精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)に対する声明

 全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
2019年6月28日、精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)が公表されました。精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)には、14現代の精神保健の課題と支援の③社会的排除と社会的障壁、2日本の精神保健福祉施策に影響を与えたできごととして、想定される教育内容の例に相模原事件(以下、「津久井やまゆり園事件」とする。)を精神保健福祉法における措置入院の見直し等というかたちで例示されました。
 しかし、既知のとおり、津久井やまゆり園事件の再発防止を契機とした措置入院の運用ガイドラインは出されていますが、措置入院の見直しが検討まではされたものの、結果として見直された事実はありません。また、措置入院運用ガイドラインは、従来の運用のバラツキを是正ための処理基準を設けたものに過ぎず、措置入院を見直す内容にはなっていません。そのため、津久井やまゆり園事件から措置入院の見直しが例示される本カリキュラム案は、きわめて問題があるものです。
 さて、精神保健福祉法改正法案は、何があっても、ほとんどの内閣提出法案を成立させてきた現政権において唯一、廃案となり再提出の目処が立っていない法案となりました。精神保健福祉法の審議過程では、法案概要資料の趣旨の部分に変更が加えられるという前代未聞の珍事件が起こり、立法府の歴史においても2件しかない参議院先議法案の継続審議を帰結しました。なお、もう1件の参議院先議法案は、精神保健福祉法改正法案のように賛否の対立により継続審議になったものではないため、より重く受け止められなければなりません。そして、忘れてはならないのは、精神保健福祉法改正法案が内閣総理大臣の施政方針の法案であったのにも関わらず賛否の対立により継続審議になり、のちに廃案になったことです。このことからも精神保健福祉法改正法案が立法府の歴史上、まったく前例のない顛末をむかえたことがわかると思います。このことを厚生労働省は忘れたのでしょうか。
 3年前のこの日、津久井やまゆり園事件が発生しました。そして、容疑者の措置入院歴が報じられ、再発防止の検証を契機に措置入院の見直しが検討されました。その後、精神保健福祉法改正法案が上程されましたが、私たち当事者が反対したことで廃案になり、現在に至っています。仮に津久井やまゆり園事件のことを取り上げるのならば措置入院の見直しではなく、当事者団体からの反対運動によって廃案になった経過から精神保健福祉と人権の問題を考えるような内容にすることと例示し、どの出版社においても編集委員会は当事者をライターとして採用するべきと考えます。
 以上のことから精神保健福祉士養成課程のカリキュラム(案)は修正を免れません。

◆厚生労働省,精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05546.html