精神保健福祉法・心神喪失者等医療観察法改悪阻止闘争へ

 全国の「精神病」者仲間の皆様、および私たちに心寄せてくださっておられる皆様 すでにご存じと思いますが、政府は4月19日に精神保健福祉法改悪案を閣議 決定しました。
 改悪の中身は保護者制度を廃止するのとひきかえに、医療保護入院を今後も維持し、精神科医一人の判断で三親等の誰でも一人の同意が取れれば、医療保護入 院として本人が拒否しても強制入院するというものです。現行の順位はなくなり、家裁の選任もなくなります。
 これでは家族間に争いがあった場合、いかようにも気に入らない人間を精神科医と語らって強制入院できることになってしまいます。今現在も兄弟間の争いが 親御さんの強制入院をもたらしている例もありますし、何十年もあったことのな い叔父叔母、甥姪であろうと入院に同意できることになります。
 また家族の負担軽減といっても、結局入院には家族の同意が必要であり、経済 的にも入院に際して連帯保証人となることを求められますから、何の負担軽減に もなりません。精神障害者差別そのものである強制入院制度に手を付けていない のですから、精神障害者差別を弱めるどころか、より安易に強制入院できること になりますから、差別強化の法制となります。
 また家族の負担軽減のためや保護者制度は差別であるとして保護者制度を精神 保健福祉法から削除するならば、どうして現行の保護者規定をそのまま心神喪失 者等医療観察法に書き込み、心神喪失者等医療観察法では保護者制度を維持する のでしょうか?  心神喪失者等医療観察法対象者は差別されて、保護者を必要とするのが当然と いうことでしょうか? 心神喪失者等医療観察法対象者の家族は負担を負って当 然ということでしょうか?
 障害者権利条約は一歳の強制医療強制入院制度の廃止を求めています。条約批 准に向け強制入院をより厳しく制限し、強制入院を減らしていくどころか、今回 の法改悪は強制入院をより安易簡便な手続きにし、現状を維持あるいは強制入院 の増加をもたらすものです。そして心神喪失者等医療観察法対象者およびその家 族への負担と差別の強化です
 私たちは国会議員に向け、連休明けから想定されている法改悪議論を阻止し、 法改悪を許さない取り組みを開始したいと考えています。  国会議員へのオルグ、国会前座り込み等もろもろの行動を考えております。 様々な方のご協力が必要です。ご協力いただける方はご連絡を、「精神病」者に かぎらずぜひご協力を。地方の方もパソコンその他でご協力いただけます
 また5月4日(土)夕方4時からの相談会にご出席を 相談会は出られないけれどご協力いただける方は
   2013年4月28日

精神保健福祉法改悪に抗議する

 12日の新聞報道によると、厚生労働省は精神保健福祉法改悪法案を今国会に上程するとしている。
 内容は保護者制度の廃止、これについては当然としてもなんと医療保護入院制度を存続しさらに手続きを安易簡便にするとしている。
 報道によると、一人の精神保健指定医および特定医師の医療保護入院が必要という判断に加え、扶養義務者(3親等)のうち誰か一人の同意があれば本人が拒否していても医療保護入院として強制入院できるという方向としている。また現在の保護者の優先順位も廃止し、家裁による選任も廃止すると漏れ聞いている。
 これでは10年以上会ったこともない兄弟あるいは叔父叔母、甥姪、であろうと本人が嫌と言っていても強制入院に同意できることになる。
 家族の負担軽減といっても入院に際しては医療費の連帯保証人となることを求められるし、精神保健福祉法上医療費は本人か扶養義務者の負担となっている。
 強制入院に際し家族が同意することで本人と家族間で軋轢が生じるという問題はこれにおいては全く解決しない。
 保護者制度を廃止しても、これらは全く解決せず相変わらず家族に強制入院の負担を負わせている本質に何の変化も生じない。
 また医療保護入院は安易かつ恣意的に使われており、新規の医療保護入院は1999年(約11万人)より増加の一方であり、2010年には1年間に19万人以上もが医療保護入院となっている。各県における新規医療保護入院の人口比のばらつきも最小と最大で4倍も異なっている。
 私達は未だ法案を知らない、このまま閣議決定するなら、もっとも影響を受ける精神障害者当事者を無視したままで政府は法案を決定することになる。
 私達はこうした手続および中身に断固抗議する
   2013年4月13日

ガイド71の改訂に伴う意見書

AD体系的技術標準化委員会委員長 殿
TC173/SC7/WG2(アクセシブルミーティング・ガイド71検討委員会)委員長 殿

Guidelines for standards developers to address the needs of older person with disability(ISO/IEC Guide 71:71)の改訂に伴う意見書

