2024年4月1日施行の精神保健福祉法に関する要望書

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
精神・障害保健課長 小林 秀幸 様

 日ごろより精神障害者の地域生活、施策にご尽力くださり心より敬意を表しております。
 さて、昨年秋の臨時国会で精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、「精神保健福祉法」とする。)が改正され、2024年4月1日の施行に向けて準備が進められております。
 これらが精神障害者の生活に係る法制度が障害者の権利に関する条約(以下、「障害者権利条約」とする。)の趣旨を鑑みたものとなるように、下記のとおり要望を申し上げます。

(1)医療保護入院の期限
省令に定める医療保護入院の期限は、3か月以下としてください。現在、障害福祉計画に係る国の指針や精神医療審査会の事務量などを鑑みると6か月が妥当との見方が濃厚ですが、入院基本料のいわゆる90日ルールや障害福祉計画に係る国の指針を踏まえて3ヵ月としてください。

(2)医療保護入院の告知
 障害者権利条約、自由権規約第9条に係る一般的意見第35号、被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)に依拠したかたちで告知される仕組みにしてください。また、告知する内容としては、法律上の入院形態に加えて、診断やその根拠となる所見が含まれるようにしてください。

(3)家族等の首長同意による医療保護入院
首長同意は、市町村による家族等の不同意の捏造が起こらないようにしてください。滝山病院問題においては、所沢市が連絡の取れる家族に対して「音信不通である」と偽って首長同意にして、生活保護受給の上で医療保護入院させていたことが発覚しました。現在、所沢市は逮捕監禁罪で告訴されています。滝山病院問題の反省を踏まえたものにする必要があります。

(4)精神医療審査会運営マニュアルの改正
期限制度の導入に伴う精神医療審査会の事務量増加を鑑みて、審査会の事務を円滑にするような精神医療審査会運営マニュアルの改正をしてください。

(5)虐待防止
 障害者虐待防止法第31条に基づく間接的防止措置については、障害者権利条約や社会モデル(人権モデル)に係る内容を研修に入れること及び、当事者を講師にすること(映像コンテンツ含む)を強く推奨してください。
障害者虐待防止委員会には、利害関係のない外部委員として法律家や当事者を複数名いれることを推奨してください。
2024年4月1日施行の法第40条の8に基づく調査及び研究については、フレッシュエアなど国際人権法に基づく最低限の基準が満たされているかどうかを明らかにする内容を含むこと、処遇と虐待のグレーゾーンとみなされがちな通報についても事例の収集をおこなうこと、調査で明らかになった事例を研修に反映させることをしてください。
 そして、障害者虐待防止法のスキームとして通報があった場合の処理については、市町村としての処理と都道府県の処理とそれぞれを整理してください。また、精神科病院における虐待の通報に係るデータは、同法第40条の8の調査及び研究に丸投げせずに、障害者虐待防止法の枠組みでも引き続き補足する範囲を決めてデータ収集を行えるようにしてください。
 以 上