【緊急声明】救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドラインに対する見解

 2026年2月27日、終末期医療に関するガイドライン改訂委員会(日本集中治療医学会/日本救急医学会/日本循環器学会/日本緩和医療学会の4学会合同・伊藤香委員長)は、「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」(以下、「改訂ガイドライン」とする。)を公表し、医療関係者、患者、家族等、団体、行政関係者などを対象としたパブリックコメントの募集を開始しました。
 改訂ガイドライン案に対して即時撤回・抜本的再検討を求める立場から以下のとおり、見解を明らかにいたしますので、障害・難病関係団体におかれましては、万象繰り合わせて見解を明らかにされることを求めます。また、同4学会におかれては、患者・当事者の意見を重く受け止め、患者・当事者を交えて即時撤回と抜本的再検討を求めます。

⑴ 障害のある生存を苦痛と表現する差別性
 改訂ガイドライン案は、「患者本人の価値観の尊重」の名の下に、人工呼吸器装着や血液透析などが必要な障害をもって生きていくことを「苦痛」という言葉で表現し、生命維持治療を終了/差し控えの検討等について定めたものとなっています。これは、障害者をはじめとする治療技術の進歩によって長期生存が可能になった人々の生存を否定的なものと得ることを前提としており、ともすれば、旧優生保護法の過ちや津久井やまゆり園の植松聖死刑囚の犯行動機とも通底する危険性を孕んでいます。

⑵ 差別意識を内包した患者の価値観に対する無関心
 難病等によって障害者になった人の中には、「こんな状態で生きていたくない」と言う人たちがいます。私たちは、障害者なので、障害を持って生きることの辛さはとてもよくわかっています。しかし、だとしても「こんな状態」という言い方は、極めて差別的であると考えます。要は、「障害をもって生きていたくない」と主張しているに他ならないです。そして、そのような価値観に同調することも、集団で差別に同調していることに他ならないのだと考えます。

⑶ 司法的な課題
 判例においては、「終末期」であることが殺人罪等の成立を回避する要件のひとつであるとされてきました。「終末期」の範囲は、死期が切迫している状態とされてきました。そのため、人工呼吸器を装着することで長期生存が可能となり、障害者として予後を生きていける人は含まないものと考えられてきました。この考え方が歯止めとなって、障害者として生きていける人々の生命の法益が保護されてきました。
 しかし、改訂ガイドライン案は、終末期の概念を判例の蓄積を無視して、いたずらに曖昧なものへと書きかえています。これによって従来の判例では、対象とれてこなかった障害者らが、新たに生命維持治療終了/差し控えによって死なす対象へとなりました。しかし、学会が独自に判例を読み替えることなどできようはずもありません。そうなると、改訂ガイドライン案の通りに運用した場合、同意殺人罪が成立し得る余地が相当程度に残されることになります。少なくとも現時点では記載すべき内容ではないと考えます。

⑷ 自殺との整合性
 全身が動かない人たちは、たびたび「自殺することもできない」と口にします。自殺したい人の気持ちは、とても理解できます。また、自殺したくてもできない辛さもよくわかります。しかし、自殺は、自殺対策基本法や精神保健福祉法において防止されるべきものと位置付けられており、その意味では、自殺はするべきじゃないし、自殺はできなくていいのです。誰かから涙ながらに死にたいという訴えがあったとしても、気持ちを受け止めるまでにとどめて、本当に死なすための策を検討してはなりません。

⑸ 自傷のおそれを要件とした入院治療との整合性
 現在、精神保健福祉法に基づく入院制度の見直しが進められています。現行制度においては、自傷の恐れが入院治療開始の要件とされています。そのため、生命維持治療終了/差し控えについては、自傷のおそれ要件との関係で整合性が問われることになると考えます。
 なお、今後は判断力の有無にかかわらず必要な治療が開始されるような仕組みに改められるべきであり、医療同意が有効となる範囲について医療制度全般との整合性が課題になります。その意味では、少なくとも、「目の前の患者が望んでいるから」だけでは、生命を左右するようなことを決める理由にはなり得ないと考えられるべきです。