このたびの「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針(JIS Z 8071:2003)(ISO/IEC Guide 71:71)」の改訂に伴い、全国「精神病」者集団として次の意見を申し上げます。

1.このたびの「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針(JIS Z 8071:2003)(ISO/IEC Guide 71:71)」の改訂に伴い、精神障害者(person with psycho social disability)への配慮を追加してください。

2.精神障害者(person with psycho social disability)への配慮については、ヒアリングなどの調査を実施し、国際比較をした上で妥当なものを入れてください。

3.尚、全国「精神病」者集団としては、これまでの議論の蓄積上、現時点で可能な範囲の提言として、
①休息にかかる時間の設計の配慮、②休息にかかる空間の設計の配慮、③飲料水・水分補給にかかる配慮、④精神障害を有資格化せずとも配慮にアクセスできるための配慮(例えば、精神障害者保健福祉手帳には「障害者手帳」とのみ記載されていること)
をあげます。
また、全国「精神病」者集団の会員である山本真理が、
「精神障害者にとっての「合理的配慮」として」というメモを書いており、
次のウェブサイトに掲載しております。 http://nagano.dee.cc/041207con.htm
参考までにご活用ください。

4.TC173/SC7/WG2(アクセシブルミーティング・ガイド71検討委員会)の委員に精神障害のある委員を追加してください。

  2013年3月22日

全国「精神病」者集団

総合福祉法(仮称)に盛り込むべき事項について――民主党PTに向けて

はじめに

総合福祉法(仮称)については、総合福祉部会の骨格提言すべてが完全に盛り込まれるべきである。
障害当事者、障害者家族、福祉医療提供者、法律家、有識者、自治体関係者などあらゆる立場のもの55名が一致して提言した中身は重く受け止められ、骨格提言を完全に盛り込んだ法律を作るべきである。

骨格提言のうち全国「精神病」者集団として強調する点

1 前文の必要性
総合福祉法(仮称)の制定経緯そして理念を明確にするために前文は必要
たとえ議員立法でなくとも、前文を付けてはならないという縛りはないはず

2 法と理念の重要性
 憲法の定める基本的人権が障害者にも平等に実質的保障されることは何より重要なことであり、目的条項に明確にされるべき。また法の理念条項も必須、目的を達成するために、国、都道府県、市町村、国民の義務条項は必須、基盤整備義務も必須

3 支援(サービス)体系
 ショートステイは精神障害者の新たな社会的入院防止のためにはとりわけ重要なものであり、充実化が求められる(参考資料1参照)。精神障害者にとっては環境を変え三食昼寝つきで休息できる安全保障感のある場所が必要であるが、特別の施設でなくとも旅館やホテルなどのクーポン券支給で足りる場合が多い。こうしたクーポン券支給をショートステイの中に位置づけるべき
 グループホームについてはソフトとしてのグループホームとして、分散したアパートのそれぞれの部屋をグループホームとして使い、交流の場と事務所を作るサテライト型グループホームの推進が重要。グループホームとしてのサービスが不要になった場合はそのままそのアパートの一室を住居として使えるため、転居の必要もなく、精神障害者の負担軽減となる。また新たな施設を新設する必要もない
 居宅介護についてはキャンセル時の報酬保障(利用者負担をなくすため)あるいは臨機応変に対応できる24時間365日事務所に待機して対応できる介助類型と報酬確保が必要である。

4 地域移行
 地域移行の法定化は何より重要であり、障害の程度や状況、支援の量などにかかわらず、すべての障害者が地域移行の対象となることは重要。現在の精神病院推薦による退院促進事業の発想を大幅に変える必要がある。とりわけ高齢超長期の入院患者の地域移行は緊急に解決されるべき人権問題(放置すれば死亡退院になってしまう 参考資料2参照)
 なお精神病院隣接のグループホームや敷地内施設あるいは病棟改築の居住施設への「退院」は地域移行ではなく、既存のものは廃止し、今後決して認められてはならない
 家事援助(閉鎖病棟で精神病院売店の割高な買い物をしないですむようにあるいは売店で買えないものなど買い物代行など)外出の促進のための移動支援など地域の福祉サービスを精神病院入院中から使えることは重要
 現在精神病院入院中に保険外の支出がほぼ生活保護の日用品費と同じ例も多く地域移行に向けた活動への資金援助はことのほか重要。外出しようにもアパート探しするにもその交通費すらないのが現状

