声明 石川県の身体拘束裁判の逆転勝訴について

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 2016年、石川県の精神科病院に入院していた大畠一也さん(当時40歳・男性)が、体をベッドに拘束されたあと、エコノミークラス症候群を発症して死亡する事故が発生しました。両親は、病院に賠償を求めて裁判を提訴しました。2020年12月16日、名古屋高等裁判所金沢支部は、病院におよそ3500万円の支払いを命じる両親側逆転勝訴の判決を言い渡しました。蓮井俊治裁判長は「死亡した男性は、薬も拒否せず服用していたし、一時的に人員を割くなど、医療行為を行うためのほかの代替の方法が無かったともいえない。身体拘束を認めた医師の判断は早すぎた」と指摘しました。
 この判決は、従来の判例にありがちな精神保健指定医の判断であることを理由に中身を精査しない姿勢とは根本が異なり、医療行為を行うためのほかの代替の方法を検討したか否かなど補充性原理に基づく事実認定をおこなっています。本来、人の人身の自由は、よほどのことがない限り、厳格な手続き(日本国憲法においては専ら刑事訴訟法のこととされる。)をふまなければ制約されないこととされており、精神保健指定医の判断の有無だけで簡単におこなえるような法構造は瑕疵があると言わざるを得ません。ここに踏み込んだ本裁判例は画期的です。
 末筆に身体拘束中に亡くなられた大畠一也さんのご冥福をお祈りします。

   2020年12月17日