⑹ 障害者権利条約の趣旨に反する内容
 改訂ガイドライン案では、患者本人の価値観などを参考にしつつも、つまるところは最善の利益(Best interest)に基づく代理決定が前提とされています。最善の利益は、障害者権利条約第12条第4項の趣旨に違反するものとされています。改訂ガイドライン案は、最善の利益に基づく代行決定を前提としているため、障害者権利条約の趣旨に反しています。

⑺ 旧優生保護法違憲訴訟の基本合意に基づく再発防止の観点の不在
 2024年7月3日、最高裁判所は旧優生保護法を成立時から違憲であったとして賠償を命じる決定を下しました。政府は、旧優生保護法問題の全面的な解決に向けた施策等の検討を定めた基本合意を締結して関連訴訟とも和解しました。
 基本合意書には、旧優生保護法問題の全面的な解決に向けた恒久対策として、①被害者の被害回復、②真相・原因究明、③偏見・差別の根絶のための施策実施が盛り込まれています。改訂ガイドライン案は、旧優生保護法問題を省みておらず、同様の問題を引き起こしていることに無自覚と言わざるを得ません。旧優生保護法も、当時は障害者を哀れむ姿勢から、よかれと思って優生手術等がおこなわれてきました。障害を持って生きることを苦痛であるとして、死ねるようにするだとか、はじめから産まれないようにするだとか、その考え方こそが差別的だと思います。
 なお、旧優生保護法を国会に提出した議員と日本安楽死協会を創設した人物は同一人物であり、思想的にも通底しています。

⑻ 障害者が暮らしにくい社会をつくるもの
 改訂ガイドライン案下では、人工呼吸器を装着する人が増えるのではないかと思います。その一方で人工呼吸器や血液透析を途中でやめる人が相当数でてくることになると思います。結果として、障害を持って生きる人の総数は、今以上に減っていくことが懸念されます。障害者の総数が減れば、障害者との接点や配慮する機会もあわせて減っていくことになるため、社会のありようも健常者中心に傾いていきます。時間を経ることで社会は、障害者がいるということを意識しなくなってゆき、標準的な人間像から漏れた人が生きずらい社会ができあがっていきます。
 障害を持って地域生活する人が増えていくことこそが、障害者が住みやすい社会へとあり方を変えていくことにつながります。なので、苦痛があろうとも、そこに障害者が生きて存在していることこそが、とても重要なことなのです。
 以 上

医療法の一部を改正する法律(案)に係る全国「精神病」者集団の要望

(1)要望の趣旨
全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人・団体で構成される全国組
織です。今国会で審議予定の医療法改正法案に対しては、病床数削減への懸念の声が散見
されます。しかし、精神病床だけは、地域医療を拡充させるためにも積極的にダウンサイ
ジングしていかなければなりません。

(2)精神科の長期入院問題
・日本の精神病床は、他国と比べても突出して多いです。
・入院医療が必要ないのに長期入院を余儀なくされている人が約7万人います。
・地域移行を進めても、新たな入院者が長期入院になるのなら意味がありません。
・そのため、精神病床を減らして訪問介護などの障害福祉を充実させる必要があります。

(3)医療法改正案への要望
・医療法改正法案の目玉となる新地域医療構想では、新たに精神科医療が対象になりま
す。精神病床のダウンサイジングが推進されるため、長期入院問題の解決へと一歩前進す
ることになります。
・しかし、今回は非稼働病床数程度(全精神病床数が約32万で稼働率約8割のため約5万
床が稼働していない病床となる)の精神病床の削減しか予定されていません。
・長期入院の人が退院して空いた病床が削減されていくわけではないので、長期入院問題
の根本的な解決に向かうものとまではなり得ていません。
・より積極的かつ計画的な精神病床数削減(10万床以上)を求めます。
 以 上

精神科医療提供体制に関する意見書

Ⅰ 障害者が望む社会/障害者として目指していくべき社会
・私たち障害者は、障害を持ったまま障害の有無にかかわらず共に生きる包摂社会を目指している。

Ⅱ 包摂社会における医療
・包摂社会における医療は、障害を持った状態での生存・生活を可能とするためのものである。主な効果としては、生存の危機回避と、その範囲における苦痛の除去である。
・具体的には、治らないものを無理に治そうとしないこと、障害を持って生きる選択肢を放棄する患者から言われるがまま治療中断しないこと、障害を理由に医療機関から受入拒否されないこと、障害を理由に他の者と異なる同意手続きを強いないことなどが求められることになる。

