報酬改定に関する意見書

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 御中
報酬改定に関する意見書

1.精神障害当事者の団体の意見を聞くこと
 障害者権利条約前文(o)には、「障害者が、政策及び計画(障害者に直接関連する政策及び計画を含む。)に係る意思決定の過程に積極的に関与する機会を有すべきであることを考慮し」とあります。
しかし、障害福祉サービス等報酬改定検討チームには精神障害者の団体の代表者が委員会のメンバーに入っておりません。これは、日本政府が障害者権利条約に背く態度を示したものであり、直ちに改善されなければならないものと考えます。つきましては、次回からは、委員に精神障害者の団体の代表者を入れることを約束してください。
 また、委員参画の必要性とは別に、最低でも精神障害者の団体に対するヒアリングが行なわれていなければならないと考えます。こうした精神障害者を無視した政策決定プロセスの在り方は、障害者権利条約批准後の政府の態度としてあまりにも問題があり、直ちに改善されなければなりません。つきましては、委員としての参画が難しいような場合でも、必ず、精神障害者の団体に対するヒアリングを行なうことを約束してください。

2.身体介護・家事援助の単価
 家事援助の単価は、例えば、家事日中2.0・介助者1人(コード:6123)の場合、344単価と極めて安価です。このような家事援助の単価の安さは、事業所のモチベーションを下げサービスの量と質を下げるものに他なりません。とくに、行動障害の伴わない重度の精神障害者が居宅で利用できる貴重なサービスが家事援助です。少なくとも、身体介護の8割強程度である570単価(身体日中2.0・介助者1人(コード:1123)670単位の8割)までは引き上げてください。

3.地域移行・地域定着の単価
地域相談支援(地域移行支援)は、地域移行支援サービス費:2313単位、特別地域加算、集中支援加算:500単位、退院・退所月加算:2700単位、障害福祉サービス事業の体験利用支援加算:300単位、体験宿泊加算(Ⅰ):300単位、体験宿泊加算(Ⅱ):700単位、地域相談支援(地域定着支援)は、体制確保費:301単位、緊急時支援:703単位、特別地域加算とあります。地域相談支援は、本気で取り組むとなると非常に労力を要し、片手間でできるようなものではありません。少なくとも、専従をおいて実施しなければ、長期入院患者の退院・地域移行を支援するという意味での地域相談支援はできません。現在の単価では、あまりに安価であり、指定一般相談支援事業所のみの指定を受けて事業を展開することができません。地域相談支援は、長期入院患者の退院を実現するための実質的な事業であり、その役割は非常に大きいと言えます。少なくとも、地域移行支援サービス費の単価を4500単位まで大幅に引き上げ、ピアサポーターによる病棟訪問に際しては新たに特別な加算を設けるなどして、精神障害者の登用が促進されるような報酬単価に改訂してください。

2014年9月8日

【公開質問状】抗精神病薬および抗うつ剤多剤投与制限について

公開質問状
日本精神神経学会御中

 日頃の精神保健福祉へのご尽力に感謝いたします
 さて先般厚生労働省が向精神薬の多剤投与規制について診療報酬を通し行う方針を出したと聞き、期待しておりました。
 ところが公表された2014年診療報酬改定において、向精神薬多剤投与の減算がだされたものの大きな抜け道が用意されています。
 第一は精神病院入院中の患者への投薬には一切減算されないこと
 第二に抗精神病薬と抗鬱剤については経験のある医師については減算しないということです。
 上記二つの抜け道の合理性を私ども利用者は理解できません
 すでに遅くとも90年代から日本の多剤投与は批判されており、国内の精神科医による論文もありました。私どもの聞いた範囲でもオランダの仲間は90年代に薬はたいてい1種類、多くて2種類(睡眠薬を入れても)と発言していましたし、アジアにおいても向精神薬総体で4種類以上などみたことないという証言もあります
 以下質問いたしますので、文書回答を求めます。さらに口頭での説明の機会を求めます

質問項目
1 経験ある医師として、日本精神神経学会専門医で研修を受けたものあるいは学会員であり研修を受けたもの、とした理由はなにか
2 それにより守られる患者の利益は何か
3 それにより患者の不利益のない根拠は
4 今回抗鬱剤と抗精神病薬の多剤投与について減算されない資格をとった医師についてはその患者さんに対して多剤投与をやめるために期限設定をするのか するならばその期限は
5 この多剤投与しても減算されない資格を学会が付与するという制度については今後廃止していくつもりなのか、廃止するなら期限は?
以上
    2014年8月21日

【公開質問状】抗精神病薬および抗うつ剤多剤投与制限について

公開質問状
厚生労働省大臣 田村 憲久様
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長 冨澤 一郎様

 日頃の精神保健福祉へのご尽力に敬意を表します
 さて先般厚生労働省が向精神薬の多剤投与規制について診療報酬を通し行う方針を出したと聞き、期待しておりました。
 ところが公表された2014年診療報酬改定において、向精神薬多剤投与の減算がだされたものの大きな抜け道が用意されています。
 第一は精神病院入院中の患者への投薬には一切減算されないこと
 第二に抗精神病薬と抗鬱剤については経験のある医師が処方する場合は減算しないということです。
 この二つの抜け道を作ったという根拠は一体どういうことなのでしょうか、どういう理由なのでしょうか、私たち利用者にとってはどういう利益があるのでしょうか
 以下質問いたしますので、文書回答を求めます。さらに口頭での説明の機会を求めます。

質問項目
1 入院中の患者への多剤投与はなぜ必要なのですか
それにより守られる患者の利益はなにか、そして患者の不利益がないという根拠は
2 経験ある医師について多剤投与を認めた理由はなにか、それにより守られる患者の利益はなにか、そして患者の不利益がない根拠は
3 経験ある医師として、日本精神神経学会専門医で研修を受けたものあるいは学会員であり研修を受けたもの、として理由は
それにより守られる患者の利益は何か、そして患者の不利益のない根拠は
文書回答期限 2014年9月20日
以上
   2014年8月21日

障害者の地域生活確立と障害者総合支援法に関する要望

2014年7月7日
厚生労働大臣
田村 憲久 殿
「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動」実行委員会
代表 横山 晃久

