JDF全国フォーラム:障害者権利条約の完全実施をめざして~2020年の審査・勧告でどう変わる、私たちの暮らし~

日 時: 2019年12月5日(木)10:00~16:40
場 所: ベルサール東京日本橋(東京都中央区日本橋(日本橋駅直結))
     https://www.bellesalle.co.jp/shisetsu/tokyo/bs_nihonbashi/access/
参加費: 1,000円 (介助者等は無料。点字資料、手話通訳、要約筆記、ヒアリングループあり)
主催 日本障害フォーラム(JDF)
● キリン福祉財団、住友財団、損保ジャパン日本興亜福祉財団、ヤマト福祉財団 助成事業 ●

プログラム(順不同・敬称略・一部調整中)
10:00 主催者挨拶、来賓挨拶
10:10 基調講演
    テレジア・デゲナー 前 国連・障害者権利委員会委員長
12:00 イエローリボンのご紹介
     JDF企画委員会
13:10 JDF障害者権利条約「パラレルレポート」の作成と「建設的対話」に向けた取り組み
    佐藤 聡 JDFパラレルレポート特別委員会事務局長/DPI日本会議事務局長
13:40 国連・障害者権利委員会の最新動向(仮題)
    石川 准 障害者権利委員会副委員長/障害者政策委員会委員長
14:10 パネルディスカッション
      各分野の取り組み・試み ~私たちの暮らしを変えるために
    パネリスト:
     日本弁護士連合会、地域行政、企業、障害者団体など
16:40 閉会

申込方法
1.こちらのサイトからお申込みいただけます。
https://www.normanet.ne.jp/~jdf/seminar/20191205/

障害者の権利に関する条約の事前質問外務省仮訳への修正意見

2019年11月19日
内閣府障害者政策委員長 殿
外務省総合外交政策局人権人道課長 殿

日ごろより精神障害者の地域生活、施策にご尽力くださり心より敬意を表しております。
さて、に開催された内閣府障害者政策委員会において障害者の権利に関する条約の事前質問の外務省仮訳が示されました。全体的に真摯な訳であると評価しておりますが、私たち精神障害者にかかわる部分でどうしても修正が不可欠な点がございましたので、下記のとおり修正のご要望を申し上げます。

◆第12条
◇事前質問事項
11. Please provide information about the measures taken to:
(a) Repeal all laws that restrict the right of persons with disabilities to equal recognition before the law, and bring the legal framework and practices into line with the Convention, including by amending the Civil Code, end de facto guardianship and replace substituted decision-making with supported decision-making;

◇外務省訳
11以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。
a障害者が法律の前にひとしく認められる権利を制限するいかなる法律も撤廃すること。また,民法の改正によるものを含め本条約に従うために事実上の後見制度を廃止すること。また,代替意思決定を支援付き意思決定に変えること。

★修正案
11以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。
a障害者が法律の前にひとしく認められる権利を制限するいかなる法律も撤廃すること。また,法的枠組み及び実践を本条約に適合させるため、民法の改正、実質的な成年後見制度の廃止、代理意思決定を支援された意思決定に転換させること。

◇修正の趣旨
1.求められていることは、大きく、法的枠組み及び実践を条約に一致させるためであることと、障害者の権利を制限する法律の廃止である。このような文の構造を適切に反映した訳文に修正した。
2.de factoは、「実質的な」のほうが適切な訳語である。

◇事前質問事項
(c) Raise awareness about the rights of all persons with disabilities to equal recognition before the law and to receive support for decision-making, particularly targeting persons with disabilities and their families, professionals in the judiciary, policymakers and service providers working for or with persons with disabilities.

◇外務省訳
c障害者が法律の前にひとしく認められる権利及び意思決定のための支援を受ける権利について意識の向上を図ること。特に,障害者とその家族,司法の専門家,政策立案者及び障害者のためにあるいは障害者とともに働いているサービス提供者を対象とするもの。

★修正案
c特に,障害者とその家族,司法の専門家,政策立案者、障害者のためにあるいは障害者とともに働いているサービス提供者を対象として、すべての障害者の法律の前にひとしく認められる権利、及び意思決定のための支援を受ける権利について意識の向上を図ること。

◇修正の趣旨
1.文脈が伝わるように文章の構成を修正し、原文に沿って1文につなげた。
2.allが訳し落とされている。

◆第14条
◇事前質問事項
13. Please provide information on the measures taken to:
(a) Repeal laws, including the Act on Mental Health and Welfare for the Mentally Disabled, in particular articles 29, 33 and 37, and the Act on Medical Care and Treatment for Persons Who Have Caused Serious Cases under the Condition of Insanity, which restrict the liberty and security of persons with disabilities on the grounds of actual or perceived impairment, including legislation allowing for the forced institutionalization of persons with disabilities;

◇外務省訳
13以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。
a「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の第29条,第33条及び第37条,「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」を含め障害者の自由及び身体の安全を実際の障害又は障害があると認められることに基づき制限する法律を撤廃すること。これには,障害者の強制的な施設収容を認める法令を含む。

★修正案
13以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。
a精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、中でも特に第29条,第33条及び第37条,及び心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律を含めて、障害者の強制的な収容を許可する条項など、実際の障害や障害があるとみされたことに基づき障害者の身体の自由及び安全を制限する法律を撤廃すること。

◇修正の趣旨
1.精神保健福祉法全体を廃止するよう勧告されていることがわかりにくい訳である。
2.障害があると認められることではなく、見なされるなど適切な文脈を反映できる訳語を当てるべきである。

◇事前質問事項
(b) Address the increase in the number of hospitalizations of persons with intellectual or psychosocial disabilities, and end their indefinite hospitalization.

