社会福祉法人金沢市民生協会ときわ病院長 殿
貴病院におかれましては、日頃より精神科分野における地域医療にご尽力くださり、心より御礼申し上げます。
去る12月17日、名古屋高等裁判所金沢支部は、入院していた大畠一也さん(当時40歳・男性)が、体をベッドに拘束されたあと、エコノミークラス症候群を発症して死亡したことをめぐる裁判で行動制限における補充性要件を認め、行動制限を回避するための方策を尽くしたとまでは言えないとして貴病院の過失を認める判決を下しました。
本判決の意義は、従来の判決のように精神保健指定医が判断したという形式要件にとどまらず、精神保健指定医の判断の中身に関する実体要件にまで目が向けられたことにあります。
行動制限は、侵襲性が高く厳格な要件のもとで行われてきたものです。しかし、精神科医療分野においては、近年まで毎年身体拘束が増加傾向にあったことをはじめ、未解決の問題が山積している印象を否めません。司法が補充性要件を認めたということは、次いで医療現場が行動制限を回避するための手段にかかわる議論を加速していき、ひいては患者全体の利益に資することになるのだと考えます。
貴病院に限らず、日本の精神医療全体の底上げのために、行動制限を捉え返す議論をはじめる重要な契機として、この判決を前向きに捉えていただけることを願ってやみません。
私たち全国「精神病」者集団は、精神障害の当事者で構成される全国組織として、名古屋高等裁判金沢支部の判決を支持し、貴病院には上告されないことを強く望みます。