一般社団法人日本精神科看護協会
会長 末安民生 様
季夏の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
貴会は、2017年4月10日付け意見書において措置入院の見直し又は、措置入院者退院後支援の法制化について支持し、迅速な対応を望むとの立場を示しています。
今回の措置入院者退院後支援の法制化は、相模原事件の再発防止策として浮上したものです。政府は、容疑者が家族と外食に出かけたことも、公共職業安定所や福祉事務所など社会資源に相談をしていたこともさておいて、医療を中断していたことをもって孤立していたと決めつけています。そして、きちんと医療につながることによって結果として犯罪の防止にもつながるだろうとも説明しています。まるで医療を治安の道具にするかのような発言であり、精神医療の法的な位置付けを大きく変えてしまうのではないかと深刻に憂慮します。私たちは、“相模原事件の再発防止策”から“措置入院の見直し”がせり出してきたという流れこそが差別的であり、大きな問題であると思っています。
そのため、貴会が措置入院の見直し又は、措置入院者退院後支援の法制化が必要と考えるのならば、相模原事件の再発防止策に便乗するのではなく、然るべきかたちで政策のアジェンダにあげて検討すべきだと考えますし、実際にそれができたはずだと思っています。しかし、それをしないまま相模原事件の再発防止策にそのまま便乗して、「支援が必要である」を根拠に意見を出すのは、あまりにも安直に思えてなりません。
今 国会では、主に精神障害当事者が中心となって国会議員へのロビーイングがおこなわれた結果、与党が衆議院での審議入りを断念し、参議院先議法案で異例の継続審議になりました。このことは、障害当事者の意見を聴かずにさまざまな政策が進められてきたために当事者による抵抗にあった顕著な例だったように思います。私たちは、貴会に次の質問をすると同時に私たち当事者と積極的に懇談の場を設定していただきたく思っています。誠に勝手ながら10月10日までに文書で回答をください。
一 「これからの精神保健医療福祉の在り方検討会のヒアリング」において措置入院の改正についてどのような意見を出しましたか。
二 私たちは、貴会に対して当事者団体の意見を聴きながら意見書を作成してほしいと思っていますが、今後、当会をはじめとする当事者団体の意見を聴きくつもりはありますか。
三 私たちは、貴会に対して国会の動きや私達の意見を聴き、意見書を出し直してほしいと思っていますが、それは可能ですか。
2017年9月19日