◇外務省訳
b知的又は心理社会的障害のある者の入院件数が増加していることに対応すること,及び彼らの無期限の入院を終わらせること。

★修正案
b知的又は精神障害者の入院件数の増加に対応すること,及び知的又は精神障害者を漫然と入院させることをやめること。

◇修正の趣旨
1.indefiniteは、単に期限が決まっていない(無期限)という意味よりも、なんらの手立てもなく留め置かれているという意味で「漫然と」という訳語をあてたほうが適切である。

◆第15条
◇事前質問事項
14. Please provide information on:
(a) The measures taken to abolish in law, including in the Act on Medical Care and Treatment for Persons Who Have Caused Serious Cases under the Condition of Insanity, and in practice, the use of physical and chemical restraints, including forced electroconvulsive therapy, forced medication, isolation, and other non-consensual, humiliating and degrading practices used on persons with disabilities, in particular those with intellectual or psychosocial disabilities;

◇外務省訳
14以下についての情報を提供願いたい。
a障害者,特に知的又は心理社会的障害のある者に対して用いられる,強制電気痙攣療法,強制治療,隔離,その他同意のない屈辱的で品位を傷つける実践を含む,身体的及び化学的拘束を用いることを廃止する法律(「精神障害者医療治療法(ママ)」,「医療観察法(ママ)」,「医療保護観察法(ママ)」を含む)上及び実践上の措置。

★修正案
14以下についての情報を提供願いたい。
a心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律を含む法律の廃止のためにとった措置。及び、運用面で、障害者,特に知的又は精神障害者に対して用いられる,強制電気痙攣療法,強制治療,隔離,その他同意のない屈辱的で品位を傷つける実践を含む,物理的及び化学的身体拘束の使用の廃止のためにとった措置。

◇修正の趣旨
1.現在の訳文は、全体として、医療観察法が障害者を拘束から守る法律であるように読めるため、訳文の構成を変えたほうがよい。法律面と運用面を2文に分けて訳した方が、より英文に近く、趣旨がわかりやすい。
2.physical and chemicalは、物理的な拘束と化学的(薬物による)拘束の対比なので、身体的→物理的とする訳語が適切である。

◇事前質問事項
(b) Whether there are independent monitoring systems to investigate violations of the rights of persons with intellectual or psychosocial disabilities who receive forced treatment or are long-term hospitalized under the Act on Mental Health and Welfare for the Mentally Disabled.

◇外務省訳
b「精神保健福祉法(ママ)」のもとで強制治療又は長期入院措置を受けた知的又は心理社会的障害のある者の権利の侵害について調査する独立した監視システムが存在するかどうか。

★修正案
b精神保健福祉法に基づいて強制治療されている又は長期入院している知的又は精神障害者の権利の侵害について調査するための独立した監視システムが存在するかどうか。

◇修正の趣旨
1.receive forced treatment or are long-term hospitalizedは、現在形なので「受けた」は不適切である。また、「措置」にあたる英単語はないので削除する。

◇事前質問事項
15. Please indicate the measures taken to investigate cases of forced sterilization of persons with disabilities, including those under the former Eugenic Protection Law, and provide information on whether the statutes of limitations limit access to justice for persons who were subjected to forced sterilization. Please explain the measures under the Act on the Provision of Lump-sum Compensation to Persons Who Received Eugenic Surgery, under the Former Eugenic Protection Law, to provide compensation and redress for persons with disabilities, including updated information on the payments disbursed as compensation.

◇外務省訳
15「旧優生保護法」のもとで行われた事案を含め,障害者に対する強制不妊事案を調査するためにとられた措置についてお示しいただきたい。また,出訴期限法によって強制不妊された女性が司法手続を利用することを制限されるかどうかについてもお知らせ願いたい。「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」のもと行う障害者に対する賠償補償提供の措置について,補償として支払った金額についての最新情報を含め説明願いたい。

★修正案
15旧優生保護法に基づいて行われた事案を含め,障害者に対する強制不妊事案を調査するためにとられた措置についてお示しいただきたい。また,強制不妊を受けさせられた人が出訴期限法によって司法手続の利用を制限されるかどうかについてもお知らせ願いたい。旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律に基づいて行う障害者に対する賠償及び補償の提供のための措置について,補償として支払った金額についての最新情報を含め説明願いたい。