Ⅲ 入院医療提供体制への意見
⑴主たる対象者像
(前提の確認)
・医療の目的は、生命の危機回避や苦痛の除去である。言い換えれば、社会規範への適合・社会防衛は目指すべきではない。
(治療反応と健康保険原理)
・治療反応性のない者については、慢性期・療養と称して入院医療の対象にするべきではない。治療反応がないのにもかかわらず、国民一人一人から徴収して成り立つ健康保険料を消化して入院医療にとどめおくことは、健康保険原理上、認められるべきものではない。
(合併症)
・合併症に対しては、それぞれの疾患の入院医療の必要性に応じて入院させることとする。例えば、強度行動障害があって透析で入院医療が必要な患者の場合、従来なら旧滝山病院のような透析が受けられる精神科病院に入院させていたわけであるが、これを改めて、入院中の重度訪問介護を利用しながら透析科・泌尿器科に入院し、精神科医が訪問診療するなど、疾患やニーズに対応したかたちで入院医療を提供することが求められる。
(強度行動障害)
・強度行動障害については、基本的に障害福祉サービス等による地域生活支援の対象に位置付けることとし、入院医療に頼らずとも地域生活できるようにしていく必要がある。強度行動障害をもっぱら入院医療の対象にすることは、精神科医療を社会防衛のために使うことと等しく、かつ、精神科病院に依存することで地域と精神障害者の関わりが希薄になり、共生社会の実現を困難せしめることになる。
(認知症)
・認知症については、もっぱら入院医療に依存することがないよう地域生活の対象と位置付けられるべきである。例えば、初期症状や軽度の場合、通院医療を中心とした地域生活支援が推奨されるべきである。また、中核症状が重症ではないのに、行動・心理症状のみが顕著とされる場合についても、地域で支援を受けながら通院医療とすることが推進されるべきである。

⑵入院医療機能
(入院医療機能の種類)
・入院医療機能は、急性期医療機能と回復期医療機能の2類型が望ましい。
急性機機能:救急を含む急性期の時期に医療を提供し早期の退院を目指す機能。
回復期機能:急性期を超えた患者に対して医療を提供し早期の退院を目指す機能。
(慢性期機能のダウンサイジング)
・慢性期機能については、比較的短期間のうちに大幅に縮減し、残された病床も回復期機能へと移行させるべきである。
・精神科医療を地域医療構想の対象に位置付けるとともに、病床機能報告制度を活用しながら縮減すべき慢性期機能の病床を効果的にダウンサイジングできるようにするべきである。

⑶人員
・良質な精神科医療の提供には、入院者と話しをする時間が必要であり、そのための人員が不可欠となる。入院基本料には、7対1の新設する必要がある。
・精神疾患に対応した重症度医療看護必要度判定基準を作成する必要がある。
・人員標準は見直すべきである。なお、人員標準の見直しは、精神医療だけを別枠としてきた政策構造を象徴するものであり、この仕組みを見直すことによる社会的影響こそが重要なのであって、直接的に現実の人員を増やせるか否かを問題にするまでもなく見直すべきである。
・入院医療については、精神科病院だけでは対応が困難になることもあるため、病院外との連携を推進する必要がある。

⑷病床数と立地条件
(基準病床算定式)
・基準病床算定式については、社会的入院者が慢性期入院医療需要の対象に含まれないように慢性期入院医療需要の考え方を抜本的に見直すとともに、病床のダウンサイジングが適切に進むようなものへと改めるべきである。
(郊外にある実病床と病床数の関係)
・郊外(山奥)に建設された精神科病院が保有する病床については、地域からの隔絶が懸念されるため原則として使わないこととし、都道府県政令市・圏域ごとの必要病床数の範囲内で市街地に移設するなどして稼働できる仕組みを導入する必要がある。

⑸非自発的入院の縮減
(丁寧な説得)
・入院医療が必要な患者に対しては、本人の同意による入院が基本であることから、第一に医師が丁寧に説得をするところからはじめるべきである。また、本人の同意による入院の説得が要件化されるか、もしくは、報酬等で評価される仕組みが必要である。
(医療計画の指標例)
・第8次医療計画の指標例には、非自発的入院の縮減のための指標例が新設されるべきである。
(任意入院の課題)
・虐待等の不祥事が発生している病院では、長期入院の任意入院者が多い傾向にあるため、任意入院に対しても第三者の目が入るような仕組みが必要である。

