「措置入院者等の退院後支援に係る法改正について」に関する質問状

清水勇人さいたま市長、上田清司埼玉県知事、森田健作千葉県知事、小池百合子東京都知事、黒岩祐治神奈川県知事、林文子横浜市長、福田紀彦川崎市長、熊谷俊人千葉市長、加山俊夫相模原市長

 日頃より精神障害者の地域生活に尽力くださり心より敬意を表しております。
 さて、2019年1月3日付で添付の声明を出しましたが貴自治体から特に応答がなかったため、九都県市首脳会議発、2018年12月11日付け「措置入院者等の退院後支援に係る法改正について」について下記の通り質問を出すことにしました。
つきましてはまことに勝手ながら2019年9月10日までにご回答をよろしくお願い申し上げます。

どの自治体からどの自治体に転居した場合に何のサービスが受けられないのかを把握している限りご回答ください。
意見書の作成にあたっては、精神障害者を代表する団体から推薦を受けた当事者の意見を聴く場を設けたのかご回答ください。

参考資料

◆九都県市首脳会議意見書に対する緊急声明(2019年1月3日)
https://jngmdp.net/2019/01/03/20190103/

◆九都県市首脳会議: 措置入院者等の退院後支援に係る法改正について
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/12/10/02_01.html

協議の場と当事者参画の方針(第2版)

協議の場と当事者参画の方針(第2版)

1. 協議の場の位置づけ
我々は、協議の場をどう位置づけるのかを明確にしておく必要がある。我々は、そもそも精神保健福祉体制自体を歓迎していない。よって、精神保健福祉体制のテーブルの上に一員として参加するわけではなく、あくまでカウンターとして参画することになる。いわば、参画するリスクと参画しないリスクを比較して、よりリスクの少ない方を選ぶというだけの消極的な位置づけにとどまるものである。

2. 参画するリスク/参画しないリスク
参画することに伴うリスクは、当事者の声というお墨付きを与えた上で運用が進んでしまうこと自体がそうである。このことは当事者参画を進める上でもっとも注意しなければならない点である。そのため、全体的な当事者の力量などを踏まえた上で総合的に判断される必要がある。
逆に参画しないことに伴うリスクは、我々とは異なるタイプのカッコ付き当事者が参画して上述のリスクを加速させてしまうことと、カウンターとなる勢力がないまま措置入院の運用に歯止めがかからなくなることなどである。
この場合、参画することに伴うリスクは、参画しないことだけでは回避できないため、あくまでカウンターとして参画した方がよいと考えるに至った。

3. 参画に伴うリスクの最小化に向けて
グレーゾーンの協議にあたっては、当事者の役割がなんであるのか不明な点が多い。単にグレーゾーンとされる事例に対して措置相当だ、措置相当ではないだとする医療者の論議に同じレベルで加わってもなんの意味もない。
あくまで当事者として参画する意義を全体化しておかなければならない。そのための当事者の力量を均質化するためのフォロー体制が不可欠である。例えば、当事者参画の思わぬ副作用への理解を養うとともに、協議の場における当事者の役割を明確化・可視化し全うできるようにすることなどがそうである。

4. 協議の場の評価をめぐるポイント
この間にグレーゾーンとよばれてきた問題の核心は、医療で対応すべきか司法で対応すべきかがわからない人の問題ではなく、医療側が医療で対応すべきではないと判断しているのに司法側が医療に押し付けようとしている問題であると位置付けが変わってきた。この問題の核心は、警察が精神科病院を刑務所の代わりに使おうとしていることにある。つまり、警察の誤りを指摘するために協議の場が使われようとしているのである。
他方で我々は、これまで協議の場への警察参加に反対してきた。理由は、社会保障ではなく治安を担う警察との目的共有は不可能であり、警察組織の慣例上、医療福祉関係者が説得することはきわめて難しいこと、協議の場における当事者を捜査対象とみなされる不安があることなどがあげられた。もちろん、法案段階の代表者会議と現在のガイドラインに基づく協議の場は異なるものであるため、一概に同じ立場を貫き続けるわけではない。だが、仮に警察参加阻止の立場を貫くのだとしたら、警察参加を前提とした協議の場への参加は矛盾することになるだろうし、警察が精神科病院を刑務所の代わりに使おうとしている問題のカウンターとして協議の場に応じることはできないということにもなるだろう。
しかし、その場合は、当事者参画を辞退するのではなく、あくまで警察参加の阻止を実現し、警察が精神科病院を刑務所の代わりに使おうとしている問題についても措置入院それ自体に反対するという態度を取ることで問題解決への姿勢を示し続けることができるのである。
また、措置入院の運用のバラツキ問題は、警察だけではなく精神保健指定医の問題も大きい。措置入院の運用のバラツキは、人身の自由を剥奪する行政処分でありながら精神保健福指定医ごとに異なる判断をすることを許容してきた帰結である。そうした精神保健指定医ごとの判断の違いが許容されてきた理由は、医療イコール全て利益処分であるという誤った前提に立って政策が進んできたからである。仮に警察が精神科病院を刑務所の代わりに使う問題が解決したとしても、精神保健指定医による恣意的判断、恣意的拘禁を批判する場として協議の場には一定の役目が残されている。