5 基盤整備
 精神障害者への地域での福祉が圧倒的に貧しいがために、精神障害者は精神医療に囲い込まれ、デイケアや訪問看護(押し付けられる場合多い)に膨大な医療費が使われているが、これを地域でのサービスに転換するためにも基盤整備は精神障害者にとって重要 現在訪問系サービスあるいはショートステイの支給決定を受けても提供事業所がないため使えない精神障害者が多い

6 相談支援と権利擁護
 相談支援については、「中立・公平」な、裁く人であるケアマネージャーではなくて、あくまで本人の利益に奉仕する立場をとるべきであり、かつ決して強制されないことを法的に担保すべきである
 相談支援・権利擁護については、施設や精神病院あるいは刑事施設に積極的に出張相談窓口設置ができることを法的に保障すべき
 現状では精神障害者に対して「うつ病は対象外」「3級は対象外」などという自立支援法申請窓口および相談支援事業所による水際作戦が行われており、申請すらできない状況がある。申請権・受給権の確保、あるいは相談支援を強制されないため、施設入所やグループホーム入居(とりわけ刑事施設からの出獄者に対してや精神病院からの地域移行の過程において)を強制されないため権利擁護はとりわけ重要である。
 また逮捕された障害者に対して、救援の立場から権利擁護や相談支援がかかわることへの報酬保障と法的保障が必要

7 人権を侵害する制度の廃止とそれに費やされている予算を地域移行や地域基盤充実に向けること
心神喪失者等医療観察法の廃止やアウトリーチ事業の廃止(参考資料3、4 参照)

障害者基本法に基づく政策委員会に関口就任

関口明彦は、この度、障害者政策委員に選ばれました。初心を忘れずに頑張ります。

政策委員会メンバー一覧
(早稲田大学教授) 浅倉 むつ子
(社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会理事) 阿部 一彦
(静岡県立大学国際関係学部教授) 石川 准
(財団法人 全日本ろうあ連盟理事長) 石野 富志三郎
(一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会代表理事) 伊藤 建雄
(社会福祉法人ロザリオの聖母会海上寮療養所常勤医) 上野 秀樹
(一般社団法人 日本発達障害ネットワーク副理事長) 氏田 照子
(日本経済団体連合会労働政策本部主幹) 遠藤 和夫
(弁護士) 大谷 恭子
(社団法人全国脊髄損傷者連合会副理事長) 大濱 眞
(特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長) 尾上 浩二
(全国知事会(滋賀県知事)) 嘉田 由紀子
(国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析部長) 勝又 幸子
(社会福祉法人全国盲ろう者協会評議員) 門川 紳一郎
(公益社団法人全国精神保健福祉会連合会理事長) 川﨑 洋子
(特定非営利活動法人おおさか地域生活支援ネットワーク理事長) 北野 誠一
(全国市長会(三鷹市長)) 清原 慶子
(日本福祉大学客員教授) 後藤 芳一
(日本社会事業大学教授) 佐藤 久夫
(社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会常務理事) 新谷 友良
(全国「精神病」者集団運営委員) 関口 明彦
(社会福祉法人 日本盲人会連合会長) 竹下 義樹
(社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会常務理事) 田中 正博
(ピープルファースト北海道会長) 土本 秋夫
(日本労働組合総連合会総合政策局長) 花井 圭子
(アジア・ディスアビリティ ・インスティテート代表) 中西 由起子
(財団法人 日本知的障害者福祉協会会長) 中原 強
(日本障害フォーラム幹事会議長) 藤井 克徳
(社会福祉法人全国社会福祉協議会全国身体障害者施設協議会制度・予算対策委員長) 三浦 貴子
(大阪大学大学院高等司法研究科教授) 棟居 快行

障害者政策委員会委員に任命する (各通)
(平成24年5月21日付)

本件問合せ先
内閣府政策統括官 (共生社会政策担当) 付
電話 3581-0278 (直)
内閣府大臣官房人事課任用第2係
電話 3581-2702 (直)

2012年4月27日 厚生労働省 「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」 ヒアリングに向けて

前提

閣議決定2010年6月29日「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」においては、医療分野において以下記述されている。

○ 精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討し、平成24 年内を目途にその結論を得る。

なお付け加えれば全国「精神病」者集団の関口は、「○関口委員 どうもありがとうございます。関口です。資料3の別紙3-2の修正についてという厚生労働省が出したものですけれども、留意点についてということで、まず42ページの『保護入院等』の『等』は当然医療観察法でございます。はっきりさせておきたいと思います。」(障がい者制度改革推進会議(第28回) 議事録)と確認している。

しかしながら、厚生労働省検討会内部の議論は医療保護入院および保護者制度の問題に集中しており、措置入院や応急入院、あるいは医療観察法の鑑定入院や入院について議論されていない。このことにまず抗議する。

