成年後見制度利用促進勢力に対する阻止闘争の方針

 全国「精神病」者集団は、障害者権利条約第12条の観点から成年後見制度の廃止を求めており、2015年8月頃から成年後見制度利用促進法案にも本格的に反対活動をしてきました。その結果、法案自体は成立してしまいましたが、国会の委員会における審議と付帯決議を勝ちとりました。
成年後見制度利用促進法案は、施策の方向性のみが示されているだけで、具体的な施策は成年後見制度利用促進会議で検討することとされています。つまり、今後の成年後見制度の施策・運用のほとんどが、成年後見制度利用促進会議で決められることになります。
成年後見制度利用促進会議で検討する施策の方向性として、次があげられています。

① 保佐と補助の利用を促進するための方策の検討をし、必要な措置を講ずること。
② 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度について検討を加え、必要な見直しを行うこと。
③ 医療、介護等を受けるに当たり意思を決定することが困難な成年被後見人等の支援について、成年後見人等の事務の範囲を含め検討を加え、必要な措置を講ずること。
④ 成年被後見人等の死亡後の事務処理について成年後見人等の事務の範囲について検討を加え、必要な見直しを行うこと。
⑤ 任意後見制度が積極的に活用されるよう必要な制度の整備その他の必要な措置を講ずること。
⑥ 成年後見制度の周知、啓発のために措置を講ずること。
⑦ 相談や助言、市町村長による後見開始などの措置を講ずること。
⑧ 成年後見人等となる人材を確保するため、研修、報酬の確保など支援の充実を図るために必要な措置を講ずること。
⑨ 成年後見等実施機関の活動に対する支援のために必要な措置を講ずること。
⑩ 家庭裁判所、関係行政機関に必要な人的体制の整備その他の必要な措置を講ずること。
⑪ 成年後見制度の利用に関する指針の策定その他の必要な措置を講ずること。

このうち、②については、成年後見制度の廃止までの過程で欠格条項を含む個別の権利制限の規定を削除していく必要があると考えます。③の成年後見人の業務を医療同意にまで拡大する件は、英国の意思決定能力法でやられている延命中断のための同意の代諾など、優生思想による障害者抹殺を促進する可能性があり、極めて問題があります。このような憂慮すべき施策の阻止に向けた最初の舞台は、成年後見制度利用促進会議になります。当該会議の発足は法律で決められたものであり、これ自体を阻止することは難しいですが、この会議の中で具体的な施策を阻止していくことはできるのではないかと思います。また、こうした障害者の生活を左右するような施策を、当事者抜きに決めることは障害者権利条約の観点からも許されないことです。問題の解決には、障害者団体が政策決定への参画を要求していくことしかないのではないかと思います。
ただ、見立てとして全国「精神病」者集団は、成年後見制度利用促進会議に入れないのではないかと思われます。なので、今後は当事者団体を入れずにして決まった施策という位置付けで成年後見制度利用促進会議の決定事項を糾弾していくことになるでしょう。
2016年6月9日