青森宣言2009(2009年10月2日)

全国「精神病」者集団結成35周年にあたり、本日私たち「精神病」者はさまざまな困難を乗り越え、ここ青森に集まった。
私たちは今改めて300万をこえる全国同胞に以下を訴える。

何があっても生きのびよう。
生きていてこそ人権、生きていてこそ尊厳、生きていてこそ闘いだ。
まずいきのびるための闘いを
生きるために必要なものをもぎとる闘いを、まず自治体に、医療機関に精神保健専門職に対して行っていこう。
食う金を住むところを確保する闘いを、地域で当たり前に生きていくための介助支援を獲得する闘いを、そしてそうした闘いが可能となる支援確保を各地で繰り広げよう。

こうした各地の闘いを大きなうねりとして日本政府から私たちの生き延びる手段をもぎとろう。
そして医療観察法はもとより精神保健福祉法を撤廃し、強制のないもうひとつ別の社会、制度福祉医療体制を作り上げよう
国連障害者権利条約はどのような障害を持とうが、人として尊重されることを宣言した。そして条約はあらゆる場面法律・制度において、いたるところに障害者がいて当たり前の社会を要求している。逆に言えば、現在ある社会、法制度が前提としている人間観を根底から覆すことを求めている。

障害者権利条約国連採択の場において、障害者団体代表が締めくくったように「さあ革命を始めよう」というのが障害者権利条約の核心である。人間観そのものの変革を迫る闘いが始まっている。
通常の言語が通じない、あるいは通常の社会感覚がない、あるいは通常の人間関係を持ち得ないとされて、「人間でない、したがって治療が、訓練が、矯正が必要」とされ、それらが強制されてきた私たち精神障害者への社会と専門職の対応に今終止符が打たれたのだ。

以上を全国「精神病」者集団結成35周年記念総会において、すべての人々に向け宣言する。
私たちは障害者である前に人間だ、ピープルファースト! 私たちのことを私たち抜きに決めるな!

行動計画(2009年―2016年)