そもそも障害者制度改革は障害者権利条約批准に向けた国内法整備を目的としたものであり、「障がい者制度改革推進本部の設置について」(2010年12月8日 閣議決定)においても「1 障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行い、関係行政機関相互間の緊密な連携を確保しつつ、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、内閣に障がい者制度改革推進本部(以下「本部」という。)を設置する。」とされている。

障害者権利条約は、5条(平等及び無差別)、12条(法律の前に等しく認められる権利)、14条(身体の自由及び安全)、15条(拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰からの自由)、17条(個人をそのままの状態で保護すること)、19条(自立した生活及び地域社会への包容)、25条(健康)(d)他のものと平等なインフォームドコンセントの権利、などにより精神障害者のみに対する強制入院強制医療さらに強制的介入、隔離収容を禁止している。さらに4条(一般的義務)(b)において締約国の義務として障害者差別となる既存の法律、規則、慣習および慣行を修正し、または廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)を取ること、とされている以上、批准に向けて医療観察法の廃止、精神保健福祉法の廃止が求められている。なお添付のようにペルーの政府報告書に対する条約委員会の見解では後見人制度や精神保健法の廃止が求められ抗精神病薬の強制投与や10年以上の精神病院への拘禁が15条に触れるとされている(添付資料 1参照)

残念ながらこの検討会ではこうした障害者権利条約の条文を巡る議論が全くなされていないが、これはいったいどういうことなのか、このこと自体が障害者権利条約を署名した国としてはあってはならないことである。2012年中の検証として新たに条約に基づいて議論する場が求められている。

詳細は国連高等弁務官事務所の文書及び、前拷問等禁止条約特別報告官の文書参照(添付資料2参照)

新たな地域精神保健医療体制の構築?

すでに19日に山本が述べたように(添付資料3参照)単科精神病院は終焉の時代を迎えていることを自覚すべきであり(『病院の世紀の理論』猪飼周平 有斐閣 参照)、求められているのは精神病院に代わる一般病院での精神病床(人口10万人当たり10床というのがモッシャーほか著の「コミュニティメンタルヘルス」中央法規出版 1992年)さらに、病院に代わる治療共同体や精神障害者自身による危機センター、ショートステイ、セルフヘルプグループなどであるが、さらに必要な方に対してパーソナルアシスタント制度が重要である。

家族をあてにした体制保護者制度は当然にも廃止されなければならない。

自立支援法は精神障害者にとっては何とも使いにくい制度であり、とりわけ地域移行に際しては精神病院入院中から自立生活体験室で介助者を訓練し、パーソナルアシスタントを獲得していくことが必要である。自立生活訓練は精神障害者が訓練されるのではなく介助者の訓練の機会ととらえられるべきである(これはすでに知的障害者の支援においては先進的に取り組まれている『良い支援?』生活書院 参照)資格さえあれば代替可能という介助では精神障害者は使いにくい。

また居宅介護ではなく、集いの場での介助支援や待機(これについては添付資料4 桐原研究参照)という介助類型も必要である。現在の地域定着支援は生活保護受給者には使えない(長期入院退院患者の多くは生活保護受給とならざるを得ない)ことさらに単価の問題もあり、とてもパーソナルアシスタントや待機を保障するものとはなりえない。もちろんグループホームやケアホームなどという施設ではなく、居住権のある住宅と呼べる住宅保障は最優先である。

医療・保健・福祉の連携や多職種チームによる支援が喧伝されているが、これらに私たちは強い疑問がある。一市民として支援介助を受けながら自立生活する中で、医療はあくまで必要な時に使うものであり、必要な場合における支援介助こそが中心となるべきであり、それにはパーソナルアシスタントこそが中心となるべきである。今現在行われている多職種チームとは専門職による支援とは全く逆な、あくまで本人の介助支援であり、指導や訓練であってはならない。介助者支援者の個別の精神障害者に合わせた訓練こそが必要。たとえば多職種チームによるケア会議は本人吊るし上げ、の場になってしまいがちである。

そして最も必要なのはアドボケイト、本人の権利主張の応援者支援者である。これは入院中のみならずすべての場において最も重要な支援といえよう。アドボケイトのいないままでの多職種チームによるケア会議はわかっているだけで17名の自殺者を出し、さらに体験者がさらし者の場と批判しているような医療観察法の実態にこそ問題点があらわとなっている(添付資料5参照)。いかに人手を増やし、金をかけても本人との信頼関係もなくアドボケイトもいない体制は本人を追い込むだけである。また今予算がついているアウトリーチも私たちは認めない(添付資料6参照)必要なのはスェーデンスコーネで行われているようなあるいはすでに各地で試みられているような本人と信頼関係を作り上げるアウトリーチである。

