日本政府による障害者権利条約の趣旨と非自発的入院に係る解釈について

 2014年1月20日、障害者の権利に関する条約が批准されました。
 さて、私たちは、精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律に基づく精神障害者の非自発的入院制度が、精神障害者の利益になり得ておらず、むしろ権利を侵害するものだとして反対してきました。同条約は、精神障害者に対する非自発的入院制度が同条約第12条、第14条、第15条、第17条の趣旨に違反することを明確に示しており、私たちの主張を後押しするものとなりました。
 しかし、日本政府は、精神障害者の非自発的入院制度が同条約に違反しないとの立場をとり、とりわけ違反が明確であると考えられる同条約第14条の解釈も、障害のみを理由にしていないため違反しないものと答弁しています。
政府外務省は、同条約の批准に当たって立法府に誤った趣旨の説明をしました。そのため、立法府は誤った解釈に基づいて批准することになりました。しかも、政府外務省の解釈は、それ自体が根拠的ではありません。政府は、精神障害者に対する非自発的入院制度が同条約第14条の趣旨に反しないと解釈してきた根拠について立法府から再三の質問に同解釈を繰り返すばかりで、なにも答えられませんでした。
2020年に予定されている障害者権利委員会の政府審査で日本政府は、ほぼ確実に国連障害者権利委員会から非自発的入院制度が同条約に違反するとの勧告を受けます。しかし、政府・外務省は、批准時の解釈である「非自発的入院制度は条約違反にあたらないとの立場を変えない」とし、その後、「非自発的入院制度は条約違反にあたらないとの立場を変えるかどうかは答えられない」としています。このままでは、障害者権利委員会による総括所見が絵に描いた餅になり、同条約の実効性が骨抜きにされてしまいます。
 他方で、私たちは日本政府の条約解釈とは別の問題として、障害者権利委員会の総括所見に基づいた政策の見直しは真摯に検討されるべきであると考えます。批准時の解釈がどうであれ、障害者権利委員会の勧告を無視してよいことにはならないです。
 以上のことから、私たちは同条約の批准の過程に明らかな問題があったとの立場をとるとともに、条約解釈とは別に障害者権利委員会の総括所見に基づいた政策の見直しは真摯に検討されるべきであることを強く主張します。