◇修正の趣旨
1.文脈が伝わるように適切な文構成になおした。

◆第25条
◇事前質問事項
25. Please provide information on:
(a) The measures taken to ensure that laws and regulations concerning health care and services for persons with disabilities and their implementation comply with the Convention, in particular the Act on Medical Care and Social Supports for Patients with Intractable/Rare Diseases;

◇外務省訳
25以下についての情報を提供願いたい。
a障害者に対する保健やサービスに関する法令とその履行が本条約に従っていることを確保するためにとった措置。特に,「難病の患者に対する医療等に関する法律」について。

★修正案
25以下についての情報を提供願いたい。
a障害者に対する医療や保健サービスに関する法令及び規則、及びその実施を本条約に準拠させるためにとった措置。特に難病の患者に対する医療等に関する法律について。

◇修正の趣旨
1.health care and servicesは、医療及び保健サービスという訳語を当てるべきである。
2.laws and regulationsは、法律だけでなく、条令や民間の決まり(規則とした)なども含むため、より適切な訳語を当てた。
以 上 

〒164-0011
東京都中野区中央2―39―3
Tel 080-6004-6848(担当:桐原)
E-mail jngmdp1974@gmail.com

第5回医療基本法制定議連の報告

 第5回医療基本法制定議連では、精神医療のことが話題になりました。精神医療業界から議連に要請が入り、尾辻秀久議連会長の意向で精神医療をきちんと検討するために会議がもたれました。患者側からは、桐原運営委員(全国「精神病」者集団)、医師側からは渡辺憲医師(鳥取県医師会会長)がヒアリングに出席しました。なお、渡辺氏は日本精神科病院協会鳥取支部長を務めている人です。
 桐原運営委員からは、精神科医療の実情を説明し、精神科医療を特別な枠組みに押し込めず、一般医療と同じ枠組みにする制度改革(精神保健福祉法撤廃など)、医療一般に対する一般的な原則として非同意医療の適正化、最小化原則を設けることなどを求めました。
 渡辺氏は、個人の意見と断った上で精神科医療を適切に取り組んでいるという立場から、精神科医療の状況を説明し、最後に「精神科医療から医療基本法に期待するもの」として5項目を挙げました。その中に医療基本法が「精神保健福祉法と整合するものであること」という要望がありました。
 福島みずほ議員からは、医療基本法にどこまで書き込めるかは微妙なところだが、意見や実情を踏まえたかたちで進めるように検討しなければならないという意見が出されました。
 尾辻秀久議連会長からは、桐原さんの報告でベッド数が多いという話があったが、これにつき厚労省はどういう認識から、理由をどのように考えているか、という質問がありました。
 厚生労働省精神・障害保健課は、精神科病床の定義が異なっているところがあり(アメリカでは長期入院の方は、精神科とは別の施設を利用している)単純比較はできないがOECD比較で,確かに多く、それには、患者側、病院側、地域・家族の問題、行政のかかわり等、さまざまな要因が複合していると答弁しました。
 尾辻会長は、精神医療と介護の組み合わせという話も出ている中、定義が違うというだけでは実態も分からず、実態把握の調査をしてもらう必要があると返しました。
 富岡議員からは次の意見がありました。医療基本法は提供側から見た法律で患者の視点から見た権利・擁護が欠けている、この議連でも理解されているように思います。メンタルヘルス議連を行うと、精神科の問題について意見が噴出します。精神科ドクターが権利(正確には「権限」)を過大に行使しており、薬づけの問題、ベッドの多さも指摘されています。精神科の領域にフォーカスをあてて何回か議論し、ここから見えてくる患者の権利にスポットを当てられないでしょうか。そうすることによって,基本法の姿の一部が見えてくるのではないかと思います。
 川田議員からは、富岡先生と同じ意見で、精神科には閉鎖性、拘束など精神科にまつわる問題があると思っていて、そこから一般医療の問題が見えてくるものもあるとの意見が示されました。
 石崎議員からは、桐原さんの意見で「一般医療へ編入」があるが、日医や厚労省は,どう考えるかと質問がありました。
 日医の平川常務理事は、精神科医療は、以前は家の中でみていて、これまでは長期入院、今、大きく社会で見ていく方向に切り替わっているところだと思うが、以前よりは、平均在院日数も減ってきているし、医療と社会の間に介在する、介護・福祉という話があったが、今は医療が負担を負いすぎているのはそうだと思う、との回答がありました。
 厚労省医政局総務課長は、個別の疾病の専門性に応じた施策が必要と考え、部署が分かれているわけだが、縦割りになっていることで、問題が起こらないようにしていきたいと答弁がありました。
 羽生田事務局長より桐原運営委員に意見を求められ、桐原運営委員は、現行法制度と適合する医療基本法では無く、もう少し現行法を患者の権利の観点から見直すものであって欲しいと回答がありました。
 日本医療社会事業協会の漆畑常務理事からは、精神科だけの問題では無く、あらゆる医療分野の問題と共通していることと意見がありました。H-PACの前田弁護士は、一般役で長期処方の問題、長期間にわたる身体拘束の問題がある、社会防衛の観点が強すぎ、人として正しい扱いかを考えなければならないと意見がありました。
 鈴木利廣弁護士からは、障害者基本法など障害者と患者がオーバーラッピングしているところがあるが、同意の能力があるかどうかで区別するのではなく、意思決定支援をどうするかという基本法の視点が必要であり、精神科医療を考えることは一般医療を確立することにつながるという観点で行ってもらいたいとコメントがありました。
 羽生田事務局長からは、精神科医療を特化して医療基本法に入れることは無理があるが、どう生かしていくか考えて行かなければならないとの見解が述べられました。
 尾辻会長からは、医療を提供する側の法律はいろいろできているが、患者の権利という観点が十分でないため、両者にまたがる基本法でなければいけないと考えているという見解が示された。また、精神科医療をつめた方が良い、という意見が出ていたので、議論の仕方を工夫していきたいとの見解もあわせて示された。
 羽生田事務局長から次回役員会で骨子案をまとめて提示したいとのことでした。
 総じて精神医療に根深い問題があることまでは確認された。しかし、精神保健福祉法の見直しを含む医療基本法というかたちにもっていくのは、非常に厳しい状態になったため、ここ数週間のうちに、なんらかの行動が不可欠になる。