障害者の地域生活確立と障害者総合支援法に関する要望

日ごろより障害者の地域生活、権利確立にご支援いただき誠にありがとうございます。
私たち「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」は、自立生活センターやヘルプセンター、作業所やグループホーム等、障害者の自立支援に取り組んでいる全国各地の639の障害者団体が参加しています(ほとんどは障害当事者の団体です)。身体、知的、精神障害、難病といった様々な障害当事者団体が集まり、障害種別を超えて地域生活・自立生活を実現できるサービス・法制度を求め活動を続けています。
さて、我が国の障害者施策は、2008年5月に発効した障害者権利条約の批准に向けた国内法整備のため、「障がい者制度改革推進本部」のもと、障害当事者、家族が過半数を占める「障がい者制度改革推会議」が設置され、精力的な議論がおこなわれてきました。
この間、2011年8月5日に障害者基本法の改正、また、同年8月30日には、障害当事者、研究者、事業者、自治体の代表などさまざまな立場の55人の委員で構成される「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会」が18回の議論を踏まえ「骨格提言」をまとめ、2012年6月27日に「障害者総合支援法」が成立しました。さらには、2013年6月26日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が、公布され、2016年4月の施行に向け、2014年度は各行政機関において、対応要領、対応指針を作成することとなっています。厚生労働省においても、差別的な取扱い、合理的配慮の不提供について、以下に要求する事柄とも関連して、当事者の意見を十分踏まえ作成していくべきであると考えます。
これらの制度改革の成果を踏まえて、我が国も、2013年12月4日の参議院本会議において全会一致で、障害者権利条約批准の承認を採決、2014年1月20日には批准書を国連に寄託、これにより、我が国でも本年2月19日より条約の効力が生ずることになりました。
条約は憲法と各法律との間に位置します。批准をすることで、国内法が条約に反してはならない効力をもつこととなり、第三条の一般原則に規定される「自立」、「他の者との平等を基礎としたインクルージョン」、「違いを認めあい尊重すること」、「差別のないことと機会の均等」などが求められます。
長年、多くの障害者団体が求めてきた条約は批准・発効されましたが、私たちの生活に大きな影響を及ぼす「障害者総合支援法」の内容は残念ながら条約の理念と「骨格提言」を充分に反映したものにはなっていません。2013年4月より障害の範囲に新たに難病が加わりましたが、政令によって示されたのは130疾患に限定され、新たな「谷間」を生む結果になりました。
また、2014年4月からは、「障害程度区分」から「障害支援区分」への変更、重度訪問介護の対象者を現行の重度の肢体不自由者に加え、重度の知的障害者・精神障害者に対しても対象を拡大しましたが、私たちが長年、求めてきた重度訪問介護の対象者拡大は、対象者の要件が「行動障害を有する者」とされ、それ以外の人達は引き続きの検討となりました。
さらに、相談支援事業においては、計画相談支援をすべての利用者について実施するとされましたが、全国各地で、事業の進展が大幅に遅れている現状があり、地域移行支援、地域定着支援においても事業が有効に機能するための人員配置と報酬拡充の施策が求められています。
そして「障害者総合支援法」にはこれから検討される課題が多く含まれています。附則第3条1項では常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、支給決定のあり方の見直し、精神障害者への支援や財政調整の仕組みなど重要な課題等が挙げられ施行後3年間をかけて検討することが書かれています。これらは、いずれも重要な課題ばかりで、附則でも「検討を加えようとするときは、障害者等及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとすること」と規定されているように、障がい者制度改革推進会議や総合福祉部会のように障害当事者を構成員に含めた検討の場で議論し、当事者の声を反映させた施策の実現を強く求めます。
「骨格提言」については、国会審議において当時の小宮山厚生労働大臣が「障害者のみなさんの想いが込められた貴重なものであり、受け止めねばと思っている。段階的、計画的に実施する」と答弁されました。
これらの点を踏まえ、私たちは、すべての障害者が地域で自立した生活を送られるよう、障害者権利条約の理念、「骨格提言」ならびに当事者の声を反映した「障害者総合支援法」の実施を求め、以下の通り要望いたします。

1.精神 「病床転換型居住系施設」について
昨年から開かれている「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会(以下、検討会)」では「病床転換問題」について、「病床を転換することの可否を含む具体的な方策の在り方について精神障害者の意向を踏まえつつ、様々な関係者で検討する」とされた。2月の障害者政策委員会では、この問題について「障害者権利条約に反する発想だ」と異論が相次ぎ、石川委員長は「結論を出す前に意見交換したい」とした。
3月には「第8回検討会」が開催され「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的
方策に係る検討」が始まり、議論を進めていくための「作業チーム」を開催することとなった。6月中には、「具体的方策の在り方(今後の方向性)」案を整理することとなっている。
委員の中からも問題提起があったように病床転換型居住系施設とは、「入院病床の看板の掛け替え」であり、これは、地域移行に名を借りた隔離と囲い込みの継続に他ならない。
この議論が、まだ結論を見ないうちに、予算措置として消費税増収分を活用した「新たな基金」の中に病床転換型居住系施設の経費が含まれていることは非常に大きな問題である。
これらを踏まえ、以下要望する
(1) 病床転換型居住系施設を作らないこと。
病床転換型居住系施設は、真の地域移行ではない。これらに貴重な財政をつぎ込むことは許されない。
(2)精神障害者についてその特性を踏まえた地域移行のあり方及び地域での福祉サービスのあり方について検討すべきである。そのための場を作り、我々も参加させること。
① 精神障害者の地域移行について 計画相談の利用、外出などの体験保障、
② 地域福祉サービスについての精神障害の特性を踏まえた見直し、重度訪問介護を含めたヘルパー利用の見直し、自立生活体験室の整備、ショートステイ、グループホーム、オルタナティブサービスの研究
③ 当事者による権利擁護活動の推進
(3)3年後の精神保健福祉法見直しについて 今後いかなる場でいかなる方法で議論していくのかを早急に明らかにすること

2. 総合支援法「検討規定」の検討方法について
障害者総合支援法の検討規定は、施行後3年を目途として検討することになっている。残り2年となりいよいよ検討が始まると思われるが、下記の事項を要望する。
(1)過半数以上の障害当事者を構成員とした検討委員会を作ってください。
特に「(1)常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方」について、過半数以上の障害当事者を委員とした検討委員会をつくること。
(2)「常時介護を要する障害者」に行動障害のない知的障害の人も含めてください。
2014年度から重度訪問介護の対象拡大がスタートしたが、残念ながら行動障害のある知的障害者に限定されてしまった。行動障害のない知的障害者も日常生活を送る上で長時間の介助が必要な人は多い。意思決定支援などを含めた利用が出来るように、これから検討する「常時介護を要する障害者」には、行動障害のない知的障害・、精神障害の人も含めること。

3. 2015年報酬改定について
2015年4月に障害サービスの報酬改定が行われる。景気回復といわれる中、福祉・介護の人材不足は深刻度を増しており、事業の運営も脅かされる事態にもつながっている。この状況がさらに続けば障害者が地域の中で充分なサービスを受けて生活することを阻害する大きな要因ともなっていく。障害者の地域生活の継続と安定のために、サービス事業者が人材確保、継続雇用ができる報酬体系へと見直すことが求められる。
また、障害者権利条約の示す誰もが地域で生きる権利を具現化するためにも、来年度報酬改定においては、施設から地域生活への予算のシフトなど抜本的な改革にもつながる方向性を目指すべきである。その上で個別具体的に以下を要望する。
(1) 今年度より重度訪問介護が知的、精神障害者にも拡大されたが、従来身体障害の重度訪問介護にあった、区分6の重度加算(7.5%、15%)が算定されないしくみとなっている。知的、精神障害者の支援においても重度者への特別な対応が必要で有り、加算においても見直すべきではないか。
(2) 今年4月に、消費税が8%となり、来年にはさらなる増税が行われることとなっている。来年度報酬改定においては、人材確保ができるための加算を設けること。
(3) 計画相談や地域相談支援は個別給付となったものの、その報酬はきわめて低く抑えられている。今後地域生活を支えていく大きな要となる相談支援について、事業が単独で成り立ち充実拡大していけるための報酬単価を設定していくこと。
(4) 計画相談については、個別のケースを勘案して、サービス利用等計画を作成するため何度も利用者のもとへ通う必要があるなどのケースについて加算を設けること。
(5) 完全実施を前にセルフケアプランのニーズも高まっており、相談支援事業者はセルフケアプランを作成する支援も多く行っている。相談支援事業者がセルフケアプラン作成支援にかかる経費を補助するなど財政的な支援策を講じること。
(6) 現行の介護保険対象者の国庫負担基準額が低く抑えられている。このことにより65歳になった時点でサービスが著しく下がる問題が全国で起こっている。介護保険利用者の国庫負担基準を従前のサービスが保証されるように拡充すること。

