日精協630調査声明文に対する緊急声明

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 2018年10月19日、日精協は「精神保健福祉資料(630調査)の実施についての声明文」を発表しました。当該日精協声明では、630調査それ自体が調査協力の見送りを検討せざるを得ないほどの個人情報保護上の問題があるとしています。
 しかし、当該日精協声明には、個人情報の観点から問題があるとされる具体的な例が示されておりません。また、そもそも、これまで都道府県等が開示してきた行政情報に個人情報が記載されていたとする実例は聞いたことがありません。従前の例に従い行政情報開示請求があった場合に個別に審査をおこない個人情報保護に配慮して開示を決定する方式で問題ないはずだと思います。
 そのため、当該日精協声明は、単に毎日新聞が記事にしたような長期入院者がいる実態を隠蔽するための口実として個人情報保護を使っているだけのようにしか見えません。公共的な役割を持った民間病院が実態を隠蔽し、今後の政策立案を妨げるようなことはあってはなりません。
 2018年10月25日

◆「精神保健福祉資料(630調査)の実施についての声明文」
https://www.nisseikyo.or.jp/images/Teigen/TeigenPDF_gjzmjAueKKhiRKvGh1zSQ8xrJ0PpEx1augXsi2SZbnMuHpGDDQGQakkqjh4skfRf_1.pdf

検証委員会報告書に関する緊急声明

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成された精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
2018年10月22日、国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会報告書(以下、「検証委員会報告書」とする。)が公表されました。
これによって障害者雇用の法定雇用率の対象外の人の中には、精神保健福祉手帳を有しない精神障害者が数多く含まれていたことが明らかになりました。
 このたびの障害者雇用水増し問題をうけて政府は、法定雇用率の達成に向けて障害者採用の調整を開始しました。しかし、職員の定員の決まっている中央省庁においては、定員を増員するか退職させて母数を減らすかしなければ法定雇用率を達成させることが不可能です。現時点では定員を増員する話しがありません。そのため、このたびの法定雇用率の達成に向けた障害者採用とは、法定雇用率対象外でありながら法定雇用率対象者としてカウントされていた約3400人を含む職員を退職させた上で、新たに法定雇用率対象となる約3400人の障害者を雇い直すものということになります。
退職させられる当人たちの中には、手帳を保有していない精神障害者が含まれています。このことは精神障害者の団体として絶対に許容することができません。しかも、当人たちには、これまで法定雇用率対象の障害者としてカウントされていた事実を知らせることなく、よくわからないまま退職させられることになります。おそらく、有期雇用者が大部分を占めると思われるため、理由も告げられずに契約更新されずに失職することになるのでしょう。なお、政府によると当人たちに法定雇用率対象の障害者としてカウントされていた事実を伝えない理由は、本人の負担軽減のためとされています。しかし、こうした考え方こそ障害者を隠すべきものとみなす差別が認められ違和感を禁じ得ません。法定雇用率対象の障害者としてカウントされていた被用者には、きちんとその事実を伝えるとともに謝罪すべきと考えます。当人たちは、隠し事されているのではないか、退職させられるのではないかと思い不気味に感じて仕事が手につかなくなるだろうし、こうした対処の仕方は労使間の信頼関係を壊しかねない危うさをもっていると思います。
また、私たちは、政府に対して法定雇用率対象外の人を法定雇用率対象の障害者として計上した理由や経緯、背景を明らかにすることはもとより、これまで障害者雇用水増しが明るみにならなかった理由も検証すべきと主張してきました。当然ながら歴代担当者は、水増しの事実を知っていたはずです。それが問題にされることなく数十年にわたり隠ぺいされてきた理由はなんであるのかについての検証が再発防止にあたっては絶対に不可欠です。しかし、検証委員会報告書では、国の行政機関における障害者雇用の実態に対する関心の低さ、制度改正等を踏まえた障害者の範囲や確認方法等についての対応の不手際、対象障害者の計上方法についての正しい理解の欠如、対象障害者の杜撰な計上、障害者雇用促進法の理念に対する意識の低さなどの論点が挙げられてはいるものの、一人の職員が告発してあかるみにでるようなことでさえ、数十年にわたって全員が口を紡ぎあかるみにならなかったことについての検証はされていません。
また、こうした隠ぺいの理由の検証には、障害当事者の中心的な参画が不可欠であり、法曹関係者のみで検証委員会を組織し、検証するやり方は障害者権利条約の観点からも望ましくはないはずです。その意味で今回の検証委員会報告書は、当事者不在と言わざるを得ません。

 2018年10月22日

2018年 TCI Asia Pacific総会 バリ宣言について

Transforming Communities for Inclusion- Asia Pacific

[TCI Asia Pacific]

 

私たち、アジア太平洋地域の21か国の精神障害者と障害種別をこえた支援者たちは、アジア太平洋・インクルージョンのための地域変革(TCI Asia Pacific1[1]2018829日のバリ島での総会にて、

Hereby confirming

次のことを確認した。

·         高所得国でも低所得国でも、都市でも農村でも、離島でも、施設でも地域でも、学校でも大学でも保健ケアセンターでも社会保障サービスでも、あらゆる形態の差別、排除、暴力、非人道的で品位を傷つけるような虐待や処遇を含めて、私たちのあらゆる人権に対する構造的で浸透力のある侵害が起こっている。

·         最近の新しい政策の失敗は、医学モデルで組み立てられている。医学モデルは、自由、選択肢、機会を制限したり、権利行使を評価し条件づけ管理し制限する精神医療体制によって私たちをコントロールしたり、インクルージョンの資源や完全なインクルージョンの選択肢や機会を増やすかもしれない地域、文化、信条におけるインクルージョンのための資源を無視たりする。

·         それらの政策は、国際的な人権水準や、さまざまな国際条約や協定、中でももっとも重要なものとしては障害者権利条約(CRPD)の枠組みと合わない精神保健を中心に据えていることが多い。

