意思決定支援等(アドボケーター)に係る声明

意思決定支援等(アドボケーター)に係る声明

 このたび2017年12月22日に閣議決定された平成30年度予算案において「意思決定支援等を行う者に対する研修の実施」に500万円の予算が計上されました。この予算は、これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会最終報告書(2017年2月8日)の「医療保護入院制度等の特性を踏まえ、医療機関以外の第三者による意思決定支援等の権利擁護を行うことを、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業に位置付けることが適当」との考えに基づき、民間1団体が委託を受ける想定の予算とのことです。2018年度はモデル事業として研修が実施され、それを参考にして意思決定支援等アドボケーターの事業化が検討されることになるものと思われます。
 他方で「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するアドボケーターガイドライン」(2015年度厚生労働科学研究費・日本精神科病院協会)には、アドボケーターを治療を受けさせるためのものと位置づけており、さらにピアサポーターをアドボケーターと想定した上で、病院を訪問したピアサポーターに対して入院患者との会話の記録をとらせ、精神科病院に対する一方的に情報提供をすること旨が書かれています。 
日精協アドボケーターガイドラインのような考え方に基づき研修が実施された場合には、今後の事業化にも大きく影響するのではないかと深刻に憂慮します。
 全国「精神病」者集団は、深刻な権利侵害への救済策として「権利擁護をする前にまず権利侵害を辞めろ」という立場をとり、障害を理由とした非自発的入院それ自体の廃止を求めます。その上で同意/非同意にかかわらず全ての入院者に対して、権利侵害が発生したときに速やかに使えるような、実効性のある権利擁護制度が必要であると考えます。
 また、精神科病院がアドボケーターから一方的に情報取得をするような制度設計は、ピアサポート活動(当事者活動)の本旨にもとり、病院に権限が集中した現状の体制を補完するものであって、もって実際の権利の擁護を困難せしめるものであると考えます。
 そして最後に意思決定支援等アドボケーターの事業化の検討プロセス自体が、特定のアクターだけに閉じられたものであり、多様な権利擁護実践を幅広い視点で検討するようなものになっていません。今回の意思決定支援等アドボケーターの事業化をもって権利擁護制度の検討が終わったものと見なすことなく、幅広い当事者運動の視点を取り入れた検討を続けていくことが不可欠であると考えます。
 そのため、全国「精神病」者集団は、精神科病院における権利擁護について全面的な総点検をつよく求めます。
    2018年1月5日