⑹長期入院の解消
(早期退院率)
・障害福祉計画に係る国の指針の早期退院率については、第7期計画の91%から98%以上へと改めるべきである。新規入院者のうち9%が新たに1年以上長期入院になるような指標は、政策の方向性を捉えにくくするものであり極めて問題である。
(地域医療介護総合確保基金の活用)
・地域医療介護総合確保基金を活用して精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築や病床のダウンサイジングを推進するべきである。
(報酬による評価)
・特定入院料は、精神療養病棟入院料や認知症治療病棟入院料の請求回数が突出して多いが、これらは、入院医療の対象にすべきでない人々に対する長期入院を報酬で後押ししているきらいが否めないため、廃止すべきである。

Ⅳ 通院医療
⑴主たる対象者像
・通院医療の主たる対象者は、入院の必要性がない精神疾患で定期的ない受診を要する者である。

⑵ 診察を受けにくい状況
・精神科通院医療を受けたくとも受けられない人々がいる。例えば、離島や医療過疎地など医師の偏在に起因するものや出張過多など患者のニーズに起因するもの、外出恐怖や昼夜逆転など疾患に起因するものなどがある。また、地域によっては、初診待機が数ヶ月にのぼる状況がある。

⑶ 方策
(医師の偏在)
・医療過疎問題については、医師の偏在を解消する必要がある。
(受診困難)
・離島をはじめとする過疎地、昼夜逆転や強迫観念等に伴う外出困難、患者の移動過多については、オンライン診療の普及が有効である。
(初診待機)
・初診待機については、オンライン診療による効果が認められる(参考資料参照)ため、オンライン診療を初診から認められるよう改めるべきである。少なくとも、特段のエビデンスが示されているわけでもないのに他科と精神科でオンライン診療の対応をわけるべきではない。
(総合診療医との連携)
・総合診療医がいる医療過疎地については、総合診療医との連携が不可欠である。なお、総合診療医は、入院医療との提携に偏重するきらいがあるため、住み慣れた地域でオンライン精神療法と総合診療医の対面による診療を組み合わせるなどして対応することが推奨されるべきである。

Ⅴ 医療提供体制の根拠法令の整備
⑴基本的な考え方
・上述の医療提供体制は、精神科医療と一般医療と同質の枠組みにした法体系の下でなければ提供できないものである。よって、医療提供体制の根拠法令については、精神科と他科との政策構造上の隔絶・分断の解消を前提に整備されるべきである。

⑵精神科と他科の整合性
(精神科医療の一般医療への編入)
・精神科医療を地域医療構想及び病床機能報告制度の対象都市、地域医療介護総合確保基金を使えるようにする必要がある。基準病床算定式については、他科の数式に近づける必要がある。報酬体系についても一般病床の入院基本料の算定方法に近づける必要がある。そして、精神保健及び精神障碍者福祉に関する法律を撤廃し、医療法の枠内で対応できるように医療制度を改革する必要がある。
(医療基本法の制定)
・患者の権利を定めた医療基本法を制定し、医療全体の在り方を見直す中で精神科の位置づけを明らかにしていく必要がある。