CRPDに従って、すべての精神障害者のインクルージョンのために政策や法制における精神障害者のインクルージョンを保障し、医学モデルや「精神保健」の焦点化から離れて「インクルージョン」に向けたパラダイム転換に完全な妥当性があることを認めている、この地域のいくつかの国による進歩を奨励した。

人権という枠組みによって保障される他のあらゆる権利の中で、もっとも進歩的な精神医療の環境でさえ、私たちの教育権、労働権、家族を持つ権利、社会保障や食物などの基本財にアクセスする権利、十分な水準の生活をする権利、投票権、生命と自由の権利、法律の前にひとしく認められる権利などを管理したり、否定したりしていることに対して警鐘を鳴らした。

精神障害者に対する持続的な差別と排除の問題の中でも、私たちは次のことを地獄のような状況として強調する。

·         非自発的入院や非自発的治療に関する条文を核とした精神衛生法がアジア太平洋地域に拡大していること。精神病院の入院率が最高になりつつあるところもある[2]。また、精神障害者に対する身体的及び性的虐待[3]、感染症、飢餓、栄養失調、直接のショック療法(麻酔を使わないショック療法)[4]、違法な隔離や身体拘束、その他の非人道的で、品位を傷つける虐待的な処遇による生命の危機を含めた精神医療施設におけるひどい状態。

·         家族や地域における暴力――よく見られるものとしてはpasung(手かせ足かせ)、家族や地域のあらゆる取決めからの追放やアクセスの剥奪、社会的ケア施設における非人道的で品位を傷つけるような悲惨で拷問のような状況における隔離、非合法の住居、小屋、動物の小屋。

·         イギリス連邦で実践されていた場合の多い欠格法(incapacity laws)を用いた、国家容認の差別を通した精神障害者の声に対する完全な抑圧。とくに女性、子ども、LGBTI、先住民、その他私たちの社会においてさまざまな差別に直面しているグループに対する、開発における私たちのインクルージョンに対する体系的な差別。

そのような懸念される状態は、アジア太平洋のすべての地域において、散発しているわけではなく頻繁におこっていることが確認されている。法律、規範、社会構造に根深く埋め込まれ、国内法制において植民地時代の歴史的な伝統として強化されている。

法律や実践におけるそのような暴力は、「最善の利益」の名目のもとに人権の否定を永続させている精神医療体制を部分的に改善することによってではなく、私たちの選択、意思、選好に従ってインクルージョンに向かうCRPDによる完全なパラダイム転換を受けいれることによって対処できる。

思い出してほしいのは、

·         不平等を削減し、すべての人の社会的、経済的、政治的エンパワーとインクルージョンを促進して、誰もとり残さないという持続可能な開発目標を履行するためのすべての国連加盟国の関わり。

·         すべての障害者のあらゆる人権と基本的な自由の完全で平等な享有を保障することを促進し保護するため、また、他の者との平等を基礎として障害者の生来的な尊厳、自律性、独立した意思決定の尊重を促進するためにすでにCRPDに批准しているほとんどのアジア太平洋地域の国家の義務。

·         仁川戦略の履行を通したすべての障害者の「権利の実現」のためにすべてのアジア太平洋の国家が関わること。

·         障害者の権利に関する太平洋フレームワークに対する太平洋の国家の関わり。

持続可能な開発目標のインクルーシブな履行と人権の完全実現は、相互に強化しあうものだと考えている。

歓迎しているのは、

·         障害者権利委員会が現在までアジア太平洋の国に対して出してきた総括所見、また、法律の前にひとしく認められる権利(第12条)[5]、障害のある女子(第6条)[6]、自立した生活及び地域社会への包容(第19条)[7]、平等及び無差別(第5条)[8]の一般的意見。

·         社会保障[9]、インクルーシブな政策[10]、法的能力[11]、障害者の参加と権利に基づく支援に関する障害者の権利[12]についての国連人権理事会に対する障害者の権利に関する特別報告者の報告書

·         精神保健についての国連人権理事会に対するすべての人の身体的精神的な到達しうる最高水準の健康の享受の権利に関する特別報告者の報告書における世界中の精神医療体制における「汚職」に関する声明[13]と、精神障害者が「グローバル規模での障壁の負担」に直面しているという告発[14]

·         保健問題が社会的、経済的、環境的に支配していることへの対処、すべての人の権利、意思、選好を尊重しないあらゆる実践の廃絶、脱施設化、過剰な医療化の防止、自由及び安全の権利や地域で自立して包摂されて生活する権利の享有の促進と尊重を含めた、精神保健と人権に関する2017年の国連人権理事会の決議[15]

CRPDで述べられているあらゆる人権、とくに自立して生活する権利と地域に完全に包摂される権利(第19条、一般的意見第5号)の完全な実現において、私たちは、(1)住む場所や誰と住むのかを決定し、(2)住居の場所の近くのさまざまな住居及び/あるいは地域支援サービスのアクセスを持ち、(3)他の者との平等を基礎としてあらゆるサービスの利用者として包摂され、(4)すべてのサービスが私たちの特別なニーズに対応することを望む。

求めている行動は、

精神障害者のインクルージョンが、医学モデルから社会モデル、精神異常から精神障害、公共保健からインクルーシブな開発、施設収容からインクルージョン、治療から支援体制というパラダイム転換と政策の再編成を必須としていることを認識した行動である。そのような再編成の過程ではCRPDSDGsの指針に沿う必要がある。

·         精神障害者のインクルージョンを、あらゆる分野のすべての社会的、法的、政策的サービス活動の目的、過程、結果とする。そこには、保健ケアに限らず、あらゆる開発課題、計画、プログラム、変革のための提携におけるあらゆる関係者が関わる。