「新たな地域精神保健医療体制の構築」ではなく、「新たな精神障害者の地域生活支援と権利保障体制構築」に向け、私たち精神障害者団体による研究に資金をつけ、自立支援法上の事業所のない空白地帯を埋めていく取り組みが喫緊の課題である。

2012年4月19日「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会」 ヒアリングに向けて

前提として

そもそも社会的でない入院は他の科も含め存在しない。病院という存在が生み出されそれにより入院患者が生まれたのは医療史の語るところである。もちろん技術集約や先進医療のための「病院でしかできない治療のための入院」そしてそのための「病床」は今後もあり続けるであろうが、一般科であっても高齢化による慢性的な疾患の増大という疾病構造の変化によって、「病院の世紀20世紀の終焉」が来ようとしている。

「精神科病院」は、「精神病院」から名称変更し、「入院でしかできない治療」に純化し一般病床と同じ位置づけを求めるという方向を示しているのであろうが、果たして精神科において社会的入院でない病院でしかできない治療のための入院というは存在しうるであろうか? 「精神科病院でしかできない高度な医療」の中身はいったいなにか、そうした議論がまずなされなければならない。

急性期であろうと精神病院ではなく、自宅で治療を行う実践はすでに各国で行われている、また家庭的な小規模の施設によって、薬を使わないで急性期を乗り越えるソテリアのような治療共同体は対照群の一般的な精神科救急より高い成果を上げたという調査も行われた。

現在でもスイスのソテリアベルンにおいてこうした「治療」が実践されており、精神病院をなくしたイタリアにおいても抗精神病薬を初発においてつかわずに対応するソテリアのモデルが注目されているところである。

また日本でも地域で精神障害者支援を行っている人々の間では入院がむしろマイナス要因が大きいことは共通認識とされている。(たとえば、南相馬市ひまわりの家スタッフ 発言、精神科医と私たちで入院の基準が違う、入院してよくなってきた人はたった一人、あとは薬漬けになって回復に数か月かかる)

もちろん人権上も身近で地域で医療を受ける権利保障は重要である。

そういう意味で、本当に精神病院入院は必要なのか、それがまず問われなければならない

今ある病棟機能分化

① 「病棟機能分化」なるものは何か?

今行われているものは「病棟の機能分化」ではなくて「診療報酬と有資格者の病床別傾斜配分」であり、「病棟の機能分化」と称するのは詐欺である。

② 病棟機能分化なるものが生み出した実態

森山公夫研究班が精神病院の機能分化を主張した時、様々な批判がなされた。そこにある有資格者の傾斜配分の問題点指摘であり、いわゆる療養病床あるいは慢性期とされた患者さんのいる病棟には看護は手薄くていいのか?という批判であった。

看護や医師が少なくて、本当に医療が保障できるのか、むしろこうした病床が終末施設化しないかという批判であった。

これらの批判は妥当であった。実際療養病床には5年以上の入院患者34751名が在院しているが、この方たちに対して個別の看護や医療が保障されているのかどうか疑問がある(平成20年630調査より抜粋)。

「院内寛解」であるとか「慢性期」といったラベリングそのものが問題であると考える。いったんそうしたラベリングを貼られると、治療もおこなわれず放置され退院に向けた努力も放棄してしまうのが医療従事者の悲しい実態である。また長期間保護室に隔離され放置されている患者も一定数存在する。こうした態度こそが問われなければならず、そしてそうした態度を生み出すラベリングおよびいわゆる「機能分化」こそが、問われなければならない。

いわゆる急性期病棟およびスーパー救急の実態についても問題がある。下記資料にあるように、新規措置入院患者のばらつきはそのままいわゆる精神科救急体制の整備と並行していると読み取れる。措置入院の実態そのものも地域格差があることは心神喪失者等医療観察法の国会審議のさなかにも明らかにされ、その後も改善されたという報告は寡聞にして知らない。(なお最近措置指定を受けた東京のある精神病院ではあっという間にスーパー救急を満たす措置入院患者をうけいれスーパー救急病棟を新設した。労働者の印象ではこうした病態が措置?という疑問があるとのこと スーパー救急病棟のために措置が濫用されている実態はないのか? 疑問あり)。またこうした機能分化ゆえに、自ら入院を希望しているのに、医療保護入院の手続きを強いられるという事例すら出てきている

広範囲の医療圏から集められた患者さんに対応するために医療従事者はおびえ予防的に行動制限をすることになり、身体拘束や隔離が手順としてマニュアル化している実態がある。電気ショックですらマニュアル化されている。