⑶同意のあり方
(非自発的入院制度から非同意入院へ)
・医療は、身体及び生命の法益を保護する行為であるため、侵襲の違法性が阻却され得る。ときには、同意が得られない人への非同意による医療保障も必要となる。しかし、判断能力欠如等を理由とした非同意の入院手続きを精神科病院と他科とでわける合理性はない。よって、精神障害者に特化した非自発的入院制度(医療保護入院・措置入院など)は廃止されるべきであり、全ての疾患に共通した非同意入院へと入院制度を改める必要がある。
(判断能力)
・治療が必要なのに同意が得られない場合のバリエーションとしては、意識不明や判断能力欠如などがある。現行では、意識不明を理由とした非同意手続きは緊急避難の位置付けとなり、判断能力欠如を理由とした非同意手続きは、通常なら代諾か緊急避難の位置付けとなる。なお、精神疾患が精神科病院に入院する場合に限り、精神保健指定医が判断による非自発的入院手続きとなる。しかし、身体及び生命の法益保護のための医療の必要性が一定程度自明である以上は、同意が得られない状況別に対応策を講じる必要性はなく、あくまで「医療(身体及び生命の保護)が必要なのに同意が得られない状態」という単一の要件として捉え、その場合に共通した医療保障手続きが必要とされる。
・そもそも、障害の有無にかかわらず、人間の判断能力はばらつきがあるわけであり、そのばらつきを埋めうるような個別的な支援こそ必要なのであって、判断能力の有無を第三者が判断して別枠対応とする仕組みは不要である。
(非同意入院が必要とされる精神疾患像の具体化)
・非同意の入院医療が必要なほど身体及び生命が危機的状態である精神疾患の状態像がどのようなものなのかを明らかにする必要がある。少なくとも、現時点で非自発的入院になっている人の大部分が非同意の入院医療が必要なほど身体及び生命が危機的状態ではないものと考える。

(参考資料)

第8次医療計画の中間見直しに関する要望書

厚生労働省
医政局地域医療計画課長 西嶋康浩 様
社会・援護局障害保健福祉部
  精神・障害保健課長 海老名英治 様

余寒の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。第8次医療計画の中間見直しが、障害者権利条約の趣旨を鑑みたものになるように下記の通り要望します。

⑴ 非自発的入院の縮減に係る指標例の設定
 第8次医療計画の中間見直しにおいては、非自発的入院を縮減していくために、非自発的入院の件数の動態を明らかにするような指標例を新設してください。

⑵ 基準病床算定式
 基準病床算定式については、社会的入院者が慢性期入院医療需要の対象に含まれないように慢性期入院医療需要の考え方を抜本的に見直すとともに、病床のダウサイジングが適切に進むようなものへと改めてください。

⑶ 実病床と基準病床
 郊外(山奥)に建設された精神科病院が保有する病床については、地域からの隔絶が懸念されるため原則として使わないこととし、都道府県政令市・圏域ごとの必要病床数の範囲内で市街地に移設するなどして稼働できる仕組みを導入してください。

第8期障害福祉計画等の見直しに関する要望書

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
 障害福祉課長    大竹 雄二 様
 精神・障害保健課長 海老名英治 様

余寒の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。障害福祉計画及び障害児福祉計画等の見直しが、障害者権利条約の趣旨を鑑みたものになるように下記の通り要望します。

⑴ 精神病床における早期退院率については、入院後三か月時点が68.9%、入院後六か月時点が84.5%、入院後一年時点が91.0%であり、第6期計画と比較して指標が下がっている。この指標は、入院者約10人中1人が新たな1年以上長期入院者となる計算であり不適切と考える。計画の上で長期入院を再生産し続けていることになるため、最低でも入院後一年時点の早期退院率を98%以上にする必要がある。

⑵ 一年以上長期入院数のうち約7割は、3年後も一年以上長期入院者数として残ることになる。これは、⑴を踏まえると死亡退院と相まって新たな長期入院を再生産しながら入院中心医療を継続するかたちになっているものと考える。一年以上長期入院者は、少なくとも3年間で約5割にまで減らす必要がある。
以 上

「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」に関する意見

(1)改正の趣旨の加筆及び今後の検討の在り方について
この度の民法(成年後見等関係)等の改正に向けた検討は、「民法(成年後見等関係)等の改正に関する 中間試案の補足説明による解説では不十分であり、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律附帯決議には、「障害者の権利に関する条約第三十九条による障害者の権利に関する委員会からの提案及び一般的な性格を有する勧告が行われたときには、障害者を代表する団体の参画の下で、当該提案及び勧告に基づく現状の問題点の把握を行い、関連法制度の見直しを始めとする必要な措置を講ずること。」とあり、第1回政府報告に関する障害者権利委員会の総括所見では、「一般的意見第1号(2014年)法律の前にひとしく認められることを想起しつつ、(略)意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が、法律の前にひとしく認められる権利を保障するために民法を改正すること。」との勧告がなされている。言わずもがな附帯決議には政治拘束力があり、その政治拘束力に裏付けられたかたちで国連からの勧告に基づく民法改正の検討がなされるべきところである。この点を踏まえて改正の趣旨や検討の枠組みを加筆、再考するべきである。

