【声明】身体的拘束告示改正について

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 精神科病院における身体的拘束は、2006年から2016年の10年間で2倍に増加し、その後も高止まりし続けていることから政策的な解決が必要であると考えて取り組んできました。「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」においては、当面の方策として第37条第1項大臣基準(告示)の「不穏及び多動が顕著な場合」という要件の削除を要求しましたが、病院団体からの強い反対があり、文言の整理にとどまることになりました。また、整理された文言の案文には、「検査処置」や「患者の治療困難」などの従来の要件にはなかったと考えられるものが挿入され、事実上の緩和になるのではないかといった反対意見も出てきました。やがて、病院団体は「患者の治療困難」を入れないなら告示改正自体を阻止すると言い出し、精神科医療の身体拘束を考える会は「患者の治療困難」を入れることにしかならないから告示改正は阻止するべきだと言い出しました。
 さらに精神科医療の身体拘束を考える会は「不穏多動要件の削除を主張しない」という方針を呼びかけ団体への相談もなく強行しました。結果として本来の目的であった「不穏多動を要件として拘束できるとする規定の削除」は、運動内でコンセンサスを得ることができず、あっけなく若干の修正を経て残されることになりました。障害当事者の意見を無視して、不穏多動要件の削除を主張せず、結果として不穏多動要件を告示に残した罪は重いと言わざるを得ません。
 やむを得ず、全国「精神病」者集団は、精神科病院における身体的拘束の縮減に向けた当面の政策として、「患者の治療困難」という文言を用いずに切迫性・非代替性・一時性の3要件の明確化に係る告示改正を要求することにしました。その一方で障害者権利条約の初回政府審査に係る総括所見において障害を理由とした身体拘束の廃止が勧告されたため、今後の検討事項に加えることを要求していきました。
 結果として、全国「精神病」者集団の意見が反映され、①患者の治療困難を用いないこと、②一時性、切迫性、非代替性の要件を明確にすること、③勧告に従って精神障害を理由とした身体拘束を廃止するための検討を今後おこなうことの3点が実現する運びとなりました。今後は、勧告に従ったかたちで精神障害を理由とした身体拘束の廃止のための見直しを実現すべく、更なる取り組みを続けていきます。