優生保護法下における手術実態の調査不徹底を糾弾し、精神医療業界としての謝罪を求める声明

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 2018年9月18日、東京新聞の報道により、障害者らに不妊手術を強いた旧優生保護法(1948~96年)下の被害状況を調べるため、厚生労働省が都道府県を通じ、民間の医療機関や福祉施設にカルテなど個人情報の保管状況を確認している調査で、医療・福祉の現場から「膨大な量があり業務を中断してまで調べられない」などの不満が出ていること、調査不徹底であることが指摘されました。このたび、優生保護法下の手術の実態を明らかにする重要な作業が不十分なまま終わったことは由々しきことであると考えます。
 厚生労働省は、調査依頼の段階からすでに「本調査は個人の診療記録(カルテ等)やケース記録の洗い出し等の網羅的な確認 を医療機関・福祉施設に求めるものではなく、調査時点において、各医療機関・福祉施設 が把握している範囲内の情報について、回答を求めるものです。」とし、本来ならば積極的に網羅的調査を依頼すべきところを最初から消極的な姿勢で依頼しました。厚生労働省が依頼の段階で病院を忖度し、消極的になったことは調査不徹底という結果と大いに関係しているものと考えます。また、手術の実質を担い優生保護法による加害に加担してきた医療者は、本来、人員不足などの理由をつけて消極的な姿勢をとるべきではなく、反省を表明した上で徹底した調査に応じる姿勢を示すべきと考えます。
 ドイツでは、70年の沈黙をやぶってついに精神医学の団体として優生保護法への謝罪をおこないました。日本もドイツにならって優生保護法に手をそめてきた精神医療業界としての謝罪の公表を求めます。また、直接的に手術にかかわらなかったコメディカルの団体も止めることができなかった不作為を認め、謝罪することを求めます。

2018年10月31日