Transforming Communities for Inclusion- Asia Pacific
[TCI Asia Pacific]
私たち、アジア太平洋地域の21か国の精神障害者と障害種別をこえた支援者たちは、アジア太平洋・インクルージョンのための地域変革(TCI Asia Pacific)1の2018年8月29日のバリ島での総会にて、
Hereby confirming
次のことを確認した。
· 高所得国でも低所得国でも、都市でも農村でも、離島でも、施設でも地域でも、学校でも大学でも保健ケアセンターでも社会保障サービスでも、あらゆる形態の差別、排除、暴力、非人道的で品位を傷つけるような虐待や処遇を含めて、私たちのあらゆる人権に対する構造的で浸透力のある侵害が起こっている。
· 最近の新しい政策の失敗は、医学モデルで組み立てられている。医学モデルは、自由、選択肢、機会を制限したり、権利行使を評価し条件づけ管理し制限する精神医療体制によって私たちをコントロールしたり、インクルージョンの資源や完全なインクルージョンの選択肢や機会を増やすかもしれない地域、文化、信条におけるインクルージョンのための資源を無視たりする。
· それらの政策は、国際的な人権水準や、さまざまな国際条約や協定、中でももっとも重要なものとしては障害者権利条約(CRPD)の枠組みと合わない精神保健を中心に据えていることが多い。
CRPDに従って、すべての精神障害者のインクルージョンのために政策や法制における精神障害者のインクルージョンを保障し、医学モデルや「精神保健」の焦点化から離れて「インクルージョン」に向けたパラダイム転換に完全な妥当性があることを認めている、この地域のいくつかの国による進歩を奨励した。
人権という枠組みによって保障される他のあらゆる権利の中で、もっとも進歩的な精神医療の環境でさえ、私たちの教育権、労働権、家族を持つ権利、社会保障や食物などの基本財にアクセスする権利、十分な水準の生活をする権利、投票権、生命と自由の権利、法律の前にひとしく認められる権利などを管理したり、否定したりしていることに対して警鐘を鳴らした。
精神障害者に対する持続的な差別と排除の問題の中でも、私たちは次のことを地獄のような状況として強調する。
· 非自発的入院や非自発的治療に関する条文を核とした精神衛生法がアジア太平洋地域に拡大していること。精神病院の入院率が最高になりつつあるところもある。また、精神障害者に対する身体的及び性的虐待、感染症、飢餓、栄養失調、直接のショック療法(麻酔を使わないショック療法)、違法な隔離や身体拘束、その他の非人道的で、品位を傷つける虐待的な処遇による生命の危機を含めた精神医療施設におけるひどい状態。
· 家族や地域における暴力――よく見られるものとしてはpasung(手かせ足かせ)、家族や地域のあらゆる取決めからの追放やアクセスの剥奪、社会的ケア施設における非人道的で品位を傷つけるような悲惨で拷問のような状況における隔離、非合法の住居、小屋、動物の小屋。
· イギリス連邦で実践されていた場合の多い欠格法(incapacity laws)を用いた、国家容認の差別を通した精神障害者の声に対する完全な抑圧。とくに女性、子ども、LGBTI、先住民、その他私たちの社会においてさまざまな差別に直面しているグループに対する、開発における私たちのインクルージョンに対する体系的な差別。
そのような懸念される状態は、アジア太平洋のすべての地域において、散発しているわけではなく頻繁におこっていることが確認されている。法律、規範、社会構造に根深く埋め込まれ、国内法制において植民地時代の歴史的な伝統として強化されている。
法律や実践におけるそのような暴力は、「最善の利益」の名目のもとに人権の否定を永続させている精神医療体制を部分的に改善することによってではなく、私たちの選択、意思、選好に従ってインクルージョンに向かうCRPDによる完全なパラダイム転換を受けいれることによって対処できる。
思い出してほしいのは、
· 不平等を削減し、すべての人の社会的、経済的、政治的エンパワーとインクルージョンを促進して、誰もとり残さないという持続可能な開発目標を履行するためのすべての国連加盟国の関わり。
· すべての障害者のあらゆる人権と基本的な自由の完全で平等な享有を保障することを促進し保護するため、また、他の者との平等を基礎として障害者の生来的な尊厳、自律性、独立した意思決定の尊重を促進するためにすでにCRPDに批准しているほとんどのアジア太平洋地域の国家の義務。
