精神科医療における行動制限最小化に関する調査研究に対する会長声明への公開質問状

小林・福井法律事務所
弁護士 小林元治 様

 晩秋の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 日本弁護士連合会(以下、「日弁連」とする。)は、2023年9月7日付けで「厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 精神科医療における行動制限最小化に関する調査研究-報告書-に対する会長声明」(以下、「会長声明」とする。)が公表されました。会長声明では、「本報告書の提言に基づいた内容となることについて強く懸念を表明するとともに、改めて、弁護士等も関与した上で、『身体的拘束のゼロ化』を推進するための議論を広く公開の場で行うことを求める」とあり、要件見直しに係る告示改正を慎重に進めることを求めた内容となっています。
 さて、会長声明は、「精神科医療における行動制限最小化に関する調査研究報告書」の位置付けや内容に対する誤謬・誤読を含んだものとなっていますが、そのことはさておき、次の重要な点についてのみ、疑義がありますので僭越ながら質問をさせていただきたくお手紙をお送りいたしました。会長声明においては、2022年10月19日付「厚生労働省『地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会』報告書の身体的拘束要件の見直しに対する意見書」が「告示130号の拙速な改正に反対した」ものであると位置づけられています。しかし、繰り返し読み返しても、2022年10月19日付意見書が“拙速な改正に反対した文書”であると読むことは不可能でした。2022年10月19日付意見書は、あくまで「患者の治療困難性」を要件に入れることに反対したものとなっています。これでは、2022年10月19日付意見書に書かれていない内容を、この度の会長声明によって後から意味づけし直しているわけであり、極めて悪質で操作的な内容と言うほかありません。2022年10月19日付意見書は、どこをどのようにして読めば「告示130号の拙速な改正に反対した」と言えるのか、他の論点に先駆けて、まずはこの点について、ご回答をお願いします。誠に勝手ながら2023年大晦日までに回答をください。
 以 上