成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(案)の質問リストの送付について

 平素より、精神障害者の地域生活の政策・立法にご尽力いただき誠にありがとうございます。私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
 さて、今週末、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案(閣法)の審議入りが見込まれています。本法案の審査は、欠格条項の見直しが進んだという表面上の成果のみで評価してはならず、障害者権利条約等の国際的動向や成年後見制度利用促進法に基づく政策の進捗状況などの中間評価が求められる点で通常の単独法案の審査とは一線を画するものです。また、今回の法案審査を逃すと重大な課題が先送りにされてしまいます。
精神障害者の生活に係る法制度が障害者の権利に関する条約(以下、障害者権利条約)の趣旨を鑑みたものとなるように、別紙の通り質問してほしい事項をまとめましたので参考までにご活用ください。よろしくお願いします。

別紙
質問リスト

第190回通常国会の成年後見制度利用促進法の審査では、政府が我が国の成年後見制度が障害者の権利に関する条約第12条(法の前の平等)に違反しないと解釈したことに対して、衆参両院の内閣委員から国連障害者の権利に関する委員会の文書(一般的意見第1号など)や他国の審査状況などを根拠に障害者権利条約第三十七条に基づく政府報告書の審査(以下、「政府審査」とする。)において条約違反の勧告を受ける可能性があるとの指摘がなされた。また、委員からは「勧告をうけたとしても見直しをおこなわないのか」旨の質問がだされ、それに対して加藤勝信大臣(当時)は、「必要があれば見直しをおこなう」旨の答弁をした。これら一連の法案審査を通じて障害者権利条約の観点からの問題点が明らかになり、附帯決議には「障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の自己決定権が最大限尊重されるよう現状の問題点の把握に努め、それに基づき、必要な社会環境の整備等について検討を行うこと」が盛り込まれ、加藤大臣(当時)からも「その趣旨を十分尊重してまいりたい」との発言があった。さて、障害者の権利に関する条約第三十九条に定められた障害者の権利に関する委員会からの提案及び一般的な性格を有する勧告が出されたときには、障害者を代表する団体の参画の下で提案及び一般的な性格を有する勧告に基づく現状の問題点の把握をおこない必要な見直しをおこなうという政府の立場に変更はないか。

成年後見利用促進委員会のヒアリングにおいては、対象として選ばれた障害者関連団体が日本障害者協議会と全国精神保健福祉会連合会の二団体にとどまったが、成年後見利用促進専門家会議では、もっと積極的にヒアリングをしていくものと考えていいか。

いくつかの障害者関連団体(DPI、病者集団を含む)は、成年被後見人等から通帳原本の開示や残高の照会に応じない成年後見人等に関する相談を複数受けているようだが、その一方で士業団体として独自の苦情受付機能を有する公益財団法人成年後見リーガルサポートは、通帳開示にかかわる苦情相談を受けたことはないと説明を受けている。このように障害者団体と士業団体では、受け付ける苦情相談の内容や相談者層に違いがあることがわかる。今後、成年被後見人等のニーズを把握していく上では、士業団体があまり受けないような苦情相談を受けている障害者団体の参画が不可欠と考えるが政府としてはどうなのか。

成年被後見人等は、成年後見人に対して自らの通帳原本の開示を求めた場合には必ず開示されるものか。

成年被後見人等に対して通帳原本の開示や残高の照会に応じない成年後見人等が少なからず散見されるが、こうした場合、成年被後見人等とその主たる介護家族は将来設計を立てられず、また、横領されているのではと不安の中で過ごしている。預金通帳は、成年被後見人と主たる介護家族が見られようにするべきと考えるが政府の認識はどうか。

成年被後見人等は、成年後見人に対して付加報酬額の開示を求めた場合には必ず開示されるものか。

成年被後見人等は、成年後見人との信頼関係が結べないことを理由として、成年後見人の解任ができるのか。

最高裁判所は、成年被後見人が取り消し権を行使した件数、解任件数、辞任件数、報酬の最大値及び中央値、候補者の選任率、士業成年後見人一人あたりの受任件数の最大値及び中央値などの統計をとっていないが、こうした実態を明らかにしていく必要があるのではないか。

成年後見人等に持ち家を売られた上、施設に無理やり入れられたとする成年被後見人等の訴えが各地で散見されるが、居住用不動産の処分(売却)の実態などを明らかにしていく必要があるのではないか。

成年被後見人等が成年後見人等を訴えるために弁護士と委任状を締結しようとするとき、訴えの相手方である成年後見人は取り消し権を行使できるのか。

公益財団法人成年後見リーガルサポートは、不正防止の観点から会員に対して成年被後見人の通帳原本の確認をおこなっている。一昨年、東京都在住の成年被後見人が当該財団への通帳原本の情報提供を拒否したことにより、成年後見人も通帳原本の情報提供をおこなわなかったため当該財団を退会処分にされる事件が発生した。そのため、家裁から選任された成年後見人等は、事実上、本人が拒否しても財団に情報提供をおこなってしまうことになるが、これは民法に基づく本人の意思の尊重や個人情報の観点から問題はないのか。

誤植の指摘があったので以下に掲載します。
公益財団法人成年後見リーガルサポート⇒公益「社団」です。
⇒リーガルサポートが事業として行っているのは、本人の財産や収支に関する情報や、要配慮個人情報を含むプライバシー情報を会員からオンラインで提供させていること、です。
全員を対象に通帳原本の確認も行いましたが、定期的に行われるかどうかは不明です。
退会処分ではなく、除名です。
成年後見人等の広範な裁量権が問題となっています。監督と称して所属団体へ本人のプライバシ―に関する情報を提供させているのは、リーガルサポートだけではないようですが、そのあたりの実態も明らかではないように思います。