電気ショックは非可逆的に逆向性の健忘をもたらすこともあり(アメリカでは皮肉にも精神科看護の専門家が電気ショックを受けて技能も知識も失ってしまったという民事訴訟で賠償を勝ち取っている)もちろん命にかかわることもあるが急性期にあたって同意なしに濫用されている実態がある。

少なくともWHOも求めているように同意のない電気ショックは禁止されなければならない。

身体拘束はそもそもあってはならない行動制限であり、イギリスのようにすでに全廃している国もある。エコノミークラス症候群やその他による死亡の恐れすらあり、また心理的な屈辱感によるトラウマも深刻である。

こうした体験ゆえに心疾患によって救急車に乗せられたにもかかわらず、救急車の中で身体拘束ゆえに拒否し、その後心疾患で急死した仲間も存在する。

命に係わる身体拘束は即時廃止されなければならない。

精神科救急の徹底した見直しがなされなければならない。そして急性期病棟の在り方についてはさらに医療圏の縮小がその他の見直しが急務である

たとえばすでに立証されている急性期に代わるオールタナティブとしてのソテリアの実践。また今現在も継続中のソテリアベルン。あるいはオランダで実践されているオールタナティブ(危機に際する介入を医療主導ではなく行う実践であり、毎年10%ずつ強制入院を減らしていく計画の一端としてのオルタナティブ開発)などなど各国の取り組みの検証と試行プロジェクトが求められている。

③ あるべき精神医療のありかた

精神病院を解体し病床0に向けて年次計画を立てること。一般医療に精神医療を組み込むこと。当然精神疾患のみに向けて法体系は廃止の方向に行くことが障害者権利条約の要請であり、そのためには精神医療は医政局のもとに統合され、障害福祉部に精神に特化した部局をなくすべきである。(ただし現在の自立支援法は健康な身体障害者をモデルとした介助体制が引かれているので、精神障害者のニーズに合った介助体制の確立は必要)

地域の医療保険福祉の体制は総合的なものであるべきで、精神障害者に特化したものはあってはならない。

なお今後生物的精神医学と薬のみに集中している精神医療の根源的見直しも必要である。心理社会的アプローチの研究が求められている。

初発急性期において薬を使わない、ソテリアの試行プロジェクトも必要であろうし、当事者運営の危機センターの試行プロジェクトも必要である。初発急性期において抗精神病薬の使用により慢性患者を作り出している実態は根底的に見直されなければならない。各国の精神病院に代わるオールタナティブ開発に学ぶべきである。現在精神病院への強制入院は最初にして唯一の選択肢となっている実態は即急に改められなければならない。

基本的に一市民として地域で生きるものとして必要な場合に医療を使うという基本線が大前提となされなければならない。

現状では本来障害者福祉で行われるべきことが医療保険を使って行われており、とりわけデイケアナイトケアは医療保険で行われるべきではなく医療機関で行われるべきではない。

精神医療の復権としてACTが喧伝されているが、本来は自立支援法による支援を使い一市民として地域生活が保障され、医療は必要な部分だけで機能するべきであり、医療主導の多職種チームあるいは専門職主導の多職種チームなるものではなく、精神障害者自身の運営によるセルフヘルプグループ活動に予算がかけられるべきであるが、今はそこに通う交通費すらままならない現実がある(AAや断酒会については生活保護受給者に対して交通費が出されている)。医療対福祉保健の予算が97対3という現実を変え、さらに専門職に予算をつぎ込むのではなく精神障害者団体の実践に予算が分配されるべきである。

長期高齢の入院患者さんたちに必要なものは何か? 実際に30年40年と入院していた方たちからの意見を吸い上げる必要がある。昨年度の科研費による地域移行への研究を全国化し、精神障害者団体により行うための予算が求められる。

実践例に学ぶ必要があるが、グループホームやケアホームはあくまで施設であり、選択肢の一つといわれながらそれしか選択肢のない実態が続いていることが問題である。まかないつき共同住居は高齢の方や、独り暮らしはさびしい、あるいは精神病院で作られたコミュニティの継続という意味では必要かもしれないが、できればサテライト型グループホームで、居住権を持った家と呼ぶに値する住宅保障が必要である。退院支援について個別給付化されたが、そうした申請書とわかりやすいパンフレットがすべての精神病院入院患者に配布されるよう、国費で保障すべき