·         害悪を減らすというアプローチ、たとえばWHOによる「人道的な」精神保健ケアに向けた回復や改善を越えていく。精神科の拘禁に関して、構造的に欠陥のある旧態依然とした植民地時代の方法を維持しようという継続的な「改善」の試みを憂慮する。WHOQuality Rights[16]がインクルージョンの問題の解決策として間違って認識されていることを懸念する。

·         地元の精神障害者の団体が好ましいと考える、非暴力的でピア主導でありトラウマに配慮した地域に根付いたプログラム、癒しの方法、文化実践の活動を支持する。世界規模、またアジア太平洋地域における非医学的なオルタナティブの実践のための運動、地域における支援の先駆的なモデルに注目する。

私たちは、次の方法を実現されるべきものとして提案する。このすべての段階において精神障害者の参加が適切に検討されるべきである。

·         教育の権利が、生涯学習に向けた改革を伴ってあらゆる教育機関で実現される。非言語的/芸術を使った表現などの代替的、拡大的コミュニケーション方法へのアクセス、合理的配慮、柔軟なプログラムや幅広い支援サービスへのアクセス、子どもに対する有害なあるいは強制的なあるいは過剰な医療や施設収容の禁止が保障される。

·         労働と雇用の権利が、あらゆる労働市場、雇用取引、労働現場、生活向上のための支援において精神障害者のインクルージョン、支援や柔軟な労働時間、職場での合理的配慮の支給、他の者との平等を基礎とした仕事における障害に対する所得補償、貢献に対する適切な認識、他の者との平等を基礎とした専門職としての向上、訓練や昇進などへのアクセスの可能性を伴って実現される。

·         適切な水準の生活をする権利と社会保障の権利が、あらゆる社会保障のプログラムにおいて精神障害者のインクルージョンのために実現される。食の権利が保障される。住居の権利は、施設収容を防止し地域で生活するために、とくに地域で拘禁されたり拘束されたりしている人の救援にとってもっとも重要である。社会保障は、貧困を避けて楽に生活していくために計画される。そのような計画は、精神障害者の尊厳、尊敬、自律、自立生活を保障するために設計される。

·         保健ケアの権利が、他の者との平等を基礎とした包括的な一般的保健ケアを含めて実現される。精神医療ケアは、最高水準の健康と福利を手に入れるための障壁とはならない。障害者や家族の医原病の懸念の表明(たとえば、ゾンビ化、遅発性ジスキネジア、パーキンソン症状、精神症状、自殺企図、代謝障害、心疾患、その他の健康障害)が認識され対処される。食事療法、ヨガ、太極拳、気功、瞑想、トラウマに配慮したカウンセリング、対話療法、芸術療法などのさまざまな文化に沿った癒しの手法が保健ケアの一つとして利用できるようになる。

·         地域の支援体制を保障し、脱施設化するためのプログラムが用意される。たとえば、介助者、地域における支援の輪、ピアサポート、支援の公式及び非公式のネットワーク、家族のエンパワメント、話を聞いてくれる場所、避難/駆け込み寺/静かな部屋、創造的表現の空間、危機状態についての洞察を深める場所、精神障害者の意思や選好に基づいて対話し安全に問題処理できるよう訓練された支援者、とくに路上生活者にとって生活空間の近くで得られる支援、地域における平穏で安全な空間である。

·         参政権、特に投票権、被選挙権、公的事務所を持つ権利が、この地域のあらゆる国において保障される。

推奨するのは、

法律の前に完全にひとしく認められる権利が私たちの地域のあらゆる国の速やかに認められること。法律が、「無能力」あるいは「精神異常」を理由として精神障害者の市民的、社会的、経済的、文化的権利が否定されることのないように、CRPDに沿ったものになること。法制度から、とくにイギリス連邦における植民地時代の遺物が排除されること。

「私たち抜きで私たちのことを決めるな」という格言が、技術や倫理その他の指針、政策、法制度などの私たちのインクルージョンのためになされる活動を含めたすべての過程において保障されること。

WHOを含めて、私たちの地域の開発のためのあらゆる国際連合及び関連機関、救援機関、政府によるグローバルな活動が、インクルーシブな開発に向けたあらゆる協調において私たちの参加とインクルージョンを考慮すること。それらのすべての活動は、精神保健からインクルージョンへのパラダイム転換に気を配ること。

熱望しているのは、

·         私たちのインクルージョンのためのあらゆる進歩的な活動が私たちの利益になる限りにおいて、インクルージョンに向けた法的及び政策的環境に再度向かっていくために、訓練、能力開発、インクルージョンの指針、研究などのあらゆる活動に関する協力を通して、それらの活動に貢献すること。

·         社会変革において、私たちの目標と矛盾しない組織、精神障害者のリーダーシップや十分で効果的な参加の原則や、私たちの生活や権利に関するあらゆる問題における私たちの専門性を尊重する組織と協力すること。

·         支払いのある仕事、社会的正義にかなう仕事、創造的な仕事、非形式的なケアや支援の仕事などを通して、社会において意味のある位置を占めること。私たちは、あらゆる多様性の中で人間の潜在能力を十分に開発できるように導く環境が、社会のさらなる社会的、経済的、文化的、政策的発展に寄与すると考える。


[1] TCI Asia Pacificは、アジア太平洋地域の21か国の精神障害者と障害種別をこえた支援者の同盟である。TCI Asia Pacificの目的は、すべての精神障害者のためのCRPDの履行である。TCI Asia Pacificは、精神障害者のインクルージョン(UN CRPDの第19条)の教育や実践の拡大に焦点を当てている。

[2]Korean DPO and NGO Coalition for parallel report on CRPD(韓国のCRPDのパラレルレポートのためのDPONGOの同盟)(2014). INT_CRPD_CSS_KOR_18207_E.

