尊厳死立法に反対します 今こそ尊厳ある生を

 私たち全国「精神病」者集団は1974年に創立された、全国の「精神病」者団体個人の連合体です。私たちは精神障害者として、今作られようとしている尊厳死立法に反対します。
 伝えられるところによると法案では、尊厳死という形で殺される人は明記されておらず、複数の医師による判断により「終末期」と判断されると、水分や栄養補給も含め一切の医療行為が差し控えられたり、あるいは中止されたりする、そしてそうした医療差し控えや中止をしても医療機関も医師も刑事民事とも責任を問われず免責されるという中身です。
 また家族の同意も必要という説もありますが、家族のいない場合は医師の判断だけで治療が停止され殺されることになります。
 しかし「終末期」とはなんでしょうか? なんら定義されていません。
 こうしたスカスカの法律がいったん作られれば、脳死・臓器移植法改悪のように、本人の意思表示がなくとも家族の意志だけで、さらには家族がいない孤立した人は医師の判断だけで殺されていくことになることは明確です。
そしてその対象も「終末期」というあいまいな要件はどんどん拡大されて、遷延性意識障害者、重度障害者、精神障害者や知的障害者など「人格がない」とされてきたものへと広がっていくことは避け得ないと考えます。
 医療はまず命に向けられた営みであり、死へ向けた営みであってはなりません。
 私たちは尊厳死ではなく、まず尊厳ある生が障害のあるなし、年齢性別にかかわらず保障される社会を求めます。法律による殺人をこれ以上認めるわけにはいきません。

2012年1月27日
全国「精神病」者集団

2012年度予算によるアウトリーチ事業を弾劾する

 厚生労働省は2012年度予算において精神保健体制によるアウトリーチ試行事業を予算化した。
 これは本人の同意がない場合、医療報酬としては請求できないという理由で、医療保険以外で多職種チームによる強制的介入を行おうというものである。望んでいないのに自宅に侵入され介入されるという重大な人権侵害が税金を使って行われようとしている。いかなる根拠でこのような人権侵害が許されるのか? 憲法および国際人権法違反と断ずる。しかも恐るべきことにこのチームにはピアサポーターも位置づけられており、いわば精神障害者自身を専門職による人権侵害の手先として利用する、恐るべき精神障害者の分断である。私たち精神障害者はこうした犯罪行為に加担するいわば岡引になることを拒否する。
 この試行事業は世界的に精神障害者の反対の中で強行され、しかも効果も疑わしく、死亡例も有意に多いとされている、地域での強制医療法への一里塚である。
 本来すべての福祉や医療を拒否して孤立して、苦痛や困難に直面している人たちに対しては(ホームレスを含む)スエーデンスコーネで行われているような(注参照)パーソナルオンブート制度こそが求められている。これについてはすでに全国「精神病」者集団が何度も厚生労働省および関係団体にも紹介している。
 スコーネのパーソナルオンブートは行政からも精神保健体制からも独立した障害者および家族団体によって運営されており、1対1のつながりを作っていく事で信頼関係を作り上げ、語り合うものであり、守秘義務があり、記録も付けないものである。もちろん精神保健体制にも行政にも個別の人について報告義務はない。こうした先進事例こそが試行事業化されるべきである。
 私たち全国「精神病」者集団はこのアウトリーチ事業についてすべての都道府県が拒否すること、そしてすべての関係諸団体が拒否することを強く要請する。

注 アウトリーチ試行事業については障害福祉保健関係主管課長会議 20011年2月22日資料以下11ページより
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigi_shiryou/dl/20110630-01-05.pdf”

2011年8月25日
全国「精神病」者集団

東京都における他県から受け入れた精神病院入院患者、及び施設入所障害者についてその実態と継続的な支援策に関する要望書

2011年5月26日
東京都知事 石原慎太郎 様

人権白書東京実行委員会
実行委員長 八柳卓史

日夜の人権社会確立に向けた取り組みに敬意を表します。

3月11日発生の東日本大震災の避難民受入にあたって、東京都は精神病院入院患者を東京都内の病院へ転院させる措置をとられていると聞いています。また施設入所の障害者については、都内の各施設に対し、何人受入れが可能かを打診し、一部の施設で受入れていると聞いています。