4.重訪対象拡大について
今年度から重度訪問介護の対象拡大が実施された。しかし、対象者は「行動障害を有する者」に限定され、非常に少ない行動援護事業者によるアセスメントが過度に求められ、報酬についても加算が抑えられているなど多くの問題課題が残されている。
昨年の「障害者の地域生活の推進に関する検討会」では、今後の課題として、行動障害を有しない常時介護を要する障害者で、重度訪問介護のサービスが必要とされる者について、具体的なサービス内容などについて検討するとされている。
また、障害者総合支援法の検討規定においても2016年度をメドとして「常時介護を要する障害者等に対する支援」の在り方を見直すとされている。
これらを踏まえ、以下要望する。
(1)重度訪問介護サービスの今後の在り方について検討するための基礎資料として、4月からの半年の実態について支給時間数なども含めた調査を行い、データを公表すること。同時に、サービスを普及させるための「好事例」の公表なども行うこと。
(2)「常時介護を要する障害者等に対する支援」の在り方を検討するに当たり、以下のことについて検討を行うこと
① 行動障害を有しない者(行動障害関連項目10点に満たない者を含む)についても、社会モデルの視点に基づき「地域における生活の困難」に着目して対象者の範囲を検討すること。その検討に当たって、「精神障害者については、診療所中心の訪問診療や訪問看護等による身近な生活の場の支援チームによる支援が有効である」とする精神障害者だけは医療に偏ったサービスが必要であるという見解を根本から見直すこと。
② サービス内容については、身体介護、家事援助では単独の算定対象とされていない「見守り」や、日常的な意思決定支援を含む金銭やスケジュールの管理などの「生活支援」などについて検討すること。
③ アセスメントについては、行動援護事業者が少ない地域などの実態を踏まえ、相談支援事業所や居宅介護事業所などもアセスメントしやすくなるように条件を緩和し、例示などを周知すること

5.障害者の範囲について(西田)
障害者総合支援法は、障害者の定義に「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病」を含むとしながら、その対象を難病患者等居宅生活支援事業の対象疾患(131疾患)に限定して施行された。これは当面の措置として、今後、新たな難病対策における医療費助成の対象疾患の範囲等に係る検討を踏まえて見直しを行うとされているが、難病対策は疾患の研究を目的にした事業であり、障害者総合支援法の目的とは異なる。障害者の範囲の見直しにおいては、病名を選定するのではなく、治らない病気をもつすべての人に申請権を保障するための検討が必要である。支援が必要であっても病名で排除され、放置され続けている人が一刻も早く救済されるよう、以下を要望する。

(1) 障害者総合支援法 障害者の範囲の見直しにおいては、障害者基本法 第二条(定義)と整合性をもたせること。
(2) 病気の有無は介護給付に係る支給決定の流れの中で、医師意見書で確認し、病名で排除されない仕組みにすること。
(3) 2013年7月8日、「障害者の地域生活確立と障害者総合支援法に関する要望」の場において、障害者総合支援法の対象になっていない人の問題については「『平成23年生活のしづらさなどに関する調査』の結果を踏まえ、調査事業やモデル事業の実施を含めて対策を検討する」という回答があった。現在の検討の状況を丁寧かつわかりやすく説明すること。
(4) 「共生社会の実現のための調査事業」(仮称)等を実施すること。さらに、調査を含めてモデル事業を実施すること。

6.相談支援について
障害者基本法 第二十三条(相談等)には、次のように規定されている。
「国及び地方公共団体は、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならない。」
この規定から総合支援法において行われているサービス等利用計画の作成と支給決定の現状を見ると、本人の意思決定支援を軽視するような事態が起きている。
特に、サービス等利用計画の作成の遅れからか、行政のケースワーカーが作成したサービス等利用計画に、本人の押印だけを要求する自治体が出てきていることなど、言語道断である。また、セルフプランだろうが、相談支援専門員が作成したプランだろうが、市町村の支給決定基準を超えるプランが提出されたの場合、合理的な理由説明もなく却下されるケースも後を絶たない。
更に、自宅(家族)あるいはグループホームを出て暮らすことに対する支援ニーズに応え得るサービス体系が希薄である。
以上のような現状から、次のことを要望いたします。
① サービスの利用に際して、計画相談がスムーズに行われないことによって、待たされことがないように、行政の責任において、正しいセルフプランの推奨やそのための支援の確保、サービスに変化のない場合の更新における事務の簡素化、そして、人員の確保など基盤整備を早急に行うこと。
② サービス等利用計画の作成にあたっては、利用者への「セルフプラン」の周知や具体的な作成手順の例示、あるいは、相談支援事業者や当事者による支援活動の紹介など当事者が作成する「セルフプラン」を拡充するための方策を明らかにすること。とりわけ、相談支援事業の推進に当たって、当事者による支援活動(エンパワメント)を正当に 評価すること。
③ 来年度の報酬改定の検討において、安定した相談支援事業が可能となる報酬評価を行うと同時に「セルフプラン支援」を評価する仕組みを導入すること。
④ エンパワメント支援に着目したセルフプランの推進のための施策を講じること。
⑤ 自治体にセルフプランの運用の適正化を促す通達を出すとともに、サービス等利用計画の完全実施時期の延期を検討すること。
⑥ 併せて、サービス等利用計画と異なる支給決定をした場合(特に計画以下の支給決定)、その合理的な理由説明(必要でないとした根拠等)を行うよう通知すること。
⑦ 現在の地域移行支援、地域定着支援の利用対象者に、自宅やグループホームから出て暮らそうとする人も含めること。