新しい精神保健が施行されたのちに90%以上の入院が非自発的となった。精神病院の平均入院日数は247日、精神科の療養所の平均滞在日数は3693日となった。参照:韓国の最初の報告書に関する事前質問事項:CRPD/C/KOR/Q/12014512日)。

[3] Human Rights Watch, (2014). “Treated worse than animals. Abuses against women and girls with psychosocial and intellectual disabilities in India(動物よりひどい扱い――インドの精神障害、知的障害をもつ女性、女児に対して)“. https://www.hrw.org/report/2014/12/03/treated-worse-animals/abuses-against-women-and-girls-psychosocial-or-intellectual

Human Rights Watch, (2016). “Living in Hell. Abuses against people with psychosocial disabilities in Indonesia(地獄で生きる――インドネシアにおける精神障害者に対する虐待)“. https://www.hrw.org/report/2016/03/20/living-hell/abuses-against-people-psychosocial-disabilities-indonesia

[4] Center for Advocacy in Mental Health (2006). “ECT in India”.  http://www.ect.org/?p=551, accessed online on 04-09-2018

[5] CRPD /C/GC/1, (2014) CRPD General Comment 1 on Right to Equal Recognition before the Law.

[6] CRPD/C/GC/3 (2016) General Comment on Women with disabilities.

[7] CRPD/C/GC/5 (2017) General Comment on Right to Living independently and being included in community.

[8] CRPD/C/GC/6 (2018) General Comment on Equality and Non – Discrimination.

[9] A/70/797

[10] A/71/314

[11] A/HRC/37/56

[12] A/HRC/34/55

[13] A/72/137

[14] A/HRC/35/21

[15] A/HRC/34/32

[16] WHO Quality Rights Initiative (2017). http://www.who.int/mental_health/policy/quality_rights/en/

Declaration adopted by TCI Asia Pacific

5th “Classic Edition” Plenary of TCI Asia Pacific,

Bali, Indonesia,

29th August 2018.

 

Convenor:

Bapu Trust for Research on Mind & Discourse,

704 Fillicium, Nyati Estate, Mohammedwadi, Pune 411060 India

Email: tciasia.secretariat@gmail.com     Web:https://tci-asia.org

※和訳にあたっては伊東香純さんにご協力いただきました。
ありがとうございました。

 

中央省庁による障害者雇用水増し問題に関する意見書

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織である。
 このたび発覚した中央省庁や自治体等における障害者雇用水増し問題は、政府が2018年3月に閣議で決定した「第4次障害者基本計画」の「国の機関においては民間企業に率先垂範して障害者雇用を進める立場であることを踏まえ、法定雇用率の完全達成に向けて取り組むなど、積極的に障害者の雇用を進める」とする明文規定に背き、実に40年にもわたって法律違反を重ねてきた由々しき問題である。障害者雇用の水増し数は、2017年度だけでも3400人を下回らないとされている。同時に私たち障害者は、実に40年にわたって雇用の機会を奪われてきたわけであり、言葉にできないほどの大きな衝撃をうけている。
 また、40年余にわたって不正を正せなかった障害者雇用の所轄庁である厚生労働省の責任は重大と考える。個々の省庁の責任は言うに及ばず、内閣を中心に政府の中枢および閣議としての責任が問われるものと考える。
 以上の観点から次のとおり、意見を述べる。

一、各省庁の水増し数の正式な数、障害別、性別、42年間の累計数など、精緻な数値を詳らかにすべきである。この問題の本質には、障害者を雇いたくないという差別的な本音が見え隠れしているわけだが、42年間、関係者が口を閉ざし明るみにされなかった理由についても検証し、明らかにされるべきである。

二、上記事項に加えで実質的で本格的な検証体制を確立する上では、政府自らの不正の検証を恣意的な人選でおこなうべきではない。障害種別等に配慮した障害当事者団体の代表を含む、透明度の高い検証体制が不可欠である。

三、行政自らに不正があれば指導力が鈍るのは必至である。民間企業の障害者雇用に悪影響が及ぶことがないよう直ちに襟をただして法定雇用率を達成し、再発防止に向けた厳正な措置を講じるべきである。

    2018年8月27日
                      全国「精神病」者集団

蘇生会総合病院・東徹様宛 公開質問状

蘇生会総合病院
東徹 様

公開質問状

 平素より、精神障害者の地域生活にご尽力いただき誠にありがとうございます。私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 さて、日経メディカルに掲載されていた東徹先生の文章を読みました。残念ながら日経メディカルに掲載された文章からは、記事を書き世に問うていく者としての責任が十分に感じられませんでした。記事の内容は、拘束や医療安全をめぐる政策の国内外の全体像をほとんど把握していないまま、ネットで調べたことと憶測・推論が目立つ構成となっています。そして、なによりも患者団体から抗議があった経緯を記述せず、日本の私立精神科病院を代表する組織の雑誌に会長が巻頭言で「精神科医にも拳銃を持たせて」と書くことに対しても、文脈によっては擁護できるかのような書きぶりに読めます。
 私たちは、会員及び非会員多数から当該巻頭言をめぐる医療不信のうったえの相談にのり、あくまで事態の収束のために、まずは日本精神科病院協会(以下、「日精協」とする。)に対して相談の問い合わせをしました。私たちは、決していきなり公開の抗議文を出したわけではなく、あくまで真摯に話し合いを求めたわけです。しかし、日精協は話し合いを拒絶し、電話口で「文書で回答するからいいでしょ!」などと横柄な態度をとり、結果としてこのような事態を招きました。
 こうした経緯について全ての医師は患者及び患者組織に対して医師の自浄作用を約束するべきだと思っています。つきましては、下記の質問にご回答をお願いします。誠に勝手ながら2018年8月末日までにご回答ください。

一、東先生は、日本の私立精神科病院を代表する組織の雑誌に会長が巻頭言で「精神科医にも拳銃を持たせて」と書くことを文脈によっては擁護するのか、立場を明らかにされたい。