(2)成年後見制度の最小化に向けた枠組みの不在
 本来なら成年後見制度によらないかたちで支援すべき事案にまでも成年後見開始の審判に至った事例が非常に多く散見される。第1回政府報告に関する障害者権利委員会の総括所見は、補充性要件に基づく最終選択肢(last resort)さえをも認めない立場であるが、この度の「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」には後見開始の審判を減らす観点が目的的にも仕組み的にも欠如していると言わざるを得ない。
以上から、本来なら成年後見制度によらないかたちで支援すべき事案の相当数が成年後見開始の審判に至っている現状を鑑みて、成年後見開始の審判によらないかたちで適切な支援が受けられるよう、何らかの仕組みの検討を論点として加えるべきである。

(3)各論
 各論については、結論が出ていないものも含まれるため、引き続き動向を見ながら意見書をまとめていきたいと考える。
以 上 

障害年金申請の不支給判定が2023年度から2024年度にかけて2倍に増えた問題に関する緊急声明

 全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 2025年4月28日、共同通信社は、障害年金申請の不支給判定が2023年度から2024年度にかけて2倍以上に急増し、約3万人にまで達したことを報じました。この事実は、共同通信社が入手した日本年金機構の内部資料によって発覚したものであり、首都圏の判定医140人それぞれについて傾向と対策のような文書を内部で作成していたことがわかりました。文書の中には「こちら(職員側)であらかじめ(判定を)決めておく」とも書かれており、同機構が判定医を誘導するように示唆したことがわかります。このことから、同機構は判定医によって障害年金判定の有無に差が生じている事実を認識していたということになります。そして、本来もらえるべき人がもらえていないという問題が生じていることになります。全国「精神病」者集団としても同様の相談を複数件受けて確認しています。これでは、適切に審査できていないことを疑わざるを得ません。
 そもそも、障害年金制度は半世紀にわたって大きな見直しが行われておらず、障害者差別解消法が成立した後の今日から見れば、時代錯誤であると言わざるを得ません。認定基準は、医学モデルに依拠しつつも抽象度が高く、職員側の都合が通りやすい状況を作っています。以上から、障害当事者団体の決定過程からの参加をしつつ、法改正を含めた必要な措置を講じるよう強く求めていきます。

神田裕子著『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)出版に対する緊急抗議声明

 2025年4月24日、三笠書房より神田裕子著『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』が出版されました。本書には、精神障害者に対する差別を彷彿させる表現が含まれており、全国「精神病」者集団としては、表現の自由を範囲を超えたもので看過できないと考えています。
 本書は、「精神疾患者」を「困った人」と呼称し、健常者が精神疾患者の尻拭いをして辟易している趣旨の表現が用いられています。本書は、一貫して「困った人」の行為を「疾病」や「機能障害」と関連付けており、かつ、それらの原因を疾病や障害をもった個人にのみ帰属させています。「困った人」の行為は、疾病や機能障害と関連づけている点で単なる個性とは一線を画すものであり、それゆえに疾病や障害に基づく差別にあたると考えます。このような特性を持つ人々を一方的に「困った人」と表現することは、障害者への差別や偏見を助長していくおそれがあります。日本では、障害者差別解消法が施行され、すでに事業者にも障害者への合理的配慮の提供が求められているわけですが、本書の表現は法の趣旨や社会的包摂の理念に反したものとなっています。そして、なによりも精神障害者ひとりひとりを深く傷つける表現です。

