精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正における障害者の権利に関する条約との関係に関する質問書

厚生労働省 社会・援護局
障害保健福祉部精神障害保健課長 殿

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正における
障害者の権利に関する条約との関係に関する質問書

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)は、附則に基づき今年度改正されることとされています。
 精神保健福祉法の当事者は、精神障害者です。当事者とは特定の問題の効果の帰属主体のことであり、精神保健福祉法の手続きに基づき入院したり、退院したりする問題の当事者は、精神障害者をおいて他におりません。加えて、精神障害者としての主張をできる――精神障害者という集合アイデンティティを一人称として発言できる――のは、第一に精神障害者の団体であるはずです。貴省におかれましては、当事者である精神障害者の意見を聴く必要性を十分に認識していただきたく思っております。
 そこで、次の質問について回答をしていただきたくお願い申し上げます。

1 障害者権利条約を踏まえることについて(再)
2016年1月13日にご相談にうかがった際に、「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において衆参両院附帯決議に基づき障害者権利条約を踏まえるべく障害者権利条約が精神衛生法規に対して一般的に要請している事項を列記的に示し確認することを検討していただけるとのことでしたが、それは課長に報告したのか、結果として列記的に示すことは決まったのかどうか、お答えください。

2 目的条項に障害者基本法を加えることについて
 2016年1月13日にご相談にうかがった際に、精神保健福祉法の第1条において、他の障害者施策と同様に障害者基本法の理念に基づくことを明文すべきという意見に対して、保健、医療、福祉など多岐にわたることを理由に難しいとの説明がございましたが、そもそも、障害者基本法は保健、医療、福祉を網羅しているため、目的条項と相矛盾しないと考えますが、その後、課内において目的条項の改正についてが、どのような運びとなったのかをお答えください。

3 なぜ、法施行後、新規医療保護入院数は約4万人減ったのか、お答えください。

4 新規医療保護入院数が減少したのに入院者数それ自体に大きな変化はないということは、医療保護入院ではなくなった精神障害者のその後の入院形態はどうなったのでしょうか。

5 前項は突然にして医療及び保護の必要性のある精神障害者が減ったということなのか、お答えください。

6 携帯電話の持ち込み一律禁止の精神科病院は、一律に行動制限しているということか。

7 家族以外の面会を一律禁止している精神科病院は、一律に行動制限をしているということか。

8 平成27年度障害者総合福祉推進事業「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」(沼津中央病院)においては、アドボケーターとしてのピアサポーターには入院中の精神障害者に対して制度などの情報を提供してはいけない、病院スタッフが共有可能な記録を付けなければならないという状況の下でモデル事業を実施したというのは事実であるか、また、それがピアサポートとして妥当とお考えであるかお答えください。

9 精神保健福祉法改正過程は、付帯決議に基づき障害者権利条約の理念を具現化する方向で講ずるのであれば、障害者権利条約前文(o)及び障害者権利条約第4条第3項に基づき精神障害者を代表する団体から推薦を受けた障害当事者が精神保健福祉法改正のための検討会・ワーキンググループに構成員として障害者が相当数入っていてしかるべきと考えるが、これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会の委員が2名という数についての認識と今後の障害当事者の参画の目標値についてお示しください。

10 全国大行動において十分に回答されなかった点についてお答えください。
① 以下は即座に行われるべきこと
● 病棟転換居住系施設の即座廃止 
● 非自発的入院・隔離・身体拘束の段階的削減、もしくは、病床の段階的削減のための行政計画(数値目標、見直し時期を含む)の導入
● 措置入院の要件である他害行為の基準から名誉毀損・侮辱を削除すること
● 携帯電話の精神病院病棟内での利用を原則認めること。
● 同様に精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づき厚生大臣が定める処遇の基準
第2 通信・面会について2 信書に関する事項(1)患者の病状から判断して、家族等からの信書が患者の治療効果を妨げることが考えられる場合には、あらかじめ家族等と十分連絡を保って信書を差し控えさせ、あるいは主治医あてに発信させ患者の病状をみて当該主治医から患者に連絡させる等の方法に努めるものとする。
の即時廃止。
● 処遇に関する大臣基準から身体拘束の要件である「極度の不穏もしくは多動」を削除すること。
● 精神保健福祉法(審判の請求)第51条の11の2および(後見等を行う者の推薦
等)第51条の11の3の廃止
● 心神喪失抗弁を前提とした不定期拘禁や地域監視体制である医療観察法の即時廃止 とりわけ鑑定のための人身の自由剥奪の即座廃止
● 入院中の保険外の自己負担をともなくものの強制の廃止タオルやパジャマなどの押し付け 小遣い銭管理料など 月額数万円に及びところもある 必要なら介助が公費で負担されるよう制度化すること
② 障害者権利条約の履行に向け、障害を理由とした強制入院、同意のない医療、身体拘束や隔離の廃絶に向け複数の精神障害者団体の参画を得た検討の場を設けること
検討項目には以下を含めること
●オルタナティブ研究
例 ピアランクライシスセンター、パーソナルオンブート、ファミリーグループカンファレンス、インド プネの他アジアでの精神障害者自身よる地域支援活動などなど
●身体拘束について
トラウマインフォームドアプローチ デエスカレーションテクニック精神科救急マニュアルでも紹介されている 救急学会邦訳 及び救急学会のガイドライン参照などなど
●実態把握
@隔離身体拘束について(身体拘束の14%は任意入院である)
それぞれの期間分布 年齢 病名 病棟機能別分布 理由分布とのクロス
措置から医療保護に変わった例の実数
措置入院の期間分布及び医療保護入院変更後の期間分布
@OECDの求めている統計
精神医療の質に関して、国で収集されている指標はほとんどなく、日本は精神医療に関する OECD 医療の質指標で収集しているいずれの指標(入院患者の自殺、退院後の自殺、統合失調症又は双極性障害による再入院、統合失調症又は双極性障害を有する患者の超過死亡率)についても報告できていない。
@強制入院の個別事例の研究、なぜ強制が選択されたのか
都道府県別の措置入院のばらつきの要因分析など
@強制医療の実態把握 代理人家族等の同意によるものも含む
 これについては一切統計がない
●精神障害者団体市民団体によるによる権利擁護事業、とりわけ強制入院からの救援活動
2016年2月8日