知的障害者等による臓器提供の取扱いの見直しに係る要望書(要望)

厚生労働省健康・生活衛生局難病対策課
移植医療対策推進室長 島田志帆 様

 厳寒の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 このたび厚生労働省は、「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)」(平成9年10月8日付け健医発第1329号厚生省保健医療局長通知別紙)の「知的障害者等の臓器提供に関する有効な意思表示が困難となる障害を有する者であることが判明した場合においては、当面、当該者からの臓器摘出は見合わせること」とする規定を削除し、脳死状態の知的障害者等が家族や親しい友人、ケアにあたっている専門家などが本人の意思を推定した上で提供できるように見直すなどの方針をまとめました。
 この方針は、「知的障害等を理由に臓器提供の意思が尊重されないのは差別的ではないか」という形式面にとらわれた指摘をもとにして進められてきたものですが、本来、知的障害者等に対する必要な支援策を講じないまま、臓器提供という生命及び身体にかかわる重大な決断を本人や家族・支援者等に手放しで委ねることは、たいへん危険なことであると考えます。
 つきましては、障害者の権利に関する条約の趣旨を鑑みて下記について要望します。

一 「知的障害者等の臓器提供に関する有効な意思表示が困難となる障害を有する者であることが判明した場合においては、当面、当該者からの臓器摘出は見合わせる」旨の現行規を存置し、削除しないよう求める。

二 「知的障害等を理由に臓器提供の意思が尊重されないのは差別的ではないか」との指摘は、障害者権利条約第5条第4項に基づく「障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置」が差別に当たらないという規定が踏まえられていない。そのため、同条約に規定された差別と解するべきではない旨の確認を求める。

三 知的障害者等の臓器提供に関する有効な意思表示が困難となる障害を有する者の支援のあり方については、障害者権利条約第12条第3項に基づく法的能力の行使に当たって必要な支援の体制が構築された後に検討されるべきである。支援体制がないのなら改正を見送るべきであり、支援の構築と引き換えに改正を先取りしてよいなどとは考えない。これらについて確認を求める。
 以 上