二、「精神科医にも拳銃を持たせて」の一言によって患者に医療不信を与えた事実をどう考えているのか、医師としての見解を明らかにされたい。

三、「精神科医にも拳銃を持たせて」の一言を政治的に擁護するだけで患者の医療不信などに配慮や想像力の及ばない精神科医をどう思われるか見解を明らかにされたい。

措置入院に係る各地での闘い方について(方針・vol. 7)

趣 旨
 このたび厚生労働省は、精神保健福祉法改正法案の第196回国会上程を事実上見送ることを決めました。非予算関連法案の閣議決定の締切日は、原則として3月13日です。この日までに厚生労働省は、精神保健福祉法改正法案の閣議決定をしなかったため、よほどのことがない限り、今国会への上程はないと考えてよいでしょう。
 他方で厚生労働省は、精神保健福祉法改正法案の成立遅延に伴い、措置入院に関しては法改正を後回しにして先に運用の強化をはかる方針を決めました。ここでいう運用の強化とは、すでに法改正以前から地方公共団体が実施している退院後支援などの運用を整理することを趣旨としたものであり、法改正が趣旨とする相模原事件の再発防止策を契機とした退院後支援計画の作成義務化、警察が入る精神障害者支援地域協議会の設置とは、すべてが同じレベルで捉えられるものではありません。よって措置入院者退院後支援ガイドラインや診療報酬が法改正を先取りするものであるかのような捉え方は、必ずしも正しい理解とはいえないでしょう。
 私たちは、厚生労働省の描く大きな設計図のどの部分に運用強化が位置付き、どの部分が法改正に位置付くのかなど、しっかりと見極めるとともに理解しておく必要があります。ところが、今回の法改正とガイドライン、診療報酬の関係については、運動体の中でも相当の混乱が見られます。今後、運動を進めていく上では、今、何に取り組むべきかが示された方針が必要となります。そこで、全国「精神病」者集団としては各地の闘い方の方針(ガイドライン)を作成することにしまた。

これから取り組むべきこと(概要・簡単版)
①「退院後支援は措置入院を経験した任意入院者が同意した場合に限るべきである」旨の要望書を作成して居住地の都道府県及び政令市に提出してください。
②精神障害者支援地域協議会の設置の見送りを求める要望書を作成して居住地の都道府県及び政令市に提出してください。
③もし、精神障害者支援地域協議会が設置されてしまった場合は、代表者会議に必ず精神障害当事者の団体(障害者団体)と弁護士が入るように要望し、グレーゾーン対応等の警察の介入を阻止してください。
④都道府県、市町村に対しては、障害者差別解消法の研修を精神障害当事者が担えるように働きかけをしていってください。
⑤退院後支援で警察が援助関係者として入っている仲間と出会ったときには、本人に働きかけて警察が参加できないようにして下さい。
⑥警察の接遇上の問題改善については、障害者差別解消法の研修の講師に当事者が入ることで解決し、協議会の中で独自の方法で取り決めるようなことは避けてください。

Ⅰ 共通の理解のために必要な情報
1 法改正の射程
改正法案は、相模原事件の再発防止策を契機としたもので、保健所設置自治体による退院後支援計画作成の義務化、警察が入る精神障害者支援地域協議会の設置などが規定されています。退院後支援に関する法改正の射程は、あくまで計画の義務化であって、実際の退院後支援の中身については、地方公共団体の裁量ということになります。「措置入院の運用に関するガイドライン(平成30年3月27日・障発0327第15号)」(以下、運用ガイドライン)、「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン(平成30年3月27日・障発0327第16号)」(以下、退院後支援ガイドライン)は、法改正とは区別が必要です。なお、退院後支援ガイドラインは、拘束力のない技術的助言(地方自治法第245条の4第1項)であり、運用ガイドラインは、一部を除き処理基準(地方自治法第245条の9第1項)となります。
私たちにとっては、退院後支援よりも精神障害者支援地域協議会の方が問題で、法改正後に都道府県等にグレーゾーン対応などの方針作成を求める運用通知が出される予定となっています。こちらは、ガイドラインのような拘束力のない技術的助言とは異なり、いわゆる拘束力のある通知に該当します。

2 退院後支援の中身について
全国の都道府県及び政令指定都市計67カ所中、法改正以前から措置入院者退院後支援を実施している自治体が59カ所、実施していない自治体が8カ所あり、退院後支援を実施している自治体のうち3カ所が援助関係者として警察官を入れています。また、明文化されたルールがある自治体が7自治体、明文化されたルールがない自治体が52自治体であり、退院後支援を実施しているほとんどの自治体に明文化されたルールがないことがわかります。それでこそ、事件が発生した相模原市には事件発生以前から「措置入院者に対する支援のあり方ガイドライン」という明文化されたルールがあります。なお、事件後は対象者の範囲を拡大する修正がおこなわれました。このような地方公共団体ごとの取り組みを円滑にする目的で国は措置入院者退院後支援ガイドラインを定めることにしたわけです。
改正法案の審議では、相模原事件の再発防止策を契機とした措置入院者退院後支援(厳密には計画作成の義務化)であったため監視強化になるとの懸念がありました。しかし、ガイドラインは必ずしも法改正を前提としないため、相模原事件の再発防止策という文脈を除いた場合には、もう少し別の評価を与えていかなければならないでしょう。

3 診療報酬
このたび健康保険、介護保険、障害者総合支援法のトリプル報酬改訂がおこなわれ、健康保険の診療報酬項目には、地方公共団体が措置入院者への退院後支援計画を作成した場合に病院に報酬が下りる項目が新設されました。これも相模原事件の再発防止策を契機とした法改正とは基本的に別の性格と考えてよいです。