安楽死・尊厳死を考える――公立福生病院事件と反延命主義

日 時: 2019年12月15日(火) 13:30~17:30
場 所: 東京大学 駒場キャンパス
      21 KOMCEE East K011号室
資料代: 1,000円
主 催: 現代の死生問題を考えるネットワーク
共 催: 障害学会、日本生命倫理学会基礎理論部会
◆パネリスト
 安藤泰至(鳥取大学教授)
 石橋由孝(日赤医療センター腎臓内科部長)
 川島孝一郎(仙台往診クリニック院長、東北大学臨床教授)
 斎藤義彦(毎日新聞記者)
◆特定発言者
 市野川容孝(東京大学教授)
 高草木光一(慶應義塾大学教授)
◆司会: 小松美彦(東京大学教授)
 開会と閉会のあいさつ: 堀江宗正(東京大学准教授)

みんなで動こう医療基本法パートⅤ 『医療基本法で医療に人権を根付かせよう!』

日 時: 2019年11月2日(土) 13:30〜16:30 (開場:13:00)
会 場: 明治大学駿河台キャンパス 研究棟2階 第9会議室 (JR御茶ノ水駅より徒歩5分)
研究棟には明治大学リバティタワー 入口よりお入り下さい。
★どなたでも参加出来ます。みなさまお誘いの上お気軽にご参加ください。

「わたしたちは、医療の憲法「医療基本法」の制定を求めて活動してきました。今年2月、医療基本法制定に向けての議員連盟が結成され、いよいよ実現の日が近づきつつあります。医療基本法によって、日本の医療はどう変わるか、どう変えねばならないのか、さまざまな立場から語り合います。 」

◎基調報告 “医療基本法をめぐる現在の状況”
 報告者;木下正一郎さん(患者の権利法をつくる会)

◎パネリスト
 ・桐原尚之さん(全国「精神病」者集団)
 ・中原のり子さん(過労死を考える家族の会)
 ・漆畑眞人さん(日本医療社会福祉協会)
◇コーディネーター
 ・小林洋二さん(患者の権利法をつくる会)

主 催: 患者の声協議会  患者の権利法をつくる会  東京大学医療政策実践コミュニティー(H-PAC)医療基本法制定チーム
共 催: 全国ハンセン病療養所入所者協議会  ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会

旧優生保護法に関わる支援の到達点と課題 ~当事者の声と関係団体の取り組み~

日時: 2019年10月23日(水)12:00~14:30
場所: 参議院議員会館 講堂(東京都千代田区永田町2-1-1)
    参加費無料 手話通訳、要約筆記、点字資料あり

 超党派議員連盟による取り組みを経て、去る4月24日、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立しました。全国8か所で進められている訴訟については、去る5月28日に、仙台地裁において、最初の判決が出されたところです。
 現在、法に基づく一時金支給の手続きが進められる一方、各地での訴訟、ならびに関係団体による取り組みも引き続き進められ、被害を受けた人たちにどのように支援を続けていくのかが問われています。
 これまでの到達点を改めて確認しながら、今後の取り組みに求められるものは何か、当事者の声を中心に話し合います。

プログラム
12:00 主催者・来賓挨拶
12:20 基調報告 藤井克徳(日本障害フォーラム副代表)
12:40 経過報告 新里宏二(弁護士/全国優生保護法被害弁護団共同代表)
13:00 各地の当事者の声(5地域(予定)の原告、家族、支援者など)
13:40 関係団体の取り組み(全日本ろうあ連盟、日本障害者協議会、DPI日本会議ほか)
14:10 質疑応答
14:30 閉会

