一般社団法人 日本透析医学会
理事長 中元秀友 様
冠 省
全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。本ガイドラインとの関係では、意思決定能力がないとされる人たちが集まった団体ということになります。「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言(案)」についてのパブリックコメントを提出します。
記
1.意思決定能力
ガイドラインでは、「患者の意思決定能力の評価は、患者・家族等・医療チームで行う。」とされている(p.14)。また、この前提に従って「意思決定能力を有していない患者の家族等から透析見合わせの申し出」などが展開されている。しかし、これでは、あたかも患者が治療内容をよく理解してからじゃないと、同意があっても治療開示をできないかのような誤解が考え方の前提になっている。
もちろん、患者が意思表示できない場合の治療開始等については、考えられる必要がある。しかし、本来、侵襲行為の違法性阻却事由は、侵襲に対する同意だけでよいとされている。判例によると侵襲に対する同意は、「必ずしも意思能力を必要としない」とされており、意思無能力法理を立法事実とした成年後見人による治療の同意云々などということにはなり得ないのである。成年後見人と任意後見人は患者の医療に同意する権限はないが、成年後見人と任意後見人でも代諾を妨げるものではない。よって「意思表示できない場合」の代諾手続きなどに限ったものとし、「意思決定能力」の項目は、まるごと不要なため削除を要する。
2.医師による医療差し控え提案
患者が治療の不開始・継続の中止を求めてきた場合にどうするのかについては事前に考えておく必要がある。しかし、その他治療との関係で治療開始できないなどの場合を除き、医師が医療差し控えを提案することは医師の本務にもとるものである。医師は、治療の必要性を患者に説得することこそ本務である。本人の意思が書面で残されていたとしても、家族に治療の必要性を説得するべきであり、悪しき優生思想とも連なる問題を内在している。この項目は、まるごと削除を要する。
3.結論
全体を通して法律面での完成度がきわめて低い印象を受ける。運用に伴う現場の混乱は免れ得ないだろう。現場で困るのは医療者と患者である。学会としては、検討を延期し再検討しなければ、本当に大変なことになる。
以 上
◆【重要】「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言(案)」 についてのパブリックコメント募集と公聴会のお知らせ
https://www.jsdt.or.jp/info/2683.html