医療法人財団兵庫錦秀会神出病院における虐待・暴力事件に関して(声明)

                                                                                                              2020年3月18日

 

医療法人財団兵庫錦秀会神出病院における虐待・暴力事件に関して(声明)

 

全国「精神病」者集団

 

私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織である。

医療法人財団兵庫錦秀会神出病院(兵庫県神戸市西区)において、入院患者対して虐待・暴行を行ったとして、看護師ら6人が2020年3月4日に逮捕された。一連の報道によると、看護師らは、患者同士でキスやセックスを強要させその様子を動画撮影していた。当事者が経験した屈辱を知るに私たちの怒りの炎は消えることはない。患者への献身が期待されているはずの看護を担う者たちよ、恥を知れ。

本事件は、被疑者の別件での刑事事件が発端となり明るみに出てきた。これはまさに精神科医療の自浄作用の限界の露呈そのものである。昨年の11月には、神戸市は病院への実地指導をしているが、これだけの大問題を把握することはできなかった。監督者としての行政の責任も極めて重い。事件の真相究明と被害者の救済及びこのような事件を二度と生じさせいような厳格なチェック機能を整備することを強く求めたい。

神出病院は、近隣の病院群で市民グループの訪問活動を拒絶し続けてきたと聞く。地域移行が潮流とされる時代においてもなお、密室的・収容的な精神科病院は、数多い。密室の隠ぺい体質を有している病院内ではこのような事案は氷山の一角に過ぎないのかもしれない。あまつさえ、障害者虐待防止法は病院内での虐待を通報義務としていない。地域の障害者団体や人権団体等の訪問活動を拒絶するような病院は、これを機に、むしろ医療の本旨を証明し、また発揮するためにも態度を改めるべきではないか。また、エリアに関わる当事者団体をはじめ関係諸団体が一体となり、各病院内の監視と人権救済に取り組む担保が与えられることが必要である。

精神科病院では、これまでも数々の暴力・虐待・人権蹂躙が行われてきていることからもわかるように、この国のどこかで同様な事件が起きていると私たちは考えている。神出病院が母体なる錦秀会グループは、「やさしく生命を守る」を基本理念に掲げ、神出病院は方針として「社会の求める質のよい医療を提供します」を掲げていると聞く。これほどの言行不一致には、もはや薄気味悪さすら感じる。グループの創始者である籔本秀雄は、法人税法違反、業務上横領、私文書偽造、同行使、診療放射線技師及び診療エックス線技師法違反により有罪判決を受けており、また医師免許の取り消し処分を受けているが、これまで数々の医療法人に対して買収を繰り返し、時にはそれまで地元で評判のあった医療を崩壊させてきた。金権主義に血脈をあげた巨大な民間経営医療法人の末路を私たちは目撃している。錦秀会グループに良心のかけらがあるならば、病院経営を公に移譲し、その座から引き下がるがよい。

最後に、私たちは、長らく精神科病院における人権問題の多くが精神保健福祉法下の帰結の問題だと繰り返し訴えてきた。精神医療審査会が当事者からの退院請求を年間およそ98%以上認めていないこと、曲がりなりにも身体拘束の運用管理を担うとされている精神保健指定医が現場対応を追認してしまっている実態など、人権制約を監視する機能が働いていないことには枚挙にいとまがない。また、上述の通り障害者虐待防止法は病院内での虐待事案を通報義務の範囲としていない。これらの法が内在する問題は、無視され長らく放置されている。このことに立法府は猛省し、即時然るべき法の撤廃、改正の対応をすることを強く求めるものである。

以上