さて、実数人口比ともに世界一の精神病院入院患者を抱えている日本の実態は国際的にも人権上重大な問題とされています。このたびの精神病院入院患者の受入に当たって、今後の地域生活再建に向け問題がないか危惧しているところであります。

都内病院に転院された精神病患者には、本人たちの意向も踏まえた継続的な支援策が必要とされます。

このような観点から受入実態とその後の継続的な支援策の実態について下記のとおり要望しますので、趣旨をご理解の上、ご回答いただけますようお願い申し上げます。

1 東日本大震災により他県から都内の精神病院へ入院してきた方の数と、施設へ入所してきた障害者の数を、精神病院別、施設種別または入院・入所形態別に明らかにされたい。

2 松沢病院は50名以上の福島からの転院者を受け付けたとのことですが、この病床を空けるために玉突きで松沢の入院患者が他の精神病院に強引に転院させられた事実はないか調査され結果を明らかにされたい。
3 都内の精神病院に受け入れた方について、地域生活への再建にむけた継続的な支援策とともに、その実数を精神病院別、入院形態別、また時系列的に明らかにされたい。
4 都内の避難所から強制的あるいは自発的に精神病院に入院した患者の数を精神病院別の数を明らかにされたい。また患者のその後の時系列的な実態について明らかにされたい。

(人権白書東京実行委員会 団体名)

障害者基本法案に関する陳情書

国会議員の皆様へ
日ごろからの障害者の人権保障に関するご活動に敬意を表します。
私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成された全国の「精神病」者、団体、個人のネットワークであり、また国連社会経済委員会の認定NGOである世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク(WNUSP)のメンバーとして障害者権利条約作成に2002年より積極的に参加しており、WNUSPの理事としても会員の山本眞理が参加しております
4月22日、障害者基本法の一部改正に関する法律(案)が閣議決定され国会に上程されました。この法案は、評価できる点もありますが、憲法上の人権を著しく制約する文言がいくつかあります。
私どもは、障害者基本法の改正が、障害者権利条約批准に向けた国内法整備の核であり、憲法に定められた基本的人権、さらに国際的な人権諸条約の保障する基本的人権が障害者にも平等に実質的かつ有効に適用されるための法改正であることが十分認識された上で、国会において十分な、かつ総合的な審議がなされることを求めます。
その意味で同封の陳情書の通り、修正・加筆・付帯決議をしていただきたく思っております。
是非、私ども当事者の意見に耳を傾けていただけること何よりお願いいたします。もし、お時間をいただけるならご説明に参りますので、ご連絡いただければ幸いです

障害者基本法の一部改正に関する法律(案)の審議に当たっての陳情書

私たち全国「精神病」者集団は1974年に結成された、全国の「精神病」者団体個人の連合体です。私どもの運営委員である関口明彦も障がい者制度改革推進会議構成員として精力的に会議に参加し第一次第二次意見の作成に精神障害者の声を反映させて参りました。

しかしながら、今般内閣府が公にした障害者基本法の一部改正に関する法律案(以下、法)には、いくつかの重大な問題があり、当該部分について下記に列挙したので、国会審議の過程で修正・加筆・決議していただきたく陳情します。

1.地域生活
法第三条の二(地域社会における共生等)には、「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。」とあるが、「可能な限り」とある以上、地域生活の権利、人身の自由、どこで誰と住むかという日本国憲法二十二条に示された当たり前の権利が、障害者には保障されず、制約されることになる。
「可能な限り」については「他のものと平等に」と置き換えられるか、憲法の二十二条条文のまま「公共の福祉に反しない限り」かに、修正していただきたい。