 著者の神田裕子氏は、障害者差別解消法において合理的配慮が求められている事実等にも疎く、いわばゴシップの作家なのだと思います。本書がゴシップな読物として出版される分には、読み手もそのように受容していくだろうし、それでよいと思います。しかし、神田氏は「スーパーカウンセラー」や「カサンドラ症候群専門」を自称しており、本書はあたかも専門家によって執筆された書籍であることを装っています。
 カウンセラーは、国家資格である公認心理師の「独占業務」とはされておらず、資格がなくても誰でも名乗ることができます。しかし、このことは、一般的に知られていないため、社会通念上、スーパーカウンセラーと冠した書籍が出版されると、読者に「内容に専門性があり信頼できる」と優良誤認的な理解をさせてしまうおそれがあります。
 さらに「カサンドラ症候群専門」の自称は、輪をかけて問題であると考えます。カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群の伴侶を持った配偶者が精神的、身体的に体調を崩すとする仮説のことです。しかし、カサンドラ症候群は、医学的に認められた概念ではなく、現在のICD(国際疾病分類)やDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)等ではまったく認められていません。このような医学的に認められていない概念を用いて、さも、専門家のように装って出版することも極めて問題であると考えます。
 本書による精神障害者差別が優良誤認的な装いによって拡大していくことを深刻に憂慮します。そして、その被害者は、わたちたち精神障害者なのです。出版社・編集者は、校閲の段階で最大限に注意し、改められるべき表現については著者に修正を求めるべきであったと考えます。以上から、神田裕子著『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)を差別図書と位置付け抗議します。

知的障害者等による臓器提供の取扱いの見直しに係る要望書(要望)

厚生労働省健康・生活衛生局難病対策課
移植医療対策推進室長 島田志帆 様

 厳寒の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 このたび厚生労働省は、「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)」(平成9年10月8日付け健医発第1329号厚生省保健医療局長通知別紙)の「知的障害者等の臓器提供に関する有効な意思表示が困難となる障害を有する者であることが判明した場合においては、当面、当該者からの臓器摘出は見合わせること」とする規定を削除し、脳死状態の知的障害者等が家族や親しい友人、ケアにあたっている専門家などが本人の意思を推定した上で提供できるように見直すなどの方針をまとめました。
 この方針は、「知的障害等を理由に臓器提供の意思が尊重されないのは差別的ではないか」という形式面にとらわれた指摘をもとにして進められてきたものですが、本来、知的障害者等に対する必要な支援策を講じないまま、臓器提供という生命及び身体にかかわる重大な決断を本人や家族・支援者等に手放しで委ねることは、たいへん危険なことであると考えます。
 つきましては、障害者の権利に関する条約の趣旨を鑑みて下記について要望します。

一 「知的障害者等の臓器提供に関する有効な意思表示が困難となる障害を有する者であることが判明した場合においては、当面、当該者からの臓器摘出は見合わせる」旨の現行規を存置し、削除しないよう求める。

二 「知的障害等を理由に臓器提供の意思が尊重されないのは差別的ではないか」との指摘は、障害者権利条約第5条第4項に基づく「障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置」が差別に当たらないという規定が踏まえられていない。そのため、同条約に規定された差別と解するべきではない旨の確認を求める。

三 知的障害者等の臓器提供に関する有効な意思表示が困難となる障害を有する者の支援のあり方については、障害者権利条約第12条第3項に基づく法的能力の行使に当たって必要な支援の体制が構築された後に検討されるべきである。支援体制がないのなら改正を見送るべきであり、支援の構築と引き換えに改正を先取りしてよいなどとは考えない。これらについて確認を求める。
 以 上

障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画の運用に係る要望書(要望)

障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部長 石破茂 様

厳寒の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
2024年7月3日、最高裁判所判決は旧優生保護法の被害について、国に損害賠償の支払いを命じる画期的な判決を言いわたしました。2024年7月には、内閣府に障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部が設置され、同年12月に障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画が策定されました。
つきまして同行動計画の実施にあたっては、下記に留意しつつ運用してくださいますようお願い申し上げます。

一 障害者の権利に関する委員会一般的意見第7号パラグラフ11には、障害者を代表する団体は障害者の権利に関する条約の実施に協力する義務があるとされる。パラレルレポートを提出し、資料建設的対話の傍聴に出席した精神障害者の団体は、全国「精神病」者集団である。しかし、これまで全国「精神病」者集団には、ヒアリングがおこなわれてきていない。今後は、精神障害者にかかわる論点を抽出するにあたって各省庁横断して必ず全国「精神病」者集団に対するヒアリングをおこなうべきである。

二 旧優生保護法の全面解決に向けては、旧優生保護法によって人々に植え付けられた差別意識の影響による諸問題の解決(母体保護法下における同様の被害や障害者が生きることに否定的な価値を付与した上での医療中断、精神科病院への非自発的入院制度の成立過程の問題など)が必要であることを確認するべきである。
以 上