東京優生保護法訴訟第8回期日と集会のご案内

2019年10月25日(金)
入庁行動:13時~東京地裁前 その後傍聴券配布・抽選
裁判期日:14時~東京地裁103号法廷
集会:15時15分~17時 (15時開場)
クロスコープ新橋 セミナールームA
(住所 東京都港区新橋1-1-13アーバンネット内幸町ビル3F)

集会予定内容:
・東京期日のご報告&意見陳述再現
・意見交換等

お問い合わせ:東京弁護団
五百蔵洋一法律事務所 弁護士 関哉直人
TEL:03-5501-2151 FAX:03-5501-2150

11・17 医療観察法廃止全国集会

 2003年に医療観察法は制定されました。医療観察法の廃止を求めるこの集会は国会審議中に反対闘争をした人を中心に成立直後に始まり、新たな仲間を迎えつつ年2回欠かさず続いています。審議中に指摘された問題以外にも施行後にわかった自殺者の多さなど医療観察法には多くの問題点があります。しかし、予定していた病床数を超えてなお、新たな施設が建設され続けています。昨年9月に発表された北大病院として札幌刑務所敷地内に北海道にはなかった医療観察法指定入院施設を作るという計画は、大学とも組むという広がりとともに、刑務所施設内に作るという、医療観察法が再犯防止・治安のための精神医療であることをはっきりさせるものかと思えます。
 今回の集会は、審議中から医療観察法に共に反対してきた精神科医で、この問題について雑誌「精神医療」や「精神科治療学」で意見を述べておられる伊藤哲寛さんを北海道からお呼びしてお話を伺います。多くの方の参加をお待ちしております。

講演
「医療観察法の現在〜大学病院による刑務所敷地内指定入院医療機関新設の危うさ」
伊藤哲寛さん (元北海道立精神保健福祉センター所長)

2019年11月17日13時半より 16時半終了予定
としま区民センター7階
500円

● 関東地方以外から参加の精神障害当事者には5000円の交通費補助があります
● 集会後、交流会を予定しています

■共同呼びかけ: 心神喪失者等医療観察法をなくす会 / 国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会 認定NPO大阪精神医療人権センター / 心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな!ネットワーク

障害者の権利に関する特別報告者の指令ーー生命倫理

Mandate of the Special Rapporteur on the rights of persons with disabilities
障害者の権利に関する特別報告者の指令

23 August 2019
Dear Madam/Sir,

In my capacity as Special Rapporteur on the rights of persons with disabilities, pursuant to human Rights Council resolution 35/6, I am currently preparing a report for the 43rd session of the Human Rights Council on Bioethics and Disability. The study aims to explore bioethical responses to disability and to discuss areas where potential tensions could emerge.
 障害者の権利に関する特別報告者としての職務において、人権理事会の決議35/6の遂行に際して、「生命倫理と障害」に関する人権理事会の第43回セッションの報告書を作成しています。この研究の目的は、障害に対する生命倫理学的応答の追求と、緊張関係が発生する可能性のある分野についての議論です。

In this connection, I am pleased to transmit to you the questionnaire attached on Bioethics and Disability, in English, French and Spanish. I would be most grateful for your response to be sent electronically, in accessible formats (Word Document), to sr.disability@ohchr.org no later than 30 September 2019. I would appreciate if your response may be as concise as possible and if annexes could be attached where necessary.
 これに関係して、英語、フランス語、スペイン語で「生命倫理と障害」についての質問紙を添付にてお送りいたします。2019年9月30日までにsr.disability@ohchr.orgまでアクセシブルな形式(ワードファイル)にてご回答いただけますとたいへんありがたく存じます。ご回答が可能な限り簡潔で、必要に応じで付録文書をつけていただけますと助かります。

Whenever possible, I would also encourage you to provide copies of relevant laws, policies, programme outlines, evaluations, and any other information relevant for the topic. Please also indicate if you have any objections with regard to your submission being posted on the website of the Office of the High Commissioner for Human Rights.
 可能な場合には、関係する法律、政策、プログラムの概要、評価、その他この話題に関する情報のコピーもお願いします。また、OHCHRのウェブサイトにご回答が掲載されることに関して、何か問題がある場合にはお知らせください。

I take this opportunity to thank you in advance for your contribution.
 この場をお借りして、あなたの貢献に感謝の意を表します。