7.その他
(1)移動支援について
移動支援は障害者の社会参加にとって非常に重要な支援であるが、2006年に支援費制度から障害者自立支援法に転換する際に、ホームヘルプサービス(居宅介護)から切り離され、地域生活支援事業に位置づけられることとなった。その結果、市町村間の支給量の格差が著しく、使い方のルールも、格差が非常に大きくなってしまっている。
多くの市町村で「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出」、「通年かつ長期にわたる外出」及び「社会通念上適当でない外出」を除くという規定が残っているが、これらは合理的な理由が不明確で、基準が曖昧であることから市町村ごとで様々な解釈がなされている。その結果、障害を持たない他の者と平等な生活を行うために必要な支援が欠けてしまう場合が非常に多く見られる。居酒屋に行くことを禁止するような規制、あるいは、必要な見守りを排除して「移動」のみを対象としたり、ホテルに入ったらば移動支援は使えない(ホテルの従業者が介護すべきであるとか、サービス内容が居宅介護になるから認めない)など、制度を利用する障害者にとって非常に使いにくく、実質的に社会参加を阻害されることもしばしばある。
障害者総合支援法においては、2016年度を目途とする検討規定があるが、その中で「常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方」について検討するとあり、その検討に際しては、「障害者やその家族その他の関係者の意見を反映させる措置を講ずる」となっている。
2011年8月に障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が提出した「骨格提言」においても「障害種別を問わず、すべての障害児者の移動介護を個別給付にする」ことが提言されている。
更に、障害者差別解消法が2013年6月に成立し、2014年夏頃に「基本方針」の策定、そして、2014年度中には「各行政機関等において対応要領・対応指針の検討する(適宜,ヒアリング等を実施)」とされている。市町村における移動支援の様々なルールが、実態として制度的障壁となり障害者の社会参加を不当に制限していることを踏まえて、対応指針(ガイドライン)を作り、事業の主体である市町村に対して強く働きかけていくべきである。
① 個別給付に戻すことなども含め、2016年度の検討規定に基づき、移動支援の在り方について、早急に、我々を含めた当事者を参画させた検討の場を立ち上げること。
② 通学支援、通所支援、通勤支援について早急に実態把握すること。
③ さらに、運用のあり方に関する効力のある指針(ガイドライン)を作成し、市町村に周知すること。その検討において、当事者である我々からもヒアリングを行うこと。
④ 「他の者との平等」という障害者権利条約の基準に照らして著しく逸脱していると思われる市町村の移動支援に関する不合理な規定があった場合に正しく指導・助言を行うこと。

(2)非定型の支給決定について
⑤ サービス等利用計画と支給決定の相違内容の実態調査をし、より一層制度の充実を図ること。
⑥ 特にサービス等利用計画が、市町村の支給決定基準を超える非定型部分に該当する場合に問題が生じていることから、その実態を国として把握し、それを公表し、問題点の是正を行うこと。

(3)介護福祉士について
資格を取得するには、主に二つの方法があり、最も多いのが、実務経験を経るルートである。居宅介護事業所などで3年以上の職務を経験してから国家試験を受験する道で、2012年度の資格取得者約9万8000人のうち約8万3000人(約85%)がこのルートだった。二つ目は、専門学校や大学など国指定の養成校を卒業すれば、国家試験を受けずに資格が与えられるルートで、2012年度は約1万1000人がこのルートで取得している。
こうした取得の方法が、07年の法改正で、要件を厳しくする方向で見直され、新たに資格を取りたい場合、一定の教育課程を終え、国家試験に合格することが義務付けられた。実務経験ルートでの取得には6か月以上の「実務者研修(450時間)」の受講が必要となり、養成校ルートでは国家試験が課されることとなった。しかし事業者などからは「ハードルを上げれば志す人が減り、人材難が悪化する」「資格取得を目指す職員が研修で長期に休むのは困る」「本人も事業所も、時間的、費用的負担が大きい」といった声が上がり、当初予定された12年度からの施行は3年延期され、今もなお問題の解消の目途は立っていない。
以上のことから、次のことを要望いたします。
① 実務者研修にかかる費用を補てんする仕組みを作ること。
② 実務経験による免除事項を増やすこと。
③ 問題解消の目途が立つまで、施行を延期し、事業者等からのヒアリングを行い更なる見直しを行うこと。

8.生活保護について
生活保護法が昨年12月「改正」され、憲法25条で保障されている基本的人権が脅かされることが懸念されています。昨年の国会審議では、「改正」前と変わらない扱いをするとされていましたが、今年の2月末に出された「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」では、申請手続きにおける扶養義務者への通知を通例とする記述になっているなど、多くの問題がありました。パブリックコメントでの問題提起などを反映して、4月に出された「省令」では、国会審議のレベルに修正されましたが、今回の生活保護法「改正」は、申請手続きの厳格化、扶養義務の強化、不正受給の罰則強化などが目論まれていることに代わりはありません。
とりわけ私たちが懸念するのは、障害者の自立に直接関わる扶養義務の問題です。多くの障害者は、就労の機会が乏しいことや所得保障の立ち後れによって社会的経済的な自立を阻まれ、親・家族に依存させられています。逆に言えば、親・家族はその負担を社会的に強いられてきているのです。生活保護の申請に当たって、更に、親・家族に負担を強いることになれば、障害者の自立に対して、反対する立場に立つことが増えることが予想され、親・家族に反対されれば、自立に重大な支障が生じることは明らかです。
扶養義務紹介について、省令では、①実施機関が扶養義務者に対して家庭裁判所の審判を利用した費用徴収を行う蓋然性が高いこと、②DV被害を受けていないこと、③その他自立に重大な支障を及ぼすおそれがないことの、すべてを満たす場合に限って通知等を行うものと修正され、「極めて限定的な場合」に限られることが、省令上も明確にされました。
家族に依存することを余儀なくされている障害者が自立をしようとする時、親、きょうだいに扶養義務を強く求めるならばまさに「自立に重大な支障を及ぼす」ことになります。
(1)申請時における口頭での申請、あるいは扶養義務者の資産や収入状況がわかる書類を全て揃えなければ受理されないようなことがないように自治体に対し周知すること
(2)障害者にとっては、扶養義務者(とりわけきょうだい)への照会については、例外規定③「自立に重大な支障を及ぼす」場合が多いことを踏まえて、適切な対応がなされるよう自治体に周知すること

9.介護保険
(1)介護保険の優先を強いらないこと
障害者自立支援法違憲訴訟原告・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意において、新法制定にあたっての論点の中で「介護保険優先原則(自立支援法第7条)を廃止し、障害の特性を配慮した選択制等の導入をはかること」が明記された。
2007年3月28日に出された「障障発第0328002号 障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について 1の②のア及びイ」で、重度障害者が介護保険対象者となった時に、介護保険サービスで対応できない場合は障害福祉サービスを受けることも可能となっている。しかし、実態として、全国の市町村では未だに65歳以上の障害者に対し、「心身の状況やサービスを必要とする理由」に関わらず介護保険の優先利用を強いる状況が続いている。負担が増える、介助時間数が減る、これまでの事業所の派遣がうけられない等の問題が起こり、生活を継続できなくなってしまう。
これらの状況を改善し、長時間介助が必要な個々人の状況を勘案して重度訪問介護等の障害福祉サービスのみの利用や補装具の給付を受けることが可能となるように国から全国の市町村に対して有効な指導を行うこと
(2)介護保険について
障害者自立支援法の根本的な問題の背景には、介護保険の考え方の導入(利用料、障害程度区分など)が計られている点、更には、障害者施策を破壊する「介護保険への統合」を目論む仕組み(介護給付という枠組みや地域生活支援事業の切り離しなど)がある。これ踏まえて、今後の障害者施策の基本的な方向性として介護保険との統合を行わないこと。

袴田事件の即時抗告に関する要請文

最高検察庁 御中
東京高等検察庁 御中
仙台地方検察庁 御中

袴田事件の即時抗告に関する要請文

検察官の皆様におかれましては、静岡地裁の再審開始の決定をうけとめて、即時抗告をしないように要請します。

袴田事件に関する新証拠に照らし、また、1968年の逮捕当初の取調べから自白を強要されたとの袴田さんの主張を考慮すれば、この事件はもう一度審理をおこなうべきです。袴田さんは高齢に加え精神症状がみられており、長期間の拘禁で健康状態も懸念されます。