2.相談業務
法第二十三条 においては、「障害者およびその家族その他関係者に対する相談業務」という文言があるが、これは第二次意見にある「障害者・家族が相談業務を担う機会を増やすために必要な措置を講ずること」を反映させ、「障害者および家族その他関係者に対する相談業務については、障害者および家族による相談業務を中心として」に修正をしていただきたい。
また、法第三条に「成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるように」とあるが、成年後見制度は、法的能力(この場合は行為能力)の制限を定めているため、障害者権利条約第十二条第二項の法的能力の平等に違反し、廃止されるべきである。仮に経過措置として残すとしても、当該条文に列挙する必要はない。成年後見制度の文言を削除するか、「自己決定支援など権利利益の保護等のための」と修正していただきたい。

3.処遇
法第二十七条(司法手続きにおける配慮等)において、第30回障がい者制度改革推進会議で示されてた政府部内調整中の法案にあった「刑、保護処分その他拘禁の処分の対象となつた場合において」が削除されているが、刑事施設に拘禁された障害者の放置虐待による死亡はあまた明らかにされており、手続きのみならず、刑事施設における拘禁下の処遇についても明記されなければならない。のみならず、病院等の民事施設における拘禁についても、いやしくも国権を持って拘禁した障害者に対して合理的配慮を行わないなどの差別はあってはならず、全ての拘禁下の処遇の文言を入れていただきたい。

4.附則の加筆
障害者基本法が、全ての障害者施策の核として機能するよう、
附則1 障害者に関わる全ての法律をこの法律(障害者基本法)の目的に沿って定期的に見直す事。
附則2 障害者権利条約の批准後5年以内にこの法律(障害者基本法)の見直しを行う事。
上記の附則の加筆をしていただきたい。

5.付帯決議のお願い
障がい者制度改革推進会議の議論と障害者権利条約そのものを踏まえて、医療における障害者の他のものと平等な自由な説明と同意の確保、障害者の人権保障の担保、社会的入院の解消に向けた精神科病床削減の義務化、の3点につき、適切な付帯決議を求めます。
以 上

2011年5月17日
全国「精神病」者集団

震災特別立法に向け民主党障害PTへの申し入れ

2011年3月29日
民主党障害者PTヒアリング
全国「精神病」者集団

〒164-0011 東京都中野区中央2-39-3

1.二次的避難所に、プライバシーが守られた休息できる空間を設置し、希望する精神障害者に優先的に利用させること。

2.新たな社会的入院を作らないため、他病院に転送されている入院患者等の退院準備・生活再建の措置を取ること。とくに、避難を理由にした、精神病院収容や精神障害者の意思に反した安易な精神病院入院措置をとらないこと。復興しても、精神障害者が地域ではなく精神病院に取り残されるようなことがないよう、地域生活支援についても重点を置くべきである。

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課発の「東北地方太平洋沖地震における精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する入院手続の実施について」(平成23年3月14日事務連絡)は、非自発的入院の簡略化を認めているため、問題がある。精神障害者が精神病院に入院する場合は、当該精神障害者が入院の申出をしている場合とするべきである。

3. 自立支援医療の運用について、

被災地、および避難先、あるいは旅行中で被災のため帰郷できなくなった障害者について、医療機関や薬局が自立支援医療指定機関でなくともあるいは受給者証にある医療機関薬局でなくとも、自立支援医療が使えるようにすることまた受給者証を持参していなくとも使えるようにすることこれらを全医療機関薬局に周知するとともに、障害者にも周知徹底するため、広報すること

4.クスリの確保すること。また、クスリの入手に係る情報提供をすべての精神障害者に届くよう工夫すること。(町内放送、避難所への貼り紙その他。)

5.精神科病院の復興については、社会的入院の解消及び病床削減政策とあいまって検討すること。

① 単科精神病院病床数の縮小を目指し、単科精神病院の復興につき貸付や助成を行わないこと。

② 心神喪失者等医療観察法施設の新設を決して行わないこと

③ 復興に当たっては総合病院に精神病床を必ず設置すること これらについては空床保障を行い災害その他に備えることも必要

④ 市町村ごとに上限5床ほどの有床診療所を作り、採算がとれるような診療報酬体系構築および空床保障につなげること。

添付として以下東京新聞記事つけました

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi/2011/02/dl/0215-1b03_01.pdf

