【パブリックコメント】医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進

「令和6年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」に関するご意見の募集について

〇一般科医療と同様にした精神科医療における遠隔医療(オンライン診療)の診療報酬の制度化へ
 障害者の権利に関する条約 第25条は、締約国に対して障害者に他の者と同質の保健医療サービスを提供する立法上及び運用上の措置を講じるよう求めています。その意味でオンライン診療については、オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月・令年5年3月一部改訂・厚生労働省)を基本としながら、精神科以外の患者と同様に医療を受ける機会を提供する手段として捉え、整備される必要があります。たとえば、情報通信機器を用いた診療(D to P with D)や初診のありかたについて、内閣府規制改革推進会議での検討も鑑みて、一般科と同様に精神科についてもオンライン診療に係る診療報酬の制度化を推進してください。

〇精神科医療における初診を含むオンライン診療の診療報酬の制度化へ
 情報通信機器を用いた精神療法に係る指針(以下、ガイドラインと記載)には、「(患者は)対面診療に心理的負担を感じる」とあります。この文言は、オンライン診療の場合なら診察室で無理矢理に押さえつけられて、そのまま非自発的入院となる心配がないという文脈で加えることが提案された経緯があります。非自発的入院の経験は、精神障害当事者にとって苦痛のために心的外傷になり得るものであり、結果として医療不信に陥ることもあります。また、深刻な虐待が常態化している病院も存在すると報道で指摘されており、精神科医療全体への信用の問題も見逃せません。
 ほかにも対面診療における心身の負担の軽減を求める声としては、「予約診療においても待ち時間が1時間~2時間にものぼることがある。待機が心身に負担がかかる」「勤務が繫忙期にかかると通院を確保するのがままならない時がある。体調は安定していて、診療は3分程度で終わるのに。」といったものがあります。また、医療アクセスの保証を求める観点からは、「ひきこもりの経験から、自宅から受診できるとありがたい。」「体調が悪いときは、通院ができないときがある。オンライン診療で先生に相談できると安心する」といったような声などが障害者団体に寄せられています。
 また、東日本大震災をはじめ被災地が直面する問題として精神疾患の増加が挙げられます。令和6年能登半島地震においても直面する問題として報道で指摘がされています。被災地にゆきとどく人的資源は限られていることから、精神科のオンライン診療による初診からの医療アクセスを保障することは精神疾患の重篤化の回避が期待されます。
 これらの患者サイドのニーズ等に鑑みて、精神科医療における初診を含む診療報酬を制度化が求められます。

〇精神科医療における遠隔医療の推進をはかるために、情報通信機器を用いた精神療法に係る指針のブラッシュアップの検討
 ガイドラインには、「初診精神療法をオンライン診療で実施することは行わないこと」とあります。これは、初診におけるオンライン診療の実践に歯止めをかけるような書きぶりです。その一方で「上記課題の解消が進めば」とあり、症例の蓄積によって課題が解決されれば、初診からのオンライン診療の可能性が開かれるかのような書きぶりもあります。初診のオンライン診療に歯止めがかけられているのにもかかわらず、症例の蓄積を前提とした内容となっています。そのため、症例の蓄積は必ずしも初診だけではなく、再診の症例等も活用するなどのあり方が必要です。
 指針づくりの検討会では海外の症例のみならず、システマティック・レビューについても、地政学的な差異から分析が困難であるとしてエビデンスに位置付けないことが確認されています。これでは、将来的な初診からのオンライン診療の可能性を示唆しつつも、事実上、可能性がほとんど閉ざされていることになります。今後の見直しに当たっては、オンライン精神療法の国内の具体的な症例などをもとにした検討を行う必要があります。その際、オンライン精神療法についての実践者を中心にしたエキスパートコンセンサスを心がける必要があります。また、検討にあたっては、情報通信機器を用いた精神療法に係る指針の検討会の委員を務めた障害者団体が推薦する精神障害の当事者を含む複数名を招聘し、障害者権利条約をはじめ時代の要請に照らして、患者市民参画を推進することが必要です。