1 障害者権利条約の完全履行とはなにか?
1 強制入院強制医療など一切の強制の廃絶
全国「精神病者」集団は結成以来、強制の廃絶を主張してきた。私たちは障
害者権利条約においても、以下の立場をとる。
障害者権利条約は強制の廃絶を求めており、同時に地域で自らの自己決
定、そしてそれへの支援を受けながら、当たり前の生活を送り、同時に求め
る医療やサービスを保障されなければならない。
すべてのものは障害のあるなしにかかわらず、「イエス、ノー」を尊重され、
強制的医療や強制入院を否定される
根拠条文(以下は長瀬・川島訳からの引用)
第 3 条 一般原則
(a) 固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び人の自立に
対する尊重
(b) 非差別〔無差別〕
(c) 社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョン
(d) 差異の尊重、並びに人間の多様性の一環及び人類の一員としての障
害のある人の受容
第 5 条 平等及び非差別〔無差別〕
第 12 条 法律の前における平等な承認
2 締約国は、障害のある人が生活のあらゆる側面において他の者との平
等を基礎として法的能力を享有することを認める。
第 14 条 身体の自由及び安全
1 締約国は、次のことを確保する。
関口委員提出資料
(a) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、身体の自由及び安全
についての権利を享有すること。
(b) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、自由を不法に又は恣
意的に奪われないこと、いかなる自由の剥奪も法律に従い行われること、
及びいかなる場合においても自由の剥奪が障害の存在により正当化されな
いこと。
国連高等弁務官事務所の解釈
「障害者権利条約は、障害の存在に基づく自由の剥奪は国際人権法に反し
ており、本質的に差別であり、そしてそれゆえに不法であることを明確に宣
言する。障害に加えて追加の根拠が自由の剥脱の正当化に使われる場合
に対しても、こうした違法性は拡大して認められる。追加の根拠とは例えば
ケアや治療の必要性あるいはその人や地域社会の安全といったものであ
る。」
(国連人権高等弁務官事務所 08 年10 月「被拘禁者のための尊厳と正義の
週間、情報ノートNo.4 障害者」
第 15 条 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若し
くは刑罰からの自由
08年12月国連拷問等禁止条約特別報告間中間報告参照長野英子のサ
イト
第 17 条 個人のインテグリティ〔不可侵性〕の保護
障害のあるすべての人は、他の者との平等を基礎として、その身体的及び
精神的なインテグリティ〔不可侵性〕を尊重される権利を有する
第 19 条 自立した生活〔生活の自律〕及び地域社会へのインクルージョン
(a) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、居住地及びどこで誰と
生活するかを選択する機会を有すること、並びに特定の生活様式で生活す
るよう義務づけられないこと。
第25 条 健康
(d) 保健の専門家に対し、他の者と同一の質の医療〔ケア〕(特に、十分な
説明に基づく自由な同意に基づいたもの)を障害のある人に提供するよう要
請すること。このため、締約国は、特に、障害のある人の人権、尊厳、自律
及び必要〔ニーズ〕に対する意識が高められるように、公的及び私的な保健
部門のために訓練活動を先導し及び倫理規則を普及する。
第 26 条 ハビリテーション及びリハビリテーション
(b) 地域社会及び社会のあらゆる側面への障害のある人の参加及びイン
クルージョンを容易にするものであること、障害のある人により任意〔自由〕
に受け入れられるものであること、並びに障害のある人により自己の属する
地域社会(農村を含む。)に可能な限り近くで利用されることができること。
2 障害者および障害者団体の履行および監視に関しての完全参加
障害者権利条約の履行および障害者施策に関しては障害者および障害者
団体の完全な参加が求められている
前文
(o) 障害のある人が、政策及び計画(障害のある人に直接関連のある政策
及び計画を含む。)に係る意思決定過程に積極的に関与する機会を有すべ
きであることを考慮し、
第 33 条 国内的な実施及び監視〔モニタリング〕
1 締約国は、その制度に従い、この条約の実施に関連する事項を取り扱う
1又は2以上の担当部局〔フォーカルポイント〕を政府内に指定する。締約国
は、また、異なる部門及び段階におけるこの条約の実施に関連する活動を
容易にするため、政府内に調整のための仕組みを設置し又は指定すること
に十分な考慮を払う。
2 締約国は、その法律上及び行政上の制度に従い、この条約の実施を促
進し、保護し及び監視〔モニター〕するための枠組み(適切な場合には、1 又
は2 以上の独立した仕組みを含む。)を自国内で維持し、強化し、指定し又
は設置する。締約国は、当該仕組みを指定し又は設置する場合には、人権
の保護及び促進のための国内機関の地位及び機能に関する原則を考慮に
入れる。
3 市民社会、特に、障害のある人及び障害のある人を代表する団体は、監
視〔モニタリング〕の過程に完全に関与し、かつ、参加する。

2 我々が求める緊急課題
1 障害者の人権と尊厳の確立に向けて
パリ原則に基づく国内人権機関の新設と、条約33条に基づく監視機関の
新設
福祉や障害施策の対象ではなく、権利主体としての障害者の位置づけを明
確にし、人権問題として障害問題を位置づけること
2 強制の廃絶に向けて求められているもの
1心神喪失者等医療観察法の即時廃止
2刑事司法制度の人権水準一般の向上と障害者への合理的配慮の貫徹
「触法・虞犯障害者」概念を全否定すること
刑事司法と本人のための精神科医療は区別すること
3精神保健福祉法の廃止
①即座に廃止できないとすれば最低限以下
1 医療保護入院制度の保護者制度の即時撤廃
2 入院への同意に求める以下の義務について、単に「同意しないと強制す
るぞ」という恫喝で同意を取るのではなく、丁寧な入院の必要性についての
説明と同意について、治療導入の技術も含め強化していくこと。最初の治療
導入の過程こそがその後の治癒への流れおよび医療的信頼関係構築に必
須である
第22 条の3 精神病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合において
は、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。
3 精神医療審査会に対して、任意入院への変更を求めた場合は自動的に
任意入院とすること
4 拷問等禁止条約の国内履行として、刑務所、入管収容施設同様の外部
視察委員会を精神科病院にも適用し、委員会しかあけられない投書箱を各
病棟に設置すること
5 身体拘束は直ちに禁止し、隔離については必ずスタッフを一人つけるこ
とを法定化すること
6 強制入院の削減計画および精神科病院開放化に向けて年次計画を立
てること
7 患者の権利法制を新設し患者のアドボケイト制度を保障すること
8 精神保健福祉法下での患者から要求があれば、すべて公費で弁護士を
つけること
②強制か放置かという恫喝に屈することなく、私たちの求める精神医療体
制を構築していくこと
1 精神科病院病床削減、単科精神科病院の廃止と総合病院への精神科
病床の設置
2 精神科病院の偏在を廃し、気軽に駆け込める有床診療所、往診体制の
整備
3 安心して駆け込める24時間365日の休めるショートステイ(例即座にで
きる体制としてはビジネスホテルの借り上げなど)、飛んできてくれる支援者
の確保のための待機システムの制度的保障
4 すべての医療やサービスを拒否している人に対してこちらから出かけて
信頼関係を作っていく、行政や精神保健福祉体制から独立したパーソナル
オンブート体制を作ること(スエーデンスコーネ市の実践長野英子のサイト
へリンク)
3 地域生活の確立に向けて(強制の廃絶と表裏一体である)
① 精神障害者に必要な支援介助を求める
必要なときにいつでも支援が受けられる、待機型ヘルパーステーションの制