袴田事件は、速やかに再審を開始すべきです。
十分な検討の上、人身に配慮ある行動を、よろしくお願いいたします。

敬 具 
   2014年3月28日

障害者権利条約批准にあたって全国「精神病」者集団声明

 国会で障害者権利条約批准が承認され、条約批准に向けた手続きが進められることになっている。
 2002年以来10年余り全国「精神病」者集団がWNUSP(世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク)とともに取り組んできた、私たち障害者が作った権利条約の批准である。
 この条約は障害者に対して障害のない者と違った特権を付与するものではない。今までの国連の人権諸条約が保障している人権は当然にも障害者に保障されてはいるが、それは実質的な保障を伴ってこなかった。障害者は例外扱いされることで他の者と不平等になり、様々な人権侵害と差別にさらされてきたのだ。それは条約が作成された歴史的過程の中であたかも障害者という存在はないかのごとくに扱われ、無視され続けてきたことによる。
 障害者権利条約は、これら人権諸条約の保障する人権を障害のない者と平等に障害者に保障することを目的として策定された。
 障害のメインストリーミングである。あらゆる場所、あらゆる制度、あらゆる法律において障害が組み込まれていくことを求めているのだ。
 そして当然障害者には精神障害者も含まれている。
 障害者権利条約は、障害を理由とした強制入院や強制医療制度の廃止を締約国に求めるとともに、障害者が他の者と平等にまちで暮らす権利を保障している。
 条約批准に向けた国内法整備として、障害者基本法改正、障害者総合支援法の見直し、障害者差別解消法の成立がなされた。だが、いずれも条約の水準を満たすものでなく、不十分といわざるをえない。
 その上、強制入院は年々増加の一途を辿り、さらに精神保健福祉法の改悪、道路交通法改悪、秘密保護法の適正調査、危険運転罪の新設と、精神障害者に対する差別はますます強化されてきている。
 条約批准後2年以内に日本政府は条約の履行実態を障害者権利条約委員会に報告し、審査を受けることになる。おそらく、この審査は早くて2018年くらいに行われる。そして、その場において日本政府は、強制入院制度の撤廃を勧告されることになるだろう。
 私たちは、改めて精神保健福祉法の撤廃に向け、理論的実践的進化を積み重ね、障害者権利条約の完全履行に向け闘い続けることをここに宣言する。
   2014年1月19日

障害者総合支援法 報酬問題について

日頃の障害者福祉へのご努力に敬意を表します
 さて、昨年来障害者総合支援法の報酬問題の検討が進められていますが、ヒアリング団体の中に精神障害者団体が含まれていません。
 一方で精神科病院の経営者の団体である日本精神科病院協会はヒアリングされています。医療のプロバイダー団体は呼び、利用者であり当事者である精神障害者団体は呼ばないというのは重大な誤りであり、差別として抗議します。
 以下私どもの要求を簡単にまとめます。

1 精神障害者がヘルパーを使う場合は家事援助が多いのですが、これについては報酬の低さゆえなかなかヘルパーが見つからないという問題があります。家事援助は精神障害者にとってとても重要であり、療養環境の改善は睡眠の確保や食事の改善にとって大きな意義があり、これにより入院を阻止できている実態があります。
 家事援助はいくら、身体介護はいくらという差別をなくすべきで、介助として統一した単価設定にすべきですが、その前に家事援助の報酬を大幅に上げることが必要です。これはみんなねっともヒアリングで述べていますが、これに賛同します。

2 キャンセル問題について、精神障害者は病状の波があり、どうしても人と話すことができずに、体調不調なときほど直前のキャンセルをしがちです。このキャンセルによって事業所あるいは介護労働者にしわ寄せがいき、使いづらい謝罪を重ねるなら利用を遠慮しようということになりがちです。精神障害者の障害ゆえに常に謝罪し続けたり、介護労働者や事業所にしわ寄せが行くのは介護支援の名に値しないことになります。
 例えば月何時間の契約、ということであれば、それについては直前のキャンセルの場合は保障するなどの報酬上の配慮が必要です。ただでさえ低い家事援助の報酬ゆえ事業所が少ないのに、さらにキャンセル問題があり精神障害者への派遣を躊躇するところさえありうるのです

3 地域移行支援・地域定着の報酬について
あまりに単価が安すぎます。実際に精神病院や施設に行った場合に、その回数に応じた出来高払が必要です。さら遠方の精神病院などの場合は最低交通費がカバーされるべきであり、これも含んだ形あるいは交通費実費が保障される体制が必要です。
 とりわけ遠方の施設などの場合は泊まりがけ出張の費用保障も必要です。
 現在これらの報酬が低すぎるため事業所がない自治体が存在しています。
 地域定着支援についても同様で、専任の人手を確保できる報酬が求められます。
以上 精神障害者にとって緊急に求められる報酬改善について述べました。
ご検討よろしくお願いいたします。
   2014年1月7日

東京都の人権政策推進にむけた要求書

東京都知事 猪瀬直樹  様

人権ネットワーク・東京
代表 八柳 卓史

東京都の人権政策推進にむけた要求書

1. 基本要求
(1)新大久保での民族排外デモなど人権教育や啓発のみでは解決が困難な差別扇動(ヘイトスピーチ)が増加している。「差別禁止条例」の制定など「人種差別撤廃条約」など国際人権条約にそって法的な整備をはかられたい。
(2)人権政策の推進において被差別の当事者の意見等を踏まえることや政策推進への参画が重要であり、専門家や被差別当事者団体と人権政策の推進について定期的に協議がおこなえる常設機関(「人権政策審議会等」)を設置されたい。
(3)人権政策の推進に当たって、現状を把握することは極めて重要であり、「人権意識調査」「被差別者の生活実態調査」「差別事件や人権侵害の調査」を実施されたい。

2.在日本韓国人・朝鮮人差別の撤廃に向けた要求
(1)朝鮮学校への「私立外国人学校教育運営費補助金」を復活されたい。また全ての外国人学校への教育助成を拡充されたい。
政治的、外交的問題をもちだして朝鮮学校への補助金を停止することは国際人権規約(社会権、自由権)や子どもの権利条約などにも抵触する重大な人権侵害です。
即刻、補助金を復活すべきです。
また、他府県と比べても著しく低い水準にある外国人学校への教育助成を拡充することを求めます。
(2)ヘイトスピーチを防ぐための措置を講じられたい。
新大久保などで繰り返し行われている「朝鮮人首吊レ毒飲メ飛ビ降リロ」「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」等のプラカードを掲げ、同様のシュプレヒコールを叫びながら練り歩く排外主義者らのヘイトスピーチを防止するため、人種差別禁止条例を制定する等の措置を講じることを求めます。
(3)制度的無年金状態に放置されたままの障害者・高齢者への救済措置をとられたい。
1959年の国民年金制度発足時より1981年まで存在した「国籍条項」と、その後、経過措置が日本政府によって取られないがために無年金状態となっている、障害者・高齢者への救済措置として神奈川県などが行っているのと同様の福祉給付金を東京都としても支給することを求めます。
(4)神奈川県の外国人居住支援制度や川崎市などで行っている外国人の住まい探しの保証人制度のような外国籍住民の住まい探しへの支援措置を設けられたい。