なお相談支援事業所が精神病院に自由に出入りし事業の説明会や相談を受けられる体制づくりも必要。また自立生活体験室をたくさんつくり、そこで実際に介助を使ってクラス体験を重ねるためにも、そうした費用を本人に保障するかあるいは公費で賄う必要がある。入院中であろうと外出やこうした自立生活体験室においては自立支援法の介助が使えることと自己負担0であることが必要。さらにこうした体験に向けての交通費保障も必要。

なお当面精神病院も精神保健福祉法も継続し強制入院を0にはできないであろうし、閉鎖処遇もなくならないであろうから、それらが0になるまでは最低限刑事施設並みの外部視察委員会の設置が全精神病院に必要。(院内に外部視察委員会しか開けられない投書箱の設置は刑事施設並みに必要)。また個別の人権侵害からの救済のためにはすべての精神保健福祉法下の患者に対して公費で弁護士をつけることが求められる。

最後に再度訴えます。精神病院入院でしか治療できない状態とは何か明確にしていただきたい

こころの健康推進議連ヒアリングに向けて

こころの健康推進議連ヒアリングに向けて 20120209
全国「精神病」者集団意見書

結論
私たちはこころの健康推進基本法を求めません。

理由
1 立法事実がない さらに憲法違反、自由権規約拷問等禁止条約違反、そして障害者権利条約に抵触するおそれがある
 精神疾患(心の健康)の問題が重大な問題であるという認識を示しているが、その背景にある、性差別他差別問題、人権侵害、労働環境の問題、経済施策などを個人病理として解決しようとすることは重大な誤りであり、むしろ問題の所在を不明確にし、政策の失敗を糊塗することになる。
 構造的な社会問題を心の健康の問題として、精神医学化するのは、厳に慎まなければならない。
 例えば自殺問題一つとっても一部の都道府県自死遺族会の調査では自殺者の少なくとも半数が精神科利用中あるいは利用歴があり、精神医療は自殺防止に役立っていない。むしろ精神医学化が、差別的ラベリングをし、それによる自殺の疑いすら多く指摘されている(参照 添付資料1 うつ病患者の増大と抗鬱剤の販売数増加が自殺を防止していない事実添付グラフ参照 別紙添付資料2また富士市による自殺防止キャンペーンが自殺を減らしていない事実)
 また月に100時間以上残業している欝の患者さんに残業をやめなければお薬をいくら飲んでもよくなりません、会社と話し合いましょうと主治医が提案し勤務先を聞いたら、なんと労働基準監督署だったという実話すらある。
 自殺防止や虐待防止に対しては、子育て後、病気休職後の復職者が安心して働ける職場作り、総労働時間の削減、労働者派遣の禁止と正規職員化などの労働条件の解決、さらに貧困問題の解決こそが優先されるべきであり、心の健康基本法制定の立法事実はない。(添付資料3参照)
 またすでに精神保健福祉法はその第3条国民の義務において「 国民は、精神的健康の保持及び増進に努めるとともに」とされ、さらに健康増進法第2条(国民の責務)において「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」としている。
 これらはすでに健康を国民の義務とし、疾病を持つものや障害者をいわば非国民として位置づけ優生思想を強化するものであり、憲法25条の生存権という権利を国民の個別の義務に転化したものでありそもそも問題であるが、これに屋上屋をかけて心の健康を推進しようとすることは重大な疑義がある。
 そもそも心という目にも見えない形もないものが病んだり健康になったりするはずはなく、「心の健康」の法律による制定は、憲法第19条「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」に抵触するおそれすらあり、個人の精神的身体的統一性完全性不可侵性(インテグリティ)の侵害を禁止している拷問等禁止条約および自由権規約、そして政府が署名し今批准に向けた障害者権利条約17条にも抵触する
 こうした立法事実がない法律を作るならば、精神保健福祉医療専門職の利権を拡大し、さらに市民の内心へまで踏み込んだ権利侵害を拡大するだけであり、自殺防止になるどころか虐待や差別人権侵害を強化しかねない

2 今私たちが求めるもの

1 まず精神障害者への差別立法を廃止すること、差別的政策を廃止変更すること
 精神障害者差別をあおり人権侵害を重ね、分かっただけで17名の自殺者を出している心神喪失者等医療観察法の廃止(資料4 別紙東京新聞記事参照)
 何の法的根拠もなく個人に強制介入するアウトリーチ事業を廃止すること(これは本人の同意が取れないからこそ医療保険が使えないと厚生労働省は説明している。全てを拒否している方についてはヨーロッパでも高く評価されている例えばスエーデンスコーネ県のパーソナルオンブートのような試みが試行事業化されるべきである 資料5参照)