· 仁川戦略の履行を通したすべての障害者の「権利の実現」のためにすべてのアジア太平洋の国家が関わること。
· 障害者の権利に関する太平洋フレームワークに対する太平洋の国家の関わり。
持続可能な開発目標のインクルーシブな履行と人権の完全実現は、相互に強化しあうものだと考えている。
歓迎しているのは、
· 障害者権利委員会が現在までアジア太平洋の国に対して出してきた総括所見、また、法律の前にひとしく認められる権利(第12条)、障害のある女子(第6条)、自立した生活及び地域社会への包容(第19条)、平等及び無差別(第5条)の一般的意見。
· 社会保障、インクルーシブな政策、法的能力、障害者の参加と権利に基づく支援に関する障害者の権利についての国連人権理事会に対する障害者の権利に関する特別報告者の報告書
· 精神保健についての国連人権理事会に対するすべての人の身体的精神的な到達しうる最高水準の健康の享受の権利に関する特別報告者の報告書における世界中の精神医療体制における「汚職」に関する声明と、精神障害者が「グローバル規模での障壁の負担」に直面しているという告発。
· 保健問題が社会的、経済的、環境的に支配していることへの対処、すべての人の権利、意思、選好を尊重しないあらゆる実践の廃絶、脱施設化、過剰な医療化の防止、自由及び安全の権利や地域で自立して包摂されて生活する権利の享有の促進と尊重を含めた、精神保健と人権に関する2017年の国連人権理事会の決議。
CRPDで述べられているあらゆる人権、とくに自立して生活する権利と地域に完全に包摂される権利(第19条、一般的意見第5号)の完全な実現において、私たちは、(1)住む場所や誰と住むのかを決定し、(2)住居の場所の近くのさまざまな住居及び/あるいは地域支援サービスのアクセスを持ち、(3)他の者との平等を基礎としてあらゆるサービスの利用者として包摂され、(4)すべてのサービスが私たちの特別なニーズに対応することを望む。
求めている行動は、
精神障害者のインクルージョンが、医学モデルから社会モデル、精神異常から精神障害、公共保健からインクルーシブな開発、施設収容からインクルージョン、治療から支援体制というパラダイム転換と政策の再編成を必須としていることを認識した行動である。そのような再編成の過程ではCRPDやSDGsの指針に沿う必要がある。
· 精神障害者のインクルージョンを、あらゆる分野のすべての社会的、法的、政策的サービス活動の目的、過程、結果とする。そこには、保健ケアに限らず、あらゆる開発課題、計画、プログラム、変革のための提携におけるあらゆる関係者が関わる。
· 害悪を減らすというアプローチ、たとえばWHOによる「人道的な」精神保健ケアに向けた回復や改善を越えていく。精神科の拘禁に関して、構造的に欠陥のある旧態依然とした植民地時代の方法を維持しようという継続的な「改善」の試みを憂慮する。WHOのQuality Rightsがインクルージョンの問題の解決策として間違って認識されていることを懸念する。
· 地元の精神障害者の団体が好ましいと考える、非暴力的でピア主導でありトラウマに配慮した地域に根付いたプログラム、癒しの方法、文化実践の活動を支持する。世界規模、またアジア太平洋地域における非医学的なオルタナティブの実践のための運動、地域における支援の先駆的なモデルに注目する。
私たちは、次の方法を実現されるべきものとして提案する。このすべての段階において精神障害者の参加が適切に検討されるべきである。
· 教育の権利が、生涯学習に向けた改革を伴ってあらゆる教育機関で実現される。非言語的/芸術を使った表現などの代替的、拡大的コミュニケーション方法へのアクセス、合理的配慮、柔軟なプログラムや幅広い支援サービスへのアクセス、子どもに対する有害なあるいは強制的なあるいは過剰な医療や施設収容の禁止が保障される。
· 労働と雇用の権利が、あらゆる労働市場、雇用取引、労働現場、生活向上のための支援において精神障害者のインクルージョン、支援や柔軟な労働時間、職場での合理的配慮の支給、他の者との平等を基礎とした仕事における障害に対する所得補償、貢献に対する適切な認識、他の者との平等を基礎とした専門職としての向上、訓練や昇進などへのアクセスの可能性を伴って実現される。