3.部落差別撤廃に向けた要求
戸籍謄本等不正取得事件、土地差別調査事件、悪質な差別落書(貼紙)事件の再発防止に向け以下の対策を講じられたい。
(1)自己情報のコントロール権の観点からも、戸籍謄本等を第3者が取得した場合に、取得された本人にその旨を通知する「本人通知制度」を確立するよう都内全区市町村に要請していただきたい。
(2)土地差別調査など差別身元調査を規制する「身元調査規制条例」の制定など法制度的な対策を確立されたい。
(3)東京都個人情報保護条例における「社会的差別の原因となる個人情報」に「被差別部落の所在地名」が含まれることを明確にされたい。
(4)差別落書きは社会に対する悪質な差別扇動であることを踏まえ、再発防止に向けた抜本的な対策を講じられたい。

4.婚外子差別撤廃に向けた要求
(1)「婚外子差別をなくすこと」を東京都の人権啓発活動強調事項の一つとし、人権週間などを通じて啓発活動を行ってください。
(2)婚外子に係る戸籍及び住民票事務の以下の項目について各自治体に周知してください。
① 婚外子の出生届に当たっては、「父母との続き柄」欄に「嫡出子又は嫡出でない子の別」の記載がされていなくても届書の「その他」欄に、「出生子は、母の氏を称する。」等と記載すれば受理できること。また、胎児認知の届出がされているとき、又は出生届と同時に認知の届出がされた場合は、「その他」欄に「父は、同居者である。」等の記載をすれば、父を届出人として受理できること。(2010年3月24日付け法務省民一第729号民事局第一課長通知)
② 2004年11月より前に生まれた婚外子の戸籍の続き柄を「女」「男」から「長女」「長男」方式に変更したい場合、更正の申し出だけでは「女」「男」の記載が残ってしまうので、再製の申し出も同時に行う必要があること。それを申し出人に必ず説明すること。
③ 2010年3月24日付け民一第730号民事第一課長通知により、更正申出等の記載のある従前の戸籍(除籍・改製原戸籍)については再製の申出ができると、取り扱いが改められていること。
④ 出生届が受理されず戸籍に記載のない子についても住民票は適法に作成できること(2009年4月17日 最高裁判決)。
(3)以下の7項目について、東京都から国に要請してください。
① 戸籍法49条の出生届に「嫡出」か否かの記載を義務付ける規定をなくすこと
② 婚外子の父に出生届の届出人資格を与えること。
③ 戸籍法13条4項後段の実父母との続柄は不要であり、なくすこと。
④ 戸籍法13条5項後段の養親との続柄は不要であり、なくすこと。
⑤ 戸籍法施行規則における戸籍の父母との続き柄は「女」「男」方式に改正した上で、本人申し出ではなく職権で全て変更すること。
⑥ 税法の寡婦控除制度を改正し、婚姻歴のない母(父)子家庭の母にも「寡婦控除」を適用すること。

5.女性差別撤廃に向けた要求
東京都は2000年に、「東京都男女平等参画基本条例」を制定しました。それに先がけ、国は1999年に、「男女共同参画社会基本法」を成立させました。しかし、日本の女性の地位は、OECD諸国のなかで、昨年は135カ国中101位と、先進国では例のないほど低く、かつ年々後退しています。
残念ながら東京都においても、この男女の格差や不平等は改善されておりません。以下、現在私たちが女性の立場から特に問題としているテーマに沿って、現状と問題点を申し上げ、都の政策の中に考慮していただくよう、要請する次第です。
(1)東京の保育問題
安倍総理は、「育児休業を3年まで延ばし、待機児童をなくすため保育園の整備を加速する、5年間で待機児童をゼロにする」と発表し、大きな議論を呼びました。東京都でも、猪瀬都知事が新聞等で、保育政策について積極的に発言しておられます。
東京都議会では、今年度中に50ヵ所の認可保育園を増設すると決定され、歓迎すべきことと評価しております。しかし、今年の4月時点で2万人の待機児童がいることを考えると、全く不十分であります。知事は小規模保育所などで対応すると意欲を示されていますが、危惧されるのは、「基準緩和」の問題です。
現在東京都で行われている「認証保育制度」は、認可保育所よりは基準が緩和され、保育の質の低下がもたらされると同時に事故も増えています。また、国の援助がないため、保護者の負担も国基準より大きくなっています。小規模保育所においても、認可保育所と同じ基準になるよう、十分なご配慮をお願いいたします。
(2)東京の教育問題
・学級定数の改善について
2011・12年度と小学校1・2年生の学級定数が40名から35名に改善されました。いじめ問題の解決のためにも、学級定数の改善は不可欠です。しかし政権交代により、2013年度の小学校3年生の35人学級は実現しませんでした。現在学級定数は、都道府県独自に少なくできるようになっています。東京都として、小学校3年生以上及び中学校1年生以上の学級定数の改善を行われるようにお願いします。
・教科書と「道徳」教育について
来年は中学校教科書採択の年です。東京都が中高一貫校の中学校と、特別支援学校の一部に採択している『歴史』と『公民』の教科書は、男女平等の観点から見ると問題が大きいと思います。人権の立場からぜひ見直していただきたいと思います。
また国は、『道徳』を教科として位置づけようとしています。すでに現在の指導要領では、全教科において道徳を教えることになっています。しかし、多様な価値観こそが男女平等にとって重要であるという国際的な認識の流れの中で、道徳教育の一元化、家族や国家を絶対的価値とする教育は、東京にはふさわしくないと考えます。都としても慎重な態度をとっていただきたいと思います。
(3)デートDV・セクシュアル・ハラスメント防止のとりくみについて
東京都生活文化局は平成25(2013)年2月に「若年層における交際相手からの暴力に関する調査」を発表しました。大変時宜を得た調査であると考えます。この調査で、交際相手からの暴力(デートDV)を受けたと答えているのは37.4%にも上ります。また、デートDVについて学習機会があった人は、無かった人に比べ「暴力をふるうことは何があっても許されない」と答える割合が10%近く高くなっており、学習効果があることが読み取れます。都内の中学校・高校でデートDV防止の授業が広く行われるように、都としての啓発や、外部講師を呼ぶための補助をお願いします。
また、平成24(2012)年3月に発表された「男女平等参画のための東京都行動計画」には、「セクシュアル・ハラスメントの防止」として、「教育現場においても、~対応が求められています」と記述されています。学校でのセクシュアル・ハラスメント防止のために、教職員研修の啓発や、外部講師を呼ぶための補助をお願いします。
(4)朝鮮学校への補助金の支給について
民主党政権は高校授業料を無償化しましたが、「あらゆる学校に実施」をたてまえとしていながら、朝鮮学校だけに支給しませんでした。安倍政権ではさらに「朝鮮学校排除」を文部科学省の省令で決めてしまいました。私たちはこれを、すべての子どもたちの学ぶ権利を保障した、日本も批准している「子どもの権利条約」の違反であると考えます。
この無償化の問題に連動し、東京都では、朝鮮学校に15年間支給されてきた約2400万円の補助金を、2010年度には予算に計上されていたのにもかかわらず支給せず、その後現在まで3年間支給していません。他の外国人学校には支給されており、これは、あきらかに人権侵害であり、民族差別です。植民地政策によって、在日朝鮮人として生きざるを得なかった人たちの子どもたちの心を、国や東京都が差別によるイジメをして傷つけてはならないと思います。ひとしく納税の義務を果たしている保護者の負担をこれ以上重くしてはならないと思います。すべての子どもたちに学ぶ権利を保障してください。そのためにも補助金の復活を強く要請します。

