声明:旧優生保護法違憲訴訟最高裁判決について

 全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
2024年7月3日、最高裁判所大法廷は優生保護法国家賠償請求訴訟に関して、同法を違憲としたうえで、従来の判例を変更し、除斥期間を適用せずに国に賠償を命ずる判決を下しました。全国「精神病」者集団としては、この判決を心より歓迎します。
 1930年代、旧内務省は富国強兵策を背景としつつ民族優生の目的を達するためには、精神障害・知的障害を対象とした①隔離(精神病院等の拡充)、②結婚制限、③人工妊娠中絶、④断種 (優生手術)の4つの社会政策が必要であるとしました。旧内務省は、精神医学系団体に対して「断種法制定の可否」に係る意見を求め、基本的に賛成とする立場をとりつけました。こうした経過をたどり、優生保護法の前進となる国民優生法ができました。
 1948年には、安楽死協会(現在の尊厳死協会)の設立者として知られる太田典礼らが旧優生保護法を議員立法し、全会一致で採決されました。1953年には、日本精神衛生会と日本精神病院協会が不妊手術促進への財政措置と精神衛生課の設置を求める陳情書を提出し、このころから強制不妊手術の件数が増えていきました。このように精神保健行政は、旧優生保護法を下支えしてきた歴史があり、精神障害者に対する優生思想・差別は、1930年代の政策の誤りとともに、今も厳然と残っています。
 この度の最高裁判決は、大勢のために少数を犠牲にしないという強い意志に貫かれており、まさに人権の砦たる判断であったと考えます。判決では、優生保護法によって根付いた差別を取り除く措置を講じてこなかった国の責任を問うています。片方司さんは、優生保護法で培われた優生思想に基づいて母体保護法下で手術を強いられました。今もなお、精神障害であることを理由に恋愛や結婚や出産の自由を奪われ続け、精神科病院に留め置かれている仲間がたくさんいます。
 今後は、両院の謝罪決議及び内閣総理大臣による対面による謝罪、裁判をせずとも速やかに保障を受けられるようにするための措置、そして、再発防止と検証のための仕組みを短期間でつくる必要があります。また、それに伴って具体的な方策の検討や課題の整理が急務となります。優生保護法によって培われた優生思想、差別を断ち切るために、人々の意識を変えるための政策や立法の新設や見直しが必要です。
これらの検討過程においても全国「精神病」者集団は、一貫して精神障害者に対する差別に抵抗していく観点から適宜、意見を発信していきたいと思います。