1. 以下の事項に関するあなたの国での法的及び政策的な枠組みに関する情報を提供してください。
a. 出生前診断
 日本では、出生前診断に健康保険の適用をしてはいないものの、法令で禁止されているわけではないため、いくつかの要件を満たして高額を支払えばできるようになっている。

b. 障害に関係する中絶
 堕胎は、日本において刑法第212条~刑法第216条の堕胎罪により罰せられる。しかし、医師による人工不妊中絶手術を定めた母体保護法の手続きに従っておこなわれる中絶は免罪される。中絶は、母体の健康上の理由、経済的な理由、強姦等による妊娠などの場合に認められる。障害を理由とした中絶は法律明文上にはないものの、経済的理由を隠れ蓑にしておこなわれている。
 日本には、1996年まで障害を理由とした行政による強制的な断種や中絶を定めた優生保護法があった。1996年に優生保護法は、母体保護法に改正されて強制的な断種の規定が削除されたが、いまだに断種や中絶の慣行は根強く残っている。障害に関係する中絶には、親に障害がある場合の中絶の問題と胎児に障害がある場合の中絶の問題の二点があり、いずれも経済的理由を隠れ蓑にした中絶の犠牲になっている。

c. 医学的治療及び科学実験に対するインフォームド・コンセント
 日本には、患者の権利を定めた法典が存在しない。
 インフォームドコンセントは、医療法第1条の4及び医師法において医療者の義務であると位置づけられている。
 日本の法律では、医学的侵襲には同意が必要とされている。しかし、生命にかかわるような緊急の場合には、例外的に同意を省略することが認められている。この場合、再び同意できる状態になったときには、治療拒否も含めて同意が有効とされている。

d. 研究を実施されている障害者の保護
 日本には、臨床研究法に研究を実施されている障害者の保護が規定されている。しかし、実際には、十分な説明と納得がないまま、形式的な同意のみで研究を開始する例が散見される。例えば、2012年に実施された医療観察法対象者の処遇終了後の追跡調査は、障害者が納得して研究に同意したものではない。

e. 安楽死及び自殺幇助
 自殺幇助は、日本において刑法第202条の罪により罰せられる。また、安楽死は、毒薬の使用などの積極的安楽死が刑法第202条の嘱託殺人罪にあたり、終末期における延命治療の中止などの消極的安楽死が嘱託殺人罪に当たらないとされる。しかし、積極的安楽死と消極的安楽死の差異は、必ずしも明確ではない。そのため、消極的安楽死については、2018年3月に厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を作成してsoft lowで手続きを設けている。

2. 以下の事項に関して(調査、国勢調査、行政資料、論文、報告書、調査を含む)あらゆる情報及び統計資料を提供してください。
イ) 出生前診断の利用可能性、アクセシビリティ、実際の使用
国は、出生前診断の統計をとっていない。
 2019年7月29日、厚生労働省は、新型出生前診断(NIPT)の実態調査をすることを決めた。検査の件数や妊婦へのカウンセリング状況などを調べる予定。
 2018年12月28日、国立成育医療研究センターなどのチームは、出生前診断が2016年に少なくとも約7万件行われており、2006年の約2万9300件と比べ10年間で2.4倍に増えたとする報告をまとめた。学会が把握しきれない無認定施設での事例もあるため、実際にはさらに多いと言われている。(出典:https://r.nikkei.com/article/DGXMZO39528020Y8A221C1CR8000?s=5)

ロ) 障害に関する中絶の利用可能性、アクセシビリティ、実際の使用
国は、障害に関する人口不妊中絶手術の統計をとっていない。平成 28 年度の人工妊娠中絶件数は 168,015 件であった。平成 29 年度の人工妊娠中絶件数は 164,621 件であった。この中に障害に関する人口不妊中絶手術が含まれると考えられる。(出典:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/16/dl/kekka6.pdf)

ハ) 医学的治療及び科学実験に対するインフォームド・コンセントの実践
不知。

ニ) 臨床的な意思決定及び保健政策の両方に影響を与える生命の質(QOL)の既存の評価方法
2018年3月に厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を作成した。

ホ) 実験的、論争的及び/あるいは不可逆的な治療の実践
不知。

ヘ) 障害者に対する安楽死及び自殺幇助の実践
日本では、人工呼吸器を装着すれば地域生活できるALSなどの疾患にかかった障害者の内、7割前後が装着できずに死亡している。

3. 人を対象とした研究における障害者に対する差別について情報を提供してください。
2018年8月、日本では、東京都公立福生病院に入院中の腎臓に機能障害をもつ女性が本人の意思に反して医師が人工透析を中断し、死亡させる事件が発生した。日本透析医学会は、人工透析の中止を認めるガイドラインを2019年12月までに改訂し、終末期のみを対象としてきた従来の規定を改め終末期以外も対象とする方向性をかためた。

4. 国内倫理委員会が、障害者の権利をどのように扱っているのか説明してください。障害者に関して、規約、ガイドライン、決定事項、調査、出版物についての情報を提供してください。
日本には、国家倫理委員会という行政機構がない。各省庁が独自に調査倫理のガイドラインを定めている。

5.  障害者が国内倫理委員会にどの程度、どのようにして関与しているのか説明してください。
日本において各省庁が独自に定めた調査倫理のプロセスに障害者団体はほとんど参画していない。

6. 生命倫理についての議論において障害者の権利を保障し促進するためのコミュニティ、地域、あるいは全国レベルで取り組まれている革新的な試みがあれば教えてください。