4 グレーゾーン対応
実際の退院後支援は、法改正によらずとも可能ですが、精神障害者支援地域協議会運用通知は、法改正をしなければ発布できません。相模原事件の再発防止策を契機に出されたグレーゾーン対応は、精神障害者支援地域協議会運用通知において規定されることとなっています。グレーゾーン対応は、精神障害者支援地域協議会の代表者会議の議論を経て都道府県ごとにグレーゾーンへの対応指針を定めることとされています。グレーゾーンとは、「確固たる信念をもって犯罪を企画する者」や「違法薬物依存症者」など医療と警察の両方が関わるもので、第193回国会の議事録によると措置入院の診察時にグレーゾーンを発見した場合には都道府県が警察に情報提供することとされています。

5 措置入院運用ガイドライン
措置入院の運用には、少なからず都道府県ごとのバラツキがありました。特にどう見ても措置入院対象者ではなさそうな人が警察官通報で措置入院になっている事例が各地で散見され問題を認めました。こうした諸問題の解消を趣旨として、運用ガイドラインが定められることとなりました。
 運用ガイドラインには、「Ⅷ 地域の関係者による協議の場」が定められており、精神障害者支援地域協議会の代表者会議のようなものが想定されています。とくに「困難事例への対応のあり方など運用に関する課題」の部分は、まさしくグレーゾーン対応の連続し得るものです。なお、この部分は処理基準(地方自治法第245条の9第1項)に該当しません。おそらく、本来は法改正しなければ出せない精神障害者支援地域協議会運用通知の内容を一部先取りしたために、このようなかたちになったのだと思います。

Ⅱ 各地の運動の方針
6 退院後支援に対する考えをまとめて都道府県に意見をだしていきましょう
私たちは、相模原事件の再発防止策とは別ものである「退院後支援」について都道府県・政令都市に対してなにが必要でなにが不要なのかを具体的に意見を出していく必要があります。
私たちとしては、仮に措置入院を繰り返す人に対して継続的な医療が必要な場合があると認めたとして、非自発的入院下において非同意で支援を開始することは結局のところ継続的な医療にはつながらないと考えます。なぜなら、医療の継続には自発的意志が不可欠だからです。それは、訪問看護などの方法を用いる場合でも同じです。また、訪問看護を利用していない場合、通院が途絶えた患者に対して病院が家に電話をしたり、訪問をしたりする“おせっかい”が考えられていますが、これとて同意なしで行うのならば “いらない迷惑”に過ぎないと思います。
すなわち、退院後支援を実施するには、必要としている任意入院者に対して同意を得て行なう場合に限るべきなのです。
つきましては、居住地の自治体に対して「退院後支援は任意入院者に同意を得た場合に限るべきである」ことを強く要求してください。

7 退院後支援における拒否の意志を支えてください
退院後支援に同意しなければ退院させない場合、あるいは同意を撤回したことを理由とした不利益な扱いをほのめかすなどのかたちで事実上、本人の意志によらない“同意”が同意として処理される可能性があります。こうした場合、地域で精神障害者の権利を支える病院職員以外の支援者が必要です。とくに精神保健領域では、患者の拒否の意志が踏まえられないことが多いため、拒否の意志を支える人が必要です。患者の本心に寄り添う支援者を獲得していってください。

8 人員配置予算・地方交付税法
2017年度予算では、退院後支援計画の作成を担う職員(PSW)を保健所に配置できる金額が地方交付税法で確保されました。この予算は、紐付きの補助金ではないため、各地方公共団体の裁量で使える予算となります。
多くの地方公共団体では、法改正されていないことを根拠に人員配置のために予算が使われませんでした。そのため、中には私たちが法改正を阻止したがゆえに人員配置が進まなかったかのような誤った意見も一部に見られました。しかし、あくまで地方交付税は地方公共団体の裁量で使えるものであるため、地方公共団体が予算を付けない判断を下しただけに過ぎず、法改正は関係ありません。なお、例外として埼玉県のように人員配置等の予算をすべて県独自の予算を財源にしている地方公共団体もありますが、こうした地域は2018年度中に退院後支援の計画作成が盛んにおこなわれることになります。
各地の闘い方としては、退院後支援をするために人員を配置すべきか、配置するべきではないのか、民間事業者に委託するのか、あるいは退院後支援はしないけども人員配置はするのか、など運動の方針を固めて取り組んでください。人員配置にあたっての注意点は、監視にならないようにすることです。なので、監視にならないという自信がある地域以外は、無理に配置・委託しようとは考えない方がよいと思います。

9 グレーゾーン対応方針を阻止すること
仮に代表者会議が設置されてしまった場合には、グレーゾーン対応方針の作成を全力で阻止してください。グレーゾーン対応方針は、精神障害者支援地域協議会運用通知で大枠が示されることになっており、なにもしなければそのまま素通りしてしまいます。阻止するにあたっては、都道府県・政令市に対して代表者会議に精神障害当事者団体(障害者団体)と弁護士を入れるよう求めてください。とくに弁護士は警察へのカウンターパワーとして、他の職種よりは少しだけ期待できます。
私たちの立場は、グレーゾーンなど存在しないということです。グレーゾーンの理論上の弱点は、ずばり医療と警察が棲み分けながら連携して支援する必要がある人(グレーゾーン)とはどういう人であるのか、実像がわからないところにあります。法律の建前としては、精神保健指定医が精神障害に起因する他害のおそれを判断できることになっているため、疾病に由来する他害は治療によって解消されることになります。グレーゾーンとは、これに加えて「確固たる信念をもって犯罪を企画する者」や「違法薬物依存症者」などで警察が入る必要がある場合を兼ねるものとされています。しかし、治療は治療でおこない、警察は警察で動けばいいだけのことなので両者が連携する必然性はどこにもありません。そのため、わざわざグレーゾーン対応方針を作るべきではありません。このことを前面に出してグレーゾーン対応方針を阻止してください。