· 適切な水準の生活をする権利と社会保障の権利が、あらゆる社会保障のプログラムにおいて精神障害者のインクルージョンのために実現される。食の権利が保障される。住居の権利は、施設収容を防止し地域で生活するために、とくに地域で拘禁されたり拘束されたりしている人の救援にとってもっとも重要である。社会保障は、貧困を避けて楽に生活していくために計画される。そのような計画は、精神障害者の尊厳、尊敬、自律、自立生活を保障するために設計される。
· 保健ケアの権利が、他の者との平等を基礎とした包括的な一般的保健ケアを含めて実現される。精神医療ケアは、最高水準の健康と福利を手に入れるための障壁とはならない。障害者や家族の医原病の懸念の表明(たとえば、ゾンビ化、遅発性ジスキネジア、パーキンソン症状、精神症状、自殺企図、代謝障害、心疾患、その他の健康障害)が認識され対処される。食事療法、ヨガ、太極拳、気功、瞑想、トラウマに配慮したカウンセリング、対話療法、芸術療法などのさまざまな文化に沿った癒しの手法が保健ケアの一つとして利用できるようになる。
· 地域の支援体制を保障し、脱施設化するためのプログラムが用意される。たとえば、介助者、地域における支援の輪、ピアサポート、支援の公式及び非公式のネットワーク、家族のエンパワメント、話を聞いてくれる場所、避難/駆け込み寺/静かな部屋、創造的表現の空間、危機状態についての洞察を深める場所、精神障害者の意思や選好に基づいて対話し安全に問題処理できるよう訓練された支援者、とくに路上生活者にとって生活空間の近くで得られる支援、地域における平穏で安全な空間である。
· 参政権、特に投票権、被選挙権、公的事務所を持つ権利が、この地域のあらゆる国において保障される。
推奨するのは、
法律の前に完全にひとしく認められる権利が私たちの地域のあらゆる国の速やかに認められること。法律が、「無能力」あるいは「精神異常」を理由として精神障害者の市民的、社会的、経済的、文化的権利が否定されることのないように、CRPDに沿ったものになること。法制度から、とくにイギリス連邦における植民地時代の遺物が排除されること。
「私たち抜きで私たちのことを決めるな」という格言が、技術や倫理その他の指針、政策、法制度などの私たちのインクルージョンのためになされる活動を含めたすべての過程において保障されること。
WHOを含めて、私たちの地域の開発のためのあらゆる国際連合及び関連機関、救援機関、政府によるグローバルな活動が、インクルーシブな開発に向けたあらゆる協調において私たちの参加とインクルージョンを考慮すること。それらのすべての活動は、精神保健からインクルージョンへのパラダイム転換に気を配ること。
熱望しているのは、
· 私たちのインクルージョンのためのあらゆる進歩的な活動が私たちの利益になる限りにおいて、インクルージョンに向けた法的及び政策的環境に再度向かっていくために、訓練、能力開発、インクルージョンの指針、研究などのあらゆる活動に関する協力を通して、それらの活動に貢献すること。
· 社会変革において、私たちの目標と矛盾しない組織、精神障害者のリーダーシップや十分で効果的な参加の原則や、私たちの生活や権利に関するあらゆる問題における私たちの専門性を尊重する組織と協力すること。
· 支払いのある仕事、社会的正義にかなう仕事、創造的な仕事、非形式的なケアや支援の仕事などを通して、社会において意味のある位置を占めること。私たちは、あらゆる多様性の中で人間の潜在能力を十分に開発できるように導く環境が、社会のさらなる社会的、経済的、文化的、政策的発展に寄与すると考える。
Declaration adopted by TCI Asia Pacific
5th “Classic Edition” Plenary of TCI Asia Pacific,
Bali, Indonesia,
29th August 2018.
Convenor:
Bapu Trust for Research on Mind & Discourse,
704 Fillicium, Nyati Estate, Mohammedwadi, Pune 411060 India
Email: tciasia.secretariat@gmail.com Web:https://tci-asia.org
※和訳にあたっては伊東香純さんにご協力いただきました。
ありがとうございました。