成年後見制度利用促進基本計画の案に盛り込むべき事項に関するパブリックコメント
成年後見制度利用促進基本計画の位置付け
1. 障害者権利条約との整合性
2016年4月の参議院内閣委員会では、大臣は本法が障害者権利条約に抵触しないという立場を示したが、中間報告書には障害者権利条約との整合性に関する内容が示されていない。少なくとも、国連障害者権利委員会に提出した政府報告書では、成年後見制度への言及があり、それを踏まえるならば、障害者権利条約との整合性について言及があってしかるべきである。
国、地方公共団体、関係団体等の役割
2. 障害者団体からの意見聴取
成年後見制度利用促進基本計画の実施にあたっては、障害者基本法の理念に基づき障害者団体からの意見聴取を行なうべきである。よって、関係団体の部分で障害者団体を明示し、かつ都道府県及び市町村への計画策定にあたっての責務の部分に障害者団体からの意見聴取を明示的に示すことが不可欠である。
成年被後見人等の医療、介護等に係る意思決定が困難な人への支援等の検討
3. 合法性の根拠が示されていない
中間報告では、成年後見人に医療同意を与えることの合法性に関わる議論の経過や根拠が示されておらず、成年被後見人等の医療・介護等に係る意思決定が困難な人への支援の在り方として想定される場面が羅列されているにとどまっている。こうした場面の羅列は、法改正という結論に向かって敷かれたレールの上に都合のよい情報を載せて、あたかも立法事実があるかのように装っているだけで、具体的な場面において発生するあらゆる問題を想定した議論とはとうてい言えないものである。
成年被後見人等の医療、介護等に係る意思決定が困難な人への支援等の検討
4. 安楽死・尊厳死問題
中間報告では、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」について言及されている。このことは、成年後見人による安楽死(または尊厳死)を帰結し得る可能性があり、もっとも慎重に審議されなければならない点である。わが国の立法府において尊厳死をめぐって長年交わされてきた議論の蓄積を踏まえるならば、早計に結論を出すべきではない重大な問題であると考える。なお、私たち障害者団体としては、「こんな障害をもった状態で生きていたくない」という考え方が優生思想に直結するものであり、あの去年の7月26日に起きた相模原障害者施設での事件で容疑者が発した動機と等しいものであると考える。
成年被後見人等の医療、介護等に係る意思決定が困難な人への支援等の検討
5. 市民後見人の活用との関係
なんの専門性も有さない市民後見人に対して医療同意等の権限を与えることは、非常に危険であると考える。また、専門性を有さない以上は、専門家の決定に従うほかないわけで、そもそも医療同意に権限を拡大することの意義自体があまりないのではないかと考える。