6.障害者差別撤廃に向けた要求
今年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立しました。
これは、障害者権利条約を国内において具現化させる重要な法律で、2年間にわたって内閣府の障害者政策委員会・差別禁止部会で議論されたものを具体化させたものでした。
しかしその「部会意見」では、差別の定義化がなされるとともに、当事者団体や法律関係者を交えた紛争解決の仕組みの重要性が提起されていました。しかし残念ながら今回の法律ではそれが盛り込まれなく、3年後の施行までの議論、ないしは6年後の見直しに委ねられることになってしまいました。
一方でこの法律は、自治体のいわゆる「上乗せ・横出し条例」を否定しないと、しています。法律の今後の見直しにあたっては、裁判規範性に耐えうる、より強制力と実効性のある法律が求められます。そういう意味からも、自治体において実効性のある障害に基づく差別を禁止する条例づくりが求められています。
(1)障害に基づく差別を禁止する東京都独自の条例を早急に制定すること
(2)条例制定にあたっては、国の差別禁止部会で提言された、「不均等待遇」と「合理的配慮」の不提供を“差別”とする定義化を図ること
(3)差別を受けた場合、気軽に相談できる、紛争解決の仕組みや相談機関を、障害当事者団体や法律関係者など幅広い立場の人々によって構成するものをつくること
(4)法律では、合理的配慮について民間事業者の場合、努力義務としたが、合理的配慮の概念自身が「過度な負担を超えない範囲のもの」という性質上、民間事業者についても、東京都の条例では義務化とすること
(5)法律の中に「障害者差別解消支援地域協議会を設置できる」とあるが、都の全ての区市町村においてそれが設置されるように促していくこと
(6)条例制定においては、都の様々な立場の障害当事者団体と協議をしていくこと

7.精神障害者差別撤廃に向けた要求
(1)他障害と精神障害者に対する支援の不均衡を差別として捉え是正すること
①障害者医療証を他障害同様精神障害者にも適用する
②交通費割引を他障害同様に精神障害者にも適用すること
タクシー運賃の割引を精神障害者にも適用する
とりわけ介助者の交通費無料化を精神障害者にも適用すること
(2)精神障害者の入院および処遇について
今年5月31日に国連拷問等禁止条約委員会は初めて日本の精神医療を全面的に批判し厳しい勧告を突きつけている。主な勧告の中身は以下通りです。
1.強制入院に法的コントロールを、有効な不服申立てメカニズムを
2.地域サービスの充実で入院患者を減らすこと
3.身体拘束や保護室への隔離を減らすこと、期間も最小とすること
4.身体拘束や保護室隔離などの行動制限による被害者に対して救済と賠償を
5.独立した監視機関による精神病院の定期的監視を
こうした勧告も踏まえ、精神病院への長期入院及び強制入院そして身体拘束や保護室隔離は人権問題であるという認識のもとにいかを徹底すること
① 東京都では新規措置入院が最小の県の17倍もある実態について、そしてもたらされた被害について当事者から聞き取りもふくめ個別ケースの徹底再審査を行うこと 全国平均で措置入院と医療保護入院があわせて在院患者の4割強である実態は国連拷問等禁止条約委員会でも問題にされているが、東京においても4割が強制入院である。こうした強制入院の運用について再審査する必要がある
② とりわけ長期入院患者の存在については、それぞれ個別事例にたいし退院に向けた集中的な支援が必要である。東京には5年以上の長期の在院患者が6253人存在し、そのうちなんと措置入院は6名(うち20年以上2名)医療保護入院は1446人。強制入院が長期化している実態は、強制入院の不当性を立証している。徹底した再審査と退院に向けた集中的な支援が必要である
③ また身体拘束や保護室隔離についても、東京では身体拘束されているもの952名保護室隔離されているものが524名である。この実態についてとりわけその期間についても個別の調査と解決が求められる
④ こうした精神病院への精神障害者の隔離拘禁の実態解決のためには精神病院収容者はホームレスであるという認識のもと速やかな住宅保障が求められている
(これらは全て2010年の患者調査および衛生行政報告による)

8.路上生活者に対する差別の撤廃及び貧困問題の解決にむけた要求
(路上生活者襲撃事件に関して)
今年7月3日に江戸川区内で路上生活をしている男性のテントに花火が撃ち込まれ、中高生5人が逮捕されました。中高生による同様の襲撃事件は毎年のように発生しています。
襲撃事件の背景には、路上生活者への根強い差別・偏見があり、その解消が喫緊の課題になっています。
(1)路上生活者に対する襲撃を生命尊重にかかわる重大な事件として受け止め、都内の学校現場で路上生活者の人権に関する授業実践に取り組むこと。また、教職員対象の研修会も実施すること。
(2)路上生活者の人権に関して都民への啓発活動を積極的に実施すること。
(「脱法ハウス」問題など、住まいの貧困に関して)
多人数の居住実態がありながら建築基準法や消防法、東京都建築安全条例などに違反している「脱法ハウス」(違法貸しルーム)が都内に広がっています。現在、国土交通省が実態調査に乗り出していますが、違法物件の大半が都内に集中していることが明らかになっています。こうした安全性の欠如した物件が広がる背景には、民間賃貸借市場における入居差別や保証人問題、高い初期費用などの問題があることが指摘されています。
(1).国土交通省による「脱法ハウス」(違法貸しルーム)の実態調査に都としても全面的に協力すると同時に、「脱法ハウス」入居者が安全な居住環境に移れるための施策の充実を図ること。
(2)入居差別や保証人問題など、被差別者や低所得者の住まいの確保にあたっての課題を総合的に検討する部局横断的な検討委員会を設置し、被差別当事者や居住支援NPOのメンバーも委員に加えること。
以 上
   2013年12月10日

東京国体警備についての申し入れ

 私たち全国「精神病」者集団は1974年に結成された全国の「精神病」者個人団体の連合体です。私たちは「精神病」者の人権侵害や強制入院に抗して闘ってきました。
 さて2013年9月28日、都内では東京国体(第68回国民体育大会)の開会と、天皇・皇后の出席が予定されています。また、2013年11月16日~17日にかけては、埼玉県内で第37回全国植樹祭にも天皇皇后の出席が予定されています。いずれに際しても、厳重な警備が行われるものと予想されます。
 過去、このような場面では、「精神病」者に対する警察による不当なつきまといや、強制入院・開放病床の閉鎖化などの人権侵害が行われてきました。また、野宿者の追い立ても行われてきています。
 全国「精神病」者集団は、東京国体や全国植樹祭に際し、このような人権侵害を一切行わないよう、東京都および警視庁に申し入れます。
   2013年8月2日

