制度利用促進法案及び家事手続法改正(以下、成年後見制度利用促進法案)は、①後見人の医療同意が可能になる、②意思決定支援への配慮、③信書等の送付を後見人に直接できるようにする、などの改正が見込まれています。
 この法案の最大の問題点は、障害者権利条約違反などすでに問題が指摘されている成年後見制度をわざわざ促進しようとする点と、それから成年後見人等に対して医療同意の代諾をできるようにさせたことだと思います。
 成年後見制度とは、精神障害等の理由で判断能力がないと見なされた人の契約行為などを有効と見なさずに、成年後見人等の法定代理人が代わりに決定したものを有効と見なす制度です。この制度は、障害を理由に契約行為等を制限してはならないとする障害者権利条約第12条に違反するとの指摘があります。また、従来の成年後見制度においては、成年後見人の業務の範囲に医療同意は含まれていませんでしたが、この先、成年後見人等が医療同意を代諾できるようになれば、それは完全に強制医療ということになります。これまで精神保健福祉法は、強制入院を規定していましたが、強制医療(侵襲行為それ自体を同意なくする手続き)までは規定しているとは言えませんでした。たとえば、無理やり投薬させるとか、無理やり電気ショックをするという手続き自体を定めてはいなかったということです。しかし、成年後見人等が代諾した場合は、精神障害者本人が医療同意したことと同じ扱いになるわけですから、いかなる治療介入をも可能としていきます。もちろん、これまでも半ば強引に、強制医療というべき投薬治療や電気ショックが運用でされてきたわけですが、現在では、これに対して少なくとも裁判において不法行為を主張する余地があるわけです。例えば、ロボトミー裁判闘争は、その先駆的な闘争でした。しかし、成年後見制度利用促進法案は、法律によって精神障害者本人が同意したことと同じ扱いになるため、不法行為であるとして訴訟する余地がありません。否、そもそも成年被後見人は、裁判だって自由にできるわけではありませんし、なにかと法律によって行為を制限されてしまいます。
 さらに、怖れるべきは、成年後見人による医療提供拒否の代理決定による尊厳死を開く点に問題があると考えられます。従来の尊厳死は、尊厳のある死の自己決定(実際には本人の決定を根拠とした殺人です)なる優生思想に満ちた提案であったわけですが、今回の場合は、尊厳のある死の代理人による代行決定という、より危ない考え方であるといえます。どういうわけか、2016年2月25日、久方ぶりに「終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟」が開催されており、意思決定の話しも出されました。厚生労働省が示した「意思決定支援の概要」も医療同意に関するウェートが大部分を占めています。明らかに、意思決定支援をして本人の尊厳のある死を選択する意思を十分に確認した、よって成年後見人が尊厳死の代理意思決定をする、という図式で障害者抹殺が図られていく準備が着々と進んでいることを意味するのだと思います。
 3月31日、私たちは池原毅和(弁護士)、関口明彦(全国「精神病」者集団・元内閣府障害者政策委員)、岡部宏生(ALS当事者、NPO法人さくら会)、川口有美子(NPO法人さくら会)による合同記者会見を実施しました。このアクションでメディアが反対の世論を伝える方に動き出し、結果として、疑義が呈されている事実を知らせることができました。また、ALSのグループと共闘、連帯できたことは、私たちにとってもっとも大きな収穫でした。
 この法案は、4月8日に国会で可決、成立したため、今後も注意を要します。私たちは、たとえ国会で成年後見制度利用促進法案が可決しても、本体である成年後見制度の解体に向けて、あらゆる手段を尽くして闘わなければなりません。

合同記者会見のご案内

会見内容:成年後見制度の利用の促進に関する法律案の反対若しくは慎重審議について
時間:3月31日、14時00分から14時50分まで
場所:厚生労働記者クラブ(中央合同庁舎第9 F)
発言者;
池原毅和(弁護士・東京アドヴォカシー法律事務所長)
岡部宏生(NPO法人ALS/MND サポートセンターさくら会・ALSの当事者)※介助者2名のコミュニケーション支援による発話
川口有美子(NPO法人ALS/MND サポートセンターさくら会)
関口明彦(全国「精神病」者集団運営委員・元内閣府障害者政策委員)