5. 当事者の役割
①措置入院に反対
そもそも措置入院自体が当事者にとっては、強制的な人身の自由の剥奪であり、最悪なトラウマ経験である。当然ながら医療不信にもなる。このことを宣言し伝えるのが当事者の役割である。
②警察参加の阻止
すでにガイドラインでは、生活安全課長の参加が前提とされているが、我々は警察参加自体を認めない方針である。よって第一義的な役割は、警察参加の阻止である。
③刑務所の代わりにさせない
警察は、捜査対象となった精神障害者に対して微罪処分、不起訴、拘留取り消し、拘留執行停止などですぐに自由の身になることを不満に感じており、通報して措置入院になることで初めて刑罰としてのバランスがとれると考えているフシがある。しかし、厳密には措置入院は刑罰ではないため、刑務所の代わりにするべきではない。刑務所の代わりに措置入院することへの拒絶を宣言するのが当事者の役割である。
④措置入院は不利益
当事者によって措置入院それ自体は、人身の自由剥奪という不利益を伴う処分である。よって精神保健指定医が初見で措置不要と判断していても警察側からの圧力で結果的に措置相当と判断するようないい加減な運用は、全くもって許されないはずである。このことを宣言するのが当事者の役割である。
⑤別に司法でよい
精神障害者の仲間で刑務所と精神病院の両方に入った経験をもつ人は、刑務所の方がマシだったと口を揃えていう。刑期が決まっていることが理由としてあげられてきた。仮に医療者等が、措置入院が必要であるとする意見を出したときに入院のカウンターとなる意見を出すことが当事者の役割である。
こうした役割を果たすことで措置入院の運用に歯止めをかけていく必要がある。
⑥精神保健指定医の判断のバラツキを問題にすること
本来、人身の自由の剥奪を伴う行政処分は、厳格な根拠が求められるべきであり、処分の理由も反証的、再現的でなければならないと考える。同じ精神障害者に対して、ある精神保健指定医が措置入院相当と判断して措置入院になり、ある精神保健指定医は措置入院不要と判断して措置入院にならないなどということはあってはならないはずである。しかし、精神保健福祉法の立て付け上は、入院は利益行為なので精神保健指定医が間違って入院させても問題なしとされる。こんなことが許されないように本人の立場から反証的、再現的ではなく措置入院の診察を批判する意見を出すことが当事者の役割である。