 日本の障害者運動において生命倫理の問題は、トップイシューである。安楽死をめぐっては、自らを殺される側と規定し反対してきた。また、生きることを第一義的な人権を位置づけて、重度障害者が生きて存在することが社会を変革することになるのだと主張してきた。
 障害を理由とした消極的安楽死の自己決定は、障害者差別に基づく適応的選好を帰結するため、真の自由意志にはならない。よって、安楽死は、障害を理由とした生命の否定であり、障害者権利条約第10条に違反するものである。生死に関する自己決定は、障害を理由とした生命の自己否定を含むため、自己決定の権利と位置づけるべきではない。彼らの権利は、障害者にとって生きづらく、死にたいほど辛い気持ちにさせる社会から、障害を持って生きられるインクルーシブな社会にチェンジさせていくことで実現されるものである。

Catalina Devandas-Aguilar
Special Rapporteur on the rights of persons with disabilities
Questionnaire on bioethics and disability

1. Please provide information on the legislative and policy framework in place in your country in relation to:

a. Prenatal diagnosis
Prenatal diagnosis in Japan cannot be applied the health insurance, but is not prohibited by legislations. So, people can get it, when they meet some requirements and cover large payment amount.

b. Disability-related abortion
Abortion is generally subject to criminal penalty provided for in Article 212 to 216 of the Criminal Code in Japan. However, when an abortion is done in accordance with the proceedings on abortion provided for in the Maternal Protection Law, the abortion becomes acquittal. Abortions for reasons of mater’s health condition, financial situation, or pregnancy by rape etc. are acquittal. Abortion on the basis of disability is not clearly mentioned in the Law, but it is done by using financial reasons as hideout.
Japan had the Eugenic Protection Law, which provided forced sterilization and abortion based on disability by the administration, until 1996. When the Eugenic Protection Law was amended to the Maternal Protection Law in 1996, the provisions on forced sterilization were deleted, but customs of sterilization and abortion are still tenaciously remain until now. Problems of abortion based on disability include problems on both parents with disabilities and fetus with disabilities, and both become victim of abortion by using financial reasons as hideout.

c. Informed consent to medical treatment and scientific research
Japan does not have a code for rights of patients.
Article 1.4 of the Medical Law and the Medical Practitioner Law provide for that the informed consent is obligation of medical staffs.
Japanese laws require consent for medical invasive. However, in cases of fatal urgency, omission of the consent is exceptionally accepted. In these cases, when the patient become to have capacity to give a consent, his or her consent, including rejection of treatments, is required.

d. Protection of persons with disabilities undergoing research
Protection of persons with disabilities undergoing research is provided for in the Clinical Trials Act in Japan. But in fact, not a few researches launched with only external consent without free and informed consent. For example, participants with disabilities in the follow-up survey carried out in 2012 on people who finished treatments provided for in the Medical Treatment and Supervision Act, gave external consents of their participation, but they were not convinced.

e. Euthanasia and assisted suicide
Assisted suicide is subject to criminal penalty provided for in Article 202 of the Criminal Code in Japan as murder at the victim’s request. In addition, regarding euthanasia, positive euthanasia such as use of poison etc. is also subject to criminal penalty provided for in Article 202 of the Criminal Code as the murder at the victim’s request, but negative euthanasia such as discontinue of life-prolonging treatments in terminal stage is not included in the murder at the victim’s request. However, difference between positive and negative euthanasia is not always clear. Therefore, the Ministry of Health, Labour and Welfare established “the Practice Guidelines for Process of Decision-Making Regarding Treatment in the End of Life Care” in March 2018 and provided for the proceedings of negative euthanasia in soft law.

2. Please provide any information and statistical data (including surveys, censuses, administrative data, literature, reports, and studies) in relation to:

a. The availability, accessibility and use of prenatal diagnosis
Japanese government does not have statistical data of prenatal diagnosis.
The Ministry of Health, Labour and Welfare decided to start a fact-finding survey on the new type of prenatal diagnosis (the non-invasive prenatal genetic test: NIPT) on 29 July 2019, and will investigate the number of cases and states of counselling for pregnant woman etc.
A team with the National Center for Child Health and Development reported on 28 December 2018 that there were at least about 70,000 cases of prenatal diagnosis in 2016 and the number of cases was increased by 2.4 times during a decade, compared to 29,300 cases in 2006. The academic society could not grasp cases done in unauthorized institution. So, actual number seemed to be larger than the report.
(Reference: https://r.nikkei.com/article/DGXMZO39528020Y8A221C1CR8000?s=5)

b. The availability, accessibility and use of disability-related abortion
Japanese government does not have statistical data of operation for disability-related artificial abortion. The number of artificial abortion was 168,015 in FY2016, and 168,015 in FY2017. Disability-related abortion seems to be included in them.
(Reference: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/16/dl/kekka6.pdf)

c. The practice of informed consent to medical treatment and scientific research
Unable to figure out.

d. The existence of measurements of quality of life which affect both clinical decision-making and health policy
The Ministry of Health, Labour and Welfare established “the Practice Guidelines for Process of Decision-Making Regarding Treatment in the End of Life Care” in March 2018.

e. The practice of experimental, controversial and/or irreversible treatments
Unable to figure out.

f. The practice of euthanasia and assisted suicide on persons with disabilities

3. Please provide information on discrimination against persons with disabilities on research involving humans.
A woman with kidney dysfunction hospitalized in the Tokyo Metropolitan Fussa Hospital dead in August 2018, because the doctor stopped dialysis against her will. The Japanese Society for Dialysis Therapy determined their direction to revise their guideline on stopping dialysis until December 2019 and will include stopping it before terminal stage in the subjects, though only stopping dialysis in terminal period is accepted in the existing guideline.