「障害者自立支援法一部改正案*」および精神保健福祉法改正案」「精神保健福祉士法改正案」に反対します。

全国「精神病」者集団は「障害者自立支援法一部改正案*」および精神保健福祉法改正案」「精神保健福祉士法改正案」に反対します。
*正式名称「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案」)
私たちは参議院において審議されようとしている「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案」、いわゆる「障害者自立支援法・一部改正案」および精神保健福祉法「改正」に反対します。
私たちは各党が実施された障害者団体に対するヒアリングに参加し、大いなる期待をもちました。
しかし、そのヒアリング結果がまったく反映されず、6月に廃案になった上記の法案がそのまま再提出されたことに大変な失望感と怒りを禁じ得ません。
新法が出来るまでの間の対策としては、「障がい者制度改革推進会議」が提出した「4つの当面の課題」をベースにすべきです。
私たち全国「精神病」者集団は、障害当事者の声をきちんと聞くことなく作成された同法案のおよび精神保健福祉法「改正案」・精神保健福祉士法「改正案」に反対します。
精神保健福祉法に精神科救急を法定化することさらに精神保健福祉士の業務拡大をすることは、私たち精神障害者の強制入院の拡大や、専門職の地域での権限強化、私たちの自己決定自律と尊厳を否定するものです。
以下強く要請いたします

一、 障害者自立支援法「改正」法案、および精神保健福祉法「改正」法案、精神保健福祉士法「改正」法案は、参議院厚生労働委員会における徹底した審議を行い、廃案にしてください。
二、 新法施行までに自立支援法のもとでも解決すべき問題点は、障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会の「4つの当面の課題(注)」であり、これを政省令や予算措置等によって実現してください

(注) 1)利用者負担の見直し、2)法の対象となる障害範囲の見直し、3)地域での自立した暮らしのための支援の充実、4)新法作成の準備のための予算措置

緊急抗議声明 (医療観察法施行5年後国会報告関連)

 11月26日、政府は、法務省・厚生労働省より提出された心神喪失等医療観察法の5年間の施行状況に関する国会報告を了承する閣議決定を行いました。この5年間、医療観察法は、指定医療機関の設置が計画通り進まない、対象者17人を自殺に追い込むなど、さまざまな問題を明らかにしてきました。
 少なくとも、国会報告は、このような実態を解消するための原因究明を行うべきです。しかし、今回の国会報告と称する閣議決定には、こうしたことの検証はおろか、基本的実数と、条文だけで構成されたものです。これでは、事態を放任し、自殺者を次々と出す結果を招くことに他なりません。
 我々は、菅民主党政権の医療観察法に向き合わない姿勢を批判するとともに、国会報告と称する閣議決定に対して、強く抗議します。

 2010年11月30日
 全国「精神病」者集団

国会報告は政府から衆参両院議長に出され、衆参両院議長が各国会議員に配布するという手続きでした。
以下に国会報告掲載中です。

厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000wvym.html

法務省
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji10_00003.html

死刑判決抗議声明

 2010年11月16日、横浜地方裁判所で池田容之被告(横浜港男性2人殺害遺体遺棄事件)の裁判員裁判の判決公判が開かれ、朝山芳史裁判長は「残虐、非人間的行為で酌量の余地はない」として、検察の求刑通り死刑を言い渡しました。死刑判決は、2009年8月から始まった裁判員裁判で初めてのことです。
 朝山裁判長は、死刑の主文を言い渡した後「判決は重大な結論となった。裁判所としては被告に控訴することを勧めたい」と、池田被告に呼びかけをしています。これは、裁判員が、控訴があることをよりどころに、死刑の判断を言いやすくするためのパフォーマンスであったように思えます。また、今回の判決は、裁判員制度に則り、二審以降も一審を尊重して判決を出さなければならないため、たとえ控訴をしたとしても、実質的な確定審のように取り扱われることになります。
 死刑は、国家による殺人です。ましてや、一般人に対して国家による殺人に関与させることは、いわば国家による殺人への加担強制であり、現代の徴兵制、国家による殺人命令にほかなりません。
 我々は、今回の死刑判決に対し、つよく抗議します。