ヘルパー制度は目的その他を問わない時間枠のみの決定とし、何の目的
でもたとえば、ただじっとそばについているという介助支援にも使えるように
すること、これは現実には使えない移動介助や通院等介助の問題を解決す
ることになる
② 自己決定支援のためのアドボケイト制度を障害者福祉制度の中にも位
置づけること(患者の権利法制や拷問等禁止条約の国内法制などなど何重
ものアドボケイト制度が必要)
③ 所得保障制度の確立
障害年金は住宅費までカバーする、自立できる金額に上げること
精神障害の認定そのものを徹底的に見直し、現行年金診断書ではこぼれ
てしまう障害も認定できる形を目指すこと
無年金者についても障害基礎年金に当たる金額を保障すること
*各都道府県での闘いとして
他障害との格差、手当てや障害者医療証、タクシー券などからの精神障害
者の排除について見直させていく
⑤ 住宅保障の問題
各自治体あるいは国が、賃貸住宅を借り上げ、それを高齢者障害者等住宅
確保の困難なものに貸す制度を確立拡大していくこと
4 相対的欠格条項も含め法的欠格条項の廃止

3 われわれの行動方針
1 心神喪失者等医療観察法の廃止に向けあらゆる団体と連帯して闘う
2 人権市民会議など人権NGOとともに、日本の人権水準総体の向上、国
内人権機関創設に向け取り組む
3 日本障害フォーラム、障害者政策研究集会実行委員会などとともに、障
害者権利条約の完全履行に向け、「私たちのことを私たち抜きに決めるな」
を貫き、われわれ自身が障害者施策を提案して実行を政府に迫っていく
とりわけ周辺化されている精神障害者への介助支援の問題を私たち自身
が他障害の団体に訴えていく これは長期入院者の地域移行に向けて必
須事項である
4 精神保健福祉医療については、徹底して特別法施策を廃絶する方向で、
私たち自身がテーブルを作り、利害関係者を呼んで、真の改革ビジョンを提
案していく
5 「脳死」を人の死とする脳死・臓器移植法廃止に向けてあらゆる団体と連
帯して闘う
6 究極の人権侵害である死刑廃止に向けあらゆる団体と連帯して闘う

笹川議員「うつ病弱気発言」に抗議します

笹川たかし様
 はじめまして。私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成された全国の「精神病」者団体個人の連合体です。同封パンフレットにもありますように、障害者権利条約作成についても積極的に参加してまいりました。条約では障害書への非差別が掲げられさらに障害についてはその前文において以下明記されています。

「(e) 障害〔ディスアビリティ〕が形成途上にある〔徐々に発展している〕概念であること、また、障害が機能障害〔インペアメント〕のある人と態度及び環境に関する障壁との相互作用であって、機能障害のある人が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものから生ずることを認め、」

 うつ病は、身体的外傷のようなものであり、骨を折ったら曲がらないのと同じで、うつ病になったら、本人の意思とは関係なく動けなくなります。うつ病は、「こころの」若しくは「精神的な」云々と言われることが多く、気の強いとか・弱いとか、そのような非科学的な誤解を持っている人が多いです。このような現状で、公共性の高い立場の者が、誤解を強めるような発言をしたことは、うつ病患者への社会的偏見を助長し、多くのうつ病患者にとってのマイナスの結果となります。よって、公の場での謝罪及び発言撤回を要求します。