プレスリリース
成年後見制度の利用の促進に関する法律案は、2016年3月31日か4月5日の参議院内閣委員会において審議される見込みであると聞いています。成年後見制度利用促進法案は、①障害者権利条約第12条に違反するとされている成年後見制度をせめて最小化するというわけでなく、むしろ利用を促進するという点で国際人権法の潮流に逆行するものであること、②法案成立後に医療同意など後見人の業務拡大を検討することとされており、延命治療を始めとする必要な治療を中断する代諾や認知症高齢者を精神科病院に入院させる代諾による新たな問題が懸念されること、などから慎重な審議が必要であるといわれています。
また、成年後見制度利用促進法案は、改正される法律の範囲も広く、従来の成年後見制度の手続きの改正にまで及ぶものとなっています。たとえば、成年被後見人宛の郵便物を成年後見人等が直接受け取れるとする改正は、本来、本人以外の者による信書の開封の是非といった刑法にまで及ぶものであり、法務委員会での検討を要するものと考えます。そのため、参考人もよばずに内閣委員会で数十分の質疑で可決されていいような法律ではありません。

成年後見制度利用促進法案に反対する合同記者会見の報告

3月31日の14時から厚生労働記者クラブにおいて成年後見制度利用促進法案の反対緊急合同会見が行われた。
出席者は、弁護士の池原毅和氏(東京アドヴォカシー法律事務所長)と全国「精神病」者集団運営委員である関口明彦氏(元内閣府障害者政策委員)、ALSの当事者である岡部宏生氏(さくら会)、さくら会の川口有美子氏である。会見には約8名の記者が集まった。
池原氏からは、成年後見制度自体に内在する問題を指摘したうえで、障害者権利条約など国際社会に照らせば、代理人による決定を推進する法案は時代に逆行している動きだと主張した。関口氏は、精神障害の当事者の立場から、強制入院の問題をあげ、意思決定という文脈では本人の意思にかかわらず代理人によって決定されてしまう点では変わりないと指摘した。さらに、最も成年後見制度の対象とされる精神障害者と知的障害者が障害者政策委員から除外された状態で進められている現状を強く批判した。ALSの当事者である岡部氏は、コミュニケーションが介助者を通してしかできない自身の状態をさらしながら、意思を読み取られない状況に置かれている当事者が多くいること、またそのことで意思が阻害されてしまっている状況を訴えた。そして代理人による決定でもなく、過去の自分の決定でもなく、現在の自分の意思を読み取ってほしいと述べ、当事者の自己決定を保障する制度の検討を求めた。さくら会の川口氏は、本人の意思が身近な家族によって疎外されてしまう現状を述べ、その要因の一つには重度訪問介護などの介護制度の地域格差があると指摘した。そしてまず検討されるべきことは、代理人による医療同意の検討ではなく、重度訪問介護などの介護制度の充実であると主張した。
記者には、弁護士と精神障害当事者とALSの当事者が、この法案のどのような点が問題として一致するのか、それぞれの立場から主張が展開されたことによって理解してもらえたと思う。会見が終わってからも、それぞれにたいして記者が熱心に取材していたことからも、手ごたえがあった。

これによって4月1日には『朝日新聞』が記事を出し、4月2日には『東京新聞』がかなり写真付きの大きな記事を出してくれました。また、5月ごろには『社会新報』が成年後見制度についてまとまった記事を作ってくれることを約束してくれました。これらの新聞に先駆けて『京都新聞』が11月に出した記事の効果は大きかったといえます。

成年後見制度利用促進法案をめぐる議会運営のあり方に抗議し、法務委員会その他での検討を求めます!