2010年11月18日
全国「精神病」者集団

緊急抗議声明(障害者自立支援法等の一部を改正する法律案関連)

 このたび、自民党・公明党提案にかかる障害者自立支援法の一部改訂案につき政権与党が、ほぼ同内容の法案を厚生労働委員会委員長提案として、今国会に提案することが確実視されていると報道されています。
 これまで、障害者団体は、障害者の声を反映させるよう求めてきましたが、ここにきて、障害者の声が聞かれることなく、障害者自立支援法等の一部を改正する法律案の提出が予定されていること自体、強く懸念を表します。
 政策プロセスにおいて障害者団体の声を無視した場合、障害者の権利に関する条約第四条第三項に違反します。これでは、批准はありえません。
また、障害者自立支援法等の一部を改正する法律案には、障がい者制度改革推進会議総合福祉法部会の意見書を待たずして国会に出されるものであり、民主党マニフェストにある、障がい者制度改革推進法(案)や障害者自立支援法違憲訴訟との基本合意文書にも背くものになります。
さらに、障害者団体からだされた意見の殆どが反映されておらず、「遅くとも平成25年8月までに障害者自立支援法は廃止される」ことも「施行の終期が平成25年8月までである時限立法である」ことも、一切明記されておりません。
1.精神科救急医療の整備(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正)条項については、精神障害者団体とのヒアリングを重ねるべきところを、精神障害者団体からの主張に基づかずに強行しようとするものです。我が国には、強制入院及び社会的入院が深刻あり、安易に法制化することは絶対に避けなければなりません。
 この時期に、こうした法案が出されること自体、許されるものではありません。

よって、直ちに今国会における与党合意に基づく厚労委員会委員長提案を撤回し、自・公提案の一部改訂案については、廃案とするよう強く求めるものです。
  2010年5月27日

抗議・要請文(医療観察法)

日本弁護士連合会
会長  宇都宮 健児 様

冠 省
 私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成した全国の「精神病」者団体・個人の連合体です。私どもは、1974年から刑法改悪=保安処分新設を、閉じ込められる側の「精神病」者の立場から反対してまいりました。2001年以降は、いわゆる触法精神障害者に特化した法律に、心神喪失者等医療観察法に反対してまいりました。法施行後も廃止を求めて活動を継続しています。
 さて、3月18日・19日の日本弁護士連合会理事会で決議された、「精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書」を読みました。理事会及び意見書は、日弁連の会長選挙・会長就任を目前に控えて、急遽、進められたものと聞いております。また、理事会でも反対派の声が多数上がっていたにも関わらず、議論よりも結論を急いだ決議であったと、漏れ聞いております。
 意見書は、明らかに医療観察法の改正を旨とするものでした。これは、医療観察法のひとまずの存続を肯定するものであり、医療観察法反対というこれまでの日弁連の姿勢を大きく覆したものです。
 われわれは、弁護士がときとして国家権力や資本を相手取って戦うことや日弁連が国家から独立した弁護士組織であることから、国益や私益のために弱者を切り捨てるようなことをしないものと信じていました。
医療観察法は、日弁連も認めてきたとおり、われわれ「精神病」者に対する国家からの保安処分攻撃の一形態です。非科学的な再犯可能性を根拠に、他の者と異なる手続きによって精神障害者を不定期予防拘禁し、あるいは地域で監視管理するといった、強制医療を命ずるのです。そして、「精神病」者はその犠牲となります。そのため、日弁連から医療観察法の存続を肯定するような意見書が出されたことに、大変、憤慨しております。
 われわれは、日弁連が出した「精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書」を、断じて許すことはできません。よって、ここに、強く抗議するとともに、以下の箇条書きを要請します。

1.精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書の白紙撤回
2.障害者施策に係る議題については、わたしたち障害者団体との公開討論を経て、決議できるような新たな仕組みを導入すること。

以 上