 また、気の強い弱いに関わらず、現に学校教員で休業している者が多いという事実があるならば、それに対して何らかの策を講じる必要があり、それを行うのが政治家の責務であります。それを、個人の問題へと還元するような発言を示すでは、本来政治家は務まりません。
うつ病者が増えている実態は、その背景に労災すら認定されるような過酷な労働現場の実態があります。これらの問題解消に向けては労働現場の実態をかえ、労働基準法ほか労働法規が遵守されることが最低限の条件です。こうした最低限の改善と同時に発病者が排除されないための障害者権利条約を遵守する取り組みが今求められています。
謝罪及び発言撤回に加えて、上記の取り組みを、ひとつは提案してくださるものと信じております。政治家としての信用回復を含め、国民に政治家としての普遍的姿勢を明らかにされることも、同時に要求します。

2009年3月27日

厚生労働委員会「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査委員会」の皆様へ

 私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成された全国の「精神病」者団体・個人の連合体です。
 私どもは、医師が三徴候によって死を「確認する」のではなく、死を「判定する」こととなる、「脳死」という概念に反対し、脳死・臓器移植法そのものに反対してきました。
 「脳死」とされた方は、まさにもっとも重度の障害者といえましょう。こうした障害者の命の切捨てにつながる脳死概念を私たちは認めることはできません。
 今回さらに死を法律で定める、脳死とされ臓器を摘出される範囲の拡大、子供への脳死判定が導入される法案が作られようとしていると知り、緊急にファックスさせていただきます。
 どんなに障害が重かろうと、医療の差し控えや「死の判定」を持って命を切り捨てることをやめてください。すべての人に、そしてどんなに重い障害者であろうと生きる権利があります。
2008年6月1日

日本テレビ抗議文

2007年11月10日
日本テレビ NEWS ZERO 担当者御中

 はじめまして、私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成された、全国の「精神病」者団体個人のネットワークです。
 10月11日放送new poor 新たなる貧困「うつ病で休職中の正社員 “収入ゼロ”貧困の危機」という番組での星野仙一さんのご発言について、会員より、抗議の要請がありました。
 会員が貴局担当者に伺ったところによるとこの番組の目的は以下とのこと、
・日本の社会構造の変化と実情。(正社員を減らし、派遣などを委託する企業が増えているなど)
・働く気はあるのに病気で働けない。こういった人もいるということを多くの人に理解してもらう為。
・国や行政に何か出来ないかの問いかけ。
・うつ病がどんなものかを多くの人に知ってもらうため。
 趣旨としては非常に重要かつ今求められている内容と考えます。
 
 しかしながら、星野仙一さんの「うつになったら、ペットを飼うとか、歩くとか工夫しなきゃだめだ」というご発言は、うつになったかなあと不安を感じている方あるいはうつになっている方たちへ非常に誤解を与え、むしろうつ病に関して誤った情報を与えて、人々を誤った方向へ導きかねない内容と考えます。
 うつ病の仲間にはこうしたあやまったアドバイスが周囲からされることが多く、病状の悪化を招いている例があまたあります。星野さんだけではなくて素人判断のアドバイスや励ましが、むしろうつ病者を追い込んでいるのです。たとえば「スポーツをすれば」「気分転換に旅行をしたら」「気の持ちようだよ、がんばれ」などなどです。

 私どもは貴局に対してこの星野さんのご発言に抗議すると共に、以下要請いたします。
1 星野さんの発言を訂正し誤解を招かないよう、訂正の放送を行うこと
2 うつ病に苦しむあるいはうつ病ではないかと不安を感じている人により正しい知識と支援のあり方を考える、新たな番組を作成すること
  以上

放送倫理・番組向上機構御中
 日ごろの番組向上へのご尽力に敬意を表します。
 さて同封のように私ども全国「精神病」者集団は日本テレビに対して抗議および要請を行いました。
 うつ病者を追い込みかねない内容ですので、ぜひ貴団体としても、この番組での星野さんの発言について調査対応していただけるようお願いいたします。