成年後見制度利用促進法案をめぐる議会運営のあり方に抗議し、法務委員会その他での検討を求めます!
 成年後見制度利用促進法案は、2016年3月31日の参議院内閣委員会において上程、審議される見込みであると聞いています。成年後見制度利用促進法案は、①障害者権利条約第12条に違反するとされている成年後見制度をせめて最小化するというわけでなく、むしろ利用を促進するという点で国際人権法の潮流に逆行するものであること、②法案成立後に医療同意など後見人の業務拡大を検討することとされており、延命治療を始めとする必要な治療を中断する代諾や認知症高齢者を精神科病院に入院させる代諾による新たな問題が懸念されること、などから慎重な審議が必要であるといわれています。
 にもかかわらず、この時期に早急に国会に上程され、短い質問時間で可決する議会運営をしているのは、政権与党による士業団体の利益となるような便宜を図ることで選挙の票にしようとする意図があると伝えられています。すなわち、サラ金による不当利得返還が士業団体にとっての稼ぎ口ではなくなるので、新たな稼ぎ口として成年後見制度が注目されているということです。これによって障害者は、食い物にされるばかりではなく、成年被後見人の意思を尊重しない成年後見人の決定に対してなんらかの救済機能に開かれていないにもかかわらず、やみくもに利用が促進され、自分の通帳を見ることができない、成年後見人ではない家族は成年後見人の許可がなければ成年被後見人の自宅の敷地内に入ることさえできないなどの実際に起きている被害を拡大していくことになります。
 また、成年後見制度利用促進法案は、改正される法律の範囲も広く、従来の成年後見制度(民法)の手続きの改正にまで及ぶものとなっています。たとえば、成年被後見人宛の郵便物を成年後見人等が直接受け取れるとする改正は、本来、本人以外の者による信書の開封の是非といった刑法にまで及ぶものであり、法務委員会での検討を要するものと考えます。そのため、参考人もよばずに内閣委員会で数十分の質疑で可決されていいような法律ではありません。
 私たちは、成年後見制度や成年後見制度利用促進法案への反対もさることながら、この議会運営のあり方に対して納得していません。まるで票になる士業団体、票にならない障害者、票になる人の利益になるから早々と可決させましょうと差別されているようです。少なくとも内閣委員会での早急な議論は一度中断して、法務委員会での検討、あるいは法務委員会、厚生労働委員会、内閣委員会の合同で参考人を呼んで審議することを求めます。