精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)に対する声明

 全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
2019年6月28日、精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)が公表されました。精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)には、14現代の精神保健の課題と支援の③社会的排除と社会的障壁、2日本の精神保健福祉施策に影響を与えたできごととして、想定される教育内容の例に相模原事件(以下、「津久井やまゆり園事件」とする。)を精神保健福祉法における措置入院の見直し等というかたちで例示されました。
 しかし、既知のとおり、津久井やまゆり園事件の再発防止を契機とした措置入院の運用ガイドラインは出されていますが、措置入院の見直しが検討まではされたものの、結果として見直された事実はありません。また、措置入院運用ガイドラインは、従来の運用のバラツキを是正ための処理基準を設けたものに過ぎず、措置入院を見直す内容にはなっていません。そのため、津久井やまゆり園事件から措置入院の見直しが例示される本カリキュラム案は、きわめて問題があるものです。
 さて、精神保健福祉法改正法案は、何があっても、ほとんどの内閣提出法案を成立させてきた現政権において唯一、廃案となり再提出の目処が立っていない法案となりました。精神保健福祉法の審議過程では、法案概要資料の趣旨の部分に変更が加えられるという前代未聞の珍事件が起こり、立法府の歴史においても2件しかない参議院先議法案の継続審議を帰結しました。なお、もう1件の参議院先議法案は、精神保健福祉法改正法案のように賛否の対立により継続審議になったものではないため、より重く受け止められなければなりません。そして、忘れてはならないのは、精神保健福祉法改正法案が内閣総理大臣の施政方針の法案であったのにも関わらず賛否の対立により継続審議になり、のちに廃案になったことです。このことからも精神保健福祉法改正法案が立法府の歴史上、まったく前例のない顛末をむかえたことがわかると思います。このことを厚生労働省は忘れたのでしょうか。
 3年前のこの日、津久井やまゆり園事件が発生しました。そして、容疑者の措置入院歴が報じられ、再発防止の検証を契機に措置入院の見直しが検討されました。その後、精神保健福祉法改正法案が上程されましたが、私たち当事者が反対したことで廃案になり、現在に至っています。仮に津久井やまゆり園事件のことを取り上げるのならば措置入院の見直しではなく、当事者団体からの反対運動によって廃案になった経過から精神保健福祉と人権の問題を考えるような内容にすることと例示し、どの出版社においても編集委員会は当事者をライターとして採用するべきと考えます。
 以上のことから精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)は修正を免れません。

◆厚生労働省,精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05546.html

京都アニメーション放火事件の報道に関する緊急要望書

2019年7月20日
報道機関各位

 日頃、貴社におかれましては迅速で正確な報道のためご尽力されていることを心より敬意を表します。私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
さて、2019年7月18日に京都市伏見区において株式会社京都アニメーション第一スタジオにガソリンによる放火と、その影響で33名の死亡が確認される事件が発生しました。この事件で逮捕された容疑者について、一部報道では、「精神障害がある」「特別調整の対象であった」などの事実が報じられています。こうした報道は、精神疾患を持った人に対して「怖い」「危険」「何をするかわからない」「社会から排除すべきである」「監視の対象にするべきだ」といった偏見・予断を助長させるため、たいへん深刻に憂慮しています。
すでに犯罪と精神障害を結びつける偏見に基づいた声が散見されます。このように報道は、一般国民に対して多大なる影響力をもっています。貴職については、自らの影響力を考慮し、精神障害者を排除するような社会的偏見がひろがらないよう、報道機関には地域で生活している精神障害者の立場や気持ちも含めて、配慮のある報道を望みます。

以 上

祇園祭宵山行事中に交通規制にあたる警察官への障害者差別解消法の周知に関する要望書

2019年7月10日
京都府総務部人事課長 殿
京都府健康福祉部障害福祉課長 殿
京都府警察交通規制課長 殿
下京警察署長 殿
中京警察署長 殿

祇園祭宵山行事中に交通規制にあたる警察官への障害者差別解消法の周知に関する要望書

 日頃より京都府下における障害差別解消の推進に尽力くださり、こころより敬意を表しております。
 さて、例年通り宵山行事期間中は、四条通及び烏丸通の歩行者用道路規制がおこなわれ、歩行者は四条通の左側通行室町通・新町通等において一方通行への協力が求められることとなりました。2016年7月の祇園祭においては、障害者差別解消法及び同法京都府職員対応要領等に基づき合理的配慮の提供義務をおうべき警察官が、障害があって長時間の歩行が困難な人に対して同法の義務を知らないことを理由に合理的配慮の提供をしないといった対応が散見されました。そのため、当会は2017年から毎回、京都府警察に障害者差別解消法の周知に係る申入れをおこなっております。そして、2017年以降は、京都府警察が現場の警察官に障害者差別解消法の周知をおこなったことで、交通整備にあたる警察官の対応が大幅に改善されました。
 つきましては、例年通りに交通規制にあたる警察官への障害者差別解消法の周知徹底をしていただきますようお願い申し上げます。
以 上