4. Please describe how national ethics committees address the rights of persons with disabilities. Please provide information on protocols, guidelines, decisions, investigations or publications in relation to persons with disabilities.
Japan does not have an administrative organization which is correspond to the national ethics committees. Each ministries independently establish guidelines on ethics on research.

5. Please describe to what extent and how persons with disabilities are involved in the work of national ethics committees.
Organizations of persons with disabilities hardly participate in the process of ethics on research, independently provided for by each ministries.

6. Please refer to any innovative initiatives that have been taken at the local, regional or national level to promote and ensure the rights of persons with disabilities in bioethical discussions.
Issues on bioethics have been one of the most important issues in social movements of persons with disabilities in Japan. Regarding euthanasia, they have regarded themselves as persons who were in position of being killed by euthanasia and protested against it. In addition, they have regarded life in itself as the most fundamental human rights, and insisted that living and existences of persons with severe disabilities became power to change the society.
Decision of negative euthanasia based on disability is not based on real will of the person, because it is a result of adoptive preference based on discriminations against persons with disabilities. Therefore, euthanasia is denial of life on the basis of disability and violent Article 10 of the Convention on the Rights of Persons with Disabilities. Self-determination on life and death should not be regarded as rights of self-determination, because it includes self-denial of life based on disability. The rights will be made real by changing from society which is difficult to live for persons with disabilities and makes them painful enough to have desire to death, to inclusive society where people can live with disabilities.

成年後見開始等申立統一書式意見書

最高裁判所事務総局家庭局長 手嶋あさみ 様
厚生労働省社会・援護局地域福祉課成年後見制度利用促進室長 竹野佑喜 様
内閣府成年被後見人等権利制限見直し担当室長 竹野佑喜 様
法務省民事局長 小出邦夫 様

 平素より、司法行政にご尽力いただき敬意を表しております。私たち全国「精神病」者集団は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。
さて、最高裁判所事務総局家庭局は、来年の春からの運用に向けて成年後見開始等申立書統一書式の検討を進めています。精神障害者の生活に係る法制度が障害者の権利に関する条約の趣旨を鑑みたものとなるように、下記のとおり意見を申し上げます。

1.当事者不在
このたびの成年後見開始等申立書統一書式の検討は、障害者団体の意見を聴く機会が設けられないままに進められてきました。実際に成年後見制度を利用しているのは、精神上の障害を有し、事理弁識能力を欠く常態にある成年被後見人等の本人たちです。
障害者の権利に関する条約第4条第3項には、障害者を代表する団体から推薦を受けた当事者の政策決定過程からの参画が規定されており、同条約第33条第3項には、あらゆる障害にかかわる政策において締約国は障害者団体からの監視に応じることが求められています。
成年後見開始等申立書統一書式の検討にあたっては、今からでも障害者団体のヒアリングを実施してください。

2.障害者の権利に関する条約との整合性
障害者の権利に関する条約第12条第2項は、障害を理由とした法的能力の制限の禁止を締約国に求めています。国連障害者の権利に関する委員会は、日本政府の解釈と異なり、法的能力には行為能力が含まれると解釈しているため、同条約第39条に基づき日本政府に対して成年後見制度の廃止を勧告することになると思われます。政府は、勧告に従ってなんらかの対応をすべきであり、あらゆる検討は、そうした前提に立っておこなわれるべきです。

3.利用促進基本計画との整合性
成年後見制度に係るあらゆる政策・運用は、成年後見制度利用促進基本計画との整合性が課題となるため、内閣府及び厚生労働省との調整をしておくにこしたことはないと考えます。

4.配慮のある表現への修正
精神上の障害を申告する欄には行動障害のことが書かれており、大声を出すなどの行為が列挙されています。しかし、身上監護及び財産管理をおこなう上で行動障害に係る申告は不要であるばかりか、成年後見人等にいらぬ先入観を与え、偏見を助長し適切な身上監護を困難せしめる可能性があります。
以上のことから詳細な症状の申告を求める統一書式の表現ぶりについては配慮あるものに見直されることを強く求めます。

◆最高裁判所,成年後見開始等申立書統一書式 (川田龍平事務所から提供をうけました)
https://jngmdp.net/wp-content/uploads/2019/08/20190828.pdf