  2016年3月30日

医療同意への成年後見人等の業務拡大に反対する障害者団体共同声明の申し入れ

医療同意への成年後見人等の業務拡大に反対する障害者団体共同声明の申し入れ

 今国会で上程される見込みの成年後見制度利用促進法案では、①後見人の医療同意が可能になる、②意思決定支援への配慮、③信書等の送付を後見人に直接できるようにする、などの改正が見込まれています。
 この法案の最大の問題点は、成年後見制度それ自体が障害者権利条約に違反すること以外にも、成年後見人等に対して医療同意の代諾をできるようにさせたことだと思います。すなわち、成年後見人が医療同意を代諾した場合は、完全に強制医療ということになります。これまで精神保健福祉法は、強制入院を規定していましたが、強制医療(侵襲行為それ自体を同意なくする手続き)までは規定しているとはいえませんでした。(たとえば、無理やり投薬させるとか、無理やり電気ショックをするという手続き自体を定めてはいない。)しかし、成年後見人等が代諾した場合は、精神障害者本人が医療同意したことと同じ扱いになるわけですから、いかなる治療介入を可能としていきます。たとえば、成年後見人等の代諾による強制電気ショックなどが可能になります。もちろん、これまでも半ば強引に、強制医療というべき投薬治療や電気ショックが運用でされてきたわけですが、現在では、これに対して少なくとも裁判において不法行為を主張する余地があるわけです。しかし、成年後見制度利用促進法案は、法律によって精神障害者本人が同意したことと同じ扱いになるため、不法行為であるとして訴訟する余地がありません。いな、そもそも成年被後見人は、裁判だって自由にできるわけではありませんし、なにかと法律によって行為を制限されています。
 さらに、おそろしいことは、成年後見人による医療提供拒否の代理決定による尊厳死(?)を開く点に問題があると考えられます(法案が公開されていないので詳しくは分かりません)。従来の尊厳死は、尊厳のある死の自己決定(実際には本人の決定を根拠とした殺人です)なる優生思想に満ちた提案あったわけですが、今回の場合は、尊厳のある死の代理意思決定という、より危ない考え方であるといえます。どういうわけか、2016年2月25日、久方ぶりに「終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟」が開催されており、意思決定の話しも出されました。厚生労働省が示した「意思決定支援の概要」も医療同意のことが非常に大きなウェートを占めています。明らかに、意思決定支援をして本人の尊厳のある死を選択する意思を十分に確認した、よって成年後見人が尊厳死の代理意思決定をする、という図式で障害者抹殺が図られていく準備が着々と進んでいることを意味しています。
 2015年12月、成年後見制度関連で院内集会が開催されました。このとき参加された民主党の議員が法案の問題を認識した旨の発言をしました。しかし、民主党は、2015年7月の時点ですでに本法案に合意していることが後になってわかりました。
 そのため「民主党障がい者政策推進議員連盟」は、修正案提出を目指して、士業団体とのヒアリング実施を方針として1月中旬に確定し、2月上旬に衆議院法制局に対するヒアリングを実施しました。なお、士業団体ヒアリングが実施されたかどうかは、小宮山事務所から聞き出せていません。われわれは、士業団体だけではなく当事者団体にもヒアリングを実施せよとして1月の下旬に申し入れ書を提出しました。
 現在、多くの政党は選挙を前にして士業団体の提言を丁寧に聞き取っています。対して障害者団体の提言は、聞き取りスケジュールを用意していないとのことです。そのことは障害者団体としての十分な反対意見の形成ができていないことにつきると思います。さて、障害者団体としての大きな反対がなければ士業団体の提言が優勢のまま国会上程もあり得てしまいます。(すでに3月23日の内閣委員会で内閣委員長による趣旨説明が行なわれる見込みです。)そのため、障害者団体として反対しているという対外的なアピールをしていかなければなりません。そこで、私たちの方で文案の作成をしますので、議論をしながら4月末を目途に「(仮称)医療同意への成年後見人等の業務拡大に反対する障害者団体共同声明」を作成し、本格的な医療同意への後見業務拡大反対の意志をアピールしていきたいと思っています。是非とも、共同声明の発信者として私たちとともに名を連ねてくださいますよう、お願い申し上げます。

   2016年3月23日

障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)に対する意見

障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)に対する意見

1.行動制限
⑥御意見の該当箇所
パラグラフ105、障害者権利条約第14条

⑦御意見の内容
本パラグラフにおいては、精神保健福祉法第36条に規定された精神障害者に対する行動制限に関する報告がなされていない。

⑧御意見の理由
障害者権利条約第14条は人身の自由にかかわる規定であり、本パラグラフにおいて精神保健福祉法第36条の精神障害者に対する行動制限に関する報告をすべきである。

2.障害者虐待防止法の範囲
⑥御意見の該当箇所
パラグラフ110、障害者権利条約第16条

⑦御意見の内容
本パラグラフにおいては、障害者虐待防止法の適用範囲について報告がなされていない。

⑧御意見の理由
障害者権利条約第16条は虐待防止にかかわる規定であり、本パラグラフにおいて障害者虐待防止法の適用範囲に教育機関と精神科病院が含まれていないことを報告し、救済可能な範囲等を明示すべきである。

3.骨格提言の実施状況
⑥御意見の該当箇所
障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意と骨格提言を出した、とする記述。

⑦御意見の内容
骨格提言をどのように反映し、どれくらい実施されたのかが書かれていないため、明示すべきである。

⑧御意見の理由
骨格提言は、障害者権利条約の批准に向けた国内法整備の一環という政策上の位置づけであり、その反映は障害者権利条約の実施状況に係るものであり詳細の報告が求められるためである。

4.総論
この政府報告書は、制度の説明に終始しており、障害者権利条約の実施状況を報告する体をなしていないといわざるを得ない。そのため、部分修正を重ねたところで結局のところ国際社会からの非難を免れない内容となっている。