精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正における障害者の権利に関する条約との関係に関する質問書

厚生労働省 社会・援護局
障害保健福祉部精神障害保健課長 殿

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正における
障害者の権利に関する条約との関係に関する質問書

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)は、附則に基づき今年度改正されることとされています。
 精神保健福祉法の当事者は、精神障害者です。当事者とは特定の問題の効果の帰属主体のことであり、精神保健福祉法の手続きに基づき入院したり、退院したりする問題の当事者は、精神障害者をおいて他におりません。加えて、精神障害者としての主張をできる――精神障害者という集合アイデンティティを一人称として発言できる――のは、第一に精神障害者の団体であるはずです。貴省におかれましては、当事者である精神障害者の意見を聴く必要性を十分に認識していただきたく思っております。
 2013年6月、衆参両議院厚生労働委員会において「精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で講ぜられること」を含む精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正に関する法律案に対する付帯決議が可決されました。
 当会としては、障害者権利条約の策定過程に関わった精神障害の当事者団体として、私たち障害者の主張の集大成である障害者権利条約を政策における一次的な規範として踏まえられることを望みます。また、日本は障害者権利条約の締約国であるため政府(厚生労働省を含む)としても障害者権利条約を遵守し、履行するという前提があると考えます。
 当会としては、厚生労働省が障害者権利条約をどのように理解しているのか、そして、精神保健福祉法を改正するにあたって障害者権利条約を踏まえたものにする意志はあるのか、といったことが大きな関心となっています。そこで、次の質問について回答をしていただきたくお願い申し上げます。

1 障害者権利条約を踏まえることについて
 設置が予定されている精神保健福祉法改正のための検討会・ワーキンググループでは、障害者権利条約を踏まえるべく障害者権利条約が各国の精神衛生法規に対して一般的に要請している事項を確認する予定はあるのでしょうか。厚生労働省としての認識をお示しください。

2 障害者権利条約第14条 身体の自由及び安全
医療保護入院と障害者権利条約第14条の関係、任意入院と障害者権利条約第14条の関係、措置入院と障害者権利条約第14条の関係について、それぞれどのように認識されているのかをお示しください。

3 障害者権利条約第12条 法の前の平等
障害者権利条約第12条と任意入院の関係、障害者権利条約第12条と医療保護入院の関係、障害者権利条約第12条と措置入院の関係について、それぞれどのように認識されているのかをお示しください。
また、付帯決議の意思決定の支援とは、障害者権利条約第12条第3項の法的能力の行使に当たって必要な支援であるべきと考えておりますが、どのように認識されているのかをお示しください。

4 障害当事者の政策参画
 精神保健福祉法改正過程は、付帯決議に基づき障害者権利条約の理念を具現化する方向で講ずるのであれば、障害者権利条約前文(o)及び障害者権利条約第4条第3項に基づき精神障害者を代表する団体から推薦を受けた障害当事者が精神保健福祉法改正のための検討会・ワーキンググループに構成員として複数名入っていてしかるべきと考えるが厚生労働省としては、どのように認識されているのかお示しください。