医療同意への成年後見人等の業務拡大に反対する障害者団体共同声明の申し入れ

医療同意への成年後見人等の業務拡大に反対する障害者団体共同声明の申し入れ

 今国会で上程される見込みの成年後見制度利用促進法案では、①後見人の医療同意が可能になる、②意思決定支援への配慮、③信書等の送付を後見人に直接できるようにする、などの改正が見込まれています。
 この法案の最大の問題点は、成年後見制度それ自体が障害者権利条約に違反すること以外にも、成年後見人等に対して医療同意の代諾をできるようにさせたことだと思います。すなわち、成年後見人が医療同意を代諾した場合は、完全に強制医療ということになります。これまで精神保健福祉法は、強制入院を規定していましたが、強制医療(侵襲行為それ自体を同意なくする手続き)までは規定しているとはいえませんでした。(たとえば、無理やり投薬させるとか、無理やり電気ショックをするという手続き自体を定めてはいない。)しかし、成年後見人等が代諾した場合は、精神障害者本人が医療同意したことと同じ扱いになるわけですから、いかなる治療介入を可能としていきます。たとえば、成年後見人等の代諾による強制電気ショックなどが可能になります。もちろん、これまでも半ば強引に、強制医療というべき投薬治療や電気ショックが運用でされてきたわけですが、現在では、これに対して少なくとも裁判において不法行為を主張する余地があるわけです。しかし、成年後見制度利用促進法案は、法律によって精神障害者本人が同意したことと同じ扱いになるため、不法行為であるとして訴訟する余地がありません。いな、そもそも成年被後見人は、裁判だって自由にできるわけではありませんし、なにかと法律によって行為を制限されています。
 さらに、おそろしいことは、成年後見人による医療提供拒否の代理決定による尊厳死(?)を開く点に問題があると考えられます(法案が公開されていないので詳しくは分かりません)。従来の尊厳死は、尊厳のある死の自己決定(実際には本人の決定を根拠とした殺人です)なる優生思想に満ちた提案あったわけですが、今回の場合は、尊厳のある死の代理意思決定という、より危ない考え方であるといえます。どういうわけか、2016年2月25日、久方ぶりに「終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟」が開催されており、意思決定の話しも出されました。厚生労働省が示した「意思決定支援の概要」も医療同意のことが非常に大きなウェートを占めています。明らかに、意思決定支援をして本人の尊厳のある死を選択する意思を十分に確認した、よって成年後見人が尊厳死の代理意思決定をする、という図式で障害者抹殺が図られていく準備が着々と進んでいることを意味しています。
 2015年12月、成年後見制度関連で院内集会が開催されました。このとき参加された民主党の議員が法案の問題を認識した旨の発言をしました。しかし、民主党は、2015年7月の時点ですでに本法案に合意していることが後になってわかりました。
 そのため「民主党障がい者政策推進議員連盟」は、修正案提出を目指して、士業団体とのヒアリング実施を方針として1月中旬に確定し、2月上旬に衆議院法制局に対するヒアリングを実施しました。なお、士業団体ヒアリングが実施されたかどうかは、小宮山事務所から聞き出せていません。われわれは、士業団体だけではなく当事者団体にもヒアリングを実施せよとして1月の下旬に申し入れ書を提出しました。
 現在、多くの政党は選挙を前にして士業団体の提言を丁寧に聞き取っています。対して障害者団体の提言は、聞き取りスケジュールを用意していないとのことです。そのことは障害者団体としての十分な反対意見の形成ができていないことにつきると思います。さて、障害者団体としての大きな反対がなければ士業団体の提言が優勢のまま国会上程もあり得てしまいます。(すでに3月23日の内閣委員会で内閣委員長による趣旨説明が行なわれる見込みです。)そのため、障害者団体として反対しているという対外的なアピールをしていかなければなりません。そこで、私たちの方で文案の作成をしますので、議論をしながら4月末を目途に「(仮称)医療同意への成年後見人等の業務拡大に反対する障害者団体共同声明」を作成し、本格的な医療同意への後見業務拡大反対の意志をアピールしていきたいと思っています。是非とも、共同声明の発信者として私たちとともに名を連ねてくださいますよう、お願い申し上げます。

   2016年3月23日