ハンセン病家族国家賠償請求事件の控訴に関する要請書

内閣総理大臣 安倍晋三 様
厚生労働大臣 根本匠 様
法務大臣 山下貴司 様
文部科学大臣 柴山昌彦 様

ハンセン病家族国家賠償請求事件の控訴に関する要請書

全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
2019年6月28日、地方裁判所民事第2部合議A係は,ハンセン病家族国家賠償請求事件について,隔離政策等によってハンセン病患者の家族に対する差別被害を生じさせたのに,隔離政策等を廃止せず,また、1996年にらい予防法を廃止した以降も,より高い偏見差別を除去すべき義務を負っていたにもかかわらず,厚生大臣および厚生労働大臣,法務大臣,文部大臣および文部科学大臣において,偏見差別を除去すべき相応の措置を講じなかった過失があるとして,行政の責任を認める勝訴判決を言い渡しました。
ハンセン病問題の最終的な解決のためには,各大臣が家族も強制隔離政策の被害者であることを認め,速やかに被害を回復するための措置をとることが必要不可欠です。
つきましては,この判決を真摯に受け止め,控訴をしないでください。

2019年7月2日

障害者差別解消法の見直しに関する要望書

内閣府障害者政策委員長 殿
内閣府障害者制度改革担当室 御中

 日ごろより障害に基づく差別の解消の推進にご尽力くださり心より敬意を表しております。
 さて、障害者政策委員会では、障害に基づく差別の解消の推進に関する法律(以下、「障害者差別解消法」とする。)の施行3年後見直しに関する検討がおこなわれています。
 障害者差別解消法の施行3年後見直しが障害者の権利に関する条約の趣旨を鑑みたものとなるように下記の通り、ご要望を申し上げます。

1.差別の定義を盛り込むこと
 障害者差別解消法の見直しに際して、差別の定義を明記し、直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供を差別と定義し、その内容を明らかにしてください。

2.各則を盛り込むこと
 分野ごとに具体的な差別や合理的配慮の提供例を盛り込んだ各則を法文に盛り込んでください。

3.民間事業者も合理的配慮の提供を義務化すること
 民間事業者も合理的配慮の提供を義務化してください。併せて事業者に対して具体的にどのような合理的配慮を提供すれば良いのかについて相談できる窓口を設置してください。合理的配慮の提供に関する事業者や市民に対し普及啓発も行ってください。

4.紛争解決の仕組みと相談窓口の体制整備を行うこと
 政府から独立した裁判外紛争解決の仕組みをつくり、相手方との調整、調停を行う権限を持たせ、法律の実効性を担保することを求めます。その構成メンバーは、障害当事者団体、法律家等としてください。
 なお「差別していない」ことの立証責任は、この仕組みにおいて、差別したと訴えられた側に第一義的にあることとし、それを反証する権利は訴えた側にあることとしてください。
障害者差別解消法における相談体制については、障害者が地域の身近なところで安心して相談できる障害当事者が構成メンバーに加わったものにしてください。

5.司法救済をできるようにすること
 司法救済を妨げない裁判規範性のある規定を法律の中に位置付けてください。

6.立法府と司法府についても障害者差別解消法の対象とすること
 障害者差別解消法の対象が行政機関や民間事業者となっていることから、立法府や司法府についても法の対象とし、さらに実効性を高めてください。
以 上 

成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律の成立に関する声明

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 本日6月26日、第198回通常国会が閉会しました。本国会では、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律が成立しました。
 わたしたちは、本法案の審査は、欠格条項の見直しが進んだという表面上の成果のみで評価してはならず、障害者権利条約等の国際的動向や成年後見制度利用促進法に基づく政策の進捗状況などの中間評価が求められる点で通常の単独法案の審査とは一線を画するものであり、今回の法案審査を逃すと重大な課題が先送りにされることから反対の立場を取ってきました。
 今回の法案審査において立法府は、わたしたち当事者の声を聴き付帯決議を出すなどして、成年後見制度にかかわる諸課題に取り組む姿勢を示しました。そして、障害者権利条約に基づく締約国政府審査の結果・国連勧告に基づいて関連法令の見直しをおこない必要な措置を講ずるという内容の附帯決議を勝ちとりました。これだけのことが付帯決議に書き込まれたことは大きな成果であったと思います。
障害者権利条約に基づく締約国政府審査において障害者権利委員会から成年後見制度廃止の勧告を勝ちとることが当面の課題になります。2019年9月の事前質問の採択において成年後見制度の問題がしっかりと取り扱われるように共に闘いましょう。