内閣府障害者政策委員長 殿
内閣府障害者制度改革担当室 御中
日ごろより障害に基づく差別の解消の推進にご尽力くださり心より敬意を表しております。
さて、2020年1月27日に開催された第49回障害者政策委員会では、「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(案)」(以下、「意見(案)」とする。)が提出されました。当該意見書は、合理的配慮の提供義務を民間事業者にも適用させる以外の進展が見られず、結果として全体的に不十分であるとの印象を否めません。
障害者の権利に関する条約(以下、「障害者権利条約」とする。)の趣旨を鑑みたものとなるように下記の通り、意見を申し上げます。
記
1.障害に基づく差別の定義について
意見(案)は、「差別の定義・概念については、弾力的な対応が困難な法律で定義等を設けるのではなく、柔軟に見直すことのできる基本方針や対応指針等における記載を充実することにより対応することが適当」とされているが、障害者差別解消法の見直しに際しては、差別の定義を明記し、直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供を差別と定義し、その内容が明らかにされるべきです。
2.障害のある女性と障害のある子どもについて
障害のある女性や障害のある子どもに対する障害に基づく差別の解消を法律の明文に位置付けられるべきです。とくに障害のある女性や障害のある子どもに対する障害に基づく差別は、複合的なものや交差的なものが含まれうるため、啓発や研修による理解の促進が急務となっています。
3.民間事業者も合理的配慮の提供を義務化について
意見(案)は、民間事業者への合理的配慮の提供義務に前向きであり評価できます。
他方で、障害の合理的配慮についての促進策が、さらに求められます。地方自治体の取り組みでは、合理的配慮の提供を支援する助成制度が実施されています。たとえば、民間事業者、自治会、サークルなど民間団体が対象で、点字メニュー作成やスロープ等の購入、工事等にかかる費用を助成し、成果を上げています。民間事業者からの合理的配慮に関する相談機能を強化し、事業規模に鑑みて助成する仕組みを整備してください。
4.紛争解決の仕組みと相談窓口の体制整備について
意見(案)で指摘されているとおり、事業者に対して具体的にどのような合理的配慮を提供すれば良いのかについて相談できる窓口が設置される必要があります。しかし、意見(案)の建設的対話は、障害者等が社会的障壁を解消するための方法等を伝えるコミュニケーション力を身に付けることの重要性を基本方針等で明確化することとされており、政策として障害者側に挙証や能力を求める内容となっています。しかし、差別していないことの立証責任は、この仕組みにおいて、差別したと訴えられた側に第一義的にあることとし、それを反証する権利は訴えた側にあることとされるべきで、コミュニケーション力によって解決が目指されるべきではありません。
政府から独立した裁判外紛争解決の仕組みをつくり、相手方との調整、調停を行う権限を持たせる必要があります。その構成メンバーは、障害当事者団体、法律家等とされるべきです。
5.司法救済について
紛争防止のための取り組みをおこなってなお、紛争の解決に至らず司法救済に移らざるを得ない事例への支援に係る仕組みが必要です。また、司法救済を妨げない裁判規範性のある規定が法律の中に位置付けられる必要があります。
6.立法府と司法府について
最高裁判所、衆議院、参議院は対応要領を定めたが、内部指針にとどまり法的拘束力がありません。2016年5月には衆議院厚生労働委員会で筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性が、「やりとりに時間がかかる」として参考人招致を一度、取り消される事例が発生しました。このようなことが起こらないよう立法府や司法府についても障害者差別解消法の対象とされる必要があります。
以 上
◆障害者差別解消法の見直しに関する要望書
https://jngmdp.net/2019/07/01/20190701/