最高裁判所事務総局家庭局長 手嶋あさみ 様
厚生労働省社会・援護局地域福祉課成年後見制度利用促進室長 竹野佑喜 様
内閣府成年被後見人等権利制限見直し担当室長 竹野佑喜 様
法務省民事局長 小出邦夫 様
平素より、司法行政にご尽力いただき敬意を表しております。私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
さて、最高裁判所事務総局家庭局は、来年の春からの運用に向けて成年後見開始等申立書統一書式の検討を進めています。精神障害者の生活に係る法制度が障害者の権利に関する条約の趣旨を鑑みたものとなるように、下記のとおり意見を申し上げます。
記
1.当事者不在
このたびの成年後見開始等申立書統一書式の検討は、障害者団体の意見を聴く機会が設けられないままに進められてきました。実際に成年後見制度を利用しているのは、精神上の障害を有し、事理弁識能力を欠く常態にある成年被後見人等の本人たちです。
障害者の権利に関する条約第4条第3項には、障害者を代表する団体から推薦を受けた当事者の政策決定過程からの参画が規定されており、同条約第33条第3項には、あらゆる障害にかかわる政策において締約国は障害者団体からの監視に応じることが求められています。
成年後見開始等申立書統一書式の検討にあたっては、今からでも障害者団体のヒアリングを実施してください。
2.障害者の権利に関する条約との整合性
障害者の権利に関する条約第12条第2項は、障害を理由とした法的能力の制限の禁止を締約国に求めています。国連障害者の権利に関する委員会は、日本政府の解釈と異なり、法的能力には行為能力が含まれると解釈しているため、同条約第39条に基づき日本政府に対して成年後見制度の廃止を勧告することになると思われます。政府は、勧告に従ってなんらかの対応をすべきであり、あらゆる検討は、そうした前提に立っておこなわれるべきです。
3.利用促進基本計画との整合性
成年後見制度に係るあらゆる政策・運用は、成年後見制度利用促進基本計画との整合性が課題となるため、内閣府及び厚生労働省との調整をしておくにこしたことはないと考えます。
4.配慮のある表現への修正
精神上の障害を申告する欄には行動障害のことが書かれており、大声を出すなどの行為が列挙されています。しかし、身上監護及び財産管理をおこなう上で行動障害に係る申告は不要であるばかりか、成年後見人等にいらぬ先入観を与え、偏見を助長し適切な身上監護を困難せしめる可能性があります。
以上のことから詳細な症状の申告を求める統一書式の表現ぶりについては配慮あるものに見直されることを強く求めます。
◆最高裁判所,成年後見開始等申立書統一書式 (川田龍平事務所から提供をうけました)
https://jngmdp.net/wp-content/uploads/2019/08/20190828.pdf