精神障害者の人権を否定し 差別を固定化する精神保健福祉法改悪を許すな

 私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成された全国の「精神病」者団体個人の連合体です。私たちは結成時より、一切の強制入院強制医療の廃止、精神衛生法(当時)撤廃をかかげ、私たちを犯罪予備軍としてとらえ差別的に予防拘禁し強制的に人格矯正しようとする保安処分を許さない闘いを継続してきた。
 また2002年より、国連の障害者権利条約作成への動きに対して、世界精神医療ユーザーサバイバーネットワークWNUSP 全国「精神病」者集団もメンバー)とともに積極的に取り組み、また国内でも日本障害フォーラムに参加して日本政府や国連特別委員会への働きかけを継続してきた。
 2006年12月国連総会はついに障害者権利条約を採択し、日本政府も2008年9月に署名し、批准への意思を明らかにしている。
 そもそも障害者権利条約は強制入院および強制医療を否定しており、すでに締約国政府報告書審査で再三、その旨が委員会より述べられている。強制入院強制医療は、障害者権利条約12条、14条、15条、17条、19条、25条d、26条bおよび3条の非(b) 非差別〔無差別〕という一般原則の侵害であり、廃止されなければならない。
 また拷問等禁止条約特別報告官はこの2月の報告書および3月の国連人権理事会へのスピーチで、以下述べている。
 「障害者に対するすべての強制的で同意のない医学的介入に対して絶対的禁止を課すこと。こうした強制的医学的介入には、同意なしに行われる、精神外科手術、電気ショック、抗精神病薬のような精神を変容させる投薬、その期間の長短にかかわらず身体拘束と隔離拘禁の使用、が含まれる。障害のみを理由とした強制的精神医療の介入を終わらせる義務は即座に適用することであり、財政的資源の不足は義務の履行の延期を正当化し得ない(A/HRC/22/53,パラグラフ 89(b))」

「いかなる例外もなく平等を基礎として自由なインフォームドコンセントのセーフガード、法的枠組みと司法的行政的メカニズムそれは虐待からの保護を実践するための政策と実践を通すことも含む。これと矛盾するいかなる法律の条項、精神保健分野における拘禁あるいは強制的医療を許容するような条項は後見人制度そして他の代理決定を使うものも含め改正されなければならない。自律、自己決定そして人の尊厳を擁護する政策と手続きがとられること。保健についての情報が完全に提供でき受け入れでき、アクセシブルでそして良質なものとして確保されること。こうした情報は地域に基盤を置くサービスと支援が広範囲に行われるように、支援と保護の方策によって、提供され理解されなければならない(A/64/272, パラグラフ. 93)インフォームドコンセントなしの医療の例があれば、それは捜査され、そうした治療の被害者に対してそうしたことがやめられ、償わればならないA/HRC/22/53, パラグラフ 85(e)」

「精神保健を根拠とした拘禁あるいは精神保健施設への監禁、そして当事者の自由なインフォームドコンセントなしの精神保健分野におけるいかなる強制的介入あるいは治療を許容する法律条項の改正。自由なインフォームドコンセントなしの障害を理由とした障害者の施設収容を正当化している法制は廃止されなければならないA/HRC/22/53, 89(d).」

2013年3月4日の人権理事会においての彼の演説で、これについてさらに以下詳しく述べている。「精神疾患を根拠とした自由の剥奪は正当化できない。中略 わたしは精神医療疾患の重篤さが拘禁を正当化しえずまた、自らあるいは他者の安全を守るという動機によってもそれは正当化し得ないと信じる」

したがって障害者権利条約批准に向けては最低限、強制入院の要件を見直し、強制入院を減らし、最終的に廃止する方向性を取る必要がある。ところが今回の法案はとりわけ以下の点でこれに逆行している。

1 強制入院の安易簡便化による強制入院の現状維持と増加
 法案は措置入院には一切手を付けず、保護者制度撤廃と引き換えに、医療保護入院を医師一人の判断でしかも3親等までの家族ならだれでも同意できるという形にし、強制入院をより安易簡便にしようとしている。我々は障害者権利条約批准にあたって、厚顔にも強制入院強制医療を拡大強化する、精神保健福祉法改悪案を決して許すことはできない。
 厚生労働省は「障害者政策委員会第2回 第4小委員会(2012年11月12日開催)」において、病床削減の数値目標は立てないし病床削減という方針はないと明言している。
 厚生労働省は精神病院入院患者については長期化を避け短期間の入院とするという方針を出しており実際入院の短期化の傾向はある。しかしその上で病床削減をしないということ、さらに医療保護入院の要件緩和ということは、現状に倍する精神障害者が精神病院入院を強いられていく結果を招きかねない。

2 精神病院における人員配置基準の差別強化、精神障害者差別の強化
 また法案では新設条項として、厚生労働省大臣が精神医療福祉に向けた指針を作ることになっており、その中には精神科病床のあり方も含まれている。
 厚生労働省「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会2012年6月29日」報告書において、今現在長期に入院している方の病棟については、差別的な特例(精神病院においては他科に比べ医師の配置が少なくていいとするもの)以下の水準でよしとされている。医師は特例以下、看護についても看護師以下の介護士、精神保健福祉士、作業療法士、などをあわせて看護基準を満たせばいい、すなわち看護についても基準の配置でいいとするものである。これでは夜間は看護も医師も当直なしという病棟となるであろう。これを果たして「病棟」と呼んでいいのだろうか?
 精神病院病棟が病院というより生活の場・施設と化してしまっている実態の公認である。しかもこの病棟については「開放的な」とはされているが、開放病棟とするとはされておらず、行動制限をしてはならないとはされていない。また強制入院患者を入れてはならないもされていない。さらにこの病棟を、年限を切って0にするという方針も出されていない。医療と保護のために本人が拒否しても入院が必要という病態の方がなぜ医療保障もないこんな病棟に入れられるのか?  医療と保護のためにやむを得ずするという行動制限を受けるほどの病態の方がなぜこんな病棟に入れられるのか?
 しかも精神保健福祉法によれば、強制入院の医療費であっても本人自己負担が原則である。そして本人が負担できないときは連帯保証人から取り立てられることになっている。こんな基準以下の病棟に強制的に放り込まれ、その上医療費まで取り立てられる。これこそ精神障害者差別以外のなにものでもない。

3 医療観察法対象者およびその家族に対する差別の強化
 さらに医療観察法においては現行の精神保健福祉法における保護者制度の規定がそっくりそのまま移行して新規条文とされる改悪案も一緒に出されている。
 精神障害者にのみ保護者が付けられるというのが差別であるから保護者制度を廃止するというなら、医療観察法対象者は差別されていいということか?
 家族の負担軽減のために保護者制度をなくすというなら医療観察法対象者家族は負担を増して当然ということか?
 もともと精神障害者差別立法である医療観察法はさらに精神障害者一般からも差別されその差別の強化が図られようとしている
 精神病院中心の精神医療からの変換、隔離収容から地域で医療を受ける権利確立、そして何より精神障害者差別と隔離拘禁の廃絶は私たちの積年の要求である。再度私たちはすべての仲間に訴える。障害者権利条約の意味ある批准を そして完全履行を、強制入院強制医療の廃絶、精神保健福祉法の廃止、医療観察法の廃止を
   2013年5月6日