2 総合福祉法骨格提言を完全に反映した障害者総合福祉法を制定し、精神障害者にも使いやすい介助体制や支援を準備することで、精神障害者の地域生活を保障していくこと。
 本人の権利擁護者を準備し、施設病院、刑事施設に出張御用聞きをする権限と義務を定め、また相談支援はケアマネージメントではなく権利擁護でもあるべきことを明記すべき。政府の現行の自立支援法における相談支援はケアマネージメントとして位置づけられ、かつ「中立公平」「家族あっての自立」という位置づけであり、人権擁護ではなく裁く機能を持たせられており、これはソーシャルワークの倫理規定「非審判」にも抵触する。
 とりわけ骨格提言の地域移行の法定化を速やかに定め、長期高齢患者20年以上の入院患者が4万人以上いる実態を早期に解決すること(厚生労働省は来年度予算で精神病院に長期高齢患者の地域移行の担当者を各精神病院に一人配置するとしているが、精神病院に雇われた人間に退院促進は不可能、利益相反となる)
 また地域移行は家族が介助している精神障害者についても自立生活に向けた障害者本人への介助支援体制を法定化することであり、この点も重要である

3 精神医療の一般医療への統合を進め、ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会の求める医療基本法制定およびそれに伴う患者の権利法制の確立が必要である。この提言は医師会および日本精神病院協会など医療提供側も含めて賛同したものであり、精神医療の底上げも重要であるが一般医療自体が崩壊している実態(地方は当然、例えば東京ですら小児科の救急は危機に瀕しているし、精神障害者の合併症治療も保障されておらず死亡者が出ている 資料6参照)を考えると、医療の基盤整備こそが今緊急に求められており、医療基本法の制定が何より優先課題である
 在宅医療の強化も必要であり、総合医による精神疾患への対応は今後さらに重要となる

4 強制入院制度については、数値目標を定めた削減方針を定めるべきであり、最終的に精神保健福祉法を廃止し医療基本法に統合すべき
 障害者権利条約は12条、14条、15条、17条、25条で強制入院および強制医療を禁止している
 オランダでは専門職団体が一致して年間10%ずつ強制入院を減らしていく計画が立てられ、そのためのオールタナティブの開発にも予算が付けられている。ノルウェーでは、少女への強制入院強制治療についてヨーロッパ拷問禁止条約の調査が入ったこともあり精神保健法の廃止への議論が始まっている
 OHCHR(国連高等弁務官事務所)のモニタリングガイドおよび資料ではいかなる強制入院も障害者権利条約の下ではあってはならないとしている(添付資料7参照)
 また拷問等禁止条約前特別報告官は強制医療や強制入院は拷問等禁止条約が禁止している拷問あるいは残虐で非人道的品位を汚す処遇に当たりうるとしている(添付資料8参照)
 当面残る強制入院や閉鎖処遇については速やかに拷問等禁止条約選択議定書を批准し、国内防止機関を作り精神病院に対して継続的抜き打ち査察を行うこと(別紙添付資料9参照)
 こころの健康推進議連におかれましては上記意見および添付資料ご参照の上、基本法成立ありきではなく、幅広い議論検討を継続なさることを訴えます

尊厳死立法に反対します 今こそ尊厳ある生を

 私たち全国「精神病」者集団は1974年に創立された、全国の「精神病」者団体個人の連合体です。私たちは精神障害者として、今作られようとしている尊厳死立法に反対します。
 伝えられるところによると法案では、尊厳死という形で殺される人は明記されておらず、複数の医師による判断により「終末期」と判断されると、水分や栄養補給も含め一切の医療行為が差し控えられたり、あるいは中止されたりする、そしてそうした医療差し控えや中止をしても医療機関も医師も刑事民事とも責任を問われず免責されるという中身です。
 また家族の同意も必要という説もありますが、家族のいない場合は医師の判断だけで治療が停止され殺されることになります。
 しかし「終末期」とはなんでしょうか? なんら定義されていません。
 こうしたスカスカの法律がいったん作られれば、脳死・臓器移植法改悪のように、本人の意思表示がなくとも家族の意志だけで、さらには家族がいない孤立した人は医師の判断だけで殺されていくことになることは明確です。
そしてその対象も「終末期」というあいまいな要件はどんどん拡大されて、遷延性意識障害者、重度障害者、精神障害者や知的障害者など「人格がない」とされてきたものへと広がっていくことは避け得ないと考えます。
 医療はまず命に向けられた営みであり、死へ向けた営みであってはなりません。
 私たちは尊厳死ではなく、まず尊厳ある生が障害のあるなし、年齢性別にかかわらず保障される社会を求めます。法律による殺人をこれ以上認めるわけにはいきません。

2012年1月27日
全国「精神病」者集団