10 警察官の接遇改善等に取り組んでください
 精神障害者支援地域協議会の代表者会議は、支援体制を協議する場であり、専ら医療と警察の関係について事前に方針を定めておくことを目的に設置されます。一部では、これによって警察の動きを抑止し、接遇改善の契機にすることが目指されています。しかし、接遇改善については、障害者虐待防止法上の研修を活用することや障害者差別解消法の研修や機能を活用することで一定の成果が見込めます。むしろ、効果的な警察職員の接遇改善は、担当者一人が出席しておこなう協議の場よりも、関係する全職員に向けて実施される研修の方が方策として妥当です。
すると、代表者会議の中で協議して方針を定める必要性もなくなります。また、法改正後に発布が予定されている精神障害者支援地域協議会運用通知にも、代表者会議に警察関係者を入れる内容を書き込む必要がなくなります。
都道府県、市町村に対しては、障害者差別解消法の研修を精神障害当事者が担えるように要望書を出すなど働きかけをしてください。

11 援助関係者として警察関係者が入ることについて
ガイドラインでは、警察関係者が退院後支援の援助関係者となる場合に本人の同意を要求しています。そもそも、警察関係者が入る場合を想定しているガイドライン自体に問題があると思います。とはいえ、すでに3自治体で警察関係者が入ってしまっているため、そうした実情を無視してガイドラインを定めることが困難だったのだと思います。ガイドライン自体は拘束力がありませんから、あとは都道府県の判断となります。
他方で、退院後支援ガイドラインには、警察関係者をこれ以上入れないために使える余地があると思います。例えば、現時点ですでに援助関係者として警察関係者が入っている退院後支援から「同意」を使って警察関係者を引き摺り下ろしていく運動を各地で展開することが可能です。ここでは、ガイドラインの賛否とは別のレベルで、実際の警察関係者の関与自体をなくしていく運動を作ることが目指されることになります。もちろん、退院後支援ガイドラインを使わないで警察関係者を引き摺り下ろす術があるのなら、それを使ってもよいと思います。いずれにせよ、警察関係者を引き摺り下ろすための個別具体的な運動を展開していく必要があります。実体として警察関係者の関与がゼロ件にまで減れば、警察関係者のくだりをガイドラインの中に残す必要性がなくなるため、ガイドラインの中から警察関係者のくだりを削ることも可能になります。

 今後は、各地での取り組みが肝心になります。多くの方々と連帯して現状を変えていきたいと思っているので、よろしくお願いします。

優生保護法集会――連帯アピール

 「優生保護法に私たちはどう向き合うのか?―謝罪・補償・調査検証を!」の開催にあたって全国「精神病」者集団から連帯のアピールをさせていただきます。
 旧優生保護法下の強制不妊手術は、「不良な子孫の発生防止=障害者は生まれない方がよい」という差別的な考え方に基づき障害者から生殖機能を奪い去る忌まわしいものでした。
 この制度に基づき多くの障害者が不妊手術を施され、犠牲になっていきました。その中には、当然ながら私たち精神障害者が含まれています。
 さて、強制不妊手術を規定した旧優生保護法の 所轄庁は、公衆衛生局精神衛生課でした。精神衛生課は、私たち精神障害者の強制入院を規定した精神衛生法(現在の精神保健福祉法)の所轄庁でもあります。1930年代、旧内務省は富国強兵策を背後としつつ民族優生の目的を達するためには、精神病者や精神薄弱者等を対象とした(1)隔離(精神病院等の拡充)、(2)結婚制限、(3)人工妊娠中 絶、(4)断種 (不妊手術)の4つの社会政策が必要であるとしていました。このうち、断種を合法化するための法案は、1930年代に計5回にわたって上程されましたが、いずれも成立しませんでした。
 他方で、この時期は精神科医師の間で断種をめぐって議論が交わされ、議会にも波及していきました。内務省は、日本精神病院協会(現在の精神衛生会)に対して「断種法制定の可否」に係る意見を求め、同協会は、1939年に断種に対して慎重な姿勢をとりつつも基本的に賛成の立場をとる「断種法制定に関する決議」を提出しました。こうした経過をたどり、1940年に国民優生法が成立しました。
 そして戦後、日本社会党の代議士らが中心となって超党派の議員立法で大幅な改正作業がおこなわれ、1948年には、今日、裁判で問題 になっている旧優生保護法が成立しました。1953年には、精神衛生会と日本精神病院協会(現在の日本精神科病院協会)が「精神障害者の遺伝防止のため」として不妊手術促進の費用に財政措置を求める陳情書を提出しました。それくらいの時期から財政的な裏付けを得たためか、次第に強制不妊手術の件数が増えていきました。このように精神保健には、優生保護法を下支えしてきた歴史的な事実があります。
 さて、1990年代になってからは、青森県や秋田県など強制不妊は限られた自治体でしかおこなわれなくなりました。そのため、青森県、秋田県などには、被害者でご存命の方がいると思います。もしかしたら、今もなお青森県や秋田県の精神科病院には、強制不妊手術の被害者が長期入院を強いられている かもしれません。ところで、被害者が長期入院している場合には、当時のカルテが残っているかもしれません。こうした記録は賠償の根拠にもなるので保全が不可欠です。
 皆さん! 忌まわしい優生保護法の歴史に対して、謝罪と賠償を勝ち取るため共に闘いましょう!

優生保護法に私たちはどう向き合うのか?―謝罪・補償・調査検証を!

