成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案に関する声明

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 本日5月22日、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案が衆議院で可決されました。
 わたしたちは、本法案の審査は、欠格条項の見直しが進んだという表面上の成果のみで評価してはならず、障害者権利条約等の国際的動向や成年後見制度利用促進法に基づく政策の進捗状況などの中間評価が求められる点で通常の単独法案の審査とは一線を画するものであり、今回の法案審査を逃すと重大な課題が先送りにされることから反対の立場を取ってきました。
 今回の法案審査において立法府は、わたしたち当事者の声を聴き付帯決議を出すなどして、成年後見制度にかかわる諸課題に取り組む姿勢を示しました。とりわけて障害者権利条約に基づく日本政府報告書の審査結果・国連勧告に基づく成年後見制度の見直しの検討が付帯決議に書き込まれたことは大きな成果であったと思います。
 これを持って反対理由が消滅したため、反対の立場を取り下げるとともに、欠格条項の見直しが進んだことを一歩前進と捉えて本法案を評価したいと思います。そして、引き続き成年後見制度にかかわる課題を審査する上で重要な契機であることから丁寧な審議を求めていきたいです。

2019年5月22日

衆議院
成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切に対応すべきである。
一 障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の自己決定権が最大限尊重されるよう、現状の問題点の把握を行い、それに基づき、必要な社会環境の整備等を図ること。
二 障害者の権利に関する条約第三十九条による障害者の権利に関する委員会からの提案及び一般的な性格を有する勧告が行われたときには、障害者を代表する団体の参画の下で、当該提案及び勧告に基づく現状の問題点の把握を行い、必要な措置を講ずること。
三 成年後見人等の事務の監督体制を強化し、成年後見人等による不正行為の防止をより実効的に行うため、家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共団体における必要な人的体制の整備その他の必要な措置を十分に講ずること。
四 成年後見制度利用促進専門家会議等を始めとして、障害者の権利に関する条約の実施及びその監視に当たっては、同条約第四条第三項及び第三十三条第三項の趣旨に鑑み、障害者を代表する団体の参画を一層推進していくこと。
五 障害者を代表する団体からの聴き取り等を通じて成年被後見人、被保佐人及び被補助人の制度利用に関する実態把握を行い、保佐及び補助の制度の利用を促進するため、必要な措置を講ずること。
六 本法による改正後の諸法において各資格等の欠格事由を省令で定めることとされている場合には、障害者の権利に関する条約や障害者差別解消法に抵触することのないようにするとともに、その制定に当たっては、障害者の意見が反映されるようにすること。
七 障害者の社会参加におけるあらゆる社会的障壁の除去のための合理的配慮の提供について今後も検討を行うこと。
八 本法成立後も「心身の故障」により資格取得等を認めないことがあることを規定している法律等について、当該規定の施行状況を勘案し今後も調査を行い、必要に応じて、当該規定の廃止等を含め検討を行うこと。

参議院
成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 成年後見制度の利用促進を図るため、地域連携ネットワークの整備等、同制度の利用者や親族後見人等を支援する体制を構築することにより、利用者の意思決定支援・権利擁護及び不正の発生の未然防止を図るとともに、制度の運用上の課題の把握・開示、関係機関における情報共有など、制度の透明性を高めるよう努めること。
二 成年後見制度を、同制度の利用者がメリットを実感できるものとするため、高齢者及び障害者の特性に応じた意思決定支援の在り方などを始めとした制度全般の運用等に係る検討において、高齢者及び障害者の意見が反映されるようにすること。
三 成年後見人等の事務の監督体制を強化し、成年後見人等による不正行為の防止をより実効的に行うため、家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共団体における必要な人的体制の整備その他の必要な措置を十分に講ずること。
四 市区町村が実施する成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本計画の策定や、地域連携ネットワークの構築に資する中核機関の整備などの取組に対し、適切な支援を講ずること。
五 障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の自己決定権が最大限尊重されるよう、現状の問題点の把握を行い、それに基づき、必要な社会環境の整備等を図ること。
六 障害者の権利に関する条約第三十九条による障害者の権利に関する委員会からの提案及び一般的な性格を有する勧告が行われたときには、障害者を代表する団体の参画の下で、当該提案及び勧告に基づく現状の問題点の把握を行い、関連法制度の見直しを始めとする必要な措置を講ずること。
七 成年後見制度利用促進専門家会議等を始めとして、障害者の権利に関する条約の実施及びその監視に当たっては、同条約第四条第三項及び第三十三条第三項の趣旨に鑑み、障害者を代表する団体の参画を一層推進していくこと。
八 障害者を代表する団体からの聴き取り等を通じて成年被後見人、被保佐人及び被補助人の制度利用に関する実態把握を行い、保佐及び補助の制度の利用を促進するため、必要な措置を講ずること。
九 本法による改正後の諸法において各資格等の欠格事由を省令で定めることとされている場合には、障害者の権利に関する条約や障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律に抵触することのないようにするとともに、その制定に当たっては、障害者の意見が反映されるようにすること。
十 障害者の社会参加におけるあらゆる社会的障壁の除去のための合理的配慮の提供について今後も検討を行うこと。
十一 本法成立後も「心身の故障」により資格取得等を認めないことがあることを規定している法律等について、当該規定の施行状況を勘案し今後も調査を行い、必要に応じて、当該規定の廃止等を含め検討を行うこと。
右決議する。