2015年7月、与党は「成年後見制度利用促進法案」をまとめた。早めれば8月に国会に上程される見込みです。
このたびの「成年後見制度利用促進法案」では、①利用者を増やす基本計画の策定を国や自治体に義務付ける、②後見人による財産の不正流用を防ぐための監督強化、③被後見人の権利制限の見直し(主に欠格条項の見直し)、④手術や延命治療などの医療を受ける際の同意権及び現在含まれない後見人の事務範囲の拡大・見直し、⑤後見人が利用者宛ての郵便物を自らのもとに送り、必要な書類を閲覧できるようにする、などが盛り込まれました。
しかし、当該法案は、成年後見制度の対象のひとつとされている精神障害者に対して一切ヒアリング等を実施せずに上程されようとしているものです。また、当該法案自体が、以下の重要な問題を含んでいるため、当会としては強く反対します。
1.成年後見制度自体の問題
2014年に日本でも批准された障害者権利条約第12条では、法の前の平等(1項)、法的能力の平等(2項)が規定されました。一般的に法的能力の範囲には、行為能力が含まれるものと考えられています。そのため、被後見人の行為能力を制限する成年後見制度のような現行の制度は、障害者権利条約に違反すると指摘する声が強くなってきました。
また、全国「精神病」者集団は、成年後見制度を障害者権利条約の策定の段階から障害を理由とした他の者との不平等の問題と位置付けており、国連の水準を見習い廃止するべきであると考えています。仮に廃止が難しいとしても成年後見、保佐の類型が残るようなことはあってはならないし、補助の適用も最終手段であることについて挙証を求めるなど厳格な運用が必要と考えます。
2.医療同意について
成年後見制度利用促進法案では、医療同意の拡大を示しています。医療同意は、民法上の医療提供契約の締結と異なり、患者が侵襲行為に対して同意を取り付けるという医療行為の正当化要件にかかわる重要な手続きです。法律行為である医療提供契約と同様の手続において成年後見制度の対象にしてはいけません。こうした範囲拡大は、障害者の生命にかかわる諸判断を代理人に代行させるものであり、障害者の生命を危機に追いやる極めて問題のある政策といえます。被後見人等であっても医療同意に関してはあくまで本人がすること、仮に医療同意が取れないとした場合は緊急避難三要件の適用を見てもっとも医道に適った選択をすることが求められていると考えます。
3.代理決定枠組みから支援された意思決定枠組みへの転換
今必要なことは、成年後見制度のような行為能力の制限を伴う制度を廃止し、その先で本当に必要な支援を確保していくことです。
以上のことから私たちは、成年後見制度利用促進法案に反対します。
2015年8月15日