第37条第1項大臣基準(告示)改正に関する要望書

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
精神・障害保健課長 林修一郎 様

 日ごろより精神障害者の地域生活、施策にご尽力くださり心より敬意を表しております。
第37条第1項大臣基準(告示)改正に関して要望をとりまとめました。
 障害者権利条約の趣旨を鑑みたものになるよう、下記の通り要望いたします。

1.告示全体の基本的な考え方
 告示全体の「基本的な考え方」については、次の文言を入れてください。
 初回政府審査にかかわる総括所見では、精神科病院における障害者の隔離、身体拘束、化学的拘束など、そのような行為を正当化する法律についての懸念が示され、不当な扱いを生み出しているすべての法的規定を廃止することが勧告された。障害者権利条約の実施について講ずるべき措置の検討結果が出されるまでの当面の間は、不適切な身体的拘束等の行動制限をゼロにするための取り組みを本告示の下で進めていくことが必要である。

2.書きぶり・表現ぶり
 本告示は、行動制限できる場合の条件を提示したものとなっています。しかし、医事法理上は、侵襲等が諸手続きによって免責されるものと考えられています。このことから、本告示は、「行動制限できる」場合の条件を提示したかたちではなく、諸条件を満たさなければ行動制限できないという書きぶり・表現ぶりへと改めてください。

現行告示・・・また、処遇に当たつて、患者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を患者にできる限り説明して制限を行うよう努めるとともに、その制限は患者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとする。
当面の修正に係る提案例・・・また、処遇に当たつて、患者の自由の制限が必要と考えられる場合においても、その旨を患者に説明するとともに、その制限は本告示を遵守し最も制限の少ない方法によらなければ、おこなってはならないものである。

3.身体的拘束の対象となる患者に関する事項(多動不穏要件の削除)
 多動又は不穏が顕著な場合の要件(以下、「多動不穏要件」とする。)は、これまで単に多動又は不穏というだけで身体的拘束を開始してよいとの誤解を招いてきた側面があるため削除してください。
 著しく不適切な身体的拘束に係る事例の中には、多動又は不穏の症状を呈したというだけで――三要件を満たさないのにもかかわらず――身体的拘束の指示に至ったというものが散見されます。また、薬物療法の副作用の影響によるもので運動亢進症状によらない通常の錐体外路症状の運動過多を「多動」と位置付けて身体的拘束の対象とする事例なども散見されます。もっとも、錐体外路症状に伴った内的不穏があるとされれば、道理が立ち得るわけですが、そのこと自体、多動不穏要件が曖昧であると当事者団体が主張する理由となっています。
 加えて、多動不穏要件は、切迫性、非代替性、一時性の三要件と異なり、具体的な症状を示唆している点で異質なものとなっています。

4.身体的拘束の対象となる患者に関する事項(三要件の明確化)
 身体的拘束の対象となる患者に関する事項には、切迫性、非代替性、一時性の三要件を文章に溶け込ませるのではなく、要件であることがわかるように列挙的に明確化してください。

当面の修正に係る提案例
(一)身体的拘束の対象となる患者は、次の各号に掲げられた要件にすべて該当すると認められる患者である。なお、いずれかの要件を欠いた時点で速やかに身体的拘束を解除しなければならない。
ア 切迫性 自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合及び精神障害のために、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがあること。
イ 非代替性 あらゆる策を講じても身体的拘束以外によい代替方法がなく、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われること。
ウ 一時性 早期に他の方法に切り替えること。

5.身体的拘束の基本的な考え方
 従来、身体的拘束に該当しない抑制・固定とされてきたものの中には、身体的拘束に位置付けられるべきものが含まれていることを確認できるようにください。また、身体的拘束に該当しない抑制・固定においても、患者の同意を得ない場合には、切迫性、非代替性、一時性の三要件が適用されるという考えを明文化してください。

6.身体的拘束を行う理由の告知
 身体的拘束をおこなう理由の告知は、「可能な限り」「努力」などの言葉を含めず、知らせることにしてください。

当面の修正に係る提案例
三 遵守事項
(一) 身体的拘束に当たつては、当該患者に対して身体的拘束を行う理由を知らせるとともに、身体的拘束を行つた旨及びその理由並びに身体的拘束を開始した日時及び解除した日時を診療録に記載するものとする。

7.通信及び面会について
 携帯電話及びスマートフォン等のタブレット端末による通信は、告示の対象であることがわかるようにしてください。また。基本的な考え方には、携帯電話・スマートフォンの一律的な持ち込み禁止は原則としてあってはならず、仮に院内一律持込禁止の措置を講じていたとしても通信制限の手続きの対象となることがわかるようにしてください。