震災対応に関する意見書

公益社団法人日本精神科病院協会 御中
独立行政法人国立病院機構 御中
公益社団法人全国自治体病院協議会 御中

 このたび、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課は、「地震により被災した精神疾患者の科医療機関へ受け入れついて」と称する事務連絡を公益社団法人日本精神科病院協会、独立行政法人国立病院機構、公益社団法人全国自治体病院協議会の三団体にだし、災害派遣精神医療チームによる被災した精神医療機関の患者の転院調整をしているため、転院先として入院患者の受け入れを促す文書を出しました。
 私達は、次の箇条書きを深刻に憂慮しているため、十分に考慮していただきたく意見を申し上げます。

一、社団法人日本精神神経学会は平成23年4月20日に「東日本大震災被災地における調査・研究に関する緊急声明文」を出しました。この声明文は他科の医師から「各都道府県から派遣されて支援に来た『こころのケア』チームと、各大学の精神科チームが別個に行動していて合同ミーティングの場を提供しても合意が得られず困惑している」、「功名心を抑えない非人道的な調査を行っている」、「精神科チームのメンバーが、『自分たちは自己完結型のチームだから、他のチームとは交流しない』と明言している」などの問題が提起され至ったものです。このたびの震災においても他科の医師団体と協調の上、前回のような被災者・患者の不利益になるような言動を慎まれることを申し上げます。

二、2011年3月15日、転院者の受け入れのため、定員を超えて患者を入院させることができるとする通達(厚生労働省保険局医療課長・老健局老人保健課長通知「平成23年東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の地震の被災に伴う保険診療関係等の取扱いについて」)が出されました。ところで治療の必要性のない精神障害者の長期入院(社会的入院)が問題とされて久しいですが、こうした問題の解決を一方でしていく必要があるにもかかわらず、被災医療機関から受入医療機関へと右から左に患者を転院させていることが疑
われます。よって、病床の計画的な削減を含む、長期入院問題の解消に向けた取り組みと表裏一体的に取り組まれることを意見申し上げます。

三、私達は、東日本大震災の際に精神科病院おいて被災医療機関からの転院後の処遇に問題があるケース、医学的な理由ではなく被災を理由とした新規入院をするケース(住む場所や薬がないために入院するケース及び被災した家の家族に精神障害者がいると親戚の家に避難させてもらえないからという理由で入院するケースなど)を確認しています。とりわけて被災が原因で入院した人が地域移行できないといった状態を多数確認しており、こうした事態はもっとも避けられなければならない事態であると考えます。

四、「厚生労働大臣の定める入院患者数基準及び医師等員並に入院基本料の算定方法について」(平成18年3月23日保医発第0323003号)では、被災者を受け入れた場合の定員超過厳格措置の適応除外規定があり、この機に報酬のために精神障害者が不要な入院を強いられるのではないかと懸念します。
 2016年4月27日