生活保護制度生活扶助及び母子加算引き下げ案に関する声明

1. 障害者世帯の貧困率は一般世帯の貧困率の2倍であり 4 人に 1 人は貧困世帯である。この現状で生活扶を 3 年間に最大5%(平均 1.8 %)の引き下げるという厚生労働省の案は障害者世帯の生活をさらに悪化させることは言うまでもない。今回の生活扶助引き下げ案の全面撤回を強く要求する。
また既に障害者加算の検討も始まっているとう点も大問題である。即刻検討を中止するとともに障害当事者も参加した形で貧困にあえぐ障害者世帯に対する障害者加算の金額を生活実態に即してさらに上積みの方向で検討するよう要求する。

2. 格差拡大社会の中で、所得水準が一番下の階層に生活扶助支給金額を合わせる水準均衡方式自体が問題を持っている点は社会保障審議会の委員の間でも強く主張されたと報道されている。ちなみにドイツでは生活保護の支給額を低所得者層との比較で決めること自体が「違憲」とされている。
高度成長期のように国民全体の所得が底上げされている時代ならともかく、今の格差拡大社会では水準均衡方式で支給額を決めることは、生活保護を一つの基準としている最低賃金や各種福祉制度利用における減免制度にも悪影響を及ぼすおそれが極めて高い。水準均衡方式を廃止し「健康で文化的な最低基準の生活」に必要な金額の算定の仕方を当事者参加の形で決める方式に変更することを強く要求する。
また今回の生活扶助引き下げに議論に際して当事者の意見を公式に聞く機会が一切なかったことも大問題である。これは「わたしたち抜きで私たちのことを決めるな!」という障害者運動の理念にも明らかに反している。

3. 生活保護の捕捉率が2~ 3 割と諸外国と比較しても低い原因には、いまだ後を絶たない行政による「水際作戦」や生活保護受給者に対するスティグマを煽るメディアによる「不正受給キャンペーン」「パチンコ問題キャンペーン」等の様々な要因があげられるが、そのもっとも大きな一つの要因として生活保護受給に際しての「自動車保有の禁止」条件が挙げられる。
大都市部と違って交通インフラが充分に整備されていない地方で自動車を保有せずに生活することは実際極めて困難である。各種外出のみならず買い物や子供の保育園への送り迎え病院への通院等に際して地方では自動車は「生活必需品」である。また大都市部においても身体障害者に対する交通バリアフリーは全く不十分であり移動の自由を確保するために自動車の保有が必要な障害者は少なくない。生活保護の受給条件から「自動車を保有していないこと」という項目を外すことを要求する。また地球温暖化現象に伴い夏季にはエアコンは生活必需品である。しかし生活保護世帯にはエアコンを購入する費用も電気代も賄えなく猛暑で熱中症で倒れ救急車で搬送される生活保護受給者が多発したこと はメデ ィアで も報道された。エアコンを生活必需品として認めること。及び電気代を賄うために夏季加算を新たに設けることを要求する< 4. この情報化社会においてパソコンもはや明らかに「生活必需品」であるが、最近、就職活動に際して必要なパソコンは人から借りればよいという全く信じがたい内容の判決が出た。厚生労働省には情報化社会における障害者の生活実態を踏まえたうえでパソコンを「生活必需品」として認定することを要求する。 5. 今回最大の打撃をこうむるのは都市部にすむ障害を持つシングルマザーである。彼女たちも含め生活保護受給者の生活実態をきちんと把握したうえで生活扶助支給金額を決定すること。そして母子加算を 1 万2000 円から 8000 円に引き下げる今回の厚生労働省案を直ちに撤回することを要求する。また男女平等の観点から父子加算制度も設けることも併せて要求する。 6. 生活保護制度の捕捉率2~3割という、本来受給する資格がある人が受給していない状況下で、最低所得層の水準に合わせる水準均衡方式で生活扶助費を引き下げるという政府の現在のやり方は、貧困層を際限のない負のスパイラル状況下に追い込むのではないかという懸念は多くの論者が指摘している。水準均衡方式を直ちに廃止するとともに、最低賃金の引き上げや先進諸国と比べて明らかに低い医療・教育に対する公的支出を OECD 諸国の平均並みに引き上げ、各種格差が拡大している現在の日本社会のあり方を抜本的に是正する政策へと各種当事者参画の下に切り替えていくことを強く要求する。 7. 現在社会的入院を余儀なくされている長期入院患者が地域移行していく際に生活保護制度というのは安心して地域で暮らしていくための経済的基盤である。これを削減していくということは地域移行の流れに水を差すものであることは言うまでもない。この観点からも今回の切り下げ案は大問題であることは間違いない。 以上 以下参考                                      本年度予算における社会保障費の自然増の削減額は約1300億円であり、一方防衛費の伸びも同じく約 1300 億円である(ちなみに生活保護費の削減額は3年間で160億円)。 防衛費の支出の中には オスプレイ 17 機 3600 億円超。 F-35 、 1 機 150 億円× 42 機。 イージスアショア 2 基 2000 億円。 巡航ミサイル1発 1.6 億円。 等が含まれる。防衛費の伸びを抑えることによって、生活保護費の 160 億円の削減分はもちろんのこと、社会保障費の自然増の削減分も充分に賄える点は強く指摘しておきたい。 2017 年 12 月 22 日  全国「精神病」者集団