障害者差別解消法の見直しにあたっては、障害者の権利に関する条約の趣旨を鑑みたものとなるように、次の点に留意されますよう意見を申し上げます。
1.差別の定義
障害に基づく差別の類型は、直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供の4類型としてください。
また、類型ごとに障害に基づく差別の定義を明記してください。
2.挙証責任
この法律においては、障害に基づく差別を受けた側がその事実を挙証するのではなく、相手方に対して「差別していない」ことを挙証させるものとしてください。また、障害に基づく差別を受けた側は、差別していないという主張に対して反証のための機会を与えられるものとしてください。
3.各則の新設
分野ごとに具体的な障害に基づく差別の禁止を定めた各則を法文の中に規定してください。
4.民間事業者による合理的配慮の義務化
民間事業者の合理的配慮の提供は努力義務ではなく義務としてください。
また、事業者に対して具体的にどのような合理的配慮を提供すれば良いのかについて相談できる窓口を設置してください。
合理的配慮の提供に関する事業者への普及啓発をおこなってください。
5.裁判外紛争解決機能
行政から独立した裁判外紛争解決の仕組みをつくり、調整・調停を行う権限を持たせるなどして法律の実効性を担保してください。
その構成メンバーは、障害当事者団体、法律家、社会福祉専門家等と明文によって規定してください。
パリ原則に基づく国内監視機関を設置してください。また、国内監視機関として障害に基づく差別への対応を可能とするために、当該裁判外紛争解決機能と連動した体制を構築してください。
6.相談体制
相談体制については、障害者が地域の身近なところで安心して相談できる障害当事者が構成メンバーに加わったものにしてください。
裁判外紛争解決が並行線となり打ちきるほかなくなった場合には、司法救済につなぐための相談をするようにしてください。
7.裁判規範性
障害に基づく差別をめぐって被った側と相手方の主張が並行線になった場合や合理的配慮の提供を約束したのにもかかわらず実際に開始しない場合などには、司法救済ができるように裁判規範性がある規定を設けてください。
8.立法府と司法府への適用
障害者差別解消法の対象に行政機関や民間事業だけではなく、立法府や司法府についても対象にしてください。
9.精神障害当事者の参画を推進すること
政策委員会の構成員には、精神障害をもつ有識者やピアサポーターの職能研修機関に所属する精神障害者はいるものの、病棟患者自治会や地域患者会、自立生活センターの当事者スタッフなど幅広い精神障害当事者によって構成された団体に所属する精神障害当事者がいません。全国「精神病」者集団をはじめとする精神障害当事者の団体に所属する精神障害当事者を構成員にして同法について精神障害当事者の観点から監視できるようにください。
省庁、地方公共団体が定める対応要領や事例集の作成過程には、精神障害当事者の参画がないままに進められたものが少なくありません。そのため、精神障害者への配慮例として書かれている内容には「ゆっくり話すようにする」「穏やかな口調で話をする」など精神障害者のニーズとして蓋然性のないものが散見されます。これらについては、精神障害当事者の参画を得た上で再検討と修正をおこなってください。
各地方公共団体における障害者差別解消支援地域協議会には、精神障害当事者の構成員が入っていないところが非常に多いです。積極的に精神障害当事者の構成員が起用されるように当事者参画を法文に書き込むなどして後押ししてください。
10.見直しに向けた検討の継続
今回の見直しでは、先送りにせざるを得なかった内容であっても、附則に見直し規定を設けるとともに検討すべき内容を明記するなどして継続的な検討をおこなってください。
障害者の権利に関する条約第三十九条による障害者の権利に関する委員会からの提案及び一般的な性格 を有する勧告が行われたときには、障害者を代表する団体の参画の下で、当該提案及び勧告に基づく現状 の問題点の把握を行い、法律の見直しを始めとする必要な措置を講じてください。
◆障害者差別解消法の見直しの検討に係る障害者団体ヒアリング(10月28日)
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/group_hearing/c-1028-2/index.html
◆障害者差別解消法の見直しの検討に係る障害者団体ヒアリング(10月28日)議事録
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/group_hearing/c-1028-2/gijiroku.html