日時:2018年7月28日(土)13時30分~16時30分
会場: 東京大学駒場キャンパス「18号館ホール」

京王井の頭線駒場東大前駅から徒歩
https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_17_j.html
〒153-0041 東京都 目黒区駒場3丁目8-1

手話通訳・文字通訳あり
参加費 500円

共催団体: 優生手術に対する謝罪を求める会/全国優生保護法被害弁護団/障害学会/
DPI女性障害者ネットワーク/優生手術被害者とともに歩むみやぎの会/ CILたす
けっと/DPI日本会議/SOSHIREN女(わたし)のからだから/  
協力団体:一般財団法人全日本ろうあ連盟

https://www.facebook.com/events/215599995728244/

私たちは、「優生保護法」にもとづく強制的な不妊手術の被害について、国は調査を行い、被害者に謝罪と補償を行うよう長年求めてきました。この問題は、生まれる子どもの数と質を国の都合でコントロールしようとして起きました。障害をもつ人だけでなく、女性の生殖に対する支配の問題でもあること、すべての人にかかわることを、知ってほしいと考えてきました。
今年になって、同意なく不妊手術を受けさせられた、あるいは中絶を強要された被害者が次々に国に損害賠償請求の訴えを起こし、6月28日現在、7人の方が各地で弁護団とともに頑張っています。
「優生保護法」の規定にも違反するかたちで、障害をもつ人の生殖を奪う行為があったことも分かってきました。
一方、3月に超党派の国会議員連盟と与党のプロジェクトチームが発足し、厚労省は都道府県市町村に優生手術に関する記録や資料の保全と調査を、また、医療機関や施設のカルテなど記録の保全を要請しました。
5月24日には超党派の国会議員連盟の中に「法案作成プロジェクトチーム」ができ、来年の通常国会に上程をめざすとのこと。被害者への補償に向けた動きが始まっています。
しかし、ここから先がさらに大切です。調査、検証、謝罪、補償が、おざなりで終わることがないよう、働きかけを強めていかなくてはなりません。
各地で行動する皆さんとともにこの間の動きと情報を共有し、被害者の補償に向けた法律案に何が盛り込まれるべきか、考える機会をもちたいと思います。そして、優生保護法が残した問題の大きさを、広く伝えていきたいと思います。

◆発言予定の団体/個人 共催団体ふくめて多数を予定し、またさらに、お声をかけています
飯塚淳子さん(仮名)、佐藤路子さん(仮名)、北三郎さん(仮名) 片方司さん

全国優生保護法被害弁護団/日本障害者協議会(JD)/NPO法人文福/全国フェミニスト議員連盟/CILたすけっと/DPI女性障害者ネットワーク/DPI日本会議/SOSHIREN女(わたし)のからだから/優生手術被害者とともに歩むみやぎの会/ピープルファースト東久留米/優生手術に対する謝罪を求める会

◆お問い合わせ◆ 
優生手術に対する謝罪を求める会
電話/FAX 06-6646-3883 ここ・からサロン 気付
(電話は木曜と日曜を除く10時~16時に受けます)

【声明】成年被後見人等権利制限適正化法案の今国会審議入りを阻止しました

 本日7月22日、196回通常国会が閉会しました。今国会では、精神障害の当事者団体の運動によって成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(案)が審議入り見送りとなりました。
 本法案が国会に上程される前の段階では、内閣から参議院先議の希望が出されており、ほとんど質問時間を使わずに与野党ともに賛成して成立するような位置づけとなっていました。また、多くの障害者団体が本法案を欠格条項廃止に向けた運動の前進と捉えるきらいがあり、一部には賛成して審議加速をしようとする向きさえありました。
 そのような中で全国「精神病」者集団は、閣議決定前から関係者等を説得してまわり、閣議決定の当日には反対声明を公表して立法府に慎重審議を求めてきました。また、成年後見制度を見直す会と共催して院内集会を企画・開催し、注目を集めました。こうした動きによって衆議院内閣委員会理事会では、参議院先議への疑問が示され、とうとう衆議院先議へとなりました。
 今国会に提出された内閣関連法案は、そもそも法案の数が非常に多く、さらにその中にはTPP法案やカジノ法案といった対決法案が複数あったため、本法案が衆議院先議となったことで審議日程の目処が立たなくなりました。
 かくして、我々は成年後見制度をめぐる一人一人の実態を明らかにすることで、慎重審議の方向付けを獲得し、ついに今国会で審議入りさせなかったわけであり、これは非常に大きな成果となりました。今後は、こうして作った貴重な審議入りまでの時間を有効に活用し、障害者権利委員会による総括所見の反映のための検討、障害当事者参画の実現、現実に起こっている問題の解決の3点を重点に行政府、立法府への働きかけに取り組んでいきたいと思います。
   2018年7月22日

【声明】精神保健福祉法改正法案の今国会での上程阻止を果たしました

 本日7月22日、第196回通常国会が閉会しました。3月9日、野党欠席のなか委員長の職権により厚生労働委員会が開催され、不正常になる傍ら、政府は法案上程の事実上の締切日である3月13日までに精神保健福祉法改正法案の閣議決定をおこなわず、今国会への提出を事実上断念しました。
 これによって第196回通常国会会期中の精神保健福祉法改正法案の上程は、完全に阻止されました。私たちは、第193回、第194回、第195回の全3回の会期において衆議院審議入り断念、廃案に追い込み、そして、今回の法案提出断念と国会行動において繰り返し勝利してきました。
精神保健福祉法は、私たち精神障害者を苦しめる多くの原因を含んだ法律です。その精神保健福祉法が、今だかつて、ここまでの打撃を受けたことはなかったと思います。
 このような流れの中で政府・厚生労働省は、いよいよ精神保健福祉法改正案を前回と同じ内容で出し直すことが困難になってきました。しかし、出し直される法案の中身は、いまだ不明とされています。そのため、次の国会で再び多くの課題を積み残した状態のまま精神保健福祉法改正法案が上程されても全くおかしくはありません。
 そのようなことが起これば精神障害者に対する監視強化につながることになるため、私たちとしては断じて認められません。
決して諦めずに最後の最後までともに